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今日、患者が死んだ――。倫理に反する言動で白眼視される医師村荘(むらそう)を描く「医呆人」。ある朝、心が毒虫に変じた女医の葛藤「変心」。高級老人ホームに住む男女の恋愛ドラマ「カネと共に去りぬ」。そして高慢きわまる老医の手記「アルジャーノンにギロチンを」。久坂部羊が名作に鮮やかなメスを入れ、現代医療の嘘と欺瞞を浮かび上がらせる。ブラックでシニカルな、七錠の劇薬エンターテインメント。(解説・大矢博子)
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Posted by ブクログ
医学界に纏わるブラックな題材を、名作へのオマージュを込めた短編集。 コメディ仕立てなんだけど、本当にブラックで考えさせられる内容だった。 医療過誤、動物実験、認知症…。人間の欲はキリがない。
*今日、患者が死んだ──。倫理に反する言動で白眼視される医師村荘を描く「医呆人」。ある朝、心が毒虫に変じた女医の葛藤「変心」。高級老人ホームに住む男女の恋愛ドラマ「カネと共に去りぬ」。そして高慢きわまる医師の手記「アルジャーノンにギロチンを」。久坂部羊が名作に鮮やかなメスを入れ、現代医療の噓と欺瞞を...続きを読む浮かび上がらせる。ブラックでシニカルな、七錠の劇薬エンターテインメント* 最高過ぎました! パロディと言うには質が高過ぎる作品ばかりで、どの作品も感嘆の一言です。 特に良かったのは「アルジャーノンにギロチンを」と「変心」。 久しぶりに原作も読み返したくなりました。
名作の題名を模したパロディー。医療や介護に関わる話で、例えば延命治療が幸せかというテーマなど。題名をもじったふざけた感が、自らの将来を考える機会に取って代わるかもしれない。2022.10.24
ブラックユーモアの短編集だが、有りそうに話にちょっと笑えない。医者も患者も同じ人間でお互いの誠実さ、優しさには過度の期待はないなぁと感じる内容。
芥川の小説を再構成した医療エンターテイメントに続く、名作のパロディー医療エンタメ(解説者によると正確にはパスティーシュというそうだ)。 名作をちょっとひねった題名にシニカルさを、その内容にブラックさを味わうことができる。原作をしっかり読み込んで理解したうえでないと、このような作品は書けないのでは。 ...続きを読むその一編『アルジャーノンにギロチンを』は、日記形式で構成されている。高慢な医者すぁる主人公は、認知症を恐れ、日記をつけているが、その進行と共に徐々に文章が乱れてくる。 既視感があると思ったら、著者の『老乱』でも、主人公にあたる老人の日記で、認知症の進行具合が迫力満点に描かれていた。 いずれも、現役の医師である著者にしか書きえない、力作だろう。
医呆人/地下室のカルテ/予告された安楽死の記録/アルジャーノンにギロチンを/吾輩はイヌである/変心/カネと共に去りぬ どこかで聞いたような題名ばかり。こうもブラックな話に利用できるとは、きっと凄いんだろう。心身の健康への気になり具合が大きい時に読むのはちょっと辛かった。元気でないと読めないかも
久坂部羊『カネと共に去りぬ』新潮文庫。 世界文学のパスティーシュ医療ブラックユーモア短編集。世界の名作小説を連想させるようなタイトルの『医呆人』『地下室のカルテ』『予告された安楽死の記録』『アルジャーノンにギロチンを』『吾輩はイヌである』『変心』『カネと共に去りぬ』の7編を収録。 最近の久坂部羊...続きを読むの作品はシリアス路線ではなく、ブラックユーモア路線の作品が目立つ。本作に収録されたいずれの短編もブラックでユーモラスな一面を持つのだが、シリアス路線の方が好きだな。 『医呆人』。アルベール・カミュの『異邦人』のパスティーシュ。村壮はムルソーのパロディだし、基本的なプロットも元ネタのパロディだ。主人公の村壮は社会の望む医師像であることを拒否し続けている変わり者の若手医師だった。病院の中で医療に幻想を抱かぬ唯一の医師である村壮は担当したがん患者の死に際して、不穏な発言をしたことから糾弾される。一種のサイコパスのような村壮の抱える秘密とは…… 『地下室のカルテ』。元ネタは、フョードル・ドストエフスキーの『地下室の手記』。得をするのは世渡り上手というのは医療の世界も一般企業も同じようだ。そんなことは解り切っているので、一時の損得に一喜一憂する必要も無いのだが。がん患者の手術と抗がん剤治療の選択に失敗した主人公の割崎英男は抑うつ状態に陥り、院内を徘徊する…… 『予告された安楽死の記録』。元ネタはガルシア・マルケスの『予告された殺人の記録』。治癒の見込みの無い白血病により安楽死を選択した櫻子と夫の真一を巡る物語。櫻子が死に際に母親の政子に託した遺言とは…… 『アルジャーノンにギロチンを』。元ネタはダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』。68歳の郷田智有の書く日記でストーリーが展開する。知らぬ間に認知症となった郷田は……ブラック。 『吾輩はイヌである』。元ネタは言わずと知れた夏目漱石の『吾輩は猫である』。実験動物として大学病院に送り込まれたビーグル犬の吾輩。名前は『マダナイ』という。憐れ、実験動物の最後…… 『変心』。元ネタはフランツ・カフカの『変身』。主人公の名前は寒座久礼子。グレゴール・ザムザのパロディだ。大昔読んだ本に『水凍る寒さ』というのがあったが、あれは何というタイトルだったろう。サイコ気味の寒座は研修医からSMの女王に転身…… 『カネと共に去りぬ』。元ネタはマーガレット・ミッシェルの『風と共に去りぬ』。物語の舞台は富裕層向け介護付有料老人ホーム『アトランティス奥多摩』。そして登場人物が列戸馬虎と小原紅子、入楠明日礼というから笑える。 本体価格670円 ★★★
医療界の実態をブラックユーモアたっぷりに描いた短編集。好きと嫌いにハッキリ分かれる小説だと思う。 終末期医療、延命治療、尊厳死、動物実験、認知症等考えさせられる重たいテーマが生々しく書かれているが面白くてあっという間にに読めました。 「アルジャーノンにギロチンを」が1番よかった。 身体は老いて動かな...続きを読むいが頭はとてもクリアーな状態…色々考えさせられます。
医療と人生の最後についての、アイロニー含む逸話集。 医療人の黒い側面と、人生の最後の迎え方について、はばかりなく語っているが、一般の方にも心響くでしょうか。
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カネと共に去りぬ(新潮文庫)
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