新潮文庫作品一覧

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  • 女系家族(上)
    4.0
    1~2巻935円 (税込)
    大阪・船場の老舗矢島家は代々跡継ぎ娘に養子婿をとる女系の家筋。その四代目嘉蔵が亡くなって、出もどりの長女藤代、養子婿をむかえた次女千寿、料理教室にかよう三女雛子をはじめ親戚一同の前で、番頭の宇市が遺言書を読み上げる。そこには莫大な遺産の配分方法ばかりでなく、嘉蔵の隠し女の事まで認められていた。……遺産相続争いを通し人間のエゴと欲望を赤裸々に抉る長編小説。

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  • 重力ピエロ
    4.1
    兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは――。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。

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  • パプリカ
    4.1
    同名アニメ映画の原作。精神医学研究所に勤める千葉敦子はノーベル賞級の研究者・サイコセラピスト。だが、彼女にはもうひとつの秘密の顔があった。他人の夢とシンクロして無意識界に侵入する夢探偵パプリカ。人格の破壊も可能なほど強力な最新型精神治療テクノロジー「DCミニ」をめぐる争奪戦が刻一刻とテンションを増し、現実と夢が極限まで交錯したその瞬間、物語世界は驚愕の未体験ゾーンに突入する!

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  • 砂の器(上)
    4.1
    1~2巻935~990円 (税込)
    東京・蒲田駅の操車場で男の扼殺死体が発見された。被害者の東北訛りと“カメダ”という言葉を唯一つの手がかりとした必死の捜査も空しく捜査本部は解散するが、老練刑事の今西は他の事件の合間をぬって執拗に事件を追う。今西の寝食を忘れた捜査によって断片的だが貴重な事実が判明し始める。だが彼の努力を嘲笑するかのように第二、第三の殺人事件が発生する…。 映画でもドラマでも大ヒットした社会派ミステリー。

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  • 沈黙の画布(新潮文庫)
    3.7
    愛なのか、狂気なのか──。女性エッセイストが絶賛したことを機に、一躍脚光を浴びた知られざる天才画家。美術誌の編集者だった橘は、胸に迫る画風に惹かれ、無名のまま亡くなった謎の男の画集を企画するが、未亡人は、作品の何点かを贋作と頑なに主張する。いぶかしがる橘をよそに、現存する絵の価格は一夜にして高騰し……。スリリングな絵画ミステリーの超大作。『薄暮』改題。(解説・品川裕香)
  • 絶筆(新潮文庫)
    3.0
    この国に、戦前がひたひたと迫っていることは確かだろう――脳梗塞で倒れながらもいくつもの連載を持ち、作家として書き続けた12年。酒も煙草もやらずに過ごすリハビリの日々、混迷する現代社会への警鐘、自らの複雑な生い立ち、そして「火垂るの墓」にも描かれた敗戦前後の悲惨な体験。急逝するわずか数時間前まで書き続けた日記に、揺れ動く時代を浮き彫りにした最晩年のエッセイを収録。(解説・野坂暘子)
  • 警官の掟(新潮文庫)
    3.7
    東京湾岸で男の射殺体が発見された。蒲田署の刑事は事件を追い、捜査一課の同期刑事には内偵の密命が下る――所轄より先に犯人を挙げよ。捜査線上に浮上する女医の不審死、中学教師の溺死、不可解な警官の名前。刑事の嗅覚が事件の死角に潜む犯人を探り当てたとき、物語は圧巻の結末になだれこむ。徹底したリアリティと重厚緊密な構成で警察小説の第一人者が放つ傑作長編。『犬の掟』改題。(解説・吉野仁)
  • 冬を待つ城(新潮文庫)
    3.6
    小田原の北条氏を滅ぼし、天下統一の総仕上げとして奥州北端の九戸城を囲んだ秀吉軍。その兵力はなんと15万。わずか3千の城兵を相手に何故かほどの大軍を擁するのか。その真意に気づいた城主九戸政実は、秀吉軍の謀略を逆手に取り罠をしかける。あとは雪深い冬を待つのみ――。跳梁する間者、飛び交う密書、疑心暗鬼、そして裏切り。戦国最後にして最大の謀略「奥州仕置き」を描く歴史長編。
  • ドッグ・メーカー―警視庁人事一課監察係 黒滝誠治―(新潮文庫)
    3.9
    黒滝誠治警部補、非合法な手段を辞さず、数々の事件を解決してきた元凄腕刑事。現在は人事一課に所属している。ひと月前、赤坂署の悪徳刑事を内偵中の同僚が何者かに殺害された。黒滝は、希代の“寝業師”白幡警務部長、美しくも苛烈なキャリア相馬美貴の命を受け、捜査を開始する。その行く手は修羅道へと繋がっていた。猛毒を以て巨悪を倒す。最も危険な監察が警察小説の新たな扉を開く。
  • 磁極反転の日(新潮文庫)
    4.3
    地球のN極とS極が反転し始めた。大規模地磁気嵐が発生し、東京上空にオーロラが出現。異様な寒冷化と降り注ぐ宇宙線に不安が広がる中、女性記者浅田柊の耳に奇妙な話が聞こえてくる。都内の病院から妊婦たちが次々と失踪しているというのだ……。謎の団体、脳科学の闇、不可解な妊婦の死。取材の果て、柊が突き止めた恐るべき真相とは。パニックSFの新たなる傑作。『磁極反転』改題。
  • 神様が降りてくる
    3.5
    1巻924円 (税込)
    「フィル・トムスをご存知ですね」収監された過去を持つ孤高の作家・榊の前に現れたのは、囚人仲間フィルの娘、里奈だった。親と子ほど年の離れた二人は強く惹かれ合い、フィルが残した謎を探るべく、共に沖縄へと向かう。そこで待ち受けていたのは、葬られた戦後沖縄の真実と、当時を生きた若者たちの哀しき物語だった。全身全霊を捧げた愛。壮絶な運命。白川ロマン、ここに極まる。
  • セラピスト
    4.1
    『絶対音感』『星新一』の著者が選んだ次なるテーマは、〈心の病〉だった――。河合隼雄の箱庭療法を試み、中井久夫から絵画療法を受け、自らもカウンセリングを学んだ。心の治療のあり方に迫り、セラピストとクライエントの関係性を読み解く。そして五年間の取材ののち、〈私〉の心もまた、病を抱えていることに気づき……。現代を生きるすべての人に響く、傑作ドキュメンタリー。文庫版特別書き下ろし「回復の先に道をつくる」を収録!
  • オイアウエ漂流記
    3.7
    1巻924円 (税込)
    南太平洋の上空で小型旅客機が遭難、流されたのは……無人島!? 生存者は出張中のサラリーマンと取引先の御曹司、成田離婚直前の新婚夫婦、ボケかけたお祖父ちゃんと孫の少年、そして身元不明な外国人。てんでバラバラな10人に共通しているのはただひとつ、「生きたい」という気持ちだけ。絶体絶命の中にこそ湧き上がる、人間のガッツとユーモアが漲った、サバイバル小説の大傑作!
  • 恋愛論
    3.8
    恋の猟人であった著者が、苦しい恋愛のさなかで書いた作品である。自らの豊富な体験にもとづいて、すべての恋愛を「情熱的恋愛」「趣味的恋愛」「肉体的恋愛」「虚栄恋愛」の四種類に分類し、恋の発生、男女における発生の違い、結晶作用、雷の一撃、羞恥心、嫉妬、闘争などのあらゆる様相をさまざまな興味ある挿話を加えて描きだし、各国、各時代の恋愛について語っている。
  • 複合汚染
    4.4
    工業廃液や合成洗剤で河川は汚濁し、化学肥料と除草剤で土壌は死に、有害物質は食物を通じて人体に蓄積され、生まれてくる子供たちまで蝕まれていく……。毒性物質の複合がもたらす汚染の実態は、現代科学をもってしても解明できない。おそるべき環境汚染を食い止めることは出来るのか? 小説家の直感と広汎な調査により、自然と生命の危機を訴え、世間を震撼させた衝撃の問題作!
  • 一週間
    4.2
    スパイMの奸計により逮捕され共産党から転向した小松修吉は、Mを追って満洲に渡り、終戦後、捕虜となる。昭和21年早春。ハバロフスクの日本新聞社に移送された修吉は、脱走に失敗した軍医の手記を書くよう命じられた。面談した軍医は、レーニンの裏切と革命の堕落を明かす手紙を彼に託した。修吉はこれを切り札にしてたった一人の反乱を始める……。著者の集大成。遺作にして最高傑作。
  • アメリカ彦蔵
    4.0
    嘉永三年、十三歳の彦太郎(のちの彦蔵)は船乗りとして初航海で破船漂流する。アメリカ船に救助された彦蔵らは、鎖国政策により帰国を阻まれ、やむなく渡米する。多くの米国人の知己を得た彦蔵は、洗礼を受け米国に帰化。そして遂に通訳として九年ぶりに故国に帰還し、日米外交の前線に立つ──。ひとりの船乗りの数奇な運命から、幕末期の日米二国を照らし出す歴史小説の金字塔。

