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Posted by ブクログ
ビタミンFもそうだけれど、登場人物たちの年齢に近づいて初めて、この小説の良さがわかってくる気がする。
大人になって、まるでおとぎ話のような純度100%の疑いようのないハッピーエンドの話よりも、一筋の光の中にもほろ苦さがあるような話の方を好むようになった。
例えばそれは、昔は苦手だったふきのとうを、大人になっておいしいと感じてむしろ好んで食べるようになったのに似ていると思う。まだそれでもビールの苦さは私にはわからない。もしかしたらそれももっと歳を重ねればその良さがいつかわかってきて、かえって好んで飲むようになるのかもしれない。
この話も、みんなが予想できるような完全無欠のハッピーエンドではなくて、先をうっすらと照らす光は見えているけれど、ほろ苦さも同居しているような話だった。
残念ながら今の私では、まだこのほろ苦さの良さを深くまで味わうことは出来なかった。もちろんそれは文章が悪いというわけではなく、苦さを理解できるほどに成熟しきっていないからだと感じた。
この話の登場人物たちと同じくらいに年齢を重ねた時この本を読み返せば、もしかしたら見える世界は変わってきているのかもしれないと思う。そしてその時には、ビールの良さもわかるようになっているのかもしれないとも思う。
Posted by ブクログ
忌野清志郎
自分にとっては「なんかすごい人」って認識でしかないけれど、彼の死が誰かに与えるものはとてつもなく大きなものだったんだな、と感じた。
昔を思い返してもう一度辿ろうとするのは簡単だしそうしたくなってしまうけれどそうせずにそれぞれの「ツアー」を続けていく、っていうのがすごくかっこよくて大人ってそうだよな、って思った。
チャワンからの伝言をアカネに伝える本間くんの話し方が社会人なりたて(今もあまり変わっていないかもしれないけど)の自分と全く同じで、アカネの苛立ちがグサグサ刺さった。曖昧に伝えようとするのは自分を守るためでしかないから、ちゃんと自分の発言に自信と責任を持って伝えられる人間になろう…。
最終章でいきなり「私」が出てきて驚いた。そして震災まで時間が進んで驚いた。
大人になるとどうしても学生の頃と色々同じようにいられなくなるけど、それもそれで悪くないよね。
Posted by ブクログ
初出 2009ー11年「新刊展望」。単行本になっておらず、文庫オリジナル。
高校のブラバン仲間5人が大学時代に「ショットガン・ホーンズ」というバンドで活動し、その後バラバラになっていたのだが、清志郎の葬儀に参列した”アカネ”が、啓示を受けて旅(ツアー)に出て、46歳になったバンドの仲間たちに会う。
リストラされた”ハクブン”と会って、近所の高校でトランペットを吹き始めた少年を激励し、偶然聴いたラジオで”チャワン”がレポーターをしていることを知って、メールを送って現場に駆けつける。そこへ妊活で双子を産んだが夫が海外へ行ってしまった”キョウコ”も子供を連れて駆けつける。しかし、「いま、幸せですか?」というメールに”チャワン”は誰にも会わずに引き上げてしまうのだが、その夜、番組のメインパーソナリティと不倫していた”チャワン”は別れるつもりで手首を切って病院に運ばれ、新聞社に勤める”カン”に入った情報から、みんなが病院に駆けつける。
それぞれが厳しい状況に置かれている。人生の前半戦を終え、A面を反転(という表現はCD世代には通じない!)したB面における人生の希望はA面のそれとは違うのだと語られる。
病院のベッドのチャワンに会えたアカネは、「みんなそれぞれのツアーはまだ終わっていない。次のステージのために自分の楽器を鳴らしていて、それは幸せなこと。だからチャワンも次のステージ頑張りなよ。」と励ます。
最後の章は2011年という東日本大震災の状況でどうしても挿入せざるを得なかったのだろう。希望を暗示してはいるが、ここまで単行本にならなかった理由でもあるのかな。
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