森谷明子の作品一覧
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ユーザーレビュー
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働く女性の生活の一部を切り取った短編アンソロジー
女性視点で描かれる各小説から、働く女性の悩み、苦しみ、喜びを感じ取ることができ、不覚にも「クール」で涙した。
他にも、伊坂幸太郎さんの書いた短編は短いながらも伏線が貼られており、読んでいて点と点がつながる心地よさを感じることができた。
エール3作
...続きを読むを通して、「働くこと」「社会とつながること」の二つについて考えるきっかけを得れたと思う。今までは社会の歯車というマイナスイメージを持っていた会社員も、見方を変えれば誰かを喜ばせる素敵な仕事のように感じた。
社会人になったのちも、誰かを喜ばせる仕事をしたいし、その喜ばせれるかも知れない機会を「面倒だから」という理由で逃げない大人になりたいと強く思う。
エールは女性中心で「派遣社員」「契約社員」「パート」といった人が登場することが多かった。今度は男性中心のエールを読みたいと思う。
Posted by ブクログ
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前に読んだ「春や春」が良かったので、姉妹編のようなこちらにも行ってみた。
舞台は瀬戸内海に浮かぶ小島の分校。
愛媛県では小学生の時から俳句の授業があるというのは知っていたが、本の中では中学校の卒業記念品に歳時記をもらっていた。なかなかだな。
「春や春」と異なりメンバー集めの妙や俳句の奥深さに触れ
...続きを読むるのはほどほどで、サクサクと句戦の積み重ねに入る。
その分前作にあった俳句についての驚きや発見は少ないが、代わりにダイレクトに俳句鑑賞の面白さに溢れていた。
P.248にディベートの要点が書いてあったのも助けになった。
・兼題は生かされているか。
・無駄な言葉がないか。
・鑑賞者として、句のイメージをどれだけ豊かにふくらませられるか。
島で生まれ育った4人に、松山の親と離れて島で暮らす1人が入ったチーム。
俳句の面白さに嵌っていくとともに進路や家庭の事情の中で揺れる心情がそれぞれの句に迸る。
球技部での夢破れ、俳句甲子園出場のメンバー探しを手伝う内にそのまま引きずり込まれたた航太。
「今ここがおれのポジション南風吹く」
家業の和菓子屋を継ぎたくても狭い島での商売ではその行く末は甘くなく、そんな訳で進路に悶々とする彼の、それでもこの島で生きていることへの感情を言い切る前向きさが際立つ。
俳句甲子園への出場に熱意を燃やす日向子。
「雨の香の胸をこぼるる日焼かな」
自信家のように見えて、その実自分にできることを証明したくて自らを鼓舞し続ける彼女の、いつもは見せない大人っぽく女らしさが溢れた句にドキッとする。
文才豊かにもかかわらず最後までメンバーになることを拒んだ恵一。
「しあわせな試行錯誤や水の秋」
いけ好かないと思っていた俳句甲子園を内側から知らなければ本当の批判はできないとメンバーになった彼。進路のことでも漁師の親と諍う彼の、揺れる思いの丈が詰まった句。
由緒ある神社の神職の跡取りで情報通の和彦。
「草笛よ法螺のごとくに海を行け」
永く続く神社が故にそれを継ぐことが既定となった将来を受け入れながら、小さな世界に閉じ籠ることなく人との繋がりを広げる彼が詠んだ句は、海のせいで本土と隔てられ不便な暮らしを強いられている島の子らの屈託を洗い流すような力強さ。
文芸部で短歌好きな京。
「掌にもがく蝉や言葉だけの故郷」
ちょっとした行き違いとその年頃特有の頑なさで母親と折り合いを欠き家を出て島の親戚のところで暮らす彼女の切ない思い出。
そんな彼女への兄からの答礼句がなんとも素敵。説明のできない興奮に包まれていたのは五木分校の5人だけではない。
「泣きやまぬ妹と居る蝉時雨」
P.307に藤ヶ丘女子高が登場。そこから進んだ敗者復活戦の兼題を見て「春や春」と同じ大会を別の高校の話で読んでいたこと気がついた(遅いって)。
色々な学校が入り乱れ、小さなエピソードでも出場校それぞれにドラマがあることを思わせる作りがとても良かった。
Posted by ブクログ
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紫式部が探偵役を務める平安ミステリー。中宮定子の消えた猫の謎、堀河院真夜中の笛の音の謎、といった「日常の謎」を解決しながら、自身の作品の失われた一帖「かかやく日の宮」にまつわる大きな謎の解明に挑む。すごく面白かった。
