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埠頭で荷揚げ中に落下事故が起こり、珍しい形状の異様に重い樽が破損した。樽はパリ発ロンドン行き、中身は「彫像」とある。こぼれたおが屑に交じって金貨が数枚見つかったので割れ目を広げたところ、とんでもないものが入っていた。荷の受取人と海運会社間の駆け引きを経て樽はスコットランドヤードの手に渡り、中から若い女性の絞殺死体が……。次々に判明する事実は謎に満ち、事件はめまぐるしい展開を見せつつ混迷の度を増していく。真相究明の担い手もまた英仏警察官から弁護士、私立探偵に移り緊迫の終局へ向かう。クロフツ渾身の処女作にして探偵小説史にその名を刻んだ大傑作。
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Posted by ブクログ
とっても楽しく読みました。江戸川乱歩さんのおすすめだからではなく、津村記久子さん『やりなおし世界文学』なんです。
ミステリの古典。出版は1920年、同年アガサ・クリスティーさんも『スタイルズ荘の怪事件』でデビューされています。日本なら大正時代。
この作品は、探偵小説・アリバイが特徴とどこかに書いてありました。
作品は3つのパートに分かれています。あらすじをたどると、
1.事件の発端、パリからロンドンに貨物船で着いた「樽」が荷揚げ中に落下一部破損し、金貨ポロリ・人間の「手」がチラ見え、その後行方不明、警察がようやっと発見し、中身が明らかになります。
2.警察が、ロンドンと発送元のパリで捜査をすすめます。スコットランドヤードとパリ警視庁の合同捜査!
3.弁護士と、弁護士が雇った私立探偵が調査します。
つまり「探偵」といっても第1,2部が警察、第3部が弁護士と私立探偵、と別々なんです。
おもしろさは2つかな?
ひとつは「樽」が行ったり来たり!でどうなってるの?ほんとによくできていて、わたしはまったくわかりませんでした。途中、時系列でまとめてあるんですけどね・・・
もうひとつは「アリバイ」です。こちらはぼんやりと予想できました。とにかくアリバイありきで、パリとロンドンをまたいだ大陸間のアリバイ合戦、楽しかったです。
本作はスローペースで有名みたいです。第1部はたしかにスロー、「樽」がどっか行って、なかなか見つからないし。でも第2部、第3部とペースはどんどん上がりますから問題なし。
読み終わって感じるのは、物語のはじめのスローペースは、作者のクロフツさんの計算だと感じました。クロフツさん、読者が警察の捜査にじっくりつきあってほしかったのかな。
わたしは、前半のスローな展開のなか、事件が起きた1910年代の風俗や警察のひとたちの仕事ぶりを楽しみました。
船からの荷下ろしで落下?、コンテナはまだなかったんだ。自動車・トラックあるけど、陸上運輸の主役は荷馬車みたい。あと、タクシー多用してる。
電話はあるけど交換手がいて、手紙や電報が主な通信手段みたい。e-mailやFAXなくても、手紙と電報があればなんとかなる!
警察の仕事ぶりもおもしろい!仕事術まとめてみると、
①物証も大切だけど、証言がもすごく重視されてる。だから、必ず裏取りしてます。几帳面な仕事ぶりです。
②ちょっと疲れたらカフェで休憩、で葉巻。散歩したり映画・ショーをみて気分転換してます。ただし警部さんの拘束時間は長いです。
残念だったのは、何を食べたか書いてないこと。それがあったら最高だったのに・・・
③紙に書き出して、思考を整理する。仕事の基本です。
わたしの好きな登場人物は、パリ警視庁総監さん。このひと、静かで落ち着いて仕事ができるからと、夜中に仕事してます。だから、ミーティングはいつも夜の9時!
ロンドンとパリは当時の最先端だった?伝票のやりとりをしっかり実行。例えば警察が会社の書類を押収する時、その会社から会計監査に必要と言われ、伝票を渡してました。全部じゃないけど記録もしっかりしてる。これならISOとか苦も無くできるよね。
とにかく古さを感じさせない。現代のミステリ作家が100年前にタイムスリップして書いたかのように感じる小説でした。もしそうなら、それは誰でしょうか?
地道な捜査に好感度大
地道な捜査でコツコツと真相に迫っていく人たちに好感が持てます。変なキャラクターの探偵が出てくる探偵ものとは違った面白さがあって、ミステリーは飽きたという方に是非読んでいただきたい一冊です。これがおもしろいと思った方は鮎川哲也の「黒いトランク」もお勧めです。
Posted by ブクログ
荷揚げ中に破損した樽から金貨と女性の腕が見つかる。運送会社の社員が警察とともに樽のもとに戻ると、樽はすでに引き取られた後だった。樽の行方、そしてその中身をめぐるミステリー。
タイトルからして「なんだか地味そうだな」と思って、名前こそ知っていたもののなかなか手を出さなかった一冊です。古書で半額で売られていたので、ようやく手を出しました。
前半は樽はどこに消えたのか、中盤以降は犯人はだれか、という謎が主題になるわけですが、一つの謎が解ければ、また次の謎が表れ、その謎が解けたかと思いきや、イマイチ事件とは結び付けにくかったり……、そんな風に謎を非常に巧く見せている気がします。アリバイトリックについては少しややこしいな、と感じたものの、そうした構成が非常に巧みでどんどん読まされました。
いわゆる超人タイプの名探偵が出ないので、捜査が証言を集めたり、その証言を検証したりという地味な描写にはなりがちなのですが、そこを構成の妙でカバーしている印象です。
”地味”という言葉はたいていマイナスのイメージが持たれがちですが、地味だからつまらない、とは言い切れない、逆にハリウッドのような派手さやホームズやルパンのようなキャラクターの強い名探偵がいなくても、謎と構成がしっかりしていればいくらでも面白いミステリは書けるんだ、ということを力強く証明してくれた作品だと思います。
Posted by ブクログ
クロフツの『樽』、読んだことなかったのですよね…新訳が出て買ってあったのですが、それ以降も読まずに積んでおいて数年…ようやく読まました。
『樽』という地味な題名と、「頭がこんがらがるような複雑なパズル的トリック」が用いられているのかと勝手にイメージを持って後回しにしていたのですが、読んでみたら…おそらく新訳の読みやすさもあり…全くさにあらず。なかなか面白く、一気読みしました。
巻末の有栖川有栖さんの解説も良い。まさに鮎川哲也さんの『黒いトランク』や横溝正史さんの『蝶々殺人事件』の着想の原点となっているであろう本作、古典名作に違わぬ佳作でした。いま読んでも。
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小説・文芸
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