無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
※期間限定無料版、予約作品はカートに入りません
Posted by ブクログ
第二次世界大戦中、香港で憲兵をしていた主人公「守田征二」。上巻では戦犯になることを恐れ、身分を偽って収容所に入り、帰国のチャンスを窺う様子が描かれる。
ときおり挟まれる戦時中のエピソード。憲兵という仕事柄、自分もスパイを使うし、敵もスパイを使う。正々堂々というと皮肉な響きにはなるが、敵も味方もそういうものだと思って行動する。スパイを捕まえれば拷問によって吐かせようとするし、逆にスパイがばれた側は、ときには死も厭わない。戦争のダークサイドというか、普通には表に出ない部分であるが、裏を返せば、すべてが明らかにされれば、戦犯となってしまう。
戦争という場では当然だったことが、戦争が終わった瞬間に犯罪とされてしまう、BC級戦犯の理不尽さがここにある。
そういった様々な不安定さをはらみながら下巻に続いていく。
Posted by ブクログ
とにかく難しいテーマだ、というのが第一の感想。戦後生まれの作者が何故、このテーマを選んだのか。そこにものすごく興味を惹かれた。
BC級戦犯といって取り上げられてきた人々は、例えば『私は貝になりたい』のように、上官命令で仕方なく現地人や捕虜を虐待・殺害したような人々が多い。その中で、「憲兵」という、訴追されても仕方ないんじゃないか、という諦めを覚えさせられる立場の人間を主人公に据えたのは何故か。この微妙な視点の置き所が、帚木蓬生という作家がいいと思う所以なのだと思う。
それでいて、ただひたすら、淡々と描く筆致も好きだ。余計な感情を挿まずに、ただ、そこにあった事象と語り手の心情だけに集中する。もちろん、語り手に作者の思いを託しているのはわかる。それでも、作者ではなく、その語り手が語っているのだ、としか考えようのない筆力が素晴らしい。
一つの逃避行を終えた守田が、第二の逃避行で何を想うのか。下巻が楽しみ。
Posted by ブクログ
第二次大戦中香港で憲兵隊員として活動していた主人公。
しかし終戦と共に戦犯とされる事を受け入れられない彼は憲兵隊から逃亡し、中国そして日本、彼の過酷な逃亡生活が始まる。
主人公は憲兵ですが、よくある鬼の憲兵の物語ではなく一人の戦犯とされた日本軍人が戦後の混乱期の中をどのように生き抜いてきたかがメインのテーマになっています。
そしてその中で、戦犯として追われる主人公が家族と共に過酷な運命に対して立ち向かい、乗り越えていく姿はすばらしいドラマに仕上がっています。
終戦後の混乱期に日本人が何を考え、どのように行動し、そして生き抜いてきたかが鮮やかに描かれていて戦後史という面でも面白い作品になっています。
Posted by ブクログ
読み始めは一寸違和感があった。
平和な世界から見れば、異常行動と言える拷問や殺人を経験した主人公が、反省や後悔も無く自己弁護している姿は、これまで読んできた帚木さんの感じとどうも違う。有ってはならない悲惨さを読者に訴えるのではなくて、むしろそれを肯定してる感さえあるる。
しかし、後半に進むにつれ、本当に徐々に、しかも自然の流れの中で、追い詰められた主人公の自己弁護が後悔や反省に変化していき、最後にはいつもの帚木さんである。
加害者である日本の犯罪的行為とともに、戦勝国である米国の行為も随所で批判しながら、再び起こしてはならない悲劇を、いつもの如く淡々とした語り口で表現している。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。