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夢の木坂駅で乗り換えて西に向かうと、サラリーマンの小畑重則が住み、東へ向かうと、文学賞を受賞して会社を辞めたばかりの大村常賢が住む。乗り換えないでそのまま行くと、専業作家・大村常昭が住み、改札を出て路面電車に乗り、商店街を抜けると……。夢と虚構と現実を自在に流転し、一人の人間に与えられた、ありうべき幾つもの生を深層心理に遡って描く谷崎潤一郎賞受賞作。
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Posted by ブクログ
世界に存在していると確認できるのは「私」という存在の精神だけである。これは独我論の基本認識であるが、しかしその「私」が唯一の存在であるということまでを独我論は示すものではない。もし仮に「私」という精神を表象する人間が複数人存在し、それぞれ固有の世界で生きているとしたら?
本書はそうした一種の思考実験を、虚構の小説世界における「虚構内存在」である主人公の意識を複数に分散させることで示そうとする。読んでいるうちに、「なぜ私という存在が唯一しか居ないと言い切れるのか」という不安を感じながら、作品世界を楽しむことができる。
小説の主要なテクニカルタームである心理学的ロールプレイについては、初期作品に見られるようなブラックユーモアが満載で、そのあたりだけはつい笑いながら読んでしまう。
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