小説 - 東京創元社作品一覧
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3.9ピレネーの旧家デュ・ラブナン家のイヴォンは、スペイン戦争の際レジスタンスに参加し、失踪する。同家の小作人、ジョゼフ・ラルースはイヴォンと行動を共にするが、単独で帰国後、イヴォンから山を贈与されたと主張し、そこに鉱脈が発見されたため裕福となった。二十年後、死んだはずのイヴォンから手紙が届き、裁きが行なわれるだろうと無気味な予告をしてくる。それが現実となって、ジョゼフの次女オデットの首を切り取られた惨殺死体が発見される……。司法警察のモガール警視の娘ナディアと不思議な日本人青年矢吹駆は真相究明を競い合う。日本の推理文壇に新しい一ページを書き加えた笠井潔の華麗なるデビュー長編。
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3.9女は裸で波間にただよっていた。脳裏をよぎるのは、陵辱されたことではなく、手指の骨を折られたことだった。――そして小石の浜に打ち上げられた遺体が発見される。被害者は長時間泳いだ末に力尽き、溺死していた。一方、死体発見現場から二十キロ以上離れた港町では幼女が保護される。彼女は被害者の三歳になる娘だった。なぜ犯人は母親を殺したのに娘を無傷で解放したのか? 海を恐れ船に乗らなかった女性がなぜ溺死したのか? 凄惨きわまりない事件は、被害者をめぐる複雑な人間関係を暴き出す。現代英国ミステリの女王が放つ稀代の雄篇。/解説=杉江松恋
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3.9ぼくが1年A組の幽霊になって、一月が経過した――高校に入学したばかりのころの失敗によってクラス内で孤立し、いまでは幽霊扱いされている一居士架(いちこじかける)。惨めな日常を過ごしながらも限界を感じていた架は、十月の席替えで前の席になった玖波高町(くばたかまち)に突然話しかけられる。それは彼の苦しみに満ちた毎日に変化をもたらす、小さくも確かな予兆だった。時を同じくして、校舎の周辺では蝶結びのメッセージを残した動物の死骸が相次いで発見され、休みがちになった高町は何かに思い悩むような様子を見せはじめる……。圧倒的な筆力と繊細な技巧が紡ぎ出す、静謐な感動に満ちた青春ミステリ。/解説=大森望
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3.9名ヴァイオリン職人ジャンニのもとに一挺のグァルネリが持ちこまれた。天才演奏家パガニーニ愛用の名器“大砲(イル・カノーネ)”で、コンクールの優勝者エフゲニーがリサイタルで弾く予定だった。修理を終えた翌日、リサイタルに来ていた美術品ディーラーの撲殺死体が発見される。彼はホテルの金庫に黄金製の箱を預けていた。中にはエリーザという女性がパガニーニに宛てた1819年の古い手紙があり、彼女がパガニーニに何かを贈ったことが書かれていた。殺人事件解明の手がかりなのか? 名職人にして名探偵が“悪魔のヴァイオリニスト”をめぐる謎に挑む!/解説=青柳いづみこ
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3.9比類なく美しい庭園オーブランの女管理人が殺害された。犯人は狂気に冒された謎の老婆で、犯行動機もわからぬうちに、次いで管理人の妹が自ら命を絶つ。彼女の日記を手にした「私」は、オーブランに秘められた恐ろしい過去を知る……楽園崩壊に隠された驚愕の真相とは。第7回ミステリーズ!新人賞の佳作となった表題作の他、醜い姉と美しい妹を巡るヴィクトリア朝犯罪譚「仮面」、昭和初期の女学生たちに兆した淡い想いの意外な顛末を綴る「片想い」など、異なる場所、異なる時代を舞台に“少女”という謎(ミステリ)を描き上げた、瞠目のデビュー短編集。/解説=瀧井朝世
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3.9一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。彫像『棘を抜く少年』の棘に取り憑かれた博物館警備員。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。――魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。高名な刑事事件専門の弁護士である著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの哀しさ、愛おしさを鮮やかに描き上げた珠玉の連作短篇集。クライスト賞ほか文学賞三冠、2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた傑作。単行本より改訂増補された最新決定版!/解説=松山巖
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3.91154年、グラストンベリー一帯を襲った地震の直後、ひとりの老修道士が息を引き取った。アーサー王の埋葬を見たと甥に言い残して。そして月日は流れ1176年、話を聞きつけたイングランド国王ヘンリー二世の命により、町ごと大火で焼失した大修道院の墓地から、二体の骨が掘り出される。遺骨は伝説のアーサー王とその妃グウィネヴィアのものなのか? 住み慣れたケンブリッジを追われた女医アデリアは国王の依頼により、供を連れ骨の鑑定に赴くが、その途上で友人エマの身に異変が起きたことを知る……。CWA最優秀歴史ミステリ賞シリーズ第3弾。/解説=千街晶之
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3.9この地方で、かつて隆盛を極めたエアーズ家は、第二次世界大戦終了後まもない今日では斜陽を迎え、広壮なハンドレッズ領主館に逼塞していた。かねてからエアーズ家に憧憬を抱いていたファラデー医師は、ある日メイドの往診を頼まれたのを契機に、一家の知遇を得る。物腰優雅な老婦人、多感な青年であるその息子、そして令嬢のキャロラインと過ごす穏やかな時間。その一方で、館のあちらこちらで起こる異変が、少しずつ、彼らの心をむしばみつつあった……。悠揚迫らぬ筆致と周到な計算をもって描かれる、たくらみに満ちたウォーターズの傑作。ブッカー賞最終候補作。
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3.9名家バスカヴィル家の当主チャールズが怪死を遂げた。激しくゆがんだ表情を浮かべた死体の近くには巨大な犬の足跡があり、土地の者は全身から光を放つ巨大な生き物を目撃していた。それらが示唆するのは、忌まわしい〈バスカヴィル家の犬〉の伝説……。相続人ヘンリーがバスカヴィル家を継ぐことになったが、その身を案じた医師の依頼で、ホームズとワトスンは捜査にあたることに――。寂莫とした荒れ地(ムーア)を舞台に展開する、恐怖と怪異に満ちた事件の行方は? ミステリ史上最高峰の傑作長編。/解題=戸川安宣、解説=小山正
