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Posted by ブクログ
広島という地にも思い入れがあるし、カープファンでもある私。
プロローグで語られる赤ヘル誕生当時のファン、とりわけ子どもたちの心情とはこんな感じだったのかと知る。
広島のつらい歴史も語られ、カープが初優勝した年は、まだそういう空気感だったのか、と知る。
タイトルでもある1975年の広島は、まだこんな雰囲気だったのかと知る。
過日、広島の学校で行われている平和教育のテキストの内容が変わったことが全国ニュースになった。平和公園の資料館はリニューアルし、焼けただれた人を表した人形が展示されなくなったと聞く。
物語の中で、庄三さんがちぎり絵に取り組むシーンに胸が締め付けられる。こういうことを、戦後生まれの私たちはどうやって後世に伝えていけばいいのだろうか。
手に取るのにちょっと勇気が必要な本の厚みと、ただ戦争の辛い歴史を語るものでもなく、ただカープの初優勝の歴史を語るものでもない、ノンフィクションに近いフィクション。
途中、随分長く積んでしまって再びページを開くのに時間がかかったけれど、最後まで読んで良かった。
著者によるあとがきもまた沁みる。今のカープを、今の広島を、今の世界を、きっとどこかで生きているであろうマナブ、ヤス、ユキオたちは、どう思っているのだろう。
Posted by ブクログ
1975年。終戦からまだ30年しか経っていない広島へ転校してきた中学生のマナブと広島育ちの同級生ヤス、ユキオ、そしてクラスメートの真理子との交流の話。タイトルからは赤ヘル軍団カープの初優勝への軌跡がメインテーマのような印象を受けるが、実際はそうではない。赤ヘルの快進撃はむしろBGMで、中学生同士のぎこちない友情と、原爆被害の悲惨さあるいは戦争の記憶を継承していくことの難しさとが交互に物語の主旋律をなしており、特に後者は相応に重いテーマとなっている。
赤ヘル初優勝のストーリーを主に期待して本書を手に取る人は、やや期待を裏切られるかもしれない。ただ、荒くれものが多かった当時の野球界のエピソードは現代の常識からの想像を超えていて、そこだけピックアップしても興味深く面白い。その意味では、単に野球好きというだけで本書を読むのも決して悪くはなく、もしカープ好きならば球団のルーツとバックグラウンドを理解する上で間違いなく一読に価する。
いくつも絡み合うテーマをよく深堀りして描き切ったなと思わされる一冊。
Posted by ブクログ
「忘れてはいけない」
という事がテーマの小説だった気がします。
題名から簡単に受け取るのは、
カープや初優勝のこと。
でも、重松さん、流石それだけじゃなかった。
戦争や原爆の影響のこと。
都市や地方の格差のこと。
両親や血縁の大事なこと。
土地や引越の無様なこと。
感謝や憎悪の発生のこと。
夫婦や子供の関係のこと。
戦前や戦後の変化のこと。
投機と商売の心情のこと。
そして。
怒りと祈りを忘れない事。
全ての場面において、悪感情を吐き出す、まさに今だけ派の人物群と、優しさ溢れる未来志向の感情を持つ人物群が用意されていた。
その対極的な感情のぶつかり合いが書かれていたのが印象的でした。
人は今を生きるために、忘れざるべくして忘れ、この瞬間に集中してしまう。
ふと、何かのタイミングで。
過去の経験、目を背けてきたもの、忘れたい出来事、負の側面や負の感情、そんなものが「心の中」に溢れ出る時がある。
ただ、何かのその反面で。
助けられた経験、真正面に向合ったもの、忘れちゃいけない出来事、陽の側面や正の感情、そんなものが「心の中」に沁み出る時もある。
この揺り返しがありながら、誰もが人生を歩く。
「ほいじゃが、忘れたらいけん、忘れてしもうたらいけんのよ」
刻まれた、悲しみと苦しみと怒りと祈りを、決して忘れてはならないように――。
-p563
実際、広島に生まれ育ったせいで、個人的にあちこちの文章で共感もあったし、地名や広島弁がなんとも心地よく感じた読後感でした。
原爆ドームと旧広島市民球場の間の、相生橋などは毎日通勤で利用している。
ただ、そんな地元愛を越えた、普遍的な魂の叫びが、重層的に広がる登場人物たちの中にから読み取れるという点において、とてもイイ小説に出逢えたと思いました。
そして関係ないけど。
今期(2019年)は4位に終わったカープでした。。。笑
Posted by ブクログ
9月4日のオリックス・バファローズ戦は延長12回に入り、午後5時20分を過ぎていた。突然の豪雨による中断も重なって、当初予定していた新千歳への最終便搭乗を断念することが決まった。新しい行程は翌日、旭川への直接移動だった。
伊丹を発ち、経由地となった羽田。乗り継ぎまでの時間をつぶすために搭乗ゲート付近の売店で何気なく文庫本が並んだ棚を眺めていたとき、一冊の分厚い本が目に入った。手に取った。600ページを超えていた。しかし、直感した。
「これはいま読まないと後悔する」
一気に読んだ。この時代に我々が野球人たりえる理由は何か。モチーフとなった広島球団、そして広島そのものの歴史、また登場人物たちの想いによって、突きつけられるものは多い。次に広島に行くときには、いままでとは違う感情を抱くに違いない。来月末。何としても、と思う。
現職を拝命して7回目の9月5日。野球の神様からもらったプレゼントは、4年連続の白星ではなく、素晴らしい一冊との出会いだった。
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