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その瞬間、手にしたかったものが、僕の目の前を駆け抜けていったような気がした――。テレビ制作会社に勤める秋吉、知人の結婚式で出会った風俗嬢の優香、育児放棄気味の母親と暮らす十歳の明菜、末期癌を患う秋吉のクライアント、大関。長い人生の中でのほんの一瞬、四人は絶妙な距離を保ちながらも、ひと夏を過ごす。嘘で埋めつくされた日常の中で、願いのようにチカリと光る「本当」の物語。(解説・菊地成孔)
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Posted by ブクログ
夏の終わりに読み終えるのにはとても良い作品でした。皆秘密を抱える4人の関係性、近くずくほど遠くなるワクワクするような関係性の表現がとても沁みました。 自分はこんなドラマすらない夏が終わりましたが、来年の夏はきっとと思いながら真夏の果実聴いています。
これぞエモい小説というんじゃないのだろうか。 題名に夏が入っているという理由で読み始めたけれど、心が震えて、エモすぎて悶絶した後に冒頭に戻ってまた頭を抱えてしまいました。 夏が起こす不思議な時間。 出会えてよかった小説です。 北ウイング絶対再生することになります。
『あのさ、やっぱり今日の夜さ---』 前作『ボクたちはみんな大人になれなかった』と同様に、なんか鼻の奥にツンと感じるようなノスタルジックさ。 あぁー、エモいなー。 きっと主人公にとっても、この過ぎ去っていった夏は、在りし日のセピア色に焼けた思い出として、先の未来でもふとした時に回想していくの...続きを読むだろうな。 それが自分にとって『これはただの夏』だと、言い聞かせたとしても。 ・ ・ ・ ・ ・ その瞬間、手にしたかったものが、目の前を駆け抜けていったような気がした……。 「普通がいちばん」「普通の大人になりなさい」と親に言われながら、周囲にあわせることや子どもが苦手で、なんとなく独身のまま、テレビ制作会社の仕事に忙殺されながら生きてきてしまった「ボク」。 取引先の披露宴で知り合った女性と語り合い、唯一、まともにつきあえるテレビ局のディレクターにステージ4の末期癌が見つかる。 そして、マンションのエントランスで別冊マーガレットを独り読んでいた小学生の明菜と会話を交わすうち、ひょんなことから面倒をみることに。 ボクだけでなく、ボクのまわりの人たちもまた何者かになれず、何者かになることを強要されていたのかもしれない……。
子供と大人、発注元と下請け、風俗嬢と客、それぞれ関係が規定された中での親交だから、一線を越えることがない停滞感がある。でも、一線は越えないまでにしても線の上を踏んでいるような曖昧な関係性が甘美だなとおもった。お店でゆかとボクが笑い合っているシーンにどきどきした。恋っていいな、とおもった。
2冊目の燃え殻さん。 燃え殻さんの小説はゆっくり読みたいと思うのに、今のこの感覚をもう少し味わいたいと思っているのに、読み進めてしまう。読み終わってしまう。
最初の一文から惹き込まれた。簡潔な文章でサクサクと読める。ユーモアがあるのに全体的に切なさが漂う。切なくて悲しいけど悲しいだけじゃない不思議な雰囲気のある物語だと思う。
これはただの夏の日の出来事。 ほんの数日間の話なのに、ほんの数日間だからなのか、あの人もあの子もどこでなにしてるんだろう?ってふと思い出してしまいそうな、そんな感じ。 夏って暑くなって暑さの中で何もかもがのぼせたように過ぎていって、夏が終わるとき嬉しいんだけど寂しい気がする。
人生の中でどんな人と出会って関わるかはわからない。ただ絶対にどこかで誰かと一緒に過ごすことになる。性別も年齢も自分と違う人との関わりの面白さ。
夏のひとときの出会いで主人公のこれからの人生は変わるのか分からない。でも良い出会いであったことは変わりない。
4人の人生が交錯した一度しかない夏の話 目の前を流れる全てのものを掴むことは出来ない。 掴み掴み損ね、たまに気付かぬふりをしたり。長年生きていくと鈍感になっていくという言葉に深く納得。しかし、そんな心を揺さぶる出会いと別れが確かにあった。
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これはただの夏(新潮文庫)
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