あらすじ
充たされない結婚生活を送るモルソフ伯爵夫人の心に忍びこむ純真な青年フェリックスの存在。彼女は凄じい内心の葛藤に悩むが……。
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Posted by ブクログ
ドストルストイの御二大作品は
キリスト教及び欧州歴史が成す知識を前提としているかんじで
現在日本でのほほんとしている身には
板書している言語はしれても
その説明するところが皆目見当つかない心地だが
同じ人間喜劇でもこちらは修辞が比較わかりやすい気がする
訳者の手腕が並外れているだけかもしれないけれども
日本語ででも音読したくなるような素敵な文
恋愛とその周囲の夫婦や家族や宗教を題材にして
人間とその関係を描いている作品は
「教養」や「青春」というような「小説」の分類は
小説(登場人物と筋書きの結構)だけが
文による表現ではないことを思い出させてくれる
詩歌による表現はおそらく「知識という前提」がないのでわかりづらいのであり
ならば多彩な修辞であればわかりやすいのでもないのだ
彫り削ぎ落として本質を得ることもまた表現の手段であるなら
そのとき足元に散らばる削り屑も見えていないのでなくそこにあるのだ
Posted by ブクログ
美しい文章で、プラトニックだが狂わしい恋愛が語られる。
情景、心情描写がとにかく美しく、バルザックの原文は勿論、日本語訳としての完成度も高いと思われる。(原文で読んでいないので、なんとも言えないけど、、)
時代背景やフランスの小説であるので、現代の恋愛とはかけ離れた価値観(男女観、キリスト教的バックグラウンド)があったり、フランス人女性への盲目的な賛美があるきらいもあるけど、内容、読後感は素晴らしいので、是非読んでおくべき一冊。
自分の置かれた状況に限らず、周りの人へ優しさを振り撒く美しい生き方をしていきたい、という考え方を持つ契機になり得る。
最後に、個人的に特に印象に残った一節を紹介。
「たしかに私はしばしばつまずきました。でも一度たりとも地にたおれたことはございません。」
Posted by ブクログ
ナタリー非常に正しい
このヴァンドネス君は自分の身をとくと省みるのがよろしい
度を超えた我慢は禁欲は身を滅ぼす
モルソフ夫人。。。
残念だ。。。
気持ち次第で人生は良いものにも悪いものにも変えられようと思う、難しいけれど。
Posted by ブクログ
バルザック著、谷間の百合。とにかく文章が美しい。プラトニックさも相まってまさに流麗な文体で谷間の百合たる夫人との会話、心理劇が展開される。実際にフランスの田舎はとにかく美しいので、地図や写真をみながら登場人物たちを想像することができる。
細かい描写にも思いを誘うところがあるのでしばらくしたら再読したい一冊。
Posted by ブクログ
純真な青年が貞淑な伯爵夫人に魅了され近づくが……。恋愛感情の機微と葛藤を描いた『人間喜劇』に連なる傑作。
うーむ、これはツラい。伯爵夫人の捧げ尽くす愛は美しいが、非常にもどかしくもある。男性側としては、主人公を責められないのだが。二十歳そこそこの男子の性的衝動を軽く考えられてもな〜。後に明かされる夫人の本心を考えると、アンリエットとしての身勝手さ、モルソフ伯爵夫人としての貞淑さで二つに割れている彼女の心も悲劇の要因なわけで。マドレーヌさん、カンベンしてくださいよ……。
しかし、ケチョンケチョンにこき下ろすナタリーの返事は、感傷に対する客観として、いっぱしの紳士となっているはずのフェリックスにはいい薬かも。男女の視点の違いが浮き彫りになる指摘など、皮肉的なラストではあるがどこかコミカルにもみえる。
Posted by ブクログ
「人生の門出」が読み進めるのに苦労したので
どうかと思ったけど「谷間の百合」はとても読みやすかった。
文体が(とてもとてもとても長い)手紙だったからだろう。
話の筋は単純だけど(ごめんねバルザック…自伝的要素もあるのに)
流麗華麗綺麗な文章がこれでもかと畳みかける。
でも「ああなんて重い愛情…」と思いつつ最後に
「…ですよねー。」とうなずいてしまった。
女性からするとナタリー嬢による主人公への手紙のお返事は至極当然。
こんな手紙を書いてあげるなんてナタリーはとても優しい。
Posted by ブクログ
モルソフ夫人が死んだ後、マドレーヌに対して話すときの自己憐憫がしつこくてちょっと苛々しました。
文章は全体的に綺麗な比喩が多くてとても綺麗な文章で、描写のこういう濃さとても好みです。
Posted by ブクログ
ゴリオ爺さんのような滑稽な人間描写が主かと思ったバルザック作品だったが、本作は実に情緒的な恋愛の姿が描かれている。文描写の圧倒的な実力も流石だなという印象。
古典的でベタな物語でもこれだけの質感に導きく実力は物凄い。本作が傑作と云われる所以とバルザックの本質的な実力がよくわかる。
Posted by ブクログ
主人公フェリックスは人妻モルソフ夫人に恋をしてしまう。ただ、相手は夫にも家庭にも何も不満を持っていない素晴らしい女性。いくらフェリックスが愛の言葉を伝えようとも、常に年上の人妻女性として彼と対応し、彼の母親であるかのように接してくる。というかフェリックスに恋しないように自分に言い聞かせているようである。
フェリックスの一途な恋はすごいが、それを毎回ひらりとかわさなければならない夫人の苦労を考えると、ただ自分の本能に従って人妻に言い寄るフェリックスにイライラさえしてくる。
最後の夫人の手紙が非常に良い。正直、読者なら気づいていたであろう夫人の本当の気持ちが美しい文体で表現されている。
