【感想・ネタバレ】千年の黙 異本源氏物語のレビュー

あらすじ

【第13回鮎川哲也賞受賞作】帝ご寵愛の猫はどこへ消えた? 出産のため宮中を退出する中宮定子に同行した猫は、清少納言が牛車につないでおいたにもかかわらず、いつの間にか消え失せていた。帝を慮り左大臣藤原道長は大捜索の指令を出すが――。闇夜に襲われた中納言、消え失せた文箱の中身。縺れ合う謎に挑む紫式部を描いた第一部「上にさぶらふ御猫」。『源氏物語』が千年もの間抱え続ける謎のひとつ、幻の巻「かかやく日の宮」――この巻はなぜ消え去ったのか? 式部を通して著者が壮大な謎に挑む第二部「かかやく日の宮」。紫式部を探偵役に据え、平安の世に生きる女性たち、そして彼女たちを取り巻く謎とその解決を鮮やかに描き上げた華麗な王朝推理絵巻。

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 第13回鮎川哲也賞受賞作で、森谷明子氏のデビュー作である。今年の大河ドラマの主人公紫式部が探偵役の平安ミステリーを再読した。時代的には長保元年(1000年)から、紫式部の没後の寛仁4年(1020年)までを描いている。

 本作は3部構成で、第1部「上にさぶらう御猫」では、紫式部は藤原宣孝と結婚して長女賢子が生まれたばかりである。「源氏物語」を書き始めた頃であり、のちに仕えることになる藤原道長の娘彰子は入内前。あたかも出産のために、宮中を退出する中宮定子に同行した帝ご寵愛の猫が行方不明となる。左大臣藤原道長は猫探索の指令をだすが、いったいどこへ?

 第2部「かかやく日の宮」では、存在していたかもしれないと言われる幻の帖「輝く日の宮」の謎を追う。作者は「存在説」に立っており、なぜ失われて後世に伝わらなかったのか謎を追う。
 
 第3部「雲隠」とは、題名だけで本文が存在しない帖のことである。もともと題名だけで本文は書かれなかったとする説と、本文はあったが紛失したとする説があるという。ここでも作者は、「本文は書かれていた説」に立っている。なぜ題名だけしか伝わっていないのか、本文は一体どうなったのか?

 読み終えると、全編を通じて藤原道長のラスボス感が、文章の底から浮かび上がってくるような印象がある。それから時々登場する藤原実資がいい味を出している。ちょっと言い過ぎかもしれないが、大河ドラマで演じている秋山竜次そのままかと。 

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2024年05月24日

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 紫式部が探偵役を務める平安ミステリー。中宮定子の消えた猫の謎、堀河院真夜中の笛の音の謎、といった「日常の謎」を解決しながら、自身の作品の失われた一帖「かかやく日の宮」にまつわる大きな謎の解明に挑む。すごく面白かった。
 なお、紫式部という呼び名は本書では使われないが、ややこしくなるのでここでは紫式部と書くことにする。

 三部構成の第一部は、紫式部のもとで働く女童(めのわらわ)あてき視点で進んでいく。十二、三歳くらいだろうか。西の京のはずれで生まれ、母を早くに亡くし、ばばさまに育てられ、十歳のときに紫式部の屋敷にきたというあてきは、猫好きのおてんば娘。お食事を運んだり、お手紙の取り次ぎをしたり、御主(おんあるじ)の話し相手になったりとお仕えしながらも、迷い猫を見つけては屋敷に連れてきて飼い慣らしたり、こっそり屋敷を抜け出して遊びに行ったりと、意外にのびのびと暮らしている様子が面白い。
 あてきの初恋のゆくえと、中宮定子の消えた猫の謎解きとが第一部の本筋だが、それらを楽しむうちにすーっと物語の世界に入り込めていて、紫式部の人となり、左大臣藤原道長の政治力、後宮の人間関係などがわかってくる。それがこの後に控えるメインディッシュを楽しむための綿密な仕込みになっている。

