あらすじ
俳句の価値を主張して国語教師と対立した茜。友人の東子に顛末を話すうち、その悔しさを晴らすため、俳句甲子園出場を目指すことに。ふたりのもとには、鋭い音感の持ち主の理香や論理的な弁舌に長けた夏樹らの個性的な生徒が集う。そして、大会の日はやって来た! 少女たちのひたむきな情熱と、十七音で多彩な表現を創り出す俳句の魅力に満ちた青春エンタテインメント!
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Posted by ブクログ
少し前のNO Book & Coffee NO LIFEさんのレビューに惹かれて読んでみた。
巻頭に【俳句甲子園について】が書いてあって、俳句甲子園なんて本当にあるのかと思ったが、本当にあるんだ。
今年の地方大会の兼題は「日永」「草餅」「ヒヤシンス」とある。先週5/9が提出締切だったのね。
ということが分かって、さらなる興味を持って本編に入る。いやいや、これは面白い。
茜の思いやトーコとの会話に、早くも俳句の持つ面白さが溢れ出る。
そこから、子規の句だったとしても作者のつもりと違う読み方があっても良いだとか、声に出してみると「藻の花も」より「藻の花や」のほうが明るく響くとか、知っている人には当たり前かも知れないが、門外漢の私には目から鱗の話が満載。
『季語を信頼する』という森先生の指導内容にはとても感じ入った。
こういう話はメンバー集めも見どころなのだけど、全員が俳句好きや文学少女というわけでもなく、それぞれが「俳句以外で心惹かれるもの」を持っているのが良い。
メンバーも揃って、短い期間で実作から実戦に挑んでいく後半。
練習試合の相手が結構ケンカ腰な感じで、もう少しスマートにディベートするものと思っていたのでちょっと引いてしまったが、話が進めばこれが望ましい鑑賞の姿でないことも分かってくる。
大会が深まるに連れ、試合経過や作句の呻吟の丁寧な描写から、そこに詰まった思いを知って披講される句を鑑賞することが出来る。
マネージャーに徹するトーコも含めて皆で言葉をとことん吟味して作った敗者復活戦の句(胸中は聞かず草笛一心に)やここに辿り着くまでに費やした時間や思いが詰まった準決勝での茜の句(夏めくや図書室に聴く雨の音)にはじんと来た。
とても爽やかな読み心地。
今年の地方大会は、6/10,11と17,18、全国大会は8/18~21とのこと。ちょっと気にしておこう。
Posted by ブクログ
俳句甲子園の女子高生の奮闘を記述したフィクション。ストーリーも良いんですが、中に出てくる俳句が私は好きです。具体的なものは、作品を読みつつ、自分のお好みを探すのも楽しいと思います。
森谷明子さんという作家さんを、見つけることができたのは、個人的には嬉しい。他作品も、読んでみたい。
Posted by ブクログ
俳句甲子園への出場に向けて、俳句同好会を立ち上げた茜とトーコ。音にこだわる子や書道に精通した子、言葉へのこだわりが強い文学少女など、俳句初心者が集まって十七音にとことん向き合う姿が素敵。
各章の語り手が変わりながらも、地方大会、全国大会へと進む彼女たちが成長していく姿が見える。
俳句とは何か、俳句で競うとは何か、そもそも俳句は競い合うものなのか、立場によって見え方が違ってくるのも新鮮だった。
俳句を知らない人もきっと楽しめる一冊。
Posted by ブクログ
俳句に興味のある私。この本は一年くらい前から読みたかったけど、なかなか読めなかった。
良かった。青春を感じられる作品だった。
俳句初心者だったメンバーが、個性を武器にして成長している姿が眩しい。
富士先生が言っていた俳句の「ずるさ」に、「なるほどな」と思った。十七音の世界。やっぱりいい。
Posted by ブクログ
草木が芽吹く弥生です。センバツ甲子園も近付きましたが、本書は野球の話ではありません。目指すは甲子園! それも「俳句」の! その内容と展開が面白く、ぐーっと引き込まれる物語でした。言葉の豊かさ、俳句の奥深さ、言葉でつながる素晴らしさなどが、見事に描かれています。
