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Posted by ブクログ
上橋直子氏の『狐笛のかなた』は、人の心が聴こえてしまう「聞き耳」の力を持つ少女・小夜(さよ)と、人間に追われ傷ついていたところを彼女に救われた霊狐・野火(のび)が紡ぐ、切なくも美しい和風ファンタジーの傑作である。
本作の最大の魅力は、隣り合う国の陰謀や「使い魔」を操る呪術合戦といった重厚な世界観の中で描かれる、言葉を超えた命の繋がりだ。本来であれば相容れない「人間」と「霊狐」という異種の存在が、過酷な運命に巻き込まれながらも、互いを命がけで庇い合う姿が心を揺さぶる。
特に、使い魔との凄惨な戦いの中で、自らの体を傷つけ、力を削ぎ落としながらも人の形をとって小夜を守ろうとする野火の覚悟と献身は胸を打つ。ハッピーエンドという言葉だけでは括れない、痛みを伴う代償があるからこそ、二人が辿り着く結末には圧倒的な重みと感動が宿っている。
『精霊の守り人』や『獣の奏者』で知られる上橋作品ならではの緻密な自然描写と人物造形が見事に結実した一作であり、大人にこそ読んでほしい至高の物語である。
Posted by ブクログ
兄にとってのベストオブ・ファンタジーが「2分間の冒険」なら私にとってのベストはこの本「狐笛のかなた」
繰り返し読んできたお気に入りの一冊だ。
世界観の描写が自然の細部まで繊細に表現され、呪いと憎しみが渦巻く物語なのに、出てくる風景はどこか柔らかく、美しい。
命を救われた時小夜の温かさを胸に、一途に小夜を見守り続けてきた野火と、その想いに触れ、野火を守りたい小夜。
見返りも求めずに、ただ小夜を守りたいと命をかける野火の姿に本当に切なくなる。
そして覚悟を決め、迷いが消えたの野火の端々に出てくる、小夜と居る時だけの年齢相応の表情や所作にキュンとくる。
誰しもにとって完璧なハッピーエンドではないが、「共に生きる」二人だけの道を見つけた野火と小夜が長く幸せに生きていければいいと思う。
愛し、慈しむことの美しさと切なさに溢れる、この本が大好きだ。
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小説・文芸
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