 紫式部年表(ただしどれも正確なところは不明)と、本書で描かれている年代は下記の通り。

 九七三 誕生
 九九八 藤原宣孝と結婚
 九九九 賢子誕生 ←【第一部】
一〇〇一 宣孝と死別
一〇〇五 彰子宮に出仕 ←【第二部】

 没年は、一〇一四年説から一〇三一年説まである。本書では、【第三部】で語られる一〇一三〜一〇二〇の間に、出仕をやめ、亡くなっている。

 第二部、第三部と時を経るに従って、紫式部もあてきも、人生のステージが移り変わっていっているのがわかる。第二部ではついに、失われた一帖「かかやく日の宮」の謎に迫り、紫式部と道長の関係性にも変化が見られる。そして第三部は「決着」。紫式部は自分の作った物語が見舞われた運命に対しどう決着をつけたのか。また、「事はどのように成し遂げられたのか」という謎に対するミステリーとしての決着も鮮やか。見事としか言いようがない。

 丸谷才一と同じ問いを立てながらも、全く異なるアプローチでの解決を見せてくれた。今この瞬間の気持ちとしては、森谷明子さんの描いてくれた世界の方が断然、断然好きだな。でも、人々の「読む楽しみ」や物語作家の「書く苦悩と覚悟」に対する強い思いはどちらにも共通していると感じた。

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2023年10月20日

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本を手にしたときは厚さにちょっとビビりましたが、読んでみるとあっという間でした。

紫式部が主人公なのか、それとも光源氏がそうなのかと思って読み始めたら、猫好きの女童(めのわらわ)、12歳の少女「あてき」目線で話が進む。
あてきの仕えている御主(おんあるじ)が藤原の香子(かおるこ・のちの紫式部)である。

当初は知る人ぞ知る程度の作品であった『源氏物語』。
しかし宮廷生活を知らない彼女の書く物語は、貴族の暮らしぶりの細かな部分がまちがえているとのそしりも受けていた。
だから、喜んで宮中に出仕したのかと思いきや、道長からの出仕要請をかたくなに拒み続ける香子。
ではどうして紫式部は中宮・彰子に仕えることになったのか。

というのが大きな謎として、消えた猫の謎とか、誰もいない密室から聞こえてきた笛の音とか、文箱の中身紛失事件とか、日常の小さな謎を、洞察力に長けた香子が推理していく。
そしてこれらの謎を繋ぎ合わせたとき、大きな謎が解けてくるという壮大な仕掛け。

あてきは、自由に動き回ることのできない貴族の女性である香子の目となり手足となって、その推理を支えるとともに、彼女にも解決しなければならない問題があって、私としてはこちらの方が面白かった。

木登りやかけっこが得意なあてきが、初めて負けた相手が岩丸。
それ以来岩丸のことが気になってしょうがないのだけれど、彼は何か問題を抱えているようで、なかなかゆっくり言葉を交わすことができない。
追いつめられているように見える岩丸をなんとか救おうと、あてきはあちこち岩丸を捜しまわる。

あてきは気づいていないけど、それを「恋」というのだよ。
かわゆい。

あてきの行動からすべてを推察した香子は、ことの顚末を伝えるべく彰子の元へ行く。

彰子とつながりを持った後も、出仕を断り続ける香子の本心とは。
”自分の主のためには他人をおとしめることもしなければならない。わたしにそんなこと、できようはずもないのに”

え?
『紫式部日記』で結構人の悪口書いていませんでしたか?