主役はチームを組む女子高生です。俳句は青春の情熱を燃やすに値するのか? と疑問視するそこのあなた! 地味でシンプル、年寄りくさい等の「俳句」のイメージが、きっと変わることと思います。
何よりも、創作俳句十七音の言葉の選び方と表現の工夫は、単純な様で実に多彩・多様であり、ほんの一字で情景がガラリと変わります。
俳句甲子園(全国高校俳句選手権大会)は、実際毎年8月に愛媛県松山市で開催され、もう25回を数えるのですね。投句とチーム同士の質問(批評)と説明(反論)内容で勝敗決定する競技システムなど、初めて知ることも多く、とても新鮮でした。
登場人物や物語の構成も魅力的でした。本書は全10章で構成されており、9人の主要な登場人物視点で各章が展開されるので、物語にメリハリがある気がします。
私たちが毎日何気なく使っている言葉が、素晴らしく愛おしいものに思えてきます。もっと日本語を大切にし、恥ずかしくない言葉の使い手にならなければな、と思わせてくれる一冊でした。
中高生や俳句に興味のない方にも、是非手に取って欲しい本です。
Posted by ブクログ
俳句甲子園なんてあったんだな、知らなかった。
俳句に興味が出てきたから読んだ。
青春だな。
高校生の時知ってたら挑戦してみたかった。
団体戦っていうのがいいな。仲間意識が芽生えて。
俳句の評価の基準は良くわからないけど、自分がいいと思ったらそれがイイ!
俳句でも詩でも絵画でも自己表現の芸術全般に言えることかもしれないけど、表現するには、対象をよく観察して、自己との対話も必然だから、人生を深く味わえる。
俳句は短い言葉で厳選し、凝縮しないといけないのが難しいけど、読み手の想像力を掻き立てるのがいいなと思う。
Posted by ブクログ
俳句好きの生徒が中心になって、女子高に俳句同好会を作り、俳句甲子園に挑むという話。
昔テレビでちょっと観たことがある程度。俳句は、「プレバト」で夏井いつき先生が出演者の俳句をぶった切ってるのを面白く観たぐらいの基本未知の世界。
これがなかなか楽しかった。テーマに沿った俳句で相手方と勝負するのだけれど、ディベートで、相手の句より、自分たちの方が上であると審査員に納得させる。この過程がなかなかエキサイティング。
文化系サークルで勤しむ学生たちの青春も良かったけれど、俳句にも興味を抱いた。
Posted by ブクログ
俳句甲子園に挑む女子高生たち。
憧れの彼に会うため。
勝つための戦法。
俳句で勝負をするというのはどういうことなのか。
しかし、作者は俳句は批評するためのものではないという。
同感。
でも、やっぱり僕は俳句より短歌の方がいい。
俳句は短すぎて、後一押しが足りないように感じてしまう。
Posted by ブクログ
高校生が俳句の活動に取り組む話。
俳句甲子園は盛り上がりますよ。
藤ヶ丘高校の須崎茜は、父の影響で俳句が好き。
高校の授業で、俳句を軽んじる教師に反論しようとしたがうまくいかなかった。
トーコ(東子)と知り合い、励まされて俳句同好会を作ろうと考えつきます。
勧誘を工夫し、しだいに個性的な生徒たちが仲間に加わる。
ほとんどは初心者だが、それぞれ得意なことがあるのです。
俳句甲子園というのは、前もって投句した作品の評価と、会場での発表と論争(ディベート)で試合するもの。
短い言葉だけで表現する、俳句ならではの面白さ。
ディベートってのはやるのはかなり難しいと思うけど、読んでる分には面白い。
俳句にちょっと興味があるけれど、どこから入ったらいいかわからないという人に、好適かも。
作者の俳句への愛は十分に伝わってきます。
人間関係はやや肩すかし。個性的なはずの女性徒たちもなぜかだんだん同じような印象になってきました。
力の入っているところと、そうでもないところの差が出たかな‥
続編のほうが話としてはまとまっているように思います。
Posted by ブクログ
TV番組に感化され俳句の面白さに気付いてきたところ、小説にまで俳句が登場したと、驚きを持って読み始めた。
俳句素人の子達がそれぞれの強みを生かして俳句甲子園に向かっていく青春ストーリー!
