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「あ」が消えると、「愛」も「あなた」もなくなった。ひとつ、またひとつと言葉が失われてゆく世界で、執筆し、飲食し、交情する小説家。筒井康隆、究極の実験的長篇。
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Posted by ブクログ
主人公の小説家・佐治勝夫が「世界から文字が一つずつ消えていく」という虚構の世界に閉じ込められる物語。 文字がなくなり、言葉がなくなった虚構世界が迎える顚末とは。 世界から1つずつ文字が消えていく。どんどん消えて、周りの人も消えていく。家族が1人…また1人と消えていく。 時が過ぎて次はなんの文字が消...続きを読むえて、どのような言葉がなくなるのか、ページを重ねるごとにワクワクした。 -------------- 【小説紹介】 「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。 世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。愛するものを失うことは、とても哀しい……。言葉が消滅するなかで、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家。筒井康隆、究極の実験的長篇。
手元に五十音表を書き、それを少しずつ黒塗りしていく読書は結構楽しかった。自分の世界だと何が消えるかなぁと考えるのも楽しみだった。勝夫の最初の家族が消えた時、かすかに残る記憶をたどっていくところが切ない。瑠璃子が出てきたあたりからは、ちょっとな〜。 先日小川洋子さんの「密やかな結晶」を読み、世界から...続きを読む少しずつものが消えていく話を読んだところだったが、この小説は似た設定でありながら、全く、本当に全く違う話だった
『怖いのは音が消える世界ではなく、作者の突出した語彙力なのではないか』 本作は五十音の“音”が消えていく世界を、あくまで実験的に描いた作品。 音が消えていくのだから、その世界において使われる言葉も段々と限られてくる。 例えば、“あ”という音が消えれば、『愛している』や『明日』と言った言葉は失われる...続きを読む。 だが、突然消える音に苦しみながらも、なんとか類似する言葉で物語を進められているのを見て、驚愕してしまった。 もちろん音が失われていくのだから、使用される言葉が難解になり続け、『あの言葉の代用か!』と考える時間が増える為、サクサクと読み進めることは難しくなる。 そして、それは非常に重い愛のメッセージのように見えたり、“村の長老”を彷彿させる様な言葉遣いになることもある。 だが、本作の魅力はそこにあると感じる。 音は消えていくが、状況説明における言葉が物足りないと感じることはなく、寧ろよくそこまで言葉を繋ぎ、細かな情景を描けていることに感動してしまった。 また、その世界の住人が、どのように言葉を編み出しているのかというのも非常に気になるところであり、欠けた言葉をいかに補っているのかを見ていると非常に面白い。 かなり読み進めるのは時間がかかると思われるが、“音が失われる”という状況を読み、その世界で何が起こるのかを実験者の様な目で見て欲しい。
「もしひとつの言葉が消滅した時、惜しまれるのは言語かイメージか」 題名だけ知ってるいわずとしれた名作を読んでみよう第2弾! まさに実験小説…! いわゆるメタ的小説なんだけど、これが1995年に記されているのがすごい。 小説を読み慣れていないとめちゃくちゃ時間かかるし、消えていった言葉を模索しなが...続きを読むら読んでたらとてもじゃないけど途中で投げ出してしまう、と思ってエンタメ小説として読み終えました。 老後に時間かけてつぶさに読みたい気もするけど、(余程の物好き、文学オタクでない限りは)そこまで検証して読むものでもないようにも思う。 解説では、小説内の五十音の定義・消失の流れについて細かに分析されてるけど、数値情報は拒否反応で読みませんでした… 読みながら思ったのは、五十音もある日本語だから何百ページも続く小説として成り立ってるんだなってこと。 これがアルファベットだと発音の規則性はあれど26字しかなく、漢字もカタカナもないから、実験「小説」としてはかなり簡素なものになるだろうな。 とくに約半分の音が消えた状態で、瑠璃子との情事場面を入れることで、二十音そこいらでこんなにも表現できるのだと思いしらされた。 逆に情事の描写こそ、最も詳細な言葉を連ねやすく、そして読み手にも想像がしやすい行為なのかもしれない。 あと、作中で登場人物が、「もっとほかの言い方があったはずだが、消失した音を含むために思い出せない言葉」を、瞬時に自分で思い浮かべられた時は自分の語彙力に自信をもてる笑 ●音の消失による表現の変化、存在の消滅 語り手としての第三者目線も含めた語り口調より、登場人物たちの話し言葉の方が、音の消失による制限をかなり受けているような印象だった。 つまり、話言葉より書き言葉の方が表現方法が多彩ってことだろうか。 ジャスチャーで乗り切れそうな場面も多々あるから、手話でならコミュニケーションとりやすくなるのかも?と思った。 けど、手話も結局は音を元に「翻訳」という形をとっているから、手話で示そうとしたものの音が消えていたら口語と書き言葉と一緒だろうな。 もはや「笑顔」を見てもそれがどういう感情表現なのかもわからなくなるってことなのかな? でも人間の感覚で、口角上がる=ポジティブな印象は抱きそうだけど、それはまた別の話かな。 娘たちのことはそれぞれ個人名で認識しているから、名前に含まれる音が消えた瞬間娘たちの存在も消えるけど、 妻「粂子」のことは名前のほかに「妻」と認識していたから、「粂子」に含まれる音だけが消えても存在ごとは消えない。 娘が3人というのも肝で、これが1人だった場合、妻と同じように「娘」と認識していればすぐには消えなかった可能性が高い。 