★5 世の中の母と娘のために…そして彼女たちを幸せにする男たちへのテーゼ #グッド・バッド・ガール
■あらすじ
老人介護施設で暮らしているエディスは、介護士の少女ペイシェンスと仲が良かった。しかしエディスは娘のクリオと折り合い悪く、顔を合わせるたびに喧嘩ばかりしていた。一方でペイシェンスも母親と仲たがいをしており、家を飛び出していたのだ。
ある日エディスは施設から失踪してしまう。しかも施設の所長が殺害されてしまい…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 おもろいわー。脳みそと感情の揺さぶりが半端ねぇよ。さすがアリス・フィーニー、期待通りでしたね。
正直このレベルのトンデモ&エンタメ展開は、国内ミステリーではなかなかお目にかかれない。捻りに捻ったプロットに何度もあごが外れかけましたよ、戻すのが大変。
しかも心情を深堀って描くのが国内作品のように上手だし、文学的で表現も豊潤なの。そして肝心なことは書かずに、興味を引くような情報をチラ見せするテクニックが鬼なんです。何度も何度もフィーニーの釣り餌にひっかかっちゃう。
今回も人物表がありません。海外ミステリーならあって当たり前なのに、あえて用意されてないでしょう。より一層楽しむために、ノートに人間関係図を書いていくことをオススメします。誰と誰が親子で、友人で、仲が悪くて…とか、線でつないだりメモに残しておきましょう。読んでいくうち関係性が見えてきて、理解もしやすくなります。
さて本作は母親と娘の関係性がテーマです。登場人物はほとんど女性。序盤…というか、ほぼ全編にわたって、いがみ合いや利の奪い合いが繰り広げられる。親や子に対して、それは絶対言っちゃいかんだろってことすら軽く吐き出されるんです。もうヒドイの。
本作の主なキャラは四人。老人介護施設に勤務する少女ペイシェンス、その施設に入居しているエディスとその娘クリオ、刑務所司書のフランキー。
どんな関係性なのか、過去のどんな背景があったのか。過酷な渦に巻き込まれてしまった彼女のたちの運命に魂を掴まれます。
親が悪いのか、娘が悪いのか、最低な女、不幸な女、卑劣な女とネガティブ満載で、読んでると言いたいことがいっぱいある。あまりの思いやりのなさに、何度も気分が悪くなったりもしました。でも…じっくり読み進めてください。実はどこにでもいる愛情に溢れる女性なんです。
ちなみにもう一人、とある場所で登場するリバティという女性がいます。雰囲気は思いっきりギャル。でも最後にすんげぇ重みのあるセリフを言うのです、マジ泣きそうになったわ。
騙し捻りのテクニックはもちろん、人の絆を肌で感じられる素敵な作品でした。もう7月になり次々と傑作が発売されますね、本作も今年を代表するサスペンスミステリーの一冊だと思いました。
■ぜっさん推しポイント
現代の日本に生きている多くの女性たちも、懸命に仕事をしながら、妻としても母親としても役割を全うし、日々の家事もこなしていく。夢や希望を抱きながらも、自分らしく生きることの難しさを痛感しているのではないでしょうか。
本作では随所で母親の叫び、娘の苦悩、女性の憤りが吐き出されます。男どもはしっかりと受け止めなければいけません(私も含め)。
子どもの頃、母に言われた言葉を思い出してしまいました。
人を幸せにしたいなら、まず自分が幸せになれ。辛いことを乗り越えるための努力は、自分のためではなく、人のためなのだと。