無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで203万冊以上配信中!
父の死因とは一体何だったのか? 食い違う医師・看護師の証言。真相を求め、息子はさまよう(「病院の中」)。多額の募金を得て渡米、心臓移植を受けた怠け者の男と支援者たちが巻き起こす悲喜劇(「他生門」)。芸術を深く愛するクリニック院長と偏屈なアーティストが出会ったとき(「極楽変」)。芥川龍之介の名短篇に触発された、前代未聞の医療エンタテインメント。黒いユーモアに河童も嗤う全七篇。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
まず表紙の絵を見て、笑った。
白衣を着ている芥川龍之介。
タイトルが『芥川賞』、いや『芥川症』だ。どういう意味だろう…
短編集、そしてタイトルが全て芥川龍之介の作品をもじったもの。
病院の中(薮の中)
他生門(羅生門)
耳(鼻)
クモの意図(蜘蛛の糸)
極楽変(地獄変)
バナナ粥(芋粥)
或利口の一生(或る阿呆の一生)
中でも面白かったのが、『病院の中』だ。病院内で父の死因をめぐり、医師は専門用語を使いうやむやに、看護師は医師に聞いてないことをくちばしる…だんだんと父の死が不審になってくるという病院内の摩訶不思議なことを書いた話。
あと複雑な思いをしたのが『他生門』だ。心臓病を患った主人公が、慈善団体の協力で寄付金を集め、アメリカで移植手術をするが残りのお金で豪遊したら、難病を克服した人はしっかりと生きなければダメだと周りに咎められる話。
小説の意図は非常に面白いが、タイトルの割に内容がイマイチなもの、気味が悪いものなどもあり、星4つとします。
Posted by ブクログ
芥川龍之介が、いかに優れた小説家であったとはいえ
残されたのは基本的に小粒な作品ばかりだった
だから、そのスキャンダラスな死への憧憬を抜きにしては
こうも長年読み継がれる存在となりえたものか
少々疑わしいと思われる向きも、けっこう多いと思う
半ばは真だ
しかし、芥川の凄まじさは
その死に至る準備段階からの副産物として
「歯車」などの壮絶な晩作を次々と生み出してきたところにあるのだ
自らの意志により死を捉えた人の明晰さ、というある種のロマンを
芥川は、いちはやく体現してみせたのだ
…とはいえ、むしろ本人としては
「阿呆」と呼ばれて笑われることを望んだのかもしれないけれど
久坂部羊の「芥川症」は、作者の専門である医療をテーマとしつつ
芥川龍之介の代表作をオマージュした短編集
死におびえる人々、それに死を相対化して安心する人々の
罪のない(こともない)平凡さから
生きることのありがたみを抽出しようとする一方
死への抗いを不自然なこととしても描いている
Posted by ブクログ
著者のデビュー作『廃用身』に度肝を抜かれ、その後のいずれの作品にも衝撃を受けました。いちばん最近読んだ『嗤う名医』で初めて短編を読み、その腕にも唸りました。本作はそんな著者による芥川龍之介作品のパロディ。登場順に(括弧内が芥川の元ネタ)、『病院の中』(『藪の中』)、『他生門』(『羅生門』)、『耳』(『鼻』)、『クモの意図』(『蜘蛛の糸』)、『極楽変』(『地獄変』)、『バナナ粥』(『芋粥』)、『或利口の一生』(『或阿呆の一生』)。最終話の『或利口の一生』に「パクリ」という項があり、そこに著者の本音がそのまま記されているようです。「小説というものは自分で筋を考えなければならないものだと思っていたのに、芥川の短編に『今昔物語集』に想を得たものが多いと知り、ならば芥川が『今昔物語集』からパクッた小説から、さらに自分がパクッて書いてやろうと思ったのだ」と。パクるといえば聞こえが悪いけれど、想を得たのだといえばいいんでしょと。その言葉からもわかるように、かなり人を喰ったような話で、かつグロテスク。この著者のことですから、相変わらず上手いし飽きずに最後まで読ませることは確かですが、どれもこれもバッドエンドで、パロディのわりに読後感が重い。しかも医者としての知識を存分に使っているからグロいのなんのって。同じ重さならばいつもの医療系の小説を読みたいなぁ。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。