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3.9【第13回鮎川哲也賞受賞作】帝ご寵愛の猫はどこへ消えた? 出産のため宮中を退出する中宮定子に同行した猫は、清少納言が牛車につないでおいたにもかかわらず、いつの間にか消え失せていた。帝を慮り左大臣藤原道長は大捜索の指令を出すが――。闇夜に襲われた中納言、消え失せた文箱の中身。縺れ合う謎に挑む紫式部を描いた第一部「上にさぶらふ御猫」。『源氏物語』が千年もの間抱え続ける謎のひとつ、幻の巻「かかやく日の宮」――この巻はなぜ消え去ったのか? 式部を通して著者が壮大な謎に挑む第二部「かかやく日の宮」。紫式部を探偵役に据え、平安の世に生きる女性たち、そして彼女たちを取り巻く謎とその解決を鮮やかに描き上げた華麗な王朝推理絵巻。
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3.9ジャズバンド、唐島英治クインテットのメンバー、永見緋太郎は天才肌のテナーサックス奏者。音楽以外には関心を示さないのが玉に瑕だが、ひとたび事件や謎に遭遇すると、フリージャズを奏でるように軽やかに解決していく。反対に展示された絵画の謎、連綿と受け継がれたクラリネットの秘密、消えたトランペット奏者の行方など、永見の推理は――。鮎川哲也も絶賛した、著者のデビュー短編「落下する緑」にはじまる、洒脱で軽妙な本格ミステリ連作集。各エピソードの雰囲気に合わせ、著者が自らチョイスしたジャズCD、レコード紹介のおまけ付。/著者あとがき=田中啓文、解説=山下洋輔
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3.9宮野隆也のクラスに転入してきたのは、二足歩行のロボット、IMMID‐28だった。病気で通学できない一ノ瀬梨香という少女を、遠隔操作で動くロボットを通じて学校生活を送れるようにする実験だという。隆也たちは戸惑いつつも“彼女(ロボツト)”の存在を受け入れ、実験は順調なすべりだしを見せた。しかしある放課後、校内で級友が撲殺され、彼女の背中が被害者の血で染まっているのが発見される。殺害の動機は? ロボットと、事件の関わりとは?! そもそも“彼女”は本当に一ノ瀬梨香なのか――。「今から遠くない未来」を舞台に描く、青春本格ミステリ。
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3.9数寄屋橋近くの三番館ビル六階にバー〈三番館〉がある。落ち着いた雰囲気の、いい店だ。少し早い時間に行くと、達磨大師然としたバーテンがひとりグラスを磨いている。常連の私立探偵は、依頼された仕事を持て余すたび、雑学の大家であるこのバーテンに知恵を借りに来る。どんな事件も、たちどころに解き明かしてくれるのだから!本格ミステリの巨匠が生んだ安楽椅子探偵、ここに登場。最終行の切れ味が素晴らしい「竜王氏の不吉な旅」など5編を収録。収録作品=春の驟雨/新ファントム・レディ/竜王氏の不吉な旅/白い手黒い手/太鼓叩きはなぜ笑う/解説=白峰良介
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3.9医師のノートン・ペラムは、海岸の遊歩道で美貌の女性に出会い、一瞬にして心を奪われた。彼女の名はダイアナ、あだ名は“コマドリ”――。ノートンは、踏みだしかけていた成功への道から外れることを決意し、燃えあがる恋の炎に身を投じる。それが予測不可能な数奇な物語の始まりと知るよしもなく……。さながら美麗な万華鏡を覗くかのように、目まぐるしくその姿を変える事件。『赤毛のレドメイン家』の巨匠フィルポッツの魅力が凝縮された、ミステリ史に残る名編が、読みやすい新訳でここによみがえる。この結末に、あなたは驚かずにはいられない!
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3.9出張帰りの夫の目に飛び込んできたのは、妻の無惨な死体。ふつうならこれだけでトルケル率いる殺人捜査特別班が呼ばれることはない。被害者が自宅の寝室で縛られ、首をかき切られていたのでなければ。その状況は、かつてセバスチャンがつかまえた連続殺人犯ヒンデの手口に酷似していた。だが、ヒンデはレーヴハーガ刑務所で服役中のはず。一方、ある動機で、ふたたび殺人捜査特別班に加わろうと企むセバスチャンは、渋るトルケルに売りこみをかけた。凄腕だが自信過剰の迷惑男セバスチャンの捜査が始まる!
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3.9キングとツァラプキン。ふたりの若きテニス世界ランカーは、キングの地元オーストラリアの大会で初対戦した。プレースタイルも境遇も異なるふたりは、しかし試合を通じて意気投合する。その友情は、ツァラプキンの身をキングが一家総出で守ったことで揺るぎないものとなった。やがてふたりはともに、ウィンブルドン選手権への出場を果たす。だが、そのテニス世界最高峰の大会では、ある大胆な犯罪計画が実行されつつあった――。青年たちの友情を軸に、白熱する試合と犯罪の行方を描いて手に汗握らす、極上のスポーツ小説にして大傑作ミステリ!
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3.9埠頭で荷揚げ中に落下事故が起こり、珍しい形状の異様に重い樽が破損した。樽はパリ発ロンドン行き、中身は「彫像」とある。こぼれたおが屑に交じって金貨が数枚見つかったので割れ目を広げたところ、とんでもないものが入っていた。荷の受取人と海運会社間の駆け引きを経て樽はスコットランドヤードの手に渡り、中から若い女性の絞殺死体が……。次々に判明する事実は謎に満ち、事件はめまぐるしい展開を見せつつ混迷の度を増していく。真相究明の担い手もまた英仏警察官から弁護士、私立探偵に移り緊迫の終局へ向かう。クロフツ渾身の処女作にして探偵小説史にその名を刻んだ大傑作。
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3.9バシンデール団地、通称アシッド・ロウ。教育程度が低く、ドラッグが蔓延し、争いが日常茶飯事の場所。そこに引っ越してきたばかりの老人と息子は、小児性愛者だと疑われていた。ふたりを排除しようとする抗議デモは、彼らが以前住んでいた街で十歳の少女が失踪したのをきっかけに、暴動へと発展する。団地をバリケードで封鎖し、石と火焔瓶で武装した二千人の群衆が彼らに襲いかかる。往診のため団地を訪れていた医師のソフィーは、暴徒に襲撃された親子に監禁されてしまい……。血と暴力に満ちた緊迫の一日を描く、英国ミステリの女王の新境地。
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3.9粗野で狡賢い、冷血漢の兄・チャーリー。ふだんは心優しいけれど、キレると大変なことになる弟・イーライ。悪名とどろく凄腕の殺し屋シスターズ兄弟は、雇い主の“提督”に命じられるまま、ある山師を消しにカリフォルニアへと旅立つ――理由はよくわからぬまま。ゴールドラッシュに沸く狂乱のアメリカ西海岸、シスターズ兄弟は、この目も当てられないダメな旅路で、何に出遭い、何を得て、そして何か失うのか? 小説のあらゆる感情を投入し、世界の読書界に一大旋風を巻き起こした、総督文学賞など四冠制覇、ブッカー賞最終候補作!