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  • ドストエフスキイの生活
    3.8
    ペトラシェフスキイ事件連座、シベリヤ流謫、恋愛、結婚、賭博――不世出の文豪の魂に迫り、漂泊の人生を的確に捉えた不滅の労作。

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  • クォーター・ムーン
    3.3
    七年越しの恋人に別れを告げ、彼を忘れるための長い旅を経て故郷の大阪に戻ったさつき。新しい職場で、陽気な同僚たち、優しい女友だちとともに新しい生活を始め、二十五歳になるまでに何とか新たな人生の転機を迎えようとがんばるが……。親友の裏切り、仕事での失敗、昔の恋人の出現、憧れの一人暮らし、そして新しい恋―愛に惑い、仕事に悩む、すべての二十五歳に贈る応援歌。
  • 化生の海
    4.2
    加賀の海から水死体で発見された男。北海道・余市の自宅には、底に「卯」の字のある一体の古い素焼き人形が残されていた。事件から五年、かすかに残った男の足跡を辿る浅見光彦は、北九州・北陸・北海道を結ぶ長大なラインに行き当たる。それは江戸から明治期に栄華を極めた、北前船の航路と重なっていた。列島を縦断し歴史を遡る光彦の推理。ついに驚愕の真実が、日本海から姿を現す。
  • 背いて故郷
    3.3
    第六協洋丸、仮想敵国の領海に接近するためのスパイ船。柏木はその仕事を好まず、親友・成瀬に船長の座を譲った。だが成瀬は当直中に殺されてしまう。撮影済みのフィルムを奪われて。禁忌に触れてしまったとでもいうのか? 柏木は北の大地を餓狼の如き切実さで駆けめぐった。ただ真相に迫りたかったのだ。彼の前に立ちはだかるのは〈国家〉、そして――。日本推理作家協会賞受賞作。
  • 封印されていた文書―昭和・平成裏面史の光芒Part1―
    3.6
    ホテルニュージャパン火災と戦った消防隊の秘められたオペレーション、あさま山荘事件で封印されていた死闘の真実、そして三菱銀行「梅川事件」の鬼気迫る犯行内容―日本人を驚愕させたあの事件は、重大な事実が伏せられていた! トップ・シークレットを追って、衝撃的な文書や証言を引き出し、10大事件の全貌と真相に迫った傑作ドラマ。
  • 消費税 政と官との「十年戦争」
    -
    人気絶頂の自民党・小泉首相が封印した消費税増税は、なぜ10年の歳月を経て民主党・野田政権で法案成立にいたったか。リーマン・ショックや東日本大震災で火が消えかけながらも、執念深く実現を目指した政治家たちの姿。容赦ない権力闘争、虚々実々の駆け引き、そして死屍累々たる舞台裏の光景……歴史的改革の現場を綿密な取材によって描いた緊迫のインサイド・ドキュメント。 ※新潮文庫に掲載の写真は、電子版には収録しておりません。
  • 戊辰繚乱
    4.1
    激動の幕末。江戸で暮らす会津藩士の山浦鉄四郎は、質実剛健な会津士魂に馴染めず、天下国家を論じることもなく、ただ平穏な人生を望んでいた。そんなある日、家中の美しき薙刀の達人・中野竹子と出会う。互いを思いながらも、新撰組隊士となった鉄四郎は内乱の渦に呑まれていく。友が死に、自身が傷を負っても刀を振るうのは、竹子の元に生きて帰るため――。魂を震わす歴史長編。
  • レッドアローとスターハウス―もうひとつの戦後思想史―
    5.0
    「西武の天皇」と呼ばれた堤康次郎。東京西郊で精力的に鉄道事業を展開し、沿線には百貨店やスーパー、遊園地を建設。公営団地も集まり、「西武帝国」とでも呼ぶべき巨大な文化圏を成した。しかし堤本人の思想と逆行するように、団地は日本共産党の強力な票田となり、コミューン化した「赤い病院」さえ現れた。もうひとつの東京、もうひとつの政治空間でなにが起きていたのか――。※新潮文庫に掲載の写真の一部は、電子版には収録しておりません。
  • 大江健三郎 作家自身を語る
    4.8
    なぜ大江作品には翻訳詩が重要な役割を果たすのでしょう? 女性が主人公の未発表探偵小説は現存するのですか?──世紀を越え、つねに時代の先頭に立つ小説家が、創作秘話、東日本大震災と原発事故、同時代作家との友情と確執など、正確な聞き取りに定評のあるジャーナリストに一年をかけ語り尽くした、対話による「自伝」。最新小説『晩年様式集(イン・レイト・スタイル)』を巡るロング・インタヴューを増補。
  • さびしい王様
    3.9
    1巻913円 (税込)
    役にも立たない帝王学だけ教え込まれて育ち、恋も政治も知らぬ幼児のような王様ストンコロリーン28世。オッパイを見ては、「あ、オレンジ!」などと呟いていたおく手な彼が、私腹を肥やす悪辣な総理大臣への反感からおこった革命の渦中で、すこしずつ人間の喜怒哀楽に目ざめ、純真な恋を感じ始める…。ペーソスとナンセンスの横溢する、おとなとこどものための童話シリーズ第一作。

