ユーザーレビュー 谷間の百合 オノレ・ド・バルザック / 石井睛一 純真な青年が貞淑な伯爵夫人に魅了され近づくが……。恋愛感情の機微と葛藤を描いた『人間喜劇』に連なる傑作。 うーむ、これはツラい。伯爵夫人の捧げ尽くす愛は美しいが、非常にもどかしくもある。男性側としては、主人公を責められないのだが。二十歳そこそこの男子の性的衝動を軽く考えられてもな〜。後に明かされる...続きを読む夫人の本心を考えると、アンリエットとしての身勝手さ、モルソフ伯爵夫人としての貞淑さで二つに割れている彼女の心も悲劇の要因なわけで。マドレーヌさん、カンベンしてくださいよ……。 しかし、ケチョンケチョンにこき下ろすナタリーの返事は、感傷に対する客観として、いっぱしの紳士となっているはずのフェリックスにはいい薬かも。男女の視点の違いが浮き彫りになる指摘など、皮肉的なラストではあるがどこかコミカルにもみえる。 Posted by ブクログ 谷間の百合 オノレ・ド・バルザック / 石井睛一 ドストルストイの御二大作品は キリスト教及び欧州歴史が成す知識を前提としているかんじで 現在日本でのほほんとしている身には 板書している言語はしれても その説明するところが皆目見当つかない心地だが 同じ人間喜劇でもこちらは修辞が比較わかりやすい気がする 訳者の手腕が並外れているだけかもしれないけれど...続きを読むも 日本語ででも音読したくなるような素敵な文 恋愛とその周囲の夫婦や家族や宗教を題材にして 人間とその関係を描いている作品は 「教養」や「青春」というような「小説」の分類は 小説(登場人物と筋書きの結構)だけが 文による表現ではないことを思い出させてくれる 詩歌による表現はおそらく「知識という前提」がないのでわかりづらいのであり ならば多彩な修辞であればわかりやすいのでもないのだ 彫り削ぎ落として本質を得ることもまた表現の手段であるなら そのとき足元に散らばる削り屑も見えていないのでなくそこにあるのだ Posted by ブクログ 谷間の百合 オノレ・ド・バルザック / 石井睛一 「人生の門出」が読み進めるのに苦労したので どうかと思ったけど「谷間の百合」はとても読みやすかった。 文体が(とてもとてもとても長い)手紙だったからだろう。 話の筋は単純だけど(ごめんねバルザック…自伝的要素もあるのに) 流麗華麗綺麗な文章がこれでもかと畳みかける。 でも「ああなんて重い愛情…」...続きを読むと思いつつ最後に 「…ですよねー。」とうなずいてしまった。 女性からするとナタリー嬢による主人公への手紙のお返事は至極当然。 こんな手紙を書いてあげるなんてナタリーはとても優しい。 Posted by ブクログ 谷間の百合 オノレ・ド・バルザック / 石井睛一 モルソフ夫人が死んだ後、マドレーヌに対して話すときの自己憐憫がしつこくてちょっと苛々しました。 文章は全体的に綺麗な比喩が多くてとても綺麗な文章で、描写のこういう濃さとても好みです。 Posted by ブクログ 谷間の百合 オノレ・ド・バルザック / 石井睛一 主人公フェリックスは人妻モルソフ夫人に恋をしてしまう。ただ、相手は夫にも家庭にも何も不満を持っていない素晴らしい女性。いくらフェリックスが愛の言葉を伝えようとも、常に年上の人妻女性として彼と対応し、彼の母親であるかのように接してくる。というかフェリックスに恋しないように自分に言い聞かせているようであ...続きを読むる。 フェリックスの一途な恋はすごいが、それを毎回ひらりとかわさなければならない夫人の苦労を考えると、ただ自分の本能に従って人妻に言い寄るフェリックスにイライラさえしてくる。 最後の夫人の手紙が非常に良い。正直、読者なら気づいていたであろう夫人の本当の気持ちが美しい文体で表現されている。 Posted by ブクログ 石井睛一のレビューをもっと見る