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3.9優等生の委員長と不良少女の淡い恋。できすぎたシチュエーションかもしれないけれど、すべてはそこから始まった。彼女が自力で自分の人生を立て直すことができたなら、十年後、あるものを渡そう――そして十年が過ぎ、約束の日がやってきた。しかし彼女は姿を見せず、代わりに彼女の夫と名乗る人物が現われる。彼女は三年前から行方がわからなくなっていた。居場所を捜し出そうと考えたとき、協力者として僕の脳裏にひとりの同級生が思い浮かぶ。かつて僕に、ブックマッチの恰好良い火の点け方を教えてくれた男が――。約束を果たすため、ニューヨークの〈暗闇〉から帰ってきた青年が巡り合う少年少女たち、そして最高の「相棒」。『東京バンドワゴン』で脚光を浴びた名手による、約束と再会の物語。
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3.9千九百四十九年も押し詰った鬱陶しい日の午後、汐留駅前交番の電話のベルが鳴り、事件の幕が切って落とされた。トランクに詰められた男の腐乱死体。荷物の送り主は福岡県若松市近松千鶴夫とある。どうせ偽名だろう、という捜査陣の見込みに反し、送り主は実在した。その近松は溺死体となって発見され、事件は呆気なく解決したかに思われた。だが、かつて思いを寄せた人からの依頼で九州へ駆けつけた鬼貫の前に青ずくめの男が出没し、アリバイの鉄の壁が立ち塞がる……。巨星、鮎川哲也の事実上のデビュー作であり、戦後本格の出発点ともなった里程標的名作。綿密な校訂による決定版!
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3.9ドイツ、2007年春。ホロコーストを生き残り、アメリカで大統領顧問をつとめた著名なユダヤ人の老人が射殺された。凶器は第二次世界大戦期の拳銃で、現場には「16145」という数字が残されていた。しかし司法解剖の結果、遺体の刺青から、被害者がナチスの武装親衛隊員だったという驚愕の事実が判明する。そして第二、第三の殺人が発生。被害者らの隠された過去を探り、犯行に及んだのは何者なのか。刑事オリヴァーとピアは幾多の難局に直面しつつも、凄絶な連続殺人の真相を追い続ける。本国で累計200万部を突破した警察小説シリーズ!
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3.9娘を連れ戻してほしいのです――山間の過疎地で孤立する芸術家のコミュニティ、木更村に入ったまま戻らないマリアを案じる有馬氏。要請に応えて英都大学推理小説研究会の面々は四国へ渡る。かたくなに干渉を拒む木更村住民の態度に業を煮やし、大雨を衝いて潜入を決行。接触に成功して目的を半ば達成したかに思えた矢先、架橋が落ちて木更村は陸の孤島と化す。芸術家たちと共に進退きわまった江神・マリア、夏森村に足止めされたアリスたち――双方が殺人事件に巻き込まれ、川の両側で真相究明が始まる。読者への挑戦が三度添えられた、犯人当て(フーダニット)の限界に挑む大作。妙なる本格ミステリの香気、有栖川有栖の真髄ここにあり。
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3.9《黒川博行警察小説コレクション》 病室で殺された被害者は、耳を切り取られ、さらに別人の小指を耳の穴に差されていた。続いて、舌を切られ前の被害者の耳を咥えた死体が見つかり、猟奇的な連続殺人事件に警察は色めき立つ。見えない犯人像、はたして次に狙われるのは誰か? 被害者同士にどんな繋がりがあるのか? 大阪府警捜査一課海部班の久松刑事を中心とした地道な捜査は実を結ぶのか? 犯人側と捜査側、過去と現在の視点が複雑に交わりつつ、事件の全貌が明らかにされていく――。これまでの警察小説コレクションとは一線を画す、ノワール趣向の強い著者渾身の初期作品。 ※本作品は東京創元社、KADOKAWA / 角川書店で同一タイトルの作品が販売されております。本編内容は同じとなりますので予めご了承下さい。既に同作品をご購入されているお客様におかれましてはご注意下さい。
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3.9探偵好きの大学生、相川守が妹の珠子とその家庭教師殿村京子と連れだってレストランで食事をしていたところ、緊張した面持ちで一点を見つめていた殿村夫人が硬直してしまう。ようやく緊張を解いた夫人に訊ねると、彼女は得意の読唇術を操って隅にいた二人の会話を盗み見ていたのだが、明日の晩、谷中の空家の中で、何者かを短刀で一寸だめし五分だめしにする、という世にも恐ろしい相談をしていた、というのだ。日頃の探偵好きが頭をもたげた相川青年は、とんでもない怪事件に巻き込まれることになった。次々と美女を狙う「赤いサソリ」の狙いは何か? 戦慄すべき乱歩の長編推理!
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3.9私も,物語を書いてみようかな――入江駒子のつぶやきは「じゃあ書いてごらんよ」の声にあっさりと迎え入れられた。幾つも名前を持っている不可解な女の子との遭遇,美容院で耳にした噂に端を発する幽霊の一件,学園祭で出逢った〈魔法の飛行〉のエピソード,クリスマス・イブを駆け抜けた大事件……近況報告をするように綴られていく駒子自身の物語は,日々の驚きや悲しみ,喜びや痛みを湛え,謎めいた雰囲気に満ちている。ややあって届く“感想文”には,駒子の首を傾げさせた出来事に対する絵解きが。第三回鮎川哲也賞を受賞した『ななつのこ』に続く,会心の連作長編ミステリ。
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3.8高校生のピップにある招待状が届いた。高校卒業および大学受験に必要な試験のひとつが終わった6月末、友人宅で架空の殺人事件の犯人当てゲームが開催されるという。舞台は1924年の孤島に建つ大富豪の館という設定だ。参加者は同級生とその兄の7人。ゲーム開始早々、館の主が心臓を刺されて殺されているのが発見される。試験後に着手すべき自由研究が気になり、当初は乗り気でなかったピップは、次第に夢中になり、主の姪に扮してゲームを進めていく。ピップの明快な推理を堪能できる、爽やかで楽しい『自由研究には向かない殺人』前日譚!/解説=瀧井朝世
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3.8大学生の玲奈は、全てを忘れて打ち込めるようなことも、抜きんでて得意なことも、友達さえも持っていないことを寂しく思っていた。そんな折、仔犬を飼い始めたことで憂鬱な日常が一変する。ゼロと名付けた仔犬を溺愛するあまり、ゼロを主人公にした短編を小説投稿サイトにアップしたところ、読者から感想コメントが届く。玲奈はその読者とDMでやり取りするようになるが、同じ頃、玲奈の周りに不審人物が現れるようになり……。短大生の駒子が童話集『ななつのこ』と出会い、その作家との手紙のやり取りから始まった、謎に彩られた日々。作家と読者の繋がりから生まれた物語は、愛らしくも頼もしい犬が加わることで新たなステージを迎える。