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  • いずこより
    5.0
    「出家遁世と放浪は、いまや私のもっとも深い憧れとなって、心をそそのかしてくる」(本文より) 明るくのびやかな少女期から、短い結婚生活を経て、家も子供も捨てて奔った激しい恋。やがて自立の道を求めて一途に文学に志し、いつしか出離の想いに促されるまで。自立する女の新しい生き方を自ら切り拓いてきた著者が、その波乱の半生を鋭い自己凝視で綴る自伝小説の傑作。
  • 白夜を旅する人々
    4.5
    昭和の初めの東北、青森――。呉服屋〈山勢〉の長女と三女は、ある重い運命を負って生まれついた。自らの身体を流れる血の宿命に脅えたか、心労の果てに新たな再生を求めたか、やがて、次女は津軽海峡に身を投げ、長男は家を出て姿を消した。そして長女もまた……。必死に生きようとして叶わず、滅んでいった著者自身の兄姉たちの足跡を鎮魂の思いでたどる長編小説。大佛次郎賞受賞作。
  • 犯意
    3.6
    些細な出来心だった。偶然と勢いが重なって、罪は増殖していく、雪玉が転がるように──。最初はとてもいい人だった。気を許し、好きになった頃から、おもむろにヤツは本性を現しはじめた──。普通の人が犯罪に手を染めてしまう瞬間。哀しくて、やりきれなくて、そして甘美でエキサイティング。弁護士の解説を各編に付す新しい形式の犯罪小説集。12の傑作ノワールが心を震わせる。
  • 遅れてきた青年
    3.7
    地方の一山村に生れ育ち、陛下の勇敢な兵士として死をえらびえた筈の、あの戦争に間に合うことが出来なかった一人の野心的な青年が、やがて都会に出て、外面的には社会的な成功を充分にかちえていながらも、その内面においては、限りない絶望感と失落感にさいなまれざるを得ない、言わば現代の「赤と黒」的な主題を中心に、戦後世代に共通する体験を描出する、半自叙伝的小説。
  • パットお嬢さん
    -
    美しい“銀の森”の女主人として、変化を嫌い、自然とその安らぎを保持しようと心をくだく娘、パット。すばらしいユーモアを持ち、話好きのジュディばあやと、頭の良い妹ピー子の三人、それに猫たちが、抒情と機知に満ちた、幸福な世界を繰り拡げる。七年もの婚約期間の末に結婚した作者が、晩婚だった自身の姿をパットの上に投影して、複雑な娘心への理解と同情をうかがわせる。

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  • 女であること
    4.0
    女人の理想像に近い弁護士夫人市子や、市子を同性愛のように慕いながら、各自の恋愛に心奥の業火を燃やす若い二人の女性を中心に、女であることのさまざまな行動や心理的葛藤を描いて女の妖しさ、女の哀しさをみごとにとらえた名作。ここには、女が女を知る恐怖、女の気づかぬ女の孤独と自負が、女の命のなまなましさと無常の美とをたたえながら冷酷に照らし出されている。

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  • 風雲海南記
    3.7
    四国西条藩主の家系でありながら双子の弟に生まれた英三郎は、七歳で浅草の寺に預けられる。英三郎は市井の浪人として成長するが、思いがけない偶然の重なりから、知らず知らずのうちに西条藩の御家騒動に巻き込まれる。その中で英三郎は己の出自を知り、騒動を操る藤巻右京と大老・酒井雅楽頭に闘いを挑んでゆく。戦時中に刊行され、戦後長く埋もれたままとなっていた幻の大作。

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  • 栄花物語
    3.9
    徳川中期、時の先覚者として政治改革を理想に、非難と悪罵の怒号のなか、頑なまでに己れの意志を貫き通す老中田沼意次――従来、賄賂政治の代名詞のような存在であった田沼親子は、商業資本の擡頭を見通した進取の政治家であったという、新しい視点から、絶望の淵にあって、孤独に耐え、改革を押し進めんとする不屈の人間像を、時流に翻弄される男女の諸相を通して描く歴史長編。