この作品の紫式部は口が堅く、人を嫌な思いにさせることは絶対に言わないし、しない。
ある時届いた手紙を読んで、ショックを受けたらしい香子にあてきが「誰が何と書いてよこしたのか」を尋ねても答えようとはしなかった。

”どこからのとも、何が書いてあるとも、話してくれる気はなさそうだ。使用人がそれ以上ねだるわけにもいかない。阿手木(あてき)は部屋を出ながら決心した。あとで見てやろう。”
ブラボー。

『源氏物語』の失われた一巻『かかやく日の宮』。
私はこのタイトルに、ずっと違和感があった。
だって長いでしょ?
『桐壺』とか『若紫』とか『明石』とか『末摘花』とか『花散里』とかに比べると、明らかに。
だから『かかやく日の宮』なかった説を取っていたのだけど、この本を読んでいる時ふと思ったの。
『輝日宮』なんじゃね?
なら、ありかも。

せっかくそこまで思ったのに、この作品では『かかやく日の宮』という表記であることが肝心なのね。
むむう。

12歳の少女として作品に登場したあてきは、物語の最後、夫に先立たれ寡婦として今は亡き紫式部の娘と再会する。

道長の剣呑さや彰子の賢さもいい味出してます。

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2023年08月23日

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ネタバレ

 あー、なんて楽しい時間だったんだろう✨

 紫式部がまだ宮中に仕えていない時から物語は始まり、最後は彼女の死後となります。

 そのなかで源氏物語の謎である『かかやく日の宮』や『雲隠』などの謎解きの言葉が最高に面白かった(*^^*)

 続きも気になりますが、この作品は凄い!

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2022年07月06日

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『深山に棲む声』がなかなか面白かったので、本作を読んでみました。デビュー作とのことです。
平安の世、藤原道長が栄華を極めた時代。紫式部を探偵役とし、日常の謎解き(中宮定子の消えた猫、堀河院の笛の音)や、源氏物語の幻の巻「かかやく日の宮」「雲隠」についての考察があり非常に楽しめました。
ワトソン役の側近の女房阿手木や、その年下の友達小侍従、式部の夫藤原宣孝、中宮彰子、左大臣藤原道長など、人物もイキイキ。特に小野宮実資が、式部の書いた物語を、所詮は女のはかないすさびごと…といって苦笑しながら読んでいたのに、気づいたらすっかり引き込まれて読み終えてしまった行。くすっと笑ってしまいました。また、阿手木と犬丸(義清)の恋愛も微笑ましかったです。
三部作だそうなので、続きも読みたいと思います。

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2013年05月12日

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紫式部がまだそう呼ばれるよりはるか前から物語は始まる。まだ源氏物語も最初の一帖しか生み出されていないころだ。その藤原為時の娘、香子に仕える女童、あてきを語りに据えた中宮定子と帝の御猫さま失踪事件を扱う第一章、源氏物語の第一帖『桐壺』と第二帖『若紫』のあいだに存在したのではないかという『かかやく日の宮』の帖を巡る第二章、光源氏の最期を記した『雲隠』の帖に老いた道長が固執する最終章からなる。女童で登場したあてきが恋をし、初恋のきみとの恋を実らせさらには死に別れ出家するまでの物語でもある。面白かった。あてきが活躍する第一章が特に好きだ。御猫さまの行方はすぐ解るがミステリとしても面白く、あてきと岩丸の恋の話としても楽しい。第二章はありそうで読んでいてわくわくし、式部の気持ちに胸が傷んだ。全編において知った名前の人たちが動いたりしゃべったりしているのが不思議で引き込まれててさくさく読んだ。次作の文庫化を心待ちにしている。

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2012年04月09日

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なぜ源氏物語に欠損があるのか?

 という疑問に平安時代への愛と夢がたっぷり詰まった小説です。
平安時代小説というと史実をなぞらえたり陰陽師が出てきたりするものが多いのですが、これは上手いこと創作を絡めていて楽しく読めました。
実資の役割に思わず笑ってしまいました。

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2009年12月29日

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「日常の謎」を解きながら『源氏物語』の謎にも迫るという一冊で2度おいしい極上ミステリ。
舞台は平安、藤原道長の照り輝く時代。
時代小説としても楽しめるし、フツーにミステリとしてもよくできているし登場人物たちの個性がしっかりしてて面白い。
なかでも探偵役の紫式部の切れ味の鋭さには舌を巻きます。
そうだよね、なんたって『源氏物語』書いた人だもん。

