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命の危険はなかった。けれどいちばん恐ろしい場所は〈我が家〉でした――。母の一周忌があった週末、光世は数十年ぶりに文容堂書店を訪れた。大学時代に通ったその書店には、当時と同じ店番の男性が。帰宅後、光世は店にいつも貼られていた「城北新報」宛に手紙を書く。幼い頃から繰り返された、両親の理解不能な罵倒、無視、接触について――。親という難題を抱える全ての人へ贈る相談小説。
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Posted by ブクログ
じっくり、じんわり読める。お手紙方式をとっているからか、余白があって、なおじんわり、とした読後。ひとことで表せない、家族というものについて。複雑な心境を、「謎」という言葉が置き換わって、ミステリーの様相も呈して進む。家族と他人、人間のつながり、感情の持って行き場、昇華のされ方。良かった。
不可解な話の連続でホラー小説でも読んでいるかのような気味の悪さをたびたび感じたけれど、それらの謎に対する回答者たちの推理が見事で、なるほどこんな見方があるのかと感動すら覚えた。 特にタクシーの話は意味不明すぎて頭痛がしたけれど、その回答が特に素晴らしくて電車内で思わず「なるほどなあ」とつぶやきが漏れ...続きを読むてしまった。 エピソードも回答もすべてが面白いし、綺麗な文体のなかに垣間見えるシニカルさもまた良くてとても楽しませてもらいました。
ウチはウチ、ヨソはヨソ。 誰でも一度は聞いたことがありそうな言葉ですが、この言葉と共に葬り去られた「謎」が、世の中に一体どれ程あったのでしょうか。 主人公ヒカルがいうように、虐待というのは違うような、でもすんなり受け入れることは不可能、といった両親の謎の言動について、投稿という形で相談と回答が交わ...続きを読むされます。 これを読んだ人の反応は大きく3つに分かれるのではないでしょうか。信じられない派、わかる派、そんな酷い?派です。(一部重なることはあると思いますが) しかしながら、本書において、この両親が酷いかどうか、謎の解決というものはあまり重要ではない気がします。 最後の方に書かれているように、親子の縁は切れないので脱却はできない。でも軽減することはできる。この小説も脱却物語ではなく軽減物語でした。 ヒカルはずっと自分の中にしまっていた両親の「謎」を大人になってやっと取り出し、正解は無いのを承知で、文容堂の人達の回答と共に少しずつ整理していきます。 心のキズにも、見えやすいものと見えにくいものがあると思いますが、この小説はそんな自分でも分かっていないキズを浮き彫りにしてくれるような、もやもやした何かに形を与えてくれるような本だと思います。 にしても、自分も似たような事があったにもかかわらず、特にキズになっていない所をみると、親子の数だけ形があるという事でしょうか。 自分の親は毒親ではないと思うのですが、ヒカルの両親に対する振る舞いが自分とそっくりなのが謎といえば謎でした。 毒親でないなら、もしや自分が毒子?(そういうものがあるのかは知らないのですが)なのか。 正直読んでいて苦しい本でした。そして良書。
幼い頃の両親の謎な行動について、主人公が相談投稿し、返信をもらう、という構成の作品です。 私はモラハラな父親と過保護な母親という「毒親」育ちなのですが、読んでいてツライ部分もあり、読み飛ばしてしまったところもあるのですが、回答の文章に救われて泣けました。 タイトルに「毒親」とつけるところに作者は...続きを読む悩んだかもしれませんが、私のように「毒親」と付いているから手に取った人もいるはずです。
こんな面白い形の小説読んだことがない。形式も面白いし、内容もめちゃくちゃ面白い。そして、出てくる親の行動が本当に謎としか言いようがなくて、まさに「謎の毒親」。ただ、読んでる自分が男であり父であれば、このおかしな父の行動の中にほんの少し自分を垣間見たりもするかもしれないし、それは痛みを伴うかもしれない...続きを読む。相談相手からの回答は示唆に富んでいるし、これは、というような慧眼と言える内容もあって、とても深みがある。単に毒親を描いただけではない読み応えのある凄い小説だと思う。面白かった。
著者の実体験による相談小説 ホラーです なんという親だ おそろしい それが感想です 主人公が子供時代の経験を相談という形で 語っているのだが、そのいずれもが常軌を逸している そしてそれが実際にあったという話であるのだから おそろしくまた信じられないくらい こわい