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  • 忍びの旗
    3.6
    戦乱の渦がいやおうなく忍びの世界をも巻きこんだ豊臣秀吉の治世――甲賀忍者・上田源五郎は、亡父の敵とは知らず、その娘を愛した。彼の運命を変えたのは、実にこの時であった。“忍びの生死は闇から闇へ消えるもの。だが俺は……”組織の非情の掟にそむき、執拗な追跡をうけつつも、人間の熱い血と忍者の苛酷な使命とを、見事に溶け合わせて生きぬいた男の流転の生涯。
  • 創作する遺伝子―僕の体の70%は映画でできている―(新潮文庫)
    NEW
    -
    人が水なしでは生きられぬように、彼は生きるために映画を摂取する。コジマプロダクション創立から10年。天才ゲームクリエイターが語り尽くす映画、本、そして旅。伝説のエッセイ集『僕の体の70%は映画でできている 小島秀夫を創った映画群』を中核に、2016年以降に発表された多岐にわたるジャンルの原稿を増補。この偏愛に触れれば、あなたもまた彼の文化的遺伝子(MEME(ミーム) )の継承者になる。
  • ほおずき、きゅっ―みとや・お瑛仕入帖―(新潮文庫)
    NEW
    -
    お瑛は真面目な夫、成次郎の変化に気づく。何か普段と違う。隠し事があるの? 不安な気持ちのまま、今日も店を開ける。いわくありげな品の謎を解き明かし、人と物、人と人を繋ぐのがみとやの商いだ。不思議な背負い籠、ほおずきの秘密、開けてはならない玉手箱。意外な展開で真相がわかった矢先、お瑛に異変が……。巧みな伏線を織り込みながら、家族の想いがしみじみとした涙を呼ぶ六篇。(解説・あわいゆき)
  • ガリンペイロ(新潮文庫)
    NEW
    -
    アマゾン川の最奥、地図上では原野が広がっているだけの無人地帯に「黄金の地」は存在する。荒くれ者の貧乏人が巣食う金鉱脈だ。この地は誰でも受け入れる。前科の有無は問われない。IDすら不要。ただし条件がある。金鉱山の場所を明かした者は殺される。黄金による人生の一発逆転を夢見て、男たちは泥に塗れ、穴を掘って掘って掘りまくる。ブラジルの最底辺を鮮やかに切り取る異形の記録。(解説・町田康)
  • 銀将の奇跡―覇王の譜2―(新潮文庫)
    4.3
    四冠を誇る絶対王者、北神仁。底辺から駆け上がった直江大はその牙城に挑む。剛力英明は旧友との新たな関係に踏み出し、トップ女流棋士の江籠紗香は奨励会で苦悩する。そのような中、“孤剣”の異名で知られる直江の師匠、師村柊一郎が棋風を変え、ファンをどよめかせた。師村もまた北神からタイトルを奪おうとしていた。文学賞二冠に輝く前作を凌駕する史上最強の将棋エンターテインメント。(解説・村上貴史)
  • 麦ふみクーツェ(新潮文庫)
    4.1
    音楽にとりつかれた祖父と、素数にとりつかれた父、とびぬけて大きなからだをもつぼくとの慎ましい三人暮らし。ある真夏の夜、ひとりぼっちで目覚めたぼくは、とん、たたん、とん、という不思議な音を聞く。麦ふみクーツェの、足音だった。――音楽家をめざす少年の身にふりかかる人生のでたらめな悲喜劇。悲しみのなか鳴り響く、圧倒的祝福の音楽。坪田譲治文学賞受賞の傑作長篇。(解説・栗田有起)
  • 君といた日の続き(新潮文庫)
    4.4
    長い雨の切れ間に女の子を拾った。「ここ、どこ?」ちぃ子と名乗るその少女はどうやら1980年代からタイムスリップしてきたらしい。ちぃ子はなぜ僕の前に現れたのか、はたして元の時代に戻れるのか、封印された記憶に隠された真相は。娘を亡くした父親と、両親のいない少女の、奇妙な「夏休み」がはじまる。すべての伏線が繋がったとき、時空を超えた愛の物語が浮かび上がる号泣必至ミステリー。(解説・大森望)
  • しろがねの葉(新潮文庫)
    4.3
    1巻880円 (税込)
    銀(しろがね)の光を見つけた者だけが、この地で生きられる――。父母と生き別れ、稀代の山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、石見(いわみ)銀山の坑道で働き始める。山に穿(うが)たれた深い闇に恐れと憧れを抱きながらも、そこに女の居場所はない。熱く慕う喜兵衛や、競うように育った隼人を羨むウメだったが、勢いを増すシルバーラッシュは男たちの躰(からだ)を蝕(むしば)んでゆく……。生きることの苦悩と官能を描く、直木賞受賞作。(解説・北方謙三)
  • デンデラ(新潮文庫)
    3.7
    斎藤カユは見知らぬ場所で目醒めた。姥捨ての風習に従い、雪深い『お山』から極楽浄土へ旅立つつもりだったのだが。そこはデンデラ。『村』に棄てられた五十人以上の女により、三十年の歳月をかけて秘かに作りあげられた共同体だった。やがて老婆たちは、猛り狂った巨大な雌羆との対決を迫られる――。生と死が絡み合い、螺旋を描く。あなたが未だ見たことのないアナザーワールド。(解説・法月綸太郎)
  • あの子とQ(新潮文庫)
    4.1
    人間の血を吸うなんて、ありえない――! 吸血鬼一族・嵐野家のひとり娘でありながら普通の高校生として暮らす弓子だったが、17歳の誕生日を間近に控えたある朝、得体の知れない物体に出くわす。その黒くてトゲトゲの「Q」は、弓子が人間の血を吸わずに17歳を迎えられるか、監視しに来たという……。とびきりキュートですこぶる愉快、けれど忘れられない切なさを残す、新時代の青春小説!
  • それでも僕は東大に合格したかった―偏差値35からの大逆転―(新潮文庫)
    4.3
    成績最下位でいじめられっ子で、将来に希望を抱けなかった「僕」に、担任が途轍もない提案をした。‘自分を変えたければ、東大を目指してみろ’と。その日から、初めての挑戦が始まった。高校3年で35だった偏差値は二浪して70、東大模試でもトップレベルに。そして合格発表までの8日間、これまで関わってきた人々と再会するなか、僕が気づいたこととは――。これは「僕」が経験した本当の話。(解説・渋谷牧人)
  • 家裁調査官・庵原かのん(新潮文庫)
    4.4
    少年少女たちは、なぜ罪を犯してしまったのか? その真の原因を探るのが「家裁調査官」である。福岡家裁北九州支部の調査官・庵原かのんは、自転車窃盗JKビジネス、バイク暴走、女性暴行など数多くの事件に直面していた。当事者である子どもたちの声に耳を傾けるうちに、彼女はそれぞれの事件の〝深い根〟に気が付き、そして……。心理描写の名手が満を持して放つ、待望の新シリーズ。 (解説・藤川洋子)
  • 花散る里の病棟(新潮文庫)
    4.5
    町医者こそが医師という職業の集大成なのだ――。大正時代、「虫医者」として頼りにされた初代。軍医として戦線を彷徨った二代目。地元で内科医院を開いた三代目。先端医療に取り組む外科医として、パンデミックに直面した四代目。時代の荒波を越え、地域に根ざし、つねに患者と共に戦い、涙し、喜ぶ開業医の心とは。病と命の現場に真摯に向き合う姿を抒情豊かに描きだして感動を呼ぶ百年の物語。(解説・佐野史郎)