人は死なないし、紫式部主従たちの頭はいいけどほんわかしててかわいいし
なんかこのふたり知ってる・・・と考え出したら
『なんて素敵にジャパネスク』の瑠璃姫&小萩を思い出し、楽しく読みきってしまいました。
3部作らしいので次回作の文庫化が待ち遠しいです

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2009年10月07日

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去年のうちに読んでおけば良かった本、その2。

帝に愛猫がいたことも、源氏物語の失われた1帖があるという説も、ミステリーのための創作ではなく、史料に残っている。そんな歴史上のトピックを取り込み、謎に仕立て、当時の貴族社会の情勢も押さえつつ、しかもストーリーに無理がない。
歴史小説であり、ミステリー小説。融合ぶりがうまい!

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2025年04月13日

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平安時代の謎解きにどっぷり浸かった鮎川哲也賞受賞作。紫式部がその名になる前、源氏物語を紡ぐその裏で何があったか、物語がどう伝わったか。源氏物語や紫式部を巡る謎解きも楽しく、全てわかった時には人の心や事情や立場、色んなことがこの時代にもあり深さを感じ取れる。知らないことばかりの平安時代の人々の背景も含めた物語が雅で華やかで、なのに人間臭くもあって読むのが楽しかった。失われた一帖、「かかやく日の宮」への解釈が特に素晴らしい。そしてあの時代、本はみんなで写本したことがとてつもない労力で想像するだけで舌を巻く。

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2024年10月29日

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あの紫式部が安楽椅子探偵!
3章の時間の流れも良い。
もちろん源氏物語のあの巻とあの巻の謎への解釈が良い。

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2024年03月02日

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ネタバレ

「桐壺」のあとにもう一帖物語があったと仮定した上で、作者紫式部が当時の事件を解いていくという趣向。側近の女童が活発?過ぎてちょっとどうかと思いますが、それほど崩れてはいない感じ。
これで出仕前から「雲隠」で下がり、死後の話まで出るので、続編として出ている二冊が不自然に思えてなんとなく手に取る気にならない。

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2018年10月10日

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紫式部、源氏物語というワードでつい購入。
2作の中編が入ったもの。
1つめは、猫探しとあまずっぱい恋物語。
2つめは、「輝く日宮」巻の行方。

どっちもおもしろかったー。
あてきちゃんが可愛い。成長した彼女が出てくる2つめも良い。
ページを捲るのが止まらなくて、一気に読んでしまった。
シリーズ物みたいなので、全部買おう。

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2015年12月05日

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初めましての作家さん。
式部が探偵役というから、何をさせるのかと思っていたけど
派手に立ち回るわけではなく、日常の謎系です。
しかも物語の目線は式部に仕える小少将「あてき」。
大雑把に説明すると、あてきが一人で推理して空回りして最後に
式部に相談して問題解決という流れなんだけど
3部構成になっていて、時期が飛んでいる。

あてきの女としての生涯という見方もできるし、
式部が作家としての使命に目覚めていくという見方もできる。
いやぁ~紫式部の印象が随分と変わりました。
そういう意味でも2部の謎のスケールが大きくて読みごたえありです。
平安の華美に過ぎない都の様子が楽しかったぁ

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2015年05月16日

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紫式部のお付きの女児の目線で語られる、源氏物語の裏ストーリ。本筋に絡んで幾つかの事件が発生し、紫式部が探偵さながらに解決していくというものだが、当時の時代背景や文化、社会構造をきちんと反映・考慮していて、単なる推理小説・フィクションではない面白みがある。「ベルサイユのばら」の日本・平安版というと大げさかもしれないが、読む価値十分。

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2015年05月07日

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源氏物語の作者紫式部に仕える女房安手木を主人公に据えた源氏ミステリ。

まずこれが作者森谷明子さんのデビュー作であることに驚く。
実に良く出来たミステリです。
私は馬鹿読者なので最後の最後まで犯人の使いをさせられた女童が誰なのか全くわからないまま読み進めていたのでラストには文字通り「あっ!」と言わされましたw
いやぁ、ほんとうによく出来たミステリでした、楽しい読書になりました。