「適当ないいことばが失われてるんだわ」 →音が失われてない現実でだって、自分のボキャブラリーの中に見当たらない言葉では表現することができない。最も当てはまるであろう「適当なことば」を使っているだけ。 瑠璃子の名字を忘れる = 夫の存在も消えているはず。 必ず夫の名字になっているという時代的な解釈は置いといて、他人からしたら知り合いの配偶者は名字でしか認識していないというのは現実的な設定。 ●音が消えていくにつれての印象 一章前半は正直音の消失を感じにくい →後半〜二章にかけて、比喩や回りくどい表現が増える。「なんとか」の多用や「りがとう、いました」などの逃げ方も見え始める。 →二章後半では体言止めが増え、口調や文末が明らかに変化。省略される場面も増え、場面転換が唐突に起こる。 →三章で、母音がバラけにくくなりラップのような運びに。その後文章として崩壊し始める。 ●とくにニクいな〜と思ったメタ発言 ・音がランダムに消えていく、といいながら、前章でピックアップされた人物や事象に含まれる音が優先されて消えていく流れが続き、読み物としてわかりやすくしているだろうなと読者が気づき始めたあたりで、「(音の消え方は)意図してはいないが、完全にランダムではなく無意識の影響があるということ」と言及したこと。そしてその流れを「読者への媚び」と表現する皮肉で自虐的な発言。 ・「(読者は)ただ音の消失によって行われるわが活字の曲芸に興じていたのだ」と、私も含めおそらく多くの読者が、小説のかなり前半において、消失していった音たちは本当に使用されていないのかなどと検証することを辞め、「音がこれだけ消えていたらこんな表現になるのか」程度の見物的な楽しみ方しかしていないことに、筆者自身も気づいているのだという指摘。 ●わかりやすかった言い換え 『父親』→「ち」が消失→『男親』→「や」が消失→「俺を生んだ男」 ●音、日本語についてメモ ・年寄りの話し言葉の言い回しは多彩 ・「現代文で使用頻度の少ない音というのは、じつは古文の、特に文末などでよく使われる音」→「ぬ」「む」「ね」あたり? ●その他 「君が以前書いた例の〜〜〜時間の進行速度と同じテンポで描写が続く」小説、読んでみたい! 粂子と佐治の会話が、噛み合ってないのに成立してる熟年夫婦の会話すぎる 子供がなんとなく人には見せにくい作業をしている最中、母親が覗いてくるからなんとか隠そうとするが、なにをしているかはバレてしまうし、子供は母親にバレているであろうことに気づきながらも隠す動作を辞めない。 →わっかる!それに対してバカにする態度を親から取られると、いっきに恥ずかしさが込み上げてきて自尊心も削られるよなー。 「〜分極化学さを遂げ、それぞれのジャンルに存在し、〜いずれはほとんどの人間が人気タレントになってしまうといった兆しも無くはない」
残像に口紅を 2025.11.10 何気なく使っている日本語を再認識するきっかけとなるような本。初めは言葉が減っていっても、言い換えることが簡単にできるから違和感はなかった。徐々に減っていって、後半になっても文章としてしっかりできているので作者の努力に拍手させていただきたい。
小説内小説?かなり実験的な小説だった。 現実も人間が捉えた形でしか存在しないのだから、現実とフィクションの境目ってないのでは?という問いから始まり、小説家が書いたものが現実であるというテイで物語が進む。 前半はワードだけ隠されたクイズみたいになってかなり頭を使った。途中から諦めた。 表題のフレーズが...続きを読む出てくる箇所は主人公のちょっとキモめの感傷といった感じだった。 小川洋子の密やかな結晶を先に読んでしまったのでそちらのことを考えてしまった。 後半は抒情詩みたいで味わい深かった。制限があると文章はより美しく、真に迫った感じになる。 終わりがとても良い。終わりがとても良い。
荒技です。すごいです。これを読んじゃったら、筒井康隆は天才だ、って素直に言えちゃう。 文字が一つずつ消えて行く中で、物語を書くというのは、まあちょっと変わったことをやりたい作家なら思いつくだろうけど、ほんとにそれをやっちゃっうから(^^;)。途中でポルノもあるし。ラストは、まあこんなもんかなと思...続きを読むったけど、ラストまでたどり着いたことがすごいです。 これと「旅のラゴス」と両方書いちゃうんだから、やっぱ筒井康隆は偉大だ。
前情報無く手に取ったので(後にそれがとても幸運だったと知りました)、なんだこの新しい試みは...!と今までにないくらい読んでいてワクワクしました 章が変わるごとに消えていて何度も何度も「これは何のことを言い換えているのか?」と数ページ読み返しました。それが楽しかった。 後半、文字が少なくなりどう...続きを読むやって分として成り立たせるのか気になって最後まで読み進められました。 読み始めのあの高揚感は皆さんにも感じていただきたいです。
音が消えている中でもスムーズな語り口に驚く。読み続けていると夢の中に迷い込んだような、現実でも何か消えているけど私が忘れてるだけなのではないか、という不思議な気持ちになる。
『残像に口紅を』は高校生の時に読んで1回挫折した本だ。音が消えていくのが大まかな説明だが、読みづらくはない。しかし難しい言葉が多く当時の自分は苦戦したが良い機会なので大学生になって再び読み始めた。読破はしたものの今回も完読するのに時間がかかってしまった。 音が消えていっても読みづらくならないこと...続きを読むに驚いた。普段から「ら抜き言葉」を使う若者としては音が消えていっても読み易さに変わりは無いのだろう。一方で遠回りをしている本だと感じた。消えた音の穴を補充するために文章を増やしているようだ。筆者の文章力の高さ、語彙力の多さが遠回りの原因だろう。もちろん音が消えたら文章が減るのだろうと予想していた自分のせいでもあるがそれが完読する遅さの原因なのだろう。 これからもたくさんの本を読めるにふさわしい人間になりたい。
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