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)
    4.1
    その眼で患者と病を見つめてきた医師にしか描けないことがある。新米研修医が気づいた真実。引きこもり患者を救うひと癖ある精神科医。無差別殺人犯への緊急手術。友の脳腫瘍に握る電気メス。深夜の出産に奔走する医療チーム――。彼らは考える。決断する。オペを行う。あなたの命を守るために。9名の医師作家が、知識と経験をもとに臨場感あふれる筆致で描く、空前の医学エンターテインメント集。(解説・吉田大助)
  • 日蓮(新潮文庫)
    3.0
    地震が起こる。疫病が蔓延する。命が無惨に失われる。何故だ。日本が悪法に染まってしまったからだ――。日蓮は法華経への帰依を説き、他宗派に敢然と挑む。それは権力者たる北条氏を敵とすることに等しかった。斬首の危機、佐渡への配流。苦難の中で、信じる法をひたすら世に広め続ける日蓮は、その信仰と情熱で人びとを救うことができるのか。歴史を動かした僧の半生を描く、感動巨編。(解説・末國善己)
  • ウナギが故郷に帰るとき(新潮文庫)
    -
    アリストテレスの時代から不思議な生態で人々を魅了してきたウナギ。彼らはどこから来てどこへ行くのか? 今なお謎に包まれるウナギの一生を解き明かしながら、謎に挑んだ古今の学者たちの苦闘、ウナギとともに生きる漁師の暮らしぶり、幼き日の父とのウナギ釣りの思い出までを縦横に語り、生きることの意味を静かに問う。スウェーデンで最も権威のある文学賞を受賞した世界的ベストセラー。(解説・池澤夏樹)
  • 地上に星座をつくる(新潮文庫)
    3.9
    エベレスト山頂を眺めながら、この瞬間は二度と経験できないんだと思った。泣きたいくらい苦しいのに、それでもまたこの空間に身を置きたいと感じた――。旅を続けるのは自分の身体で世界を知りたいから。ガンジスの河口でカレーを味わい、カナダの森で松の香りをかぎ、知床の山でヒグマの足音を聞く。未知の風景を求め、そこだけに輝く一瞬を、撮って、繋げた、かけがえのない7年の記録。 ※書籍版のモノクロ写真を、電子版ではカラーで収録しています。
  • 死神の棋譜(新潮文庫)
    3.7
    1巻880円 (税込)
    初夏、名人戦の最中に詰将棋の矢文が見つかった。その「不詰めの図式」を将棋会館に持ち込んだ元奨励会員・夏尾は消息を絶つ。同業者の天谷から22年前の失踪事件との奇妙な符合を告げられた将棋ライターの〈私〉は、かつての天谷のように謎を追い始めるが――。幻の「棋道会」、北海道の廃坑、地下神殿での因縁の対局。将棋に魅入られた者の渇望と息もつかせぬ展開が交錯する究極のミステリ!(解説・瀬川晶司、村上貴史)
  • 左京・遼太郎・安二郎 見果てぬ日本(新潮文庫)
    3.0
    「大破局」を描いた作家小松左京は、夢の大阪万博に何を見たのか。 モンゴルの草原に憧れた司馬遼太郎のロマンと、本質的悲劇とは。笠智衆を選んだ名匠小津安二郎。その静かなる戦いと、いつかくる「最後の五分」に込めた知られざる覚悟とは……。鮮やかな着眼で巨匠たちの思考を読み解きつつ、日本の過去・現在・未来を浮かび上がらせていく。この国の大きな断面を明らかにする画期的評論!(解説・先崎彰容)
  • 銀花の蔵(新潮文庫)
    4.2
    私は、この醤油蔵の当主になる! 大阪万博前夜。父の実家である奈良の由緒ある醤油蔵で暮らすことになった少女、銀花。蔵を切り盛りする祖母の多鶴子ら一家に馴染もうとするが、母の盗癖、祖母と父の不仲、自らの出生に関する真実に悩む。やがて成長し蔵を継ぐため奮闘する銀花は、一族の秘められた過去を知ることに――。家業に身を捧げ、新たな家族を築く女性の半生を力強く描く長編小説。(解説・大矢博子)
  • 写字室の旅/闇の中の男(新潮文庫)
    4.1
    奇妙な老人が奇妙な部屋にいる。彼は何者なのか、何をしているのか――。オースター作品に登場した人物が次々と現れる「写字室の旅」。ある男が目を覚ますとそこは9・11が起きなかった21世紀のアメリカ。代わりにアメリカ本土では内戦が起きている。闇の中から現れる物語が伝える真実。年間ベスト・ブックと絶賛された「闇の中の男」。傑作中編二作を合本。ここに新たな物語空間が立ち上がる。
  • スクイズ・プレー(新潮文庫)
    4.0
    私立探偵マックスが受けた依頼は、元大リーガー、チャップマンからのものだった。キャリアの絶頂時に交通事故で片脚を失い、今は議員候補となった彼に脅迫状が送られてきたのだ。殺意を匂わせる文面から、かつての事故にまで疑いを抱いたマックスは、いつしか底知れぬ人間関係の深淵へ足を踏み入れることになる……。ポール・オースター幻のデビュー作にして正統派ハードボイルド小説の逸品。
  • 二人のクラウゼヴィッツ(新潮文庫)
    4.0
    ナポレオン戦争も終結し、士官学校校長となったクラウゼヴィッツ。取り組んだのは『戦争論』の執筆だった。宮廷女官長を務めた聡明な妻マリーに、六つの戦場を語っていく――。見えてくる戦争の変貌と軍事の要諦。国民皆兵制か傭兵か、制限戦争か絶対戦争か……。戦争について問い続けた夫と、理解者だった妻。二人で成し遂げた〈名著誕生〉の舞台裏を描く画期的小説。『フラウの戦争論』改題。(解説・佐藤賢一 )
  • 石川啄木(新潮文庫)
    4.0
    僧侶の「私生児」として生まれたのち、文学と恋愛に心を奪われて中学を中退。北海道を彷徨う漂泊の日々。転職につぐ転職。友から借銭して娼婦と遊んで妻を苦しめ、放蕩の限りを尽くしたかと思えば社会主義に傾倒する――。貧しさに喘ぎつつ、引き裂かれるほどの烈しい精神を歌に刻印した劇的な生涯。膨大な資料をもとに、感傷的な歌を残した夭折詩人というイメージを覆す生彩豊かな傑作評伝。(解説・平野啓一郎)
  • 黄泉から来た女(新潮文庫)
    3.0
    山形県鶴岡市で発見された身元不明の白骨死体。即身仏が眠る出羽三山と名勝・天橋立で起きた殺人事件を繋ぐ因縁の糸。母と娘、現在と過去、優しい嘘と許されざる真実――。封印されていた秘密が「アマテラスの子」神代静香と浅見光彦を「黄泉の国」へと招き寄せる。そして「もうひとりの光彦」によって、浅見家の名前の由来も明らかに。大好評シリーズ通算第111作、待望の文庫化!
  • 限界病院(新潮文庫)
    -
    北海道富産別市立バトラー病院は過疎化とともに経営が悪化し、市財政のお荷物と化していた。市長一派は民間譲渡も視野に入れた改革に手を付ける。医師・看護師の減給を決行し、赤字のままの予算案を市議会に提出。医師を供給してきた北斗医大はその無策に激しく反発する。東京からやってきた外科医城戸健太朗は新院長大迫佳彦と女医吉川まゆみとともに病院改革に乗り出していくのだが……。(解説・東えりか)
  • からくり写楽―蔦屋重三郎、最後の賭け―(新潮文庫)
    3.5
    1巻880円 (税込)