しかし、これは源氏物語入門書にはなりえません。
源氏物語にそれなりに精通していて始めて楽しめる本です。
まずは王朝文化や風習を知っていないとこの本を半分も楽しめない。
源氏物語にちょっとも触れずにこの本にたどり着く方はそんなに多くは無いとは思いますが、もしまだ一度も源氏物語を読んでいないと言う方がいらしたら入門書として私が最適だと思う田辺源氏をまず先に読まれることをお薦めします。

本書巻末の解説文によるとこの物語は「逸文紫式部日記」として全三部作となる模様。
今からその第二部「白の祝宴」を読むのですが久々に読む前からわくわくしています。
文庫化されたら絶対買います。
源氏ファンにはたまらないシリーズだと断言しちゃいますw

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2012年01月13日

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「源氏物語」をはじめて読んだのは、高校1年のときです。なんで、時期まではっきり覚えているかというと、夏休みに勉強の合宿があって、そのときに渡された本が、「源氏物語」の現代語訳の抄本だったのです。
で、あんまり、いい印象がなかった。主人公が、好きじゃなかったですからねぇ。昔から、意味もなくもてる男には、反感が(笑)まぁでも、女の子のキャラがたっているのは、とても印象的でした。

で、その後、大学の古典で「源氏物語」を勉強する様になって、その前後で、「あさきゆめみし」を読んだら、けっこうおもしろくて、しかも、古典の授業が、今までになく良くわかる(笑)ということがあって、何回か、自分のなかで「源氏物語」ブームがおきて、現在にいたります。

ということで、この「千年の黙」も、去年読んでいた井沢 元彦の「GEN 『源氏物語』秘録」も、そういう自分のなかの「源氏物語」マニアな部分で読んでいる1冊です。

今回の「千年の黙」は、現代から「源氏物語」の成立を推理していくお話ではなくて、「源氏物語」が書かれた時代そのものを舞台として、どうしてそれが、その時代すでに、今の様なかたちになったのかという謎に迫っていきます。
それも、名探偵・紫式部が(笑)
これは、けっこう、惹かれるシチュエーションでした。

3つのお話ができていて、1話は、「枕草子」にも書いてある猫騒動のお話。2話目、3話目が、源氏物語の成立についてのお話です。
マニアとしては、2話目、3話目が、刺激的で好きです。雰囲気は、1話目がいい感じです。

読む前は、もっと軽いお話を想像していたのですが、けっこう読むのに時間がかかりました。
でも、この人の人物評価は、けっこう、わたしには納得のいくものでした。

そう、やっぱり、そんな大往生は、ゆるされないですよねぇ。

あと、これを読んでいて思ったのは、なんか、「源氏物語」の成立…というか、書かれ方とか、読まれ方って、今の同人誌とかともしかしたらよく似ているのかも……と思った。

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2010年05月26日

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帝ご寵愛の猫はどこに消えた?

源氏物語、そして、猫なのである。
私の想像する紫式部よりも、ずっと聡明で慎み深い人であったけれど、そういうのもいいかも。
ライトな平安ミステリであり、源氏物語自体の謎にも迫ってしまう。

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2010年01月03日

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ものすごーーーくおもしろかったーー! 紫式部が探偵役のミステリ。わたしは特に、源氏物語から抜け落ちた帖の謎を解くところがすごく興味深く、おもしろく読んだ。普段、ミステリ読んでも謎解きはどうでもいいや、って思ってるのに、前に戻って場面を確認したりするほど。よくできてる、と思った。説得力があって、この作品で描かれていることが実際あったに違いにない!と思えてきて。あと、光源氏が死ぬ場面をああいうふうに処理にするまでのいきさつもすごく興味深くて、なんだかぞくぞくするほどだった。それと、藤原道長の描かれ方も印象的だった。政権を握ることしか頭にない策略家みたいにいわれるけれど、本当は文学や風流を愛し、本を読んでのんびり暮らせたらどんなにいいだろうと思っていて、紫式部とあれこれ文学の話をしたい、とか考えているところが。子どものころ読んだ児童向けの伝記「紫式部」で、清少納言は才女だけどでしゃばり、それに比べて式部は才能をひけらかさず控えめ、と刷り込まれ、ずっと式部ファンだったけれど、この作品に描かれている紫式部はわたしのイメージどおりだったなー。

