ユーザーレビュー きらめく共和国 アンドレス・バルバ / 宇野和美 『ある町にどこからか現れた、理解不能な言葉を話す子どもたち。奇妙な子どもたちは、盗み、襲い、そして32人が、一斉に死んだ。』 本書の帯に書かれたこの短い文章が、物語で起きる全てのことを端的に表し、事件の渦中にあった1人の人物が22年後に述懐していく構成となっています。 うつくしい亜熱帯の国の景色と...続きを読む貧困問題を抱えるサンクリストバルは、架空の都市でありながら私たちの世界にも必ず存在する場所です。つまり存在しない物語でありながら、32人の子供たちを産む土壌はこの世界に存在するのです。現代への予言とも呼べるかもしれません。 サンクリストバルの貧困は日本の中の貧困とは性質がまったく異なります。最初に出版されたスペインでの立ち位置と、日本人が受け止めるこの物語の手触りはギャップがあるように思います。 帯の文章がまるでホラー小説のような恐怖感を駆り立て、得体の知れない異国の子供たちが恐ろしく感じるのは日本人ならではの捉え方かもしれません。ですが語り手が数十年昔の出来事として語ることから実録風フィクションともちょっと一線を置いており、そういった怖いもの見たさの読み方でも楽しめる作品だと思います。 また、最後まで読むとこの本の装丁の素晴らしさ(帯の下にも小さな秘密が…)がお分かりいただけるかと思いますので、物理的な本として手に取って頂くことをお勧めします。 Posted by ブクログ きらめく共和国 アンドレス・バルバ / 宇野和美 架空の街とそこを流れる大河と隣接するジャングルを舞台にある男の回顧録として語られるこの物語は一種、ファンタジーのような、それでいて犯罪事件録にも読み取れる。 小鳥の囀りのように~とも表現される子どもたちの言語のことや、並べられた彼らの遺体という表現から、謎を突き止めたくて読む手が止まらない。 街で...続きを読む暮らす親のいる子どもたちもその奇妙なある意味、毒を持つ集団へ惹かれてゆくのは容易に肯ける。 子どもたちはなぜ家を出たか、なぜコミュニティを造ったか多くは語られてはいないけれど大人の一人として考えを深めてゆかなくては。 Posted by ブクログ きらめく共和国 アンドレス・バルバ / 宇野和美 あらすじからホラー要素がある作品かと思いきやファンタジー要素が強い作品だった。 パンズ・ラビリンス的な「子どもしか知らない世界」のようであるけれども本当に何があったのかとかは語られないので、好き嫌いは分かれると思う。 ここまで極端な形ではなくても自分も子どもの時に大人たちには秘密の世界を作っていたこ...続きを読むとを思い出したり、自分はいつからそういう世界を持たなくなったんだっけ、と感傷的な気分になったりした。 Posted by ブクログ きらめく共和国 アンドレス・バルバ / 宇野和美 ストーリーは、妻とその連れ子と南米の(架空の)町に移住してきた主人公が、20年以上前に自分が職員として関わったショッキングな事件を回顧録という形で振り返っている。 舞台となる鬱蒼としたジャングルや灼熱の埃っぽい町は、この事件が決して起こり得ない話ではないことを暗示していたのに、主人公や大人達が何を...続きを読む見落とし、何を軽視し、今でも罪悪感に燻られているのは何故か。 タイトルの “きらめく” というのは本文特有の抽象的・文学的な表現かと思いきや、とても物理的なものであり、そのシーンと直後に起こることの描写は映画的でもあります。 カズオイシグロさんに通じるような、重過ぎないテーマなのに逆にファンタジーと現実が紙一重であると感じさせてくれる作品でした。 〈おまけ〉 ところで作中には主人公が自分より文化的に無意識には下に見ているだろうイノセントな存在が何人か出てきます(犬、こちら側の子ども、あちら側の子ども、半分こちら側の子ども、エキゾチックな妻)。が結局、信頼や愛を築いているのに、なぜか深くは理解し合えていないような印象が象徴的。 クラシックの響きと南米のソウルミュージック、川、血、、混ざり合うことはあっても絶対に一つにはなれない気が確かにします。 Posted by ブクログ きらめく共和国 アンドレス・バルバ / 宇野和美 SF?集団の子供が突然現れ、ギャング団のように振る舞い、突然死ぬという。それだけで、市勢の不安、生活風景などあんまり描写がないので、なんだかよくわからないというか、背景にあるものが理解できなかった。表現したいのは、理解不能な奇妙な物を、一方的に拒絶したらそこでおしまいで、それについて、寄り添え、考え...続きを読むろ、ということなのか?宗教的、民族的な争いのなくならない現在において、一体何が優先すべき事柄なのか、さっぱりすっきりしない世の中で、そういうのを考える作品なんでしょうか? Posted by ブクログ アンドレス・バルバのレビューをもっと見る