    謎の絵師を、さらなる謎で包んでしまえ――。前代未聞の密談から、「写楽」売出しの大仕掛けは始まった……。一ツ、正体は決して知られてはならない。二ツ、噂を流し影武者を作れ。三ツ、御公儀に一泡吹かせるべし。江戸っ子の意地を賭け、蔦屋重三郎が動く。かくして「写楽」はデビューした。だが感づいた者がいた。危機一髪の尾行、想定外の事態、「写楽」はどうなる……。痛快時代小説。(解説・細谷正充)
  • ねじまき鳥クロニクル―第1部 泥棒かささぎ編―(新潮文庫)
    完結
    4.0
    全3巻880~1,155円 (税込)
    「人が死ぬのって、素敵よね」彼女は僕のすぐ耳もとでしゃべっていたので、その言葉はあたたかい湿った息と一緒に僕の体内にそっともぐりこんできた。「どうして?」と僕は訊いた。娘はまるで封をするように僕の唇の上に指を一本置いた。「質問はしないで」と彼女は言った。「それから目も開けないでね。わかった?」僕は彼女の声と同じくらい小さくうなずいた。(本文より)
  • 小澤征爾さんと、音楽について話をする(新潮文庫)
    4.2
    「良き音楽」は愛と同じように、いくらたくさんあっても、多すぎるということはない――。グレン・グールド、バーンスタイン、カラヤンなど小澤征爾が巨匠たちと過ごした歳月、ベートーヴェン、ブラームス、マーラーの音楽……。マエストロと小説家はともにレコードを聴き、深い共感の中で、対話を続けた。心の響きと創造の魂に触れる、一年間にわたったロング・インタビュー。
  • 花になるらん―明治おんな繁盛記―(新潮文庫)
    4.0
    皆が信用する、そんな逸品だけを揃えましょう――智恵も回るし手も早い、京の呉服商「高倉屋」の御寮人(ごりょん)さん・みやびが目指したのは、皇室御用達の百貨店になること、そして世界を相手に日本の工芸美術の素晴らしさを知らしめることだった。女だてらにのれんを背負い、幕末から明治を生き抜いて、皇室御用達百貨店「高倉屋」の繁栄の礎を築いた、破天荒な女主人の波瀾の人生を描く一代記。(解説・久坂部羊)
  • 宮沢賢治の真実―修羅を生きた詩人―(新潮文庫)
    4.7
    猥、嘲、凶、呪……不穏な文字が並ぶ詩と出会い、著者は賢治の本心を探り始めた。信心深く自然を愛した自身をなぜ「けだもの」と呼んだのか。醜聞にまみれ病床でも自己内省を続けた妹の姿に何を思ったのか。名作『銀河鉄道の夜』の中にどんな欲望を秘めていたのか。緻密かつ周到な取材による謎解きの果て、修羅と化した賢治の“真実”に辿りつく。執念が実った圧倒的ノンフィクション!(解説・首藤淳哉)
  • 消えた警官(新潮文庫)
    3.5
    小幡弘海巡査部長は、二年前に忽然と姿を消した。生活安全課に異動した矢先のことだ。綾瀬署に所属する、柴崎令司警務課長代理、上河内博人警部、高野朋美巡査の三人は、小幡についての捜査を始める。ひき逃げ。老女の不審死。女子高生絞殺。足と頭脳で難事件を解決しながら、三人は底知れぬ謎へと迫ってゆく。警視庁が放棄した失踪事件に果てはあるのか。あなたの胸を貫く本格警察小説。
  • カンパニー(新潮文庫)
    3.8
    あなたって、どこでも傍観者なのね。家を出た妻にそう告げられ、47歳の会社員・青柳誠一は呆然と佇む。そして災厄は会社でも――。窓際部署に異動か、社が後援するバレエ団への出向、どちらかを選べと迫られた青柳は「白鳥の湖」公演の成功を目指すことに。スポーツトレーナーの瀬川由衣や天才バレエダンサー・高野悠らと共に突き進むが、次々と困難が……! 読めば力湧く崖っぷちお仕事小説。(解説・藤田香織)
  • 全世界史 上巻(新潮文庫)
    4.0
    1~2巻880~935円 (税込)
    複雑きわまる世界史も、たったひとつの歴史=全世界史として読めばもっとわかる、もっと面白い。歴史書一万冊を読んできた著者ならではの切り口で文字の誕生から混迷の現代までを縦横無尽に語る。古代オリエントからローマ、中国、イスラム、モンゴルの歴史がひとつに融合することで日本史の見え方も一新する。現代社会を見る目が変わる、世界史教科書の新・定番。『「全世界史」講義I』改題。
  • 螺旋の手術室(新潮文庫)
    4.1
    純正会医科大学附属病院の教授選の候補だった冴木真也准教授が、手術中に不可解な死を遂げた。彼と教授の座を争っていた医師もまた、暴漢に襲われ殺害される。二つの死の繋がりとは。大学を探っていた探偵が遺した謎の言葉の意味は。父・真也の死に疑問を感じた裕也は、同じ医師として調査を始めるが……。「完全犯罪」に潜む医師の苦悩を描く、慟哭の医療ミステリー。『ブラッドライン』改題。
  • ツナグ(新潮文庫)
    4.3
    一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員……ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。
  • イノセント・デイズ(新潮文庫)
    4.3
    田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は……筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。
  • 愛のむこう側
    5.0
    1950年夏、11年ぶりにパリを訪れた紀川紗良の胸裏に、青春の日々がよみがえってきた――16歳での結婚と離婚。その傷心を束の間のフランス留学に癒して美しい娘時代をとりもどし、新しい友情と恋が芽ばえてくる。明日のない激しい恋愛。そして戦争に、恋人を夫を奪われたこの一人のブルジョワ娘が、やがて自由と平和に目覚め《自立した女》に成長するまで。自伝的長編小説。
  • 遥かなインパール
    4.0
    太平洋戦争末期、劣勢の戦局を挽回すべく、ビルマから東インド・インパールへの侵攻作戦が強行された。多くの人命の損失を招き、日本陸軍史上有数の悲惨な戦いとなったインパール作戦を枠組みに、主力部隊・祭兵団歩兵第六十連隊の行動に焦点をしぼって、その軌跡を忠実にたどる。風化してゆく戦争の現実と、激戦地におかれた兵士たちの人間的真実を描きとどめた入魂の戦場小説。
  • 3652―伊坂幸太郎エッセイ集―
    3.7
    エッセイが得意ではありません――。自らはそう語る伊坂幸太郎がデビュー以来ぽつぽつと発表した106編のエッセイ。愛する小説、映画、音楽のこと。これまた苦手なスピーチのこと。憧れのヒーローのこと。趣味を語る中にも脈々と流れる伊坂的思考と、日常を鮮やかに切り取る文体。15年間の軌跡を辿った、初のエッセイ集。裏話満載のインタビュー脚注に加え、幻の掌編2編を収録。
  • 馬上少年過ぐ
    3.9
    戦国の争乱期に遅れて僻遠の地に生まれたが故に、奥羽の梟雄としての位置にとどまらざるをえなかった伊達政宗の生涯を描いた『馬上少年過ぐ』。英国水兵殺害事件にまきこまれた海援隊士の処置をめぐって、あわただしい動きを示す坂本竜馬、幕閣、英国公使らを通して、幕末の時代像の一断面を浮彫りにした『慶応長崎事件』。ほかに『英雄児』『喧嘩草雲』『重庵の転々』など全7編を収録する。
  • 峠(上)