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2011年09月18日

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 分厚い本なんですが、中身は三部に分かれています。
 主人公の「あてぎ(阿手木)」の御主である紫式部を探偵役に据えて、話が進んでいきます。

 推理小説として、トリックは別段目新しいものではないんですが、小説としては面白いと思いました。
 源氏物語は、原作は古文で読んだだけで(笑)、それでも気になるから、瀬戸内寂聴とかが現代語訳したものを一応は読んではいるんですが、いまだなぜこの物語がこんなに長い間残っているのか、分からない(笑)。もののあわれが分からないってことだろうか?(笑)

 まあ、そんなことはともかく、物語作者としての業とか、予想外のことが描かれていて、読み始めると、そう時間もかからず読んでしまいました。

 このあたりの時代って、平安時代の中でも豪華絢爛な時代で、「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」なんて句を藤原道長が詠んだような時代です。

 この作品は、三部作らしく、あと二冊は出版されるらしいです。
 どう紐解いていくのか、ちょっと楽しみです。

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2009年10月04日

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毎月参加している横浜読書会 KURIBOOKS で2020年から始まった源氏物語の読書会。
1年で源氏物語を読み通すというのを三年続け(つまり、3回読んで)、今は4年目(4週目)

ここにきて、だんだんわかってきた気がする。
というか、源氏物語の周辺本を読む余裕が出てきた。

紫式部の生きていた平安時代を舞台に、
行方不明になった中宮定子の愛猫探しなどの小さな謎を、紫式部がホームズ役となって解決していく、連作短編でありながら、各短編を通して「源氏物語」の研究者の中でも意見が分かれる 失われた帖「かかやく日の宮」は存在したのか?という謎も追う。というか、作品としてはこっちの謎に挑むというのが本編かな。

実際には「かかやく日の宮」の謎だけではなく、なぜ「雲隠」の帖が、題名だけが残り、本文が無い謎も解いてる。

源氏物語を読んでいなくても、読めるけれども、読んでいたら、「かかやく日の宮」の帖がなぜそんなに重要視されるのかがわかるかも

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2024年04月13日

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ネタバレ

平安朝の人間模様を下敷きにしたコージーミステリー。紫式部が安楽椅子探偵。ゆっくりした気分で読める。

藤原実資の述懐の部分も効いてて面白い。

「かかやく日の宮」の巻を道長が誰を使って葬ったかの種明かしは、あーー!そうかそうか!という感じ。

后になるのは源氏の姫ばかりで藤原氏の息女が時めかない源氏物語を、左大臣道長から守る方法として紫式部が彰子のもとに出仕し、ついには道長も執筆の援助者(パトロンとしてだけでなく)として引き入れ『雲隠れ』決着をつける下りは、したたか。
イメージより明るく晴れやかで、強く闊達とした、一貫した紫式部。

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2022年11月16日

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平安時代を覗き見たような、教科書に出てくる紫式部や清少納言が生きた体を得たようなそんな感覚になった。
紫式部はもっと大人しく地味で、やや暗いくらいのイメージを持っていたので、本書の闊達で好奇心旺盛な彼女がたちまち好きになってしまった。
また、最初は彼女の物語を軽くみていた人たちが次々にはまっていくのが痛快だった。

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2021年04月02日

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ネタバレ

 歴史上の人物を探偵役にすえる、という単純な「名探偵○○」かとも思っていまいしたが、なかなかどうして。源氏物語の成立の背景まで組み込む仕掛けが、大したものだと思います。 ホームズのファンが書いた、原作の矛盾とか欠落部分をうまく補完するパスティーシュを読んだ時と似た味わいがありました。

