Posted by ブクログ
2021年08月29日
「赤毛のアン」より作者の面影が色濃いということで読んだ。
やはりヒロインは孤児の10~12歳の少女。アンのように派手な底抜けに明るいのではないけれど、想像力にとみ詩や物語好き。古ノートにいつも何かを書きつけているその様子がほほえましく、作家のめばえがうかがえる。モンゴメリ自身がそうであったのだろう...続きを読むと。
前半のエピソードは、「アン」のあのエピソードがこのエピソードと比較想像できて興味深く読める。だが「アン」のほうが構成の卓抜、人物表現の魅力、意外な展開で多くの人を惹きつけたのだなーと思うところもある。「エミリー」もフィクションだから事実をふくらまして書かれているが、こちらを素材と思わせる落ち着きがある。
後半の章はとてもいい。想像することと書くことが好きな少女が、いかにして作家志望になっていくかということが、真摯に描いてあって感動する。
26、27章は12歳の少女に36歳の男性の出会いはちょっと妖しいものを感じるが、(といってもモンゴメリたるゆえん牧歌的であるけど)文学好きの少女がはじめて文学的に手ごたえのある人に巡り会い心の成長をとげる。「エミリーはのぼる」「エミリーの求めるもの」に続くという余韻が残るのだから。
そして28章からの「可愛いエミリー」という題名に似つかわしくない、あっと思う展開。
ところどころの今はやりのファンタジー的要素、ミステリ要素もあって楽しませる。やっぱりつぼを心得ている、ルーシー・モード・モンゴメリ、ほほえましくかつまじめに読んだ。