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3.8ミステリが大好き、クリスティが大好きなアリシアとリネットの姉妹が出した読書会──ブッククラブのメンバー募集の告知に応えてきたのは、古着ショップの女性オーナー、毒薬ミステリ好きの医師、平凡な主婦、図書館員の女性に博物館勤務のゲイの男性といった面々。はじまりは順調だったが、二回目の読書会で早くもトラブルが。主婦のバーバラが会場に現われなかったのだ。どうやら前日から家にも帰っていないらしく、事件に巻きこまれたのかもしれない。アリシアはブッククラブのメンバーの協力のもと、彼女をさがし始めるが……。〈マーダー・ミステリ・ブッククラブ〉シリーズ開幕。
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3.8“これから起こる殺人”を通報してきた男に翻弄され、不可能犯罪の謎に挑む刑事を描いた「死の警告」。『シカゴ・ブルース』で忘れがたい印象を残した青年探偵エドとアムおじが活躍する「女が男を殺すとき」「消えた役者」。検死局で起きた不可解な死体損壊事件「球形の食屍鬼(グール)」。稼ぎの10パーセントと引き換えに、ある男に自分のマネジメントを任せた俳優志望の青年の数奇な物語「死の10パーセント」など、本邦初訳3作を含む全13編。謎解きミステリ、〈奇妙な味〉等、『短編ミステリの二百年』の編者が選りすぐった多彩な名作短編のフルコース!/【目次】序文――フレッド・ブラウンを思い起こして=ウィリアム・F・ノーラン/5セントのお月さま/へま/女が男を殺すとき/消えた役者/どうしてなんだベニー、いったいどうして/球形の食屍鬼(グール)/フルートと短機関銃のための組曲/死の警告/愛しのラム/殺しのプレミアショー/殺意のジャズソング/死の10パーセント/最終列車/編者解説=小森収
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3.8新元号が発表された2019年4月、老舗映画会社・銀都活劇の宣伝チームで働く砂原江見は岐路に立たされていた。長く務めた勤務先が、大手IT企業傘下の映像配信会社に買収されることが決まったのだ。すべての企画が止まった社内には弛緩した雰囲気が漂い、不穏な噂が飛び交っている。DVDの宣伝を手がける江見の部署も、一癖ある部下たちも、この先どうなるかわからない。では社名が消えるまでに、自分はどんな“仕事”がしたいのか――働き方は十人十色。時代や元号がどんなに変わろうとも、自分の働き方を決めるのは自分だけ。すべての働く大人たちにエールをおくる傑作小説!/解説=松井ゆかり
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3.8「われわれの契約は、これで終わりだ」彼が主人公のミステリを書くことに耐えかねて、わたし、作家のアンソニー・ホロヴィッツは探偵ダニエル・ホーソーンにこう告げた。翌週、ロンドンの劇場でわたしの戯曲『マインドゲーム』の公演が始まる。初日の夜、劇評家の酷評を目にして落胆するわたし。翌朝、その劇評家の死体が発見された。凶器はなんとわたしの短剣。かくして逮捕されたわたしにはわかっていた。自分を救ってくれるのは、あの男だけだと。〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズの新たな傑作!/解説=三橋曉
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3.8新型コロナウイルスのパンデミックで隔離生活を強いられた16ヶ月間、イラストレーターにして作家のエドワード・ケアリーは、毎日1枚の画(え)を描き、SNSに投稿していった。偉大な作家や芸術家、歴史上の人物、小説の登場人物、さらに人間だけではなく、動物や鳥、植物や建物、風景に至るまで描きに描いた500点ものスケッチと、それにまつわる36篇のエッセイを収録。ケアリーらしさ満載のスケッチ集としても、時代を切り取るエッセイ集としても楽しめる珠玉の一冊。/解説=マックス・ポーター
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3.8「証明してくれよ、おれが犯人だと」銃を持って私立探偵ビル・スミスの家に押しかけてきた男はそう言った。彼の名はサム・テイバー。かつての依頼人で殺人者だ。収監された刑務所で絵の才能を見出されて仮釈放となり、現在は画家として活躍中。記憶も証拠もないが、最近ニューヨークで起きた二件の女性殺害事件は自分の犯行だと主張するサムの話の真偽を調べるため、ビルはサムと交流のある美術業界の関係者を相棒リディアと訪ねる。だがその矢先に、第三の犠牲者が……。必読の現代ハードボイルド〈リディア・チン&ビル・スミス〉シリーズ!/解説=吉野仁
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3.8わたしは姉のセプテンバーの誕生から十か月後に生まれた。でも、互いの誕生日を混ぜ合わせて同じ日にしている。セプテンバーがそう決めたから。セプテンバーはゲームをする。セプテンバーが指示する側、わたしが操り人形。彼女の言うことをなんでも聞かなくてはいけない。指示通りにできなかった場合、わたしは命を一つなくしてしまう。そうやって遊ぶときはたいてい、わたしには命が五つあって、全部なくしたら何かが起こることになっていた。内気で意志の弱いジュライは、姉のセプテンバーの支配下にあるが、二人の絆は揺るぎないものだった。春先に学校で起きたある事件をきっかけに、母とともに町を出て亡父の生家へと引っ越したが、それを機にジュライの中には奇妙な不安と違和感が芽生え……
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3.8その事件は意外なところから持ち込まれた。同じアパートに住む10歳の少年が、夏のキャンプで人間の頭蓋骨をみつけたのだ。ベックストレームを師とあおぐ少年は、頭蓋骨の右のこめかみに小さな穴が開いていて、銃弾らしきものが残っていることを見逃さなかった。頭蓋骨の主は20歳から40歳のアジア系の女性、死後数年が経過しているものと思われた。ところが、警察の調べが進むうちに同じDNAを持った女性が12年前にタイで死亡していたことが判明。果たして人は二度死ぬことができるのか? 規格外の刑事ベックストレーム・シリーズ第4弾。
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3.8わたしはいわゆる潔癖症だ。除菌ジェルは必携。公共の乗り物に乗るときは、マスクと手袋が欠かせない。海やプール、温泉が苦手。そんなめんどくさい性質のわたしはある夜、鍵を忘れてアパートに帰ってきてしまった。部屋に入れず途方に暮れていると、隣人の男性から思いがけない提案――「よかったら、うち泊めますけど」。わたしは思い切って申し出を受けることに。これを機に始まった交流の中で、徐々に彼との距離は縮まるが――。わたしと彼を隔てるのはアパートの壁一枚……だけじゃない!? 距離は近くても道のりは険しい、王道の恋愛小説。※本書は、2021年にKADOKAWAより刊行された単行本版を改稿した文庫版です。
