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Posted by ブクログ
解説を読んで、守田が作者の父だとわかり、上巻での疑問は吹っ飛んだ。だとすれば、作者は、父の顔も知らずに育つはずだった竜次。彼はその後、父から、何をどのように聞かされ、育ったのだろうか。全てを聞いたのではないだろう。だからこそ、作者は、小説という形で上梓しなければならなかったのではないか。父の語ったものの隙間を埋めていく作者の心中はいかばかりであっただろう。
結末は、やはり予想の範囲内ではあった。あの時期、逃げおおせた人や、逃げて捕まるのが遅かった人たちの多くが助かり、早々に捕まった人たちが生贄にされたのだ、という話はいくつか聞いていたから。逃亡期間が1年になったことで、確信は深まった。それでも、最後まで、それでもやっぱり香港送りにされるのではないか、という可能性を残し続けたのは、それがまさに、あの当時巣鴨プリズンに拘留された人々のリアルだったからなのだろう。
守田が、どの瞬間に何を思い浮かべるのか。その選択にも優れた感覚を示している。人間、こんなときにこんなことを思い浮かべるのか、という驚きと、そうだろうなという納得。扱われている内容に対して、ゆったりと読み込める一冊だった。
Posted by ブクログ
第二次大戦中香港で憲兵隊員として活動していた主人公。
しかし終戦と共に戦犯とされる事を受け入れられない彼は憲兵隊から逃亡し、中国そして日本、彼の過酷な逃亡生活が始まる。
主人公は憲兵ですが、よくある鬼の憲兵の物語ではなく一人の戦犯とされた日本軍人が戦後の混乱期の中をどのように生き抜いてきたかがメインのテーマになっています。
そしてその中で、戦犯として追われる主人公が家族と共に過酷な運命に対して立ち向かい、乗り越えていく姿はすばらしいドラマに仕上がっています。
終戦後の混乱期に日本人が何を考え、どのように行動し、そして生き抜いてきたかが鮮やかに描かれていて戦後史という面でも面白い作品になっています。
Posted by ブクログ
今まで私が読んだ帚木作品は、精神科医らしく心を病む人物の登場が多かった。
これは第二次大戦中憲兵として働き、敗戦後逃亡し続ける主人公の限界とも思える物語だ。
同時期に大陸で新聞記者として従軍した父の面影と重ね合わせた。
戦争は人を変えると言うが、随所にそれがうかがえる場面が出てくる。
しかし、極限状態にあっても友情の存在があることも知った。
小説としてより、ドキュメンタリーのような迫力、面白さを感じた。
敗戦後の混乱、戦争裁判の不条理、道を誤った国家の恐ろしさ
、どれも私年代(80歳)にとっては記憶にある事だけに胸を打ちまた痛みを感じた。
Posted by ブクログ
とにかく食べ物に関する描写が多いと感じた。
追われ続ける恐怖と、潜伏し続ける孤独と飢えの中では、とにもかくも、人間は欲求が食欲に集中するのだろう。
ボロボロになりながら逃げ続け、上の息子の出産は、赤紙により出征して立ち会えず、終戦後、ボロボロになり終われ終われて帰国したのに、今度は同じ日本人である警察に、戦犯と言われ追われ下の子の出産にも立ち会えない。
国が放つ号令に従い懸命に働いたのに、家族を引き裂かれ、こんなにも苦しまなければならなかったのか。
戦争という究極的状況下では、価値観というのは、現代に生きる自分からするとあまりにも強烈すぎて受け入れがたい。
そんな時代に翻弄され、人が消えて行くのは切なく、無性に腹がたって仕方がない。
自分がこの時代に生きてたらと何度も想像を巡らせながら読み進めたが、相当タフな精神を持たないと生き延びれないなと、諦めの境地に陥って頭が真っ白になる。
帚木作品2作品連続で読み、充実したものの精神がすっかり疲労してしまった。
次はもちっと軽いものを読もう。
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