大山定一の作品一覧
「大山定一」の「マルテの手記」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
- 作者をフォローする
- フォローすると、この作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで100万冊以上配信中!
「大山定一」の「マルテの手記」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
Posted by ブクログ
久々に主だった筋のない、断片を繋ぎ合わせたタイプの小説を読んだ。そうして思うのは、私はこういったタイプの小説に非常に安堵感を覚えるということだ。人生は物語ではない。断片を継ぎはぎしたものである。そう言った方が私の実感と合っているし、結局のところなまの人生をより広く肯定しているように感じられる。
内容であるが、意外と明るい。死という絶対無の恐怖に怯えながらも、全体としては生への肯定が貫いているという印象を受ける。特に終盤などはそうである(ちなみにストーリーらしきストーリーがないにも関わらず、終盤にかけて明らかにボルテージは上がっていき、興奮する)。ところが並々ならないのは、この生の肯定を産み出
Posted by ブクログ
果たしてこれを物語としてよいものか。
なんて孤独で乾いているのか。まるでランボーが書きえないものを書こうとして時空から立ち上がり、筆を折ったみたい。きっとこれを書き上げたリルケも筆を持てなかったに違いない。
ゲーテは理解されないのを知ってことばを選んで紡いだ。だが、彼は理解されないのを知りつつも、あえてことばを変えなかった。表現や訳、ことばが難解なのではない。彼が書こうとしたそのものが難解なのだ。普通の三文作家なら挑むことさえ思いたてない、そんなものを書こうとしたのだ。こんな世の中ですべてのひとに理解される方が恐ろしい。
たったひとりで、ことば以前の存在を追い求めて、マルテはパリを彷徨う。孤独
Posted by ブクログ
事件は起きない。あらすじも伏線もない。パリに来たデンマーク人というフィクショナルな設定があるだけ(リルケはドイツ人)。
そのマルテが、自由な形式で、パリで見る景色を語ったり、かと思うと過去を語る。詩や音楽を語り、そんな連関性のない話を重ねていくが、読者はそれにつれて自分の心の奥底を覗き込むように誘われる。
リルケはこの小説を、散文というよりは詩として書いたという。それほど長い小説ではないが、6年ぐらいの歳月をかけて、文章を練りに練って書いたので、密度は非常に濃く、読み進むのにもエネルギーがいる。数行読んだだけで本を閉じて物思いに耽ってしまう、僕はそんな読み方をした。そんな感じである年のひと夏ぐ
Posted by ブクログ
中学生の頃のピアノの楽譜入れだった母の手作りのお洒落な鞄がひょっこり出てきて、中を開けるとこの本がひっそりと息づいていました。
『マルテ・ラウリス・ブリッゲの手記』の作者は、134年前の1875年12月4日にオーストリアのプラハに生まれた詩人で小説家のライナー・マリア・リルケ、スイスに移り住み薔薇の棘の傷がもとで白血病によって51歳で死去。
これは、孤独な生活を送りながらパリの街で出会った人々や芸術や自分自身の思い出などについて、デンマーク生まれの青年詩人マルテが思いついたことを断片的に書き綴っていくというスタイルで書かれた彼のたったひとつの長編小説です。
この本は中1と中2のときに4度
Posted by ブクログ
リルケ自身がこの小説について語った言葉の一部を掲載させていただきます。
~~~
ぼくは『マルテの手記』という小説を
凹型の鋳型か写真のネガティブだと考えている。
悲しみや絶望や痛ましい想念などがここでは一つ一つ
深い窪みや条線をなしているのだ。しかし、もしこの鋳型から
ほんとうの作品を鋳造することが出来るとすれば
(たとえばブロンズをながしてポジティブな立像をつくるように)、
たぶん大変素晴らしい祝福と肯定の小説が出来てくるにちがいない。
~~~
何かしらちょっとでも感じるものがあったなら読んだ方がいい。
リルケは読み手に静かに一つの方角を教えてくれているんだ。