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3.8運行しているはずのない深夜バスに乗り、彼は摩訶不思議な光景に遭遇した――奇妙な謎とその鮮やかな解決を描く表題作、中学生の淡い恋と不安の日々が意外な展開を辿る「猫矢来」、〈読者への挑戦〉を付したストレートなフーダニット「ミッシング・リング」、怪奇小説と謎解きを融合させた圧巻の一編「九人病」、アリバイ・トリックを用意して殺人を実行したミステリ作家の涙ぐましい奮闘劇「特急富士」。あの手この手で謎解きの面白さを提供する、著者会心の〈ミステリ・ショーケース〉。いいミステリ、あります。/【目次】Y駅発深夜バス/猫矢来/ミッシング・リング/九人病/特急富士
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3.8第二次世界大戦下のロンドン。錠前師のおじを手伝うエリーは、生活のために裏の仕事として金庫破りをしている。だがある日、その現場を陸軍のラムゼイ少佐に押さえられてしまう。少佐は諜報作戦上の重要な文書を回収し別のものと入れ替えるため、投獄されたくなければ、ある屋敷の金庫を解錠しろと命令する。エリーが少佐と屋敷に侵入すると、金庫のそばには他殺体があり、文書が消えていた。エリーは少佐に協力して、殺人を犯し文書を持ち去った容疑者を探ることに。凄腕の女性金庫破りと堅物の青年将校、正反対のふたりの波瀾万丈な活躍譚!/解説=上條ひろみ
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3.8『体育館の殺人』の衝撃のデビューから10年。“平成のエラリー・クイーン”と称された青崎有吾は、短編の書き手としても高い評価を獲得し、作品の幅を広げ続けている。JR福知山線脱線事故を題材にした人間ドラマ「加速してゆく」、全面ガラス張りの屋敷で起きた不可能殺人の顚末「噤ヶ森の硝子屋敷」、観測不能な最強の姉妹を追う女たちの旅路「恋澤姉妹」、奇妙な刑務所に囚われた男たちの知力を尽くした挑戦を描く力作書き下ろし「11文字の檻」に、人気コミックのトリビュート作やショートショートまで、10年の昇華である全8編を収録。/【目次】まえがき/加速してゆく/噤ヶ森の硝子屋敷/前髪は空を向いている/your name/飽くまで/クレープまでは終わらせない/恋澤姉妹/11文字の檻/著者による各話解説
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3.8将来、NASAのエンジニアになりたい小学六年生の佐倉ハルくんは、風船による宇宙撮影を目指しています。できる限り大人の力を借りず、自分だけの力で。そんなことくらいできないようでは、NASAのエンジニアになんて到底なれないから、と。意地っ張りな性格もあってクラスでは孤立、家に帰っても両親とぎくしゃくし、それでもひたすらひとりで壮大な目標と向き合い続けるハルくんの前にある日、金髪の転校生が現れて……。第34回坪田譲治文学賞を受賞した、ひとりの少年の夢と努力の物語。奮闘するハルくんのことを、きっと応援したくなるはずです――読み終えたあとは、もっと。
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3.8「犯人は読者だ」で話題をさらった『仮題・中学殺人事件』から50年、ミステリ作家デビュー以来、本格もの、ユーモアものをはじめ、様々なスタイルの作品を提供し続けてきた辻真先。中でも、鉄道ミステリは、著者自身が長年の鉄道ファンであることも広く知られており、多くの読者に親しまれてきた。シリーズキャラクターである、トラベルライター・瓜生慎ものを筆頭に、自らも鉄道愛好家でもある、ミステリ評論家・戸田和光が選んだ珠玉の12編。すでに廃線となった路線、企画列車なども登場する、辻ファン、鉄道ミステリファン必携の一冊。/【目次】お座敷列車殺人号/夜行急行殺人号/ブルートレイン殺人号/α列車殺人号/郷愁列車殺人号/白い闇の駅/オホーツク心中/遠い日、遠いレール/終電車の囚人/鉄路が錆びてゆく/東京鐵道ホテル24号室/轢かれる/解題=戸田和光
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3.8「ミシシッピへ行きなさい。あの白いマントヒヒを連れて」突然の母の言葉に、私立探偵のリディアは言葉を失った。パートナーのビルとわたしが、なぜアメリカ南部に?……それは殺人の容疑をかけられた青年の無実を証明してほしいという、親戚からの依頼だった。ビルを伴い、自分たち家族が住んだかもしれない町を訪れたリディアは、そこで渦中の容疑者が脱走したことを知る。知られざる中国系アメリカ人の歴史をひもときつつ、事件の解決に奔走するふたり。現代ハードボイルドの最高峰〈リディア・チン&ビル・スミス〉シリーズ、最新作の登場!/解説=大矢博子
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3.8写真を撮る楽しみを教えてくれた、松原京介の不可解な死。離婚話で揉めていた彼の妻は、関与が疑われたものの、死亡時刻にはタクシーに乗っていた。どこをどう見ても、不運な事故としか考えられない状況だったが──恩人の死をその妻の仕業と確信した駆け出しカメラマンの安見直行は、祖母の助言によって六角法衣店を訪れる。店の主は代々京の辻や橋に立ち、道のさざめきから神託を受け、失せ物を見つけ出すことができるというのだ。直行は恩人の死亡事故を他殺と証明する証拠を探して欲しいと依頼するが、若くて無愛想な店主・六角聡明からは、けんもほろろに断られてしまう。だが、直行の撮った一枚の写真がきっかけで、六角は事件の証拠探しに協力を約束する。現代のガジェットによって構成された不可能犯罪を、緻密な論証で見事に解き明かす表題作ほか全五編を収録。第十六回ミステリーズ!新人賞受賞者による出色のデビュー連作集。/【目次】第一話 431秒後の殺人●これは計算尽くで偶然の可能性を限りなく必然に近くなるまで高めた――殺人事件だよ。/第二話 睨み目の穴蔵の殺人●最近、お客さんから「襖の武将の目が動いた、絵の中から睨まれた」なんて言われるんです。/第三話 眠れる映画館の殺人●幽霊でもない限り、無理やん? だって誰にも首を絞めたりする時間なんかなかったやんか。/第四話 照明されない白刃の殺人●オレ達がそいつの後を追って角を曲がるまでに、次の瞬間にはもう通りから姿が消えていたんだ。/第五話 立ち消える死者の殺人●この部屋に入院した人はな、夜中に攫われて二度と戻ってこられへんねんて。/著者あとがき
