ネタバレ
Posted by ブクログ
2022年01月03日
ナタリーというこの作品では登場しない人間喜劇の人物に向けてフェリックスという男性が自分の半生を綴る物語。
前3分の2のフェリックスが恋した人妻アンリエットとの仲良くなる過程は冗長に感じられたものの風景描写や感情の揺れ動きが丁寧に描かれ綺麗でそれを楽しむ作家かと勘違いしていた。後ろ3分の1になって...続きを読むようやく主人公のクズさが分かり恋敵のダドレー夫人が登場し物語が動いた時になって、この作者の会話の巧妙さを知った。ダドレー夫人との一件以降はアンリエットに対して言い訳ばかりする主人公がおり、そのことや後に続く死に対してのことを見るに、結局この主人公は寄宿舎時代やアンリエットに不意にキスしたときから根本的には何も変わっておらずマドレーヌやナタリーが言うように自分のことばかりで成長していなかったということが最後には分かった。アンリエットとの約束もついには守られなかったし。最後まで快く思っていなかったモルソフと最終的には主人公が同じ構造だと分かったところも面白かった。
アンリエットの死の描写は言い方はあれだがとても繊細で衝撃を受けた。思うにこれはフェリックスの物語ではなくアンリエットの物語だった。ただ前3分の2が本当に長く何度も挫折しそうになった。読むのに十ヶ月ほど用し再び読み返そうとはもう思わない。最後の最後まで読むまでは星3だと思っていたが、意味は理解できたので四捨五入したら4になるくらいの点数だと思う。