Posted by ブクログ
ナタリーというこの作品では登場しない人間喜劇の人物に向けてフェリックスという男性が自分の半生を綴る物語。
前3分の2のフェリックスが恋した人妻アンリエットとの仲良くなる過程は冗長に感じられたものの風景描写や感情の揺れ動きが丁寧に描かれ綺麗でそれを楽しむ作家かと勘違いしていた。後ろ3分の1になってようやく主人公のクズさが分かり恋敵のダドレー夫人が登場し物語が動いた時になって、この作者の会話の巧妙さを知った。ダドレー夫人との一件以降はアンリエットに対して言い訳ばかりする主人公がおり、そのことや後に続く死に対してのことを見るに、結局この主人公は寄宿舎時代やアンリエットに不意にキスしたときから根本的には何も変わっておらずマドレーヌやナタリーが言うように自分のことばかりで成長していなかったということが最後には分かった。アンリエットとの約束もついには守られなかったし。最後まで快く思っていなかったモルソフと最終的には主人公が同じ構造だと分かったところも面白かった。
アンリエットの死の描写は言い方はあれだがとても繊細で衝撃を受けた。思うにこれはフェリックスの物語ではなくアンリエットの物語だった。ただ前3分の2が本当に長く何度も挫折しそうになった。読むのに十ヶ月ほど用し再び読み返そうとはもう思わない。最後の最後まで読むまでは星3だと思っていたが、意味は理解できたので四捨五入したら4になるくらいの点数だと思う。
Posted by ブクログ
アンリエットからフェリックスに宛てた最後の手紙、これを読むまでは、なぜアンリエットが悲しみのために死ななければならないのか、理解できなかった。自らプラトニックで肉親的な愛を求めておきながら、フェリックスの恋愛にショックを受けるいわれがないように思えたから。
しかし死後に読んでくれと手渡した手紙により、アンリエットの心理も理解できた。
原文を読めないのでなんとも言えないが、非常に緻密で練られた文章であることが、優れた翻訳からも伝わってくる。
(2016.3)
Posted by ブクログ
高校三年生の夏の読書感想文で読ませられました。
私にはまったく理解不可能な世界でした。
主人公たちは恋に恋している模様。
結局あんたら何したいわけ?とツッコミながら読んでおりました。
500ページも読ませた揚句、あの結末はないよな、と思いました。
痛快と言えば痛快なのですが、そこまでのくだりが長い……。
比喩表現の勉強になるのかな……?と、苦痛を伴う抒情的文章(笑)
読むの、疲れました。
むしろ消化不良の感。
「こんな図書推薦しやがってふざけんな」という思いを胸に秘めつつ、6000字の小論文を書きました。
屁理屈でもこねないと、この物語は楽しめない。
この作品自体では楽しめない。
でも妙に惹かれる作品でもある。
Posted by ブクログ
高校の頃、一度読みました。
最近は外国文学はあまり読まないのですが、急に思い立って購入。
折り重なる言葉のひだの多さに圧倒される。
最近読んでいた本とのあまりの違いに、同じ文章でこんなにも違うものかと。
登場人物の手紙の長いことと言ったら・・・作者はフランス革命時代の人ですが、その時代には、教養ある人々は、こんな長い手紙を書いていたんでしょうか?
人物の、揺れる心理描写もすごい。
でも、これ、覚えある。
日本文学にもある。
それは源氏物語。
特に、宇治十帖と・・・
自分でも認めたくない嫉妬で弱って死んでいく紫の上、かな。
男女の機微に洋の東西はないのかもしれない。
Posted by ブクログ
美しい翻訳は、充分たのしめる。
内容は究極のマゾヒスト同士のストイックな恋愛に
サディストガ乱入し、常人が退却宣言をするという物語。
それぞれの心の逡巡がこれでもかと語られ、手紙に綴られ、ある意味自己主張のぶつけ合い試合の様相。
こんなにくねくねものを考えられるのかと感心してしまった。
古今の名作は、膨大な言葉を作家が使い倒して産まれると言うわけだ。
言葉好きには欲求に答えてくれる。
読み応えとはこのことと感じられる。
バルザック、初めて読んだけれど
まさにフランス人。
昔の翻訳もなかなか。
Posted by ブクログ
第一部は主人公とヒロイン(モルソフ夫人)の淡い恋愛関係が続く。しかし、一変して第二部では主人公が彼女の傍を離れ、第三部ではヒロインが死に至り、登場人物たちがこぞって主人公を冷笑する。
訳者あとがきによると「谷間の百合」はバルザックの自伝的要素を含む小説らしい。そして、比較的早い時期に完成していたと思われるが、出版まで時間の間隔があったとか。
思うに、第一部は若い時に書かれていて、それを年数経ってバルザックが読み返し、自分の分身である主人公に辟易して第二部以降を付け加えたのでは。(夜中に書いたラブレターに後悔するみたいに。)
個人的に最後のナタリーの手記は不要と思う。終盤の主人公はたしかに女性に理想像を押し付け、そのわりに自分からは行動しないというつまらない人間に成り下がっているし、それを一刀両断する手記にスッキリしたのも事実。でも、第一部の主人公とヒロインの淡い真綿につつまれたような関係や、一貫して守り通されたヒロインの悲しい一途さにまで、良くない後味を残してしまう。
裏表紙のあらすじでは宗教的永遠を描くと書かれていたけれど、話の展開や主人公らの心変わりと言い、むしろ不変なものはないと思えてしまった。
作品を一貫して、モルソフ夫人の主人公への言付けは素敵だった。でも一番好きなのは、主人公の心変わりに冷たく変貌するシーン。それまで完璧だった夫人にはじめて人間らしい弱さが見える。