震災後から2014年くらいまでの早野さんの活動と結果がよくまとまっています 「マイナスをゼロに、そして未来に」つなげていく仕事を着実に積み重ねていく早野さんの姿勢に心を打たれますし、これを「尊い行い」と言うのだな…と感じました。当時の混乱した状況のなか、早野さんは地道に着実にデータを集め、根拠をもっ
...続きを読むて安全だと言えるようにしただけでなく、住民たちの心に寄り添い「安心」をも確保していきました。データを提供するところまでは科学者の責務と言えると思いますが、人々の安心というものはもっと先にあるものです。科学だけで解決できない問題に、科学者としてどう関わっていくべきかについて非常に多くのヒントをもらいました。
福島の現状についてあまり知ろうとせずに生きてきましたが、データの蓄積の結果いまわかっていることをまとめて知る機会になったのもよかったです。住民の内部被曝も外部被曝も、流通している食べ物の線量も全国の他の地域と比べて全然問題ないと言える根拠がすでにあって、査読論文も出ています。
差別や風評被害をゆるく生きながらえさせてしまうのは、少し離れたところにいて、知識が震災直後の煽り記事の印象のまま止まっている人たちなのではないかと考えました。無意識のうちに差別に加担したくないのなら、知ろうとしなければならない。これは他のあらゆる差別、偏見にも当てはまるように思います。
本書には、あるものごとについて詳しい人とそうでない人が建設的に歩み寄るにはどうしたらいいか、についてのヒントがちりばめられています。科学技術と社会のさかいめで何が問題となるかとかにもちゃんと触れられています。科学コミュニケーションに興味がある人にもおすすめ。対談形式でさくっと読めるし430円+税だし全人類におすすめです。