    4.1
    幕末、雪深い越後長岡藩から一人の藩士が江戸に出府した。藩の持て余し者でもあったこの男、河井継之助は、いくつかの塾に学びながら、詩文、洋学など単なる知識を得るための勉学は一切せず、歴史や世界の動きなど、ものごとの原理を知ろうと努めるのであった。さらに、江戸の学問にあきたらなくなった河井は、備中松山の藩財政を立て直した山田方谷のもとへ留学するため旅に出る。
  • 花神(上)
    4.2
    周防の村医から一転して討幕軍の総司令官となり、維新の渦中で非業の死をとげたわが国近代兵制の創始者大村益次郎の波瀾の生涯を描く長編。動乱への胎動をはじめた時世をよそに、緒方洪庵の適塾で蘭学の修養を積んでいた村田蔵六(のちの大村益次郎)は、時代の求めるままに蘭学の才能を買われ、宇和島藩から幕府、そして郷里の長州藩へととりたてられ、歴史の激流にのめりこんでゆく。
  • 楽園のカンヴァス
    4.6
    ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。山本周五郎賞受賞作。
  • 項羽と劉邦(上)
    4.2
    紀元前3世紀末、秦の始皇帝は中国史上初の統一帝国を創出し戦国時代に終止符をうった。しかし彼の死後、秦の統制力は弱まり、陳勝・呉広の一揆がおこると、天下は再び大乱の時代に入る。――これは、沛のごろつき上がりの劉邦が、楚の猛将・項羽と天下を争って、百敗しつつもついに楚を破り漢帝国を樹立するまでをとおし、天下を制する“人望”とは何かをきわめつくした物語である。
  • 夜のピクニック
    4.4
    1巻880円 (税込)
    高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。
  • 国盗り物語(一)
    4.3
    世は戦国の初頭。松波庄九郎は妙覚寺で「知恵第一の法蓮房」と呼ばれたが、発心して還俗した。京の油商奈良屋の莫大な身代を乗っ取り、精力的かつ緻密な踏査によって、美濃ノ国を〈国盗り〉の拠点と定めた! 戦国の革命児斎藤道三が、一介の牢人から美濃国守土岐頼芸の腹心として寵遇されるまでの若き日の策謀と活躍を、独自の史観と人間洞察によって描いた壮大な歴史物語の緒編。
  • 閉鎖病棟
    4.1
    とある精神科病棟。重い過去を引きずり、家族や世間から疎まれ遠ざけられながらも、明るく生きようとする患者たち。その日常を破ったのは、ある殺人事件だった……。彼を犯行へと駆り立てたものは何か? その理由を知る者たちは――。現役精神科医の作者が、病院の内部を患者の視点から描く。淡々としつつ優しさに溢れる語り口、感涙を誘う結末が絶賛を浴びた。山本周五郎賞受賞作。
  • 忍ぶ川
    4.1
    兄姉は自殺・失踪し、暗い血の流れにおののきながらも、強いてたくましく生き抜こうとする大学生の“私”が、小料理屋につとめる哀しい宿命の娘・志乃にめぐり遭い、いたましい過去をいたわりあって結ばれる純愛の譜『忍ぶ川』。読むたびに心の中を清冽な水が流れるような甘美な流露感をたたえた芥川賞受賞作である。他に続編ともいうべき『初夜』『帰郷』『團欒』など6編を収める。
  • 黒い雨
    4.2
    一瞬の閃光に街は焼けくずれ、放射能の雨のなかを人々はさまよい歩く。原爆の広島――罪なき市民が負わねばならなかった未曾有の惨事を直視し、“黒い雨”にうたれただけで原爆病に蝕まれてゆく姪との忍苦と不安の日常を、無言のいたわりで包みながら、悲劇の実相を人間性の問題として鮮やかに描く。被爆という世紀の体験を、日常の暮らしの中に文学として定着させた記念碑的名作。野間文芸賞受賞。
  • きみの友だち
    4.5
    1巻880円 (税込)
    わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる――。足の不自由な恵美ちゃんと病気がちな由香ちゃんは、ある事件がきっかけでクラスのだれとも付き合わなくなった。学校の人気者、ブンちゃんは、デキる転校生、モトくんのことが何となく面白くない……。優等生にひねた奴。弱虫に八方美人。それぞれの物語がちりばめられた、「友だち」のほんとうの意味をさがす連作長編。
  • ポーツマスの旗
    4.4
    1巻880円 (税込)
    日本の命運を賭けた日露戦争。旅順攻略、日本海海戦の勝利に沸く国民の期待を肩に、外相・小村寿太郎は全権として、ポーツマス講和会議に臨んだ。ロシア側との緊迫した駆け引きの末の劇的な講和成立。しかし、樺太北部と賠償金の放棄は国民の憤激を呼び、大暴動へと発展する――。近代日本の分水嶺・日露戦争に光をあて交渉妥結に生命を燃焼させた小村寿太郎の姿を浮き彫りにする力作。