俳句そのものと言うより、俳句甲子園の仕組み、勝負の世界が面白く読めました。
Posted by ブクログ
「夕焼雲でもほんたうに好きだった」技巧的でもなんでもないけれど心に残る作品は俳句以外のものにもあるな、と思った。名もない人が作るなんでもないものが心に残ったり…その時好きだと思ったことを大切にしたいと思った。
Posted by ブクログ
俳句のことな全くわからないし、本作を読んでも俳句に興味は持てなかったんだけど、それでも十分楽しめた。
青春!って感じで読んでいて心地よかった。
Posted by ブクログ
俳句甲子園と聞いて、俳句を作って審査され出来がいい句が優勝する大会かと思ったら違った。
5人で1チームの団体戦。俳句は兼題にそって3句作り、事前に提出しておく。大会当日は自分たちの句を読み上げ、相手チームがそれを被講し質疑を重ねる。これを両者繰り返し、句の出来による作品点と、相手の句への理解や表現などを指摘する力を問う鑑賞点が審査員によってつけられ、合計点により勝ち進むトーナメント方式により行われる。
作句で散々検討するのはもちろん、提出から大会まで間があり、そのあいだ3句それぞれの17音の世界を突き詰める。
相手校からどのような質問がこようとも、この言葉、この表現しかないと言える思いを短い音にこめる。
短い言葉に対してここまで真剣に向き合い考え抜いたことはない。
読んでいて高校生たちの熱量に気圧される。
青春群像劇としてはあんまり馴染まなかったが、俳句甲子園の描写は臨場感があって面白かった。
俳句は嗜まないのでよくわからない句もありつつ、好きな句や面白い句もたくさんあった。
蝉の殻重力離脱成功す
夕焼空遁走曲楽譜散乱
俳句のイメージにあるしみじみしたものとは一線を画すようなコミカルさや爽快感を感じる。こんな句あるんだ、というような興味が湧いた。句の内容と音のリズムが一致していて楽しい。
夕焼雲でもほんたうに好きだつた
ストレートでこれ以上は何も言うことはないと誰しも思うだろう作品。まさにこの17音がすべて。一方で言葉より色で埋め尽くされるような気持ちにもなる。
手擦れせる句帳の余白海月舞ふ
なぜか印象に残った。理由はわからない。でもこの句帳はコピー用紙のような蛍光の強い白の紙ではなく、もっと使いこんだくすみとざらりとした質感のある紙でできた句帳というイメージ。
桃すする雨よ昨日の一言よ
情感あふれる一句。勝手に絵とストーリーが浮かんでくる。すごい。絵的な印象が強いが、短い映画的な印象もあって、奥行きを感じる。
他にも色々あったが割愛する。
中学生のころは年に一回、俳句を作る授業があった。別に俳句の勉強はほぼなく、友達とだべりながら授業時間の終わりまでに一句作って提出すればOKという、国語の中では一年で一番緩い授業だった。
多分、市民大会中学生の部みたいなものに提出されていたのだと思うが、一度だけまぐれで入選したことがあった。短冊に綺麗に清書された句が返ってきて驚いた記憶がある。季語を入れて川柳にはなっていないくらいの、捻りのない拙い句だったのに。
そんな他愛ない学生時代が読み進めるうちよみがえってきた。おそらく自分の中で俳句に関する唯一の思い出である。
あれ以来俳句に縁遠いが、せっかく俳句の小説を読んだので、久々に詠んでみる気になった。
当時詠んだのは雨の句だったので、今回も雨で一句捻ってみる。
傘さして晴れ間気づかぬ五月雨
暗い。青春小説を読んだ後とは思えない句だ。あんまりなので上向きに修正してみる。
俯きて映る夏空雨上がる
…結局暗い?作中で新野先生が言ってたコツも無視している。中学のは完全にビギナーズラックということが確認できただけだった。
でも、なかなか楽しかったので良しとしよう。