なお、紫式部という呼び名は本書では使われないが、ややこしくなるのでここでは紫式
...続きを読む部と書くことにする。
三部構成の第一部は、紫式部のもとで働く女童(めのわらわ)あてき視点で進んでいく。十二、三歳くらいだろうか。西の京のはずれで生まれ、母を早くに亡くし、ばばさまに育てられ、十歳のときに紫式部の屋敷にきたというあてきは、猫好きのおてんば娘。お食事を運んだり、お手紙の取り次ぎをしたり、御主(おんあるじ)の話し相手になったりとお仕えしながらも、迷い猫を見つけては屋敷に連れてきて飼い慣らしたり、こっそり屋敷を抜け出して遊びに行ったりと、意外にのびのびと暮らしている様子が面白い。
あてきの初恋のゆくえと、中宮定子の消えた猫の謎解きとが第一部の本筋だが、それらを楽しむうちにすーっと物語の世界に入り込めていて、紫式部の人となり、左大臣藤原道長の政治力、後宮の人間関係などがわかってくる。それがこの後に控えるメインディッシュを楽しむための綿密な仕込みになっている。
紫式部年表(ただしどれも正確なところは不明)と、本書で描かれている年代は下記の通り。
九七三 誕生
九九八 藤原宣孝と結婚
九九九 賢子誕生 ←【第一部】
一〇〇一 宣孝と死別
一〇〇五 彰子宮に出仕 ←【第二部】
没年は、一〇一四年説から一〇三一年説まである。本書では、【第三部】で語られる一〇一三〜一〇二〇の間に、出仕をやめ、亡くなっている。
第二部、第三部と時を経るに従って、紫式部もあてきも、人生のステージが移り変わっていっているのがわかる。第二部ではついに、失われた一帖「かかやく日の宮」の謎に迫り、紫式部と道長の関係性にも変化が見られる。そして第三部は「決着」。紫式部は自分の作った物語が見舞われた運命に対しどう決着をつけたのか。また、「事はどのように成し遂げられたのか」という謎に対するミステリーとしての決着も鮮やか。見事としか言いようがない。
丸谷才一と同じ問いを立てながらも、全く異なるアプローチでの解決を見せてくれた。今この瞬間の気持ちとしては、森谷明子さんの描いてくれた世界の方が断然、断然好きだな。でも、人々の「読む楽しみ」や物語作家の「書く苦悩と覚悟」に対する強い思いはどちらにも共通していると感じた。
Posted by ブクログ
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本を手にしたときは厚さにちょっとビビりましたが、読んでみるとあっという間でした。
紫式部が主人公なのか、それとも光源氏がそうなのかと思って読み始めたら、猫好きの女童(めのわらわ)、12歳の少女「あてき」目線で話が進む。
あてきの仕えている御主(おんあるじ)が藤原の香子(かおるこ・のちの紫式部)であ
...続きを読むる。
当初は知る人ぞ知る程度の作品であった『源氏物語』。
しかし宮廷生活を知らない彼女の書く物語は、貴族の暮らしぶりの細かな部分がまちがえているとのそしりも受けていた。
だから、喜んで宮中に出仕したのかと思いきや、道長からの出仕要請をかたくなに拒み続ける香子。
ではどうして紫式部は中宮・彰子に仕えることになったのか。
というのが大きな謎として、消えた猫の謎とか、誰もいない密室から聞こえてきた笛の音とか、文箱の中身紛失事件とか、日常の小さな謎を、洞察力に長けた香子が推理していく。
そしてこれらの謎を繋ぎ合わせたとき、大きな謎が解けてくるという壮大な仕掛け。
あてきは、自由に動き回ることのできない貴族の女性である香子の目となり手足となって、その推理を支えるとともに、彼女にも解決しなければならない問題があって、私としてはこちらの方が面白かった。
木登りやかけっこが得意なあてきが、初めて負けた相手が岩丸。
それ以来岩丸のことが気になってしょうがないのだけれど、彼は何か問題を抱えているようで、なかなかゆっくり言葉を交わすことができない。
追いつめられているように見える岩丸をなんとか救おうと、あてきはあちこち岩丸を捜しまわる。
あてきは気づいていないけど、それを「恋」というのだよ。
かわゆい。
あてきの行動からすべてを推察した香子は、ことの顚末を伝えるべく彰子の元へ行く。
彰子とつながりを持った後も、出仕を断り続ける香子の本心とは。
”自分の主のためには他人をおとしめることもしなければならない。わたしにそんなこと、できようはずもないのに”
え?