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  • 張込み―傑作短編集(五)―
    4.1
    推理小説の第1集。殺人犯を張込み中の刑事の眼に映った平凡な主婦の秘められた過去と、刑事の主婦に対する思いやりを描いて、著者の推理小説の出発点と目される「張込み」。判決が確定した者に対しては、後に不利な事実が出ても裁判のやり直しはしない“一事不再理”という刑法の条文にヒントを得た「一年半待て」。ほかに「声」「鬼畜」「カルネアデスの舟板」など、全8編を収録する。

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  • 或る「小倉日記」伝―傑作短編集(一)―
    4.2
    身体が不自由で孤独な一青年が、小倉在住期の鴎外を追究する芥川賞受賞作『或る「小倉日記」伝』。旧石器時代の人骨を発見し、その研究に生涯をかけた中学教師が、業績を横取りされる『石の骨』。功なり名とげた大学教授が悪女にひっかかり学界から顛落する『笛壺』。他に9篇を収める。

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  • 本当に生きた日
    3.4
    二児の母で、三十八歳になる素子は、平凡な専業主婦だった。だが、大学講師でメディアにも進出しているやり手の友人・ルミに強引に誘われ、彼女の事務所を手伝うことになった。様々な出来事に翻弄されながらも、次第に仕事への意欲を覚える素子。しかし、一方で平穏な家庭に影響が出始め……。本格化した女性の社会進出を背景に、女性にとって仕事とは何か、人生の充実とは何かを描く。

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  • 死海のほとり
    4.1
    戦時下の弾圧の中で信仰につまずき、キリストを棄てようとした小説家の「私」。エルサレムを訪れた「私」は大学時代の友人戸田に会う。聖書学者の戸田は妻と別れ、イスラエルに渡り、いまは国連の仕事で食いつないでいる。戸田に案内された「私」は、真実のイエスを求め、死海のほとりにその足跡を追う。そこで「私」が見出し得たイエスの姿は? 愛と信仰の原点を探る長編。
  • 時間の習俗
    3.5
    神奈川県の相模湖畔で交通関係の業界紙の社長が殺された。関係者の一人だが容疑者としては一番無色なタクシー会社の専務は、殺害の数時間後、遠く九州の和布刈(めかり)神社で行われた新年の神事を見物し、カメラに収めていたという完璧すぎるアリバイに不審を持たれる――『点と線』の名コンビ三原警部補と鳥飼老刑事が試行錯誤を繰返しながら巧妙なトリックを解明してゆく本格推理長編。
  • 明和絵暦
    -
    尊皇学者・山県大弐の影響をうけ、藩の進むべき道をめぐって対立を深める小幡藩の青年藩士たち。そして兄と許嫁とが敵味方に分かれることになった時、八千緒は……。大弐と苦難をともにする若者たちをとおし生涯のテーマ〈人間の真価は何を為したかではなくて、何を為そうとしたかだ〉を追究。若き周五郎が娯楽小説作家としても第一級の腕前であることを証する二作目の新聞小説。

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  • 宇宙のあいさつ
    3.9
    1巻880円 (税込)
    植民地獲得のために地球から派遣されてきた宇宙船はすてきな惑星を占領することができた。温和な気候、豊富な食料、従順な住民たち、200歳の平均寿命――疲れた地球人のための保養地として申し分なかった。しかし、喜びもつかの間、おそるべき事実が……無気味なイロニーのあふれる表題作など、奔放なアイデアと洒脱なエスプリでスマートに描くショート・ショートの傑作35編。
  • 食卓の情景
    4.2
    いちばん好きなものは? と問われたら、鮨と答える、にぎっている時の主の眼の輝きがすばらしい。少年時代、どんどん焼屋に弟子入りしようとして〔鳥の巣焼〕という珍品を発明する。松阪牛が丹精こめられた処女なら、伊賀牛はあぶらの乗りきった年増女、これをバター焼、ついですき焼と賞味する。おいしい食べ物に託して人生観を語る無類のエッセー。著者自筆のカット7点挿入。
  • 真田太平記(一)天魔の夏
    4.2
    天正10年(1582年)3月、織田・徳川連合軍によって戦国随一の精強さを誇った武田軍団が滅ぼされ、宿将真田昌幸は上・信二州に孤立、試練の時を迎えたところからこの長い物語は始まる。武勇と知謀に長けた昌幸は、天下の帰趨を探るべく手飼いの真田忍びたちを四方に飛ばせ、新しい時代の主・織田信長にいったんは臣従するのだが、その夏、またも驚天動地の時代が待ちうけていた。全12冊。

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  • 夏草冬濤(上)
    4.2
    1~2巻880~935円 (税込)
    伊豆湯ヶ島の小学校を終えた洪作は、ひとり三島の伯母の家に下宿して沼津の中学に通うことになった。やがて上級の不良がかった文学グループと交わるようになり、彼らの知恵や才気、放埓な行動に惹かれていく――。

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  • 山本五十六(上)
    4.0
    1~2巻880~935円 (税込)
    戦争に反対しながら、自ら対米戦争の火蓋を切らねばならなかった聯合艦隊司令官山本五十六。今日なお人々の胸中に鮮烈な印象をとどめる、日本海軍史上最大の提督の赤裸々な人間像を余すところなく描いた著者畢生の力作。本書は、初版刊行後、更に調査し、発見した未公開資料に基づき加筆された新版である。上巻では、ロンドン軍縮会議での活躍を中心に、若き日の山本像が描かれる。
  • 向日葵の咲かない夏
    3.6
    夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。
  • オーデュボンの祈り
    4.1
    コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか? 伊坂幸太郎、伝説のデビュー作見参!

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