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2018年09月09日

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面白い……はずなんだけど、なんだろう。
とにかく琴線に引っかからないとしか言いようがない……。
読んで半月しか経ってないんだけど、
中身もほとんど思い出せないという。

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2012年04月15日

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ネタバレ

自分が書いたものが広まっていく怖さ。物語の内容に迷う姿。紫式部が本当にこんなふうに源氏物語を描いていたのかもとうれしくなる。

「後の世のことは、神仏でもない身にはわからないもの。ただね、自分の心はいつわらないようにしよう。あとは自分に子供が生まれたら、その子にだけは誇ってもらえるようにしよう、と。

たわいないような事件が絡み合って、道長の人柄や彰子の人柄がくっきりしてくる。そして、実は!源氏物語に欠巻が?という大事件。
こんな疑惑を知らなかったので、かなりショック!
私、源氏やったはずなんだけど。。。こま切れな読み方だったから?

登場人物が魅力的であっと言う間に読める。あてきの恋。元子女御の恋。それぞれ個性的な女性たち。
なんとなくもう少し恋バナが濃くてもいいかなー。源氏だしーという気もする。でも、それがないからこそ、式部の事件がくっきりするのかなあ。
式部が地味にかっこいい。

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2015年04月01日

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ネタバレ

道長から定子入内を支える女房として出仕を促されている紫式部(藤原香子)が女童のあてきと共に、その洞察力で周辺で起った謎を解き明かすミステリ。藤原道長、藤原実資、中宮定子、彰子、清少納言、藤原宣孝、賢子、定子などが出てますが、どの人物も活き活きと描かれてます。

3編の短編から構成されていて、第一部では定子が飼っていた猫の行方を推理するもの。推理しつつ人間関係の紹介、みたいなお話。香子と宣孝の円満な夫婦仲(才気煥発な妻を自慢する宣孝とか)、あてきの初恋、利発なまだ幼い定子、野望あふれる道長の動向、帝の一の人と称されながらも政治的に微妙な彰子の立場(でも定子はこの年上の美しく賢い従姉妹にあこがれている)が描かれてます。出仕経験のない自分には宮中の配置など分からなくて、それを指摘されて悩む香子など、創作秘話っぽい話もあって面白いです。決まりごととか確かに取材もなしではきっついでしょうねぇ、特に貴族の女性にとっては。

で、本命は2編目「かかやく日の宮」。
藤原定家が題名のみを伝える、源氏物語の二巻「かかやく日の宮」が本当に存在したと仮定し、紛失した謎が明かされます。本居宣長や丸山才一、瀬戸内寂聴も「書かないはずがない」と言及していて、実際補う作品を創作してしまったような源氏と藤壺の初めての逢瀬の場面はなぜ消えたのか?この巻については、現在の桐壺の巻の異名だとか、現在の桐壺の巻の後半部分がかつては別の巻であったころの巻名だとか、桐壺の巻のあとにかつて存在したが失われてしまったとされる巻だとか諸説ありますが、この小説では第三の説に基づいて描かれてます。ああーさもあらん、という感じ。道長様・・辻井喬っぽい。

第三部は「雲隠」。題名のみ伝わる源氏の死を描いた巻は存在したのか?

とりあえず読み終わってから、「歌恋ひ1」を読み返したり、平安朝に浸ってみました。さて次は2巻!

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2011年06月04日

Posted by ブクログ

源氏物語をまさに書いている最中の紫式部を中心に、式部に仕える「あてき」や、元子女御に仕える小侍従を主役(?)にしたミステリー。源氏物語は一帖欠けている、という説をベースとしてその謎を追います。あてきや小侍従が女の童から女房に成長するのも楽しめるし、あてきの恋もありつつ、源氏物語の世界観と一緒に、まさにそのとき起きている帝や女御様、左大臣の権力争いやら恋(?)模様やら、効果的に使われていてよかったです。

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2010年10月18日

Posted by ブクログ

源氏物語実は清少納言は書いてない っていう内容の本をそういえば昔読んだことがあったなというようなことを思い出しました。

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2011年09月20日

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