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3.8「ちょっと待ってほしいのだが」私はトムという名の猫に話しかけた。猫に喋りかけていること自体、眩暈を覚える思いだったが致し方ない。前には猫がおり、自分は身動きが取れず、しかもその猫が私に理解できる言葉を発しているのは事実なのだ。目を覚ましたら見覚えのない土地の草叢で、蔓で縛られ、身動きが取れなくなっていた。仰向けの胸には灰色の猫が座っていて、「ちょっと話を聞いてほしいんだけど」と声を出すから、驚きが頭を突き抜けた。「僕の住む国では、ばたばたといろんなことが起きた。戦争が終わったんだ」――伊坂幸太郎、十冊目の書き下ろし長編は、世界の秘密についてのおはなし。野心的傑作。/解説=松浦正人
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3.8男の子の年齢は十歳前後。地面にうつ伏せに倒れ、体の下の血だまりは凍りはじめていた。アイスランド人の父とタイ人の母の間に生まれた男の子は、両親の離婚後母親と兄と一緒にレイキャヴィクのこの界隈に越してきたのだ。母親が移民だったために人種差別からくる殺人が疑われ、エーレンデュルら捜査陣は、男の子が住んでいたアパートや通っていた学校を中心に捜査を始めるが……。CWAインターナショナル・ダガー最終候補作。世界のミステリ界をリードする著者が、レイキャヴィクを舞台に現代社会の問題にメスを入れた、好評シリーズ第5弾。
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3.8ふたりの探偵の目前にいて、しかも彼らの目に留まらなかった姿なき殺人者とは? 首輪に「われこそは殺されし男の犬なり」というメモが挟まれていた、毛むくじゃらの犬の秘密とは? 身代金誘拐事件に巻き込まれた保険外交員の運命は? 札束をたっぷり蓄えた老人の家に猛犬がいるのを知った悪党の計画とは? 奇抜な発想と意外な結末が光る短編10作と、殺人で終身刑になった男の無実を証明すべく奮闘する刑事を描いた名作中編「踊るサンドイッチ」を収録。『真っ白な嘘』に続く短編ミステリの魅力あふれる傑作集。『復讐の女神』改題新訳版。/【収録作】毛むくじゃらの犬/生命保険と火災保険/ティーカップ騒動/よい勲爵士(グッド・ナイト)によい夜(グッド・ナイト)を/猛犬に注意/さまよえる少年/姿なき殺人者/サタン一・五世/象と道化師/不吉なことは何も/踊るサンドイッチ/解説=村上貴史
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3.8これは怪奇短編小説の見立て殺人なのか?──イギリスの中等学校タルガース校の旧館は、かつてヴィクトリア朝時代の作家ホランドの邸宅だった。クレアは同校の英語教師をしながら、ホランドを研究している。10 月のある日、クレアの親友である同僚が殺害されてしまう。遺体のそばには“地獄はからだ”という謎のメモが。それはホランドの怪奇短編に繰り返し出てくる文章だった。事件を解決する鍵は作中作に? 英国推理作家協会賞受賞のベテラン作家が満を持して発表し、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞受賞へと至った傑作ミステリ!/解説=大矢博子
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3.8コーンウォールの海岸に聳える風変わりな葉色の三股の樹。通称を〈孔雀の樹〉といい、聖者の祈りによって歩き回る力を手に入れ、獣や人をむさぼり食う災いの樹の伝承に連なる存在だった。大地主ヴェインはこの怪樹に登る賭けをして森に入るが、以降忽然と姿を消してしまう。怪奇趣味に満ちた傑作中篇「高慢の樹」ほか、謎を読み解くことに長けたスティーヴン神父が不可能犯罪に挑む表題作、夢想家の姪と実際家の甥の先行きを案じた公爵が取った奇策が思わぬ喜劇へと発展する、本邦初訳の戯曲「魔術」など、五篇の中短篇を新訳で贈る。巨匠の多彩な魅力が凝縮された日本オリジナル作品集。/【収録作】高慢の樹/煙の庭/剣の五/裏切りの塔/魔術――幻想的喜劇/訳者あとがき/解説=垂野創一郎
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3.81994年、緑のジャングルと茶色い川をかかえる亜熱帯の町サンクリストバルに、理解不能な言葉を話す子どもたちがどこからともなく現れた。彼らは物乞いをしたり盗みを働いたりして大人たちを不安に陥れ、さらにスーパーを襲撃した。そして数ヶ月後、不可解な状況で32人の子どもたちが一斉に命を落とした。子どもたちはどこから来たのか。どうして死ぬことになったのか。社会福祉課の課長として衝撃的な出来事に関わった語り手が、22年後のいま、謎をひもといていく──。現代スペインを代表する作家が奇妙な事件を通して描く、子どもの無邪気さと暴力性、そして野生と文明、保護と支配の対比。純粋で残酷な子どもたちの物語。
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3.8新宿の不動産会社に勤める営業マン・澤村聡志。知識はあるが駆け引きが苦手な彼のもとにある日、成績優秀な後輩・神崎くららがパートナーとして異動してきた。以来、気が強く先輩使いの荒いくららに澤村は振り回される毎日に。さらに、担当していた大家に突然冷たくつき放されたり、入居者から部屋に現れる宇宙人を退治してほしいと無茶なクレームを入れられたり……物件に絡む謎の数々を解き明かすため、くららと二人、大忙しで走り回る! 新しくて古い街“新宿”に住む人々の悩みと謎を解決する、心あたたまる不動産ミステリ。『ツノハズ・ホーム賃貸二課におまかせを』改題文庫化。/【収録作】第一話 大家の事情/第二話 入居者の事情/第三話 入居申込人の事情/第四話 その土地の事情/エピローグ
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3.8“善良な”犯人たちの完全犯罪に隠された綻びを、福家警部補はひとり具に拾いあげながら真相を手繰り寄せていく――。未踏峰への夢を息子に託す初老の登山家・狩義之は、後援の中止を提言してきた不動産会社の相談役を撲殺、登り慣れた山で偽装工作を図る(「未完の頂上」)。動物をこよなく愛するペットショップ経営者・佐々千尋は、悪徳ブリーダーとして名を馳せる血の繋がらない弟が許せず、遂には殺害を決意する(「幸福の代償」)。――ふたりの犯人を追い詰める、福家警部補の決めの一手は。「刑事コロンボ」の系譜に連なる倒叙形式の本格ミステリ、シリーズ初の中編二編からなる第四集。/解説=西上心太
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3.8ビールで知られるアメリカの小さな町レブンワース。ドイツのバイエルン地方に似たこの町に、今年もオクトーバーフェストの開催が迫っていた。ビール職人のわたしは、別居中の夫と離婚するか悩みながらも、ブルワリー〈ニトロ〉で新作のビールの開発に精を出しているところ。そんな中、ビールをテーマにしたドキュメンタリー映画がレブンワースで撮影されることに。しかし、オクトーバーフェスト前日の夜、会場近くで映画の関係者が殺されているのが見つかって……。愉快でおいしいビール・ミステリ第2弾!