『紫式部日記』で結構人の悪口書いていませんでしたか?
この作品の紫式部は口が堅く、人を嫌な思いにさせることは絶対に言わないし、しない。
ある時届いた手紙を読んで、ショックを受けたらしい香子にあてきが「誰が何と書いてよこしたのか」を尋ねても答えようとはしなかった。
”どこからのとも、何が書いてあるとも、話してくれる気はなさそうだ。使用人がそれ以上ねだるわけにもいかない。阿手木(あてき)は部屋を出ながら決心した。あとで見てやろう。”
ブラボー。
『源氏物語』の失われた一巻『かかやく日の宮』。
私はこのタイトルに、ずっと違和感があった。
だって長いでしょ?
『桐壺』とか『若紫』とか『明石』とか『末摘花』とか『花散里』とかに比べると、明らかに。
だから『かかやく日の宮』なかった説を取っていたのだけど、この本を読んでいる時ふと思ったの。
『輝日宮』なんじゃね?
なら、ありかも。
せっかくそこまで思ったのに、この作品では『かかやく日の宮』という表記であることが肝心なのね。
むむう。
12歳の少女として作品に登場したあてきは、物語の最後、夫に先立たれ寡婦として今は亡き紫式部の娘と再会する。
道長の剣呑さや彰子の賢さもいい味出してます。
Posted by ブクログ
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少し前のNO Book & Coffee NO LIFEさんのレビューに惹かれて読んでみた。
巻頭に【俳句甲子園について】が書いてあって、俳句甲子園なんて本当にあるのかと思ったが、本当にあるんだ。
今年の地方大会の兼題は「日永」「草餅」「ヒヤシンス」とある。先週5/9が提出締切だったのね。
とい
...続きを読むうことが分かって、さらなる興味を持って本編に入る。いやいや、これは面白い。
茜の思いやトーコとの会話に、早くも俳句の持つ面白さが溢れ出る。
そこから、子規の句だったとしても作者のつもりと違う読み方があっても良いだとか、声に出してみると「藻の花も」より「藻の花や」のほうが明るく響くとか、知っている人には当たり前かも知れないが、門外漢の私には目から鱗の話が満載。
『季語を信頼する』という森先生の指導内容にはとても感じ入った。
こういう話はメンバー集めも見どころなのだけど、全員が俳句好きや文学少女というわけでもなく、それぞれが「俳句以外で心惹かれるもの」を持っているのが良い。
メンバーも揃って、短い期間で実作から実戦に挑んでいく後半。
練習試合の相手が結構ケンカ腰な感じで、もう少しスマートにディベートするものと思っていたのでちょっと引いてしまったが、話が進めばこれが望ましい鑑賞の姿でないことも分かってくる。
大会が深まるに連れ、試合経過や作句の呻吟の丁寧な描写から、そこに詰まった思いを知って披講される句を鑑賞することが出来る。
マネージャーに徹するトーコも含めて皆で言葉をとことん吟味して作った敗者復活戦の句(胸中は聞かず草笛一心に)やここに辿り着くまでに費やした時間や思いが詰まった準決勝での茜の句(夏めくや図書室に聴く雨の音)にはじんと来た。
とても爽やかな読み心地。
今年の地方大会は、6/10,11と17,18、全国大会は8/18~21とのこと。ちょっと気にしておこう。
Posted by ブクログ
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