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父の死因とは一体何だったのか? 食い違う医師・看護師の証言。真相を求め、息子はさまよう(「病院の中」)。多額の募金を得て渡米、心臓移植を受けた怠け者の男と支援者たちが巻き起こす悲喜劇(「他生門」)。芸術を深く愛するクリニック院長と偏屈なアーティストが出会ったとき(「極楽変」)。芥川龍之介の名短篇に触発された、前代未聞の医療エンタテインメント。黒いユーモアに河童も嗤う全七篇。
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Posted by ブクログ
なんとふざけた題名の本だろう・・・と読み始める。だが、待てよ!?目次を見ると、おお!これは芥川龍之介の作品パロディだ!自然と顔がにやけてしまった。私はこの手の機転を利かす言葉遊びが大好きな人間なのである。「病院の中」=藪の中、「他生門」=羅城門、「耳」=鼻、圧巻は「蜘蛛の意図」=蜘蛛の糸である。ブラ...続きを読むックユーモア風の作品に仕上げてある。これは面白い!・・・他の作品もそれぞれ医療に関する観点から書かれてあり読み応えがあった。そして、龍之介が盗作していたなんてだれが想像したであろうか。いや実に面白い作品だった。
芥川龍之介の書いたものを医療という形で色々と料理した一冊です。 耳、他生門、クモの意図など、グロテスクなものから温かいものまでありますが、一気読みでした。 芥川龍之介は実はパクリだらけという内容には芥川龍之介好きの私には成程と思いました。 それ言ったら元も子ない。 だって大概の文学は何かからパクッて...続きを読むいるぞと。 面白い目線だと思いました。 どの話も身近で飛躍も多少ありますが、病院って、医者ってこんな風なのかな?と思わせる一冊です。
久坂部羊『芥川症』新潮文庫。芥川龍之介の作品に着想を得て描いた短編集。医療に対する諷刺の効いた短編7編を収録。久坂部羊がまたまた違う一面を見せてくれた。グロテスク、ブラック、ホラー、ユーモア、様々な要素を取り入れた面白い短編集だった。 『病院の中』。『藪の中』からの着想だろう。父親の死に疑念を抱き...続きを読むつつ、難解な医学用語でたらい回しにされる主人公。そして、最後に待ち受ける結末… 『他生門』。『羅生門』からの着想。多くの人びとの支援によりアメリカで心臓移植手術を受けた主人公の人生はもはや自らのものではなくなる。 『耳』。『鼻』からの着想。何ともグロテスクでブラックなストーリー。 『クモの意図』。言わずと知れた『蜘蛛の糸』からの着想。作中に芥川龍之介の『蜘蛛の糸』が落語で描かれる。ブラックでユーモラスなストーリー。 『極楽変』。『地獄変』からの着想。一人の医師の密かな楽しみを描いたグロテスクでブラックなストーリー。 『バナナ粥』。『芋粥』からの着想。落語のような… 『或利口の一生』。『或阿呆の一生』からの着想。著者の半生をベースにした、この短編集の総まとめといった短編。この短編があるが故に短編集全体が面白い作品に仕上がっているようだ。
まず表紙の絵を見て、笑った。 白衣を着ている芥川龍之介。 タイトルが『芥川賞』、いや『芥川症』だ。どういう意味だろう… 短編集、そしてタイトルが全て芥川龍之介の作品をもじったもの。 病院の中(薮の中) 他生門(羅生門) 耳(鼻) クモの意図(蜘蛛の糸) 極楽変(地獄変) バナナ粥(芋粥) 或利口...続きを読むの一生(或る阿呆の一生) 中でも面白かったのが、『病院の中』だ。病院内で父の死因をめぐり、医師は専門用語を使いうやむやに、看護師は医師に聞いてないことをくちばしる…だんだんと父の死が不審になってくるという病院内の摩訶不思議なことを書いた話。 あと複雑な思いをしたのが『他生門』だ。心臓病を患った主人公が、慈善団体の協力で寄付金を集め、アメリカで移植手術をするが残りのお金で豪遊したら、難病を克服した人はしっかりと生きなければダメだと周りに咎められる話。 小説の意図は非常に面白いが、タイトルの割に内容がイマイチなもの、気味が悪いものなどもあり、星4つとします。
芥川の作品をもじって医療に繋げているのが面白かった。久坂部さんは総じて過度な医療反対なんだなあと思った。
【医療小説の短編集】 謎解きとか仕掛けより、心理描写が秀逸な著者。 ニヤリとさせられる話から、ドロドロした話まで盛りだくさん。 医療現場をちょっとだけ知ることができそうなのも良し。
#fb この人、グロいの専門家と思ってたので、こういうコメディ?タッチは意外と面白く。芥川の何をモチーフにしたのかは各題名で明らかなんだけど、決して全てが芥川のスジをなぞっているわけではなし。個人的には、「地獄変」からの翻案が秀逸。あ、やっぱグロテスク...。
芥川龍之介が、いかに優れた小説家であったとはいえ 残されたのは基本的に小粒な作品ばかりだった だから、そのスキャンダラスな死への憧憬を抜きにしては こうも長年読み継がれる存在となりえたものか 少々疑わしいと思われる向きも、けっこう多いと思う 半ばは真だ しかし、芥川の凄まじさは その死に至る準備段階...続きを読むからの副産物として 「歯車」などの壮絶な晩作を次々と生み出してきたところにあるのだ 自らの意志により死を捉えた人の明晰さ、というある種のロマンを 芥川は、いちはやく体現してみせたのだ …とはいえ、むしろ本人としては 「阿呆」と呼ばれて笑われることを望んだのかもしれないけれど 久坂部羊の「芥川症」は、作者の専門である医療をテーマとしつつ 芥川龍之介の代表作をオマージュした短編集 死におびえる人々、それに死を相対化して安心する人々の 罪のない(こともない)平凡さから 生きることのありがたみを抽出しようとする一方 死への抗いを不自然なこととしても描いている
著者のデビュー作『廃用身』に度肝を抜かれ、その後のいずれの作品にも衝撃を受けました。いちばん最近読んだ『嗤う名医』で初めて短編を読み、その腕にも唸りました。本作はそんな著者による芥川龍之介作品のパロディ。登場順に(括弧内が芥川の元ネタ)、『病院の中』(『藪の中』)、『他生門』(『羅生門』)、『耳』(...続きを読む『鼻』)、『クモの意図』(『蜘蛛の糸』)、『極楽変』(『地獄変』)、『バナナ粥』(『芋粥』)、『或利口の一生』(『或阿呆の一生』)。最終話の『或利口の一生』に「パクリ」という項があり、そこに著者の本音がそのまま記されているようです。「小説というものは自分で筋を考えなければならないものだと思っていたのに、芥川の短編に『今昔物語集』に想を得たものが多いと知り、ならば芥川が『今昔物語集』からパクッた小説から、さらに自分がパクッて書いてやろうと思ったのだ」と。パクるといえば聞こえが悪いけれど、想を得たのだといえばいいんでしょと。その言葉からもわかるように、かなり人を喰ったような話で、かつグロテスク。この著者のことですから、相変わらず上手いし飽きずに最後まで読ませることは確かですが、どれもこれもバッドエンドで、パロディのわりに読後感が重い。しかも医者としての知識を存分に使っているからグロいのなんのって。同じ重さならばいつもの医療系の小説を読みたいなぁ。
芥川龍之介の名作をパロディちっくに模しているが、内容は結構真剣。医者との距離が近づく。2017.3.27
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