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Posted by ブクログ
池波正太郎の数冊のエッセイをぐうっと縮めたような小冊子。いくつか見たものもあったかもしらないが、どのみち、忘れているから、十二分に愉しめた。
これが書かれた頃、藤沢周平は「普通の人」を意識して東京(江戸)の郊外でひっそりと暮らしていた。池波正太郎は東京オリンピック辺りから急速に無くなった江戸の名残を「嘆き」ながら、それでも江戸の粋を残した食を愉しみ、きちんとしたホテルに泊まって次々と名作を書いた。
池波正太郎は最近の時代小説に時々見られるような、あからさまに時代の薀蓄を語るようなことは決してしない。むしろ彼があえて描かないものの中に、真に江戸を知っている者の「教養」があったと思う。
・天ぷら屋なんて、当時はまだない。ちゃんと店をかまえているような天ぷら屋はね。梅安の時代は屋台だよ。鮨もそうだ。握り鮨はないことはないけど、コハダの鮨ぐらい、あとはいなり寿司。
・それから道でもね雨が降ったら歩けないんです、ぬかるみになっちゃって。だから、ぬかるみの中をちゃんと歩くようにして書かなくちゃいけないわけだ。ぼくは、前の晩に雨が降ったときは、必ず読者に納得が行くように書いていますよ。どれを読んでもらってもわかる。
今更ながら、鬼平の〈引込み〉や〈火盗改め〉、〈急ぎ盗(ばたらき)〉などは造語なんだと知ったし、長谷川平蔵の私邸を本来の目白台から機動性を考えて清水門外に小説用に移したと知った。小説には書いていないらしいが、使い道がなかった梅安の報酬は1部はおもんに行ったが、大部分は梅安の貧乏な患者にやっちゃうという風に決めていたらしい。梅安は、必殺仕掛け人としてたった一両で毎週のように人殺しをしていたわけでは無いのである。
編者の高丘卓氏の巻末解題がきちんと読ませるエッセイだった。私は、鬼平も梅安もまだ数冊未読の巻を残している。初老に近づいた今、読み始める時期が来ているのかもしれない。
Posted by ブクログ
作品にある様な江戸料理本の様でさりげなく作品世界の話が入っているが、『仕掛人藤枝梅安』の方のキャラの掘り下げみたいな言及があり面白い。小杉さんの方が凄腕剣豪として強いが作者が必ず梅安と同じに名前を出しているのが彦次郎であり思い入れの強さを感じる。自分も彦次郎というキャラが好きなのでさりげない作者からの言及にも奥行きを感じた。
司馬遼太郎とか史料の読み込みが凄いが池波正太郎はそういうのをひけらかさないけどかなり知識が深い様に感じるし、史料の上澄として作品を作っている様に思える。
それにしても言動が粋で最後の江戸の香りを持つ人物ではなかろうか。
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