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3.8【TVアニメ『啄木鳥探偵處』原作!】日本一の高塔として名を馳せる浅草十二階で、幽霊が目撃された――。明治四十二年九月、僕、金田一京助のもとへ石川啄木が持ち込んできた、幽霊騒動を報じる新聞記事。抜群の詩歌の才能を持ちながらも世に認められない啄木は、家族を養うため探偵業をはじめたところだった。その才能にほれ込んでいた僕は、助手役として探偵業に巻き込まれるが、事件は意外な方向へ……。第三回創元推理短編賞受賞作「高塔奇譚」をはじめ、人形の頭が男の喉を咬み切ったという怪事件「忍冬」など、トリックとロジックが冴える五編を収録する傑作連作ミステリ集。/【目次】第一話 高塔奇譚/第二話 忍冬/第三話 鳥人/第四話 逢魔が刻/第五話 魔窟の女/解説=細谷正充
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3.8奇妙な生き物やアリスという少女が暮らす不思議の国の夢ばかりみる大学院生の井森は、ある晩の夢の中で、不思議の国ではない緑豊かな山の中に辿り着く。そこには“お爺さん”なる男と、クララと名乗る車椅子の美少女がいた。翌朝井森は、大学校門の前で、夢で出会ったクララ──現実では「露天くらら」と名乗った彼女から、まるで夢の続きのように話しかけられる。彼女は何者かから脅迫を受けており、命の危機を感じていた。現実では頭が切れるが、夢の中ではビルという間抜けな蜥蜴になってしまう井森。二つの世界をまたぐ邪悪な犯罪計画から、クララとくららを守れるのか? 大人気『アリス殺し』の恐怖×驚愕ふたたび!/解説=千街晶之
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3.8ロンドンに住むケイトは、又従兄のコービンと住まいを交換し、半年間ボストンで暮らすことにする。だが、到着した翌日に、アパートメントの隣室の女性オードリーの死体が発見される。オードリーの友人と名乗る男や、アパートメントの向かいの棟の住人の話では、彼女とコービンは恋人同士だが、まわりには秘密にしていたという。そしてコービンはケイトに、オードリーとの関係を否定する。嘘をついているのは誰なのか? 見知らぬ他人に囲まれた、ケイトの悪夢の四日間が始まる。ミステリ界を席巻した『そしてミランダを殺す』の著者の衝撃作!/解説=川出正樹
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3.8ピーター・デス・ブリードン・ウィムジイ卿は十五代デンヴァー公爵の次男。クリケットの名手にしてワイン通、書物蒐集と音楽、そして犯罪の探究を趣味とする貴公子である。クリスティと並び称されるミステリの女王セイヤーズが創造したピーター卿は、従僕を連れた優雅な青年貴族として世に出たのち、作家ハリエット・ヴェインとの大恋愛を経て人間として大きく成長し、古今の名探偵の中でも屈指の魅力的な人物となった。本書はその貴族探偵の活躍する中短編から「不和の種、小さな村のメロドラマ」等、代表的な秀作7編を選んだ作品集である。【収録作】「鏡の映像」/「ピーター・ウィムジイ卿の奇怪な失踪」/「盗まれた胃袋」/「完全アリバイ」/「銅の指を持つ男の悲惨な話」/「幽霊に憑かれた巡査」/「不和の種、小さな村のメロドラマ」/解説=戸川安宣
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3.8「だいたいお前さん達は想像力ってもんが足りなさすぎるよ、新聞や雑誌にひょいひょい乗せられて、やれ空飛ぶ人だ空中散歩者だってはしゃいでるんだから。もう少し頭使って自分の考えで物を云いなさいよ」そう言い放ったこの、仔猫みたいなまん丸い目をした童顔の小男こそ名探偵猫丸先輩その人である。いろんなところにひょっこり出没しては、おかしな謎を鮮やかに解き明かして去ってゆく、憎めない名探偵の最初の事件簿。コミカルな筆致とロジカルな推理で読者を魅了し続ける正統派の本格推理作家、倉知淳が本格的なデビューを飾った連作集であり、最後には驚愕も待ち受けています。/解説=小野不由美/新版刊行によせて=倉知淳
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3.8雪の予感がする一月八日の早朝、小さな村から異変を告げる急報がもたらされた。駆けつけた刑事たちを待っていたのは、凄惨な光景だった。被害者のうち、無惨な傷を負って男は死亡、虫の息だった女も「外国の」と言い残して息を引き取る。片隅で静かに暮らしていた老夫婦を、誰がかくも残虐に殺害したのか。ヴァランダー刑事を始め、人間味豊かなイースタ署の面々が必死の捜査を展開する。曙光が見えるのは果たしていつ……? マルティン・ベック・シリーズの開始から四半世紀――スウェーデン警察小説に新たな歴史を刻む名シリーズの幕があがる!
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3.8ドイツ名家の御曹司ゼバスティアンは、文字のひとつひとつに色を感じる共感覚の持ち主だった。ベルリンにアトリエを構え写真家として大成功をおさめるが、ある日、若い女性の誘拐・殺人容疑で緊急逮捕されてしまう。取り調べの際、捜査官に強要されて殺害を自供したゼバスティアンを弁護するため、ベテラン刑事弁護士ビーグラーが法廷に立つことになった。緊迫感に満ち満ちた裁判の行方と、あらゆる者の想像を絶する驚愕の真相とは。『犯罪』で2012年本屋大賞翻訳小説部門第一位に輝いた著者が「罪とは何か」を真摯に問いかけた恐るべき問題作。
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3.8ヨーゼフ・メンゲレ、アウシュヴィッツ絶滅収容所に移送され、降車場に降ろされたユダヤ人を、強制労働へ、ガス室へと選別したナチスの医師。優生学に取り憑かれた彼は、とりわけ双子の研究に熱中し、想像を絶する実験を重ねた。1945年のアウシュヴィッツ解放時に研究資料を持って逃亡。その後、49年にアルゼンチンに渡った彼は、79年にブラジルの海岸で死亡するまで南米に潜み、捕まることも、裁かれることもなく様々な偽名のもと、生き続けたのだった。そして、その死が遺骨のDNA鑑定によって確認されたのは90年代になってからのことだ。なぜメンゲレは生き延びることができたのか? 彼は、どのような逃亡生活を送ったのか? 謎に満ちた後半生の真実と、人間の本質に、ジャーナリスティックな手法と硬質な筆致で迫った傑作小説。ルノードー賞受賞作。
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3.8ルイジアナ州デイボーン。姿を消したマロリーをさがし、彼女の故郷を訪れたチャールズは、子供を抱いた天使の石像を見て驚いた。これは確かにマロリーの顔だ。17年前に惨殺された女医を悼んで刻まれた天使。腕の中の子供は、行方不明になった彼女の娘だという。一方、デイボーンでは、自閉症の青年が両手を負傷させられ、町の一角を占拠する宗教団体の教祖が殺された。そして、容疑者としてよそ者が勾留されているという。その名は、マロリー。誰にも一言も告げず、ひそかに帰郷した彼女の目的は? いま、石に鎖された天使が翼を広げる――過去の殺人を断罪するために! 鮮烈無比なヒロインの活躍を描くシリーズ第4弾!/解説=三橋暁
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3.8平安の都は盗賊やつけ火が横行し、乱れはじめていた。だが、そんな世情をよそに、藤原道長は「この世をばわが世とぞ思う……」と歌に詠むほど、栄華を極めていた。紫式部はといえば『源氏物語』の人気に困惑気味の日々。そんななか、式部が訪れたあるお屋敷に、道長が瑠璃という謎の姫君を密かに住まわせていることを知る。式部はこの瑠璃姫と道長になぞらえて物語を書きはじめたものの、次第に現実と物語が重なってきて……。瑠璃姫とはいったい何者なのか? 式部が時の権力者に対して仕掛けた雅な意趣返しとは? 『源氏物語』をめぐる謎を解き明かす、平安王朝推理絵巻第3弾!/解説=荻原規子