わかりすぎて辛い部分もある本でした。 我が家のフツーを、語ってもわかってもらえない。奇妙過ぎて。親が外で見せているものと内の顔が違いすぎて。 語ってみても、上手く言葉にならない。変だから。 そんな、言葉にならないもやもやを、形にしてもらえて少しすっきりできました。 本のなかで語られた言葉に、刺さ...続きを読むりすぎて痛い部分もあったけど、自分とはこういうものだとちゃんと受け止められるようになりたい。 自分にとってしんどいものなら、親だろうが捨てていい。 救われていいんだ、私だって。
宮部書評新書から。姫野作の期待もあり。そもそも”毒親”って表現、どうよ?っていう根本的な疑問も含め、当事者の心境に果敢に切り込んでいく。実話を基にした、往復書簡形式の小説っていう体裁も、この場合にはベストマッチ。明快な解答が提示される訳ではないのだけど、基本的には理性的に、でもときに感情的にっていう...続きを読む振れ幅まで盛り込まれていて、都度、自問自答を喚起される結構。さすがの起爆力。
こちらの作品に限っては、著者のあとがきを読んでからの方が、物語に入り込みやすいかもしれません。というのもかしこまった書簡形式(著者は相談小説と表現)という独特の文体故に、とても読みづらく感じたため、そのような構成に至った著者の意図とプロセスを理解した方が物語を理解しやすいだろうと思ったからです。さ...続きを読むらにこの物語は不可解な出来事の羅列なのですが、なんと全て著者の実体験だそうです。本書では凄惨な暴力などの痛ましい事件などはほとんど書かれず本当に小さな不可解で理不尽な出来事しか起きないのですが、何も知らずに読んでいると正直「しょーもな」という気持ちが先行して内容がいまいち入ってきません。ですが、それらが実際に起こった実体験だと知った上で本書を読めば、確実に物語を理解しやすく、リアルに起こったことなのだという面白さを感じながら読み進められることと思います。 私はあとがきは最後に読む派なので、なかなかストーリーが入ってこずいつになったら面白くなるんだろうと思ったまま本の1/3に到達。なかなかストーリーが進まない。最初の「名札張り替え事件」も意味不明だしどうでも良すぎて投げ出しそうになりました。(しかも真相は謎のまま)もう読むのやめようかな、私がそう思ってる矢先、主人公が自分の親をひとことで言うならなんだろう?と問い、それに対して回答者・長谷川達哉氏が「毒親」と回答します。この「毒親」という言葉が初めて出てきた時点で物語がついに動き出したと感じました。 中でも一番理不尽だったと思われる「タクシー事件」もシーズン2(同じことがまた起きる)の時に思わず読んでるこちらが吹き出してしまいました。もーやだーこの親頭おかしい。そのあたりでようやく面白がりながら読んでましたが、現実でも毒親というものは常識や条理からかけ離れた発想をするものなのかもしれないとも思いました。 最近、毒親関連の本をよく読みますが、毒親には色々なジャンルがあり、これが毒親と一言で言えません。ですが私が毒親を定義するとしたら「親が子を支配する」この一言かなと思います。これが私が感じる毒親の定義です。 実は私はこれから二人目を出産するのですが、良い親になれるか不安を感じるばかりでした。絶対に毒親になりたくないから、毒親関連の本を読み漁っていました。そんな中で本書を読んで、毒親の仕打ちに対する回答者の言葉を読んで私も主人公同様、勇気づけられたり納得できたりしました。私は子供を支配するのではなく、子供と共に歩んで成長していけたらなと思いました。 毒親は鬼をうちに入れて、福に豆をぶつける人生。鬼は内、福は外という人生を送ってきたのだと、本書に登場する回答者・児玉幸子が言った言葉が印象に残っています。私は、「鬼は外、福は内」と心がけて楽しい人生を送ります。
「毒親」ということばの元は、アメリカのセラピスト、スーザン・フォワードの著書『毒にやる親』です。あとがきより 相談小説と表紙にもあるように、すごく丁寧なデスマス調でのやりとりが多少読みにくかったけど、内容は濃くとても怖かった。 これをドラマや映像にしたら、とんでもないサイコパスな両親として話題になる...続きを読むだろう。 育った環境が違いすぎて、主人公ヒカルちゃんを理解することは出来なかったが、彼女の壮絶な未成年時代を辛く思った。
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