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3.8謎の人物が主催する、行方不明の女性の誕生会。そこで浮かび上がる醜い人間関係――第一話「主役のいない誕生会」。クリスマスイブの夜、ホテルで繰り広げられる過去の暴露大会――第二話「ニンジンなんてキュウリなんだよ」。互いに何かを隠しつつ進む、二人の男の愛憎渦巻く会話劇――第三話「おしゃべりな男たち」。あなたは必ずやり直せる。さあ立って。自首する前に、ご家族に会いに行きましょう――第四話「雪月花の女たち」。大女優の舞台出演を実現させるため、大御所脚本家が遺した最後のクイズに五人の男女が挑む――第五話「タイトルはそこにある」。編集者が次々繰り出す難題に、鬼才はどう応えたか? ベストセラーとなった『公開処刑人 森のくまさん』の著者が贈る、全編書き下ろしの作品集。巻末には本書の成立過程を記したあとがきを収録する。
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3.8凄腕の女性刑事弁護士アイゼンベルクの元に、ホームレスの少女から弁護の依頼が持ち込まれる。少女の友人のホームレスの男が若い女性を殺害し、死体を損壊した容疑で逮捕された件だという。驚いたことに、その男がアイゼンベルクの元恋人だったという衝撃の事実が判明する。若くして名声を得た物理学教授だった彼が、なぜ路上生活を送り、殺人の被疑者となったのか? 二転三転する事態と、熾烈極まりない裁判の果てに姿をあらわす、あまりに意外な真実。ドイツ推理作家協会賞受賞作家が放つ傑作ミステリ!/解説=川出正樹
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3.8とある地方都市でSNSコミュニティ、『現代詩人卵の会』のオフ会が開かれた。九人の参加者は別れ際に、これからも創作を続け、十年後に再会する約束を交わした。しかし当日集まったのは五人で、残りが自殺などの不審死を遂げていた。なぜ彼らは死ななければならなかったのか。細々と創作を続けながらも、詩を書いて生きていくことに疑問を抱き始めていた僕は、彼らの死にまつわる事情を探り始めるが……。生きることと詩作の両立に悩む孤独な探偵が、創作に取り憑かれた人々の生きた軌跡を辿り、見た光景とは? 気鋭の著者が描くミステリ長編。/解説=宇田川拓也
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3.8ある日、ヒースロー空港のバーで、離陸までの時間をつぶしていたテッドは、見知らぬ美女リリーに声をかけられる。彼は酔った勢いで、1週間前に妻のミランダの浮気を知ったことを話し、冗談半分で「妻を殺したい」と漏らす。話を聞いたリリーは、ミランダは殺されて当然と断じ、殺人を正当化する独自の理論を展開してテッドの妻殺害への協力を申し出る。だがふたりの殺人計画が具体化され、決行の日が近づいたとき、予想外の事件が起こり……。男女4人のモノローグで、殺す者と殺される者、追う者と追われる者の攻防が語られる鮮烈な傑作犯罪小説。/解説=三橋曉
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3.8クリスマスシーズンで賑わうレイキャヴィクのホテルの地下室で、一人の男が殺された。ホテルの元ドアマンだったという地味で孤独な男は、サンタクロースの扮装でめった刺しにされていた。捜査官エーレンデュルは捜査を進めるうちに、被害者の驚愕の過去を知る。一人の男の栄光、悲劇、転落……そして死。自らも癒やすことのできない傷をかかえたエーレンデュルが到達した悲しい真実。全世界でシリーズ累計1000万部突破。翻訳ミステリー大賞・読者賞をダブル受賞。家族の在り方を描き続ける著者の、『湿地』『緑衣の女』に続くシリーズ第3弾。
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3.8あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。姉のコンスタンスといっしょに、他の家族が皆殺しにされたこの屋敷で、ずっと暮らしている……。惨劇の起きた資産家一族の生き残り。村人から忌み嫌われ、外界との交流も最低限に止める彼女たちは、独自のルールを定めて静かな生活を送っていた。しかし従兄チャールズの来訪をきっかけに、美しく病んだ箱庭世界は大きな変化をむかえる。“魔女”と称された異色作家が、超自然的要素を排し、無垢な少女の視点から人間心理に潜む悪意が引き起こす恐怖を描く代表作。/解説=桜庭一樹
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3.8キャシー・マロリー。ニューヨーク市警巡査部長。主にコンピュータ・ハッキングで発揮される天才的な頭脳と、張り込みや尾行ができないほどの鮮烈な美貌の持ち主。盗みと逃走に明け暮れ、孤独を友とした幼年時代ゆえに心に深い傷を持ち、感情を他人に見せることはない。彼女には善も悪もない。あるのは目的の遂行だけ。里親である刑事マーコヴィッツが捜査中に殺され、勝手に捜査を引き継いだ彼女は、裕福な老婦人ばかりを狙う連続殺人鬼を追いはじめる。怪しい霊媒、大魔術師の未亡人、自閉的なチェスの天才児……奇矯な人物の絡み合いに隠された真実は? ミステリ史上最もクールなヒロインの活躍を描くシリーズ第1弾!/解説=豊崎由美
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3.8【第1位『このミステリーがすごい!2011年版』海外編】十七歳の兄と十五歳の弟。ふたりは森へ行き、戻ってきたのは兄ひとりだった。家政婦ハンナに乞われ二十年ぶりに帰郷したオーレンを迎えたのは、過去を再現するかのように、偏執的に保たれた家だった。夜明けに何者かが玄関先に、死んだ弟の骨をひとつひとつ置いてゆく。一見変わりなく元気そうな父は、眠りのなかで歩き、死んだ母と会話している。これだけの年月を経て、いったい何が起きているのか? 半ば強制的に保安官の捜査に協力させられたオーレンの前に、町の人々の秘められた顔が、次第に明らかになってゆく。迫力のストーリーテリングと卓越した人物造形。著者渾身の大作。/解説=川出正樹
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3.8「ねえ、わたしの話を聞いて……」偶然車に乗せた少女に導かれてマイクが足を踏み入れたのは、十代の子どもばかりが葬られている、忘れ去られた墓地。怯えるマイクの周辺にいつのまにか現れた子どもたちが、次々と語りはじめるのは、彼らの最期の物語だった……。廃病院に写真を撮りにいった少年が最後に見たものは。出来のいい姉に嫉妬するあまり、悪魔の鏡をのぞくように仕向けた妹の運命は。サルの手に少女が願ったことは。大叔母だという女の不潔な家に引き取られた少女が屋根裏で見たものは。ノスタルジー漂うゴーストストーリーの傑作。
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3.8書店員がその年一番売りたい本を選ぶ書店大賞。その授賞式の当日、成風堂書店に勤める杏子と多絵が会場に向かおうとした矢先、福岡の書店員・花乃が訪ねてくる。「書店の謎を解く名探偵」多絵に、書店大賞事務局に届いた不審なFAXの謎を解いてほしいという。同じ頃、出版社・明林書房の新人営業マンである智紀にも、同業の真柴を介して事務局長直々に同様の相談が持ち込まれる。華やかな一日に不穏な空気が立ちこめて……。授賞式まであと数時間。無事に幕は上がるのか?! 〈成風堂書店事件メモ〉×〈出版社営業・井辻智紀の業務日誌〉両シリーズのキャラクター勢ぞろい。書店員の最も忙しい一日を描く、本格書店ミステリ。/解説=宇田川拓也
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3.8イングランド南西部の田舎町に住むエレイン・ドーソンは幼馴染みのロザンナの結婚式に招待され、ジブラルタルに向かって出発したが、霧のためロンドンのヒースロー空港で足止めされ、親切な弁護士の家に一泊したのを最後に失踪する。何があったのか? 五年の時が流れ、雑誌の元記者だったロザンナはこの事件をはじめとする失踪事件について、調べることになる。当時疑われた弁護士は何か知っているのか? 障害のある兄の世話に疲れたエレインは自発的に姿を消したのか? ロザンナは友人の不可解な失踪事件の調査に次第に深入りしていく……。最後にあなたを待つ震えるほどの衝撃。作品すべてがベストセラーとなる、ドイツ一の人気作家による最高傑作!