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Posted by ブクログ
簡潔で事実を元にしたようなドキュメンタリーっぽい文体。国際色豊かで人物の階級も多岐にわたる。難民がよく登場する。
犯罪というタイトルの通り犯罪が扱われている。複雑な人間の行動を犯罪という一面から切り取っているような小説。
本屋大賞1位も納得。ただミステリーらしさは全然ない。
『棘』『ターナー氏』『エチオピアの男』がいいが、どれも甲乙つけがたいくらい面白い。
本書はネット上で誤訳があるという指摘があるが、それはハードカバー版が加筆前のものを題材にしているのに誤訳を指摘している側が参照しているのは加筆されたバージョンのものだから、だという。私が読んだ文庫版は加筆版を元に翻訳されている。
Posted by ブクログ
続けてドイツ人作家の小説。本作の著者フェルディナント・フォン・シーラッハは、ナチ青少年最高指導者の孫だと云う。そんなの関係ねー!と思いつつ、不穏感が湧いてくるのが正直なところ…。
著者は弁護士の傍ら小説を書き始め、デビュー作の本作でドイツのクライスト賞、日本で2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位を受賞。11篇の連作短編集ですが、それぞれにつながりはありません。
タイトル通り、罪を犯した人々の物語です。著者が実際に携わった刑事事件から着想を得たそうで、まるで11の刑事事件の実録?というほどリアルな印象です。しかし、ただの事件の羅列ではなく、描かれるのは人間の挫折・罪・素晴らしさです。
一般的な推理小説とはまるで別物です。弁護士の〈私〉から見た犯罪者を、加担も非難もせずに、淡々と誇張のない簡潔な筆致で綴る各短編は、極力無駄を削ぎ落としながら客観事実を重ね、犯罪者たちの人生が凝縮されたような描写です。
犯罪者もかつては「ただの人」だったはずで、私たちは一歩誤ると犯罪の道へ足を踏み入れてしまう危うさを孕んでいることに気付かされます。
そんなの関係ねー!と前述しましたが、弁護士として人の罪を検証し、調書を元にしてできた小説の行間に、祖父がナチ高官だったという出自がもたらす贖罪と孤独が潜んでいる、と考えるのは勘ぐり過ぎでしょうか?
著者は、人としての道徳心と法の境界線で、法制度の限界と人間への愛情を示している気がしてなりません。もはやミステリーではなく、濃密な人間ドラマと思える珍しいタイプの短編集でした。
Posted by ブクログ
「物事は込み入っていることが多い。罪もそういうもののひとつだ」
序章の一文が象徴するように、この短編集は、いろいろな出来事が積み重なっていき、後戻りできない犯罪を犯す人々を描いている。
犯罪を犯す刹那は、今まで踊っていた薄氷が不意に割れて、冷たい氷の下に落ちてしまう瞬間のようだ。誰だってそうなる可能性はある。
作者も言う。「幸運に恵まれれば、なにも起こらないでしょう。幸運に恵まれさえすれば」。
あくまで淡々と事実を積み重ねるクールな筆致ながら、行間に溢れ出すようなやるせなさや、切なさや、時には幸福感などの叙情を感じざるを得ない文体、ものすごく好みだった。
例えば最初の『フェーナー氏』、フェーナーの心情は一度もはっきり書かれない。フェーナーは、ラストに「しわくちゃになった封筒」から出した新婚旅行の写真の、妻の顔を親指でなでる。その写真は「保護膜がはがれ、彼女の顔はほとんど真っ白になって」いるのだ。
その描写で、フェーナーのいろいろな込み入った思いが伝わってきて、胸がいっぱいになる(読めば分かります…!)。
特に好きなのは『タナタ氏の茶碗』『チェロ』『正当防衛』『エチオピアの男』。
『チェロ』の最後、『華麗なるギャツビー』からの引用の「さあ、櫂を漕いで流れに逆らおう。だけどそれでもじわじわ押し流される。過去の方へと」も、胸が締め付けられる(こちらも読めば分かります…!)。
『エチオピアの男』は、泣ける!!
Posted by ブクログ
『犯罪』
シーラッハはわたしのお気に入りの作家の一人。
ドイツ文学は少し授業で齧ったりもしたけどこんなにも、のめり込む様な世界を与えてくれたのはフェルディナント・フォン・シーラッハだった。
「犯罪」と書かれた題名からして、そしてミステリーという区分に、きっとどんでん返しのストーリーが待ち構えていると誰もが思うであろう。
11章の短編で構成されたこの本はとても読みやすく、ドイツ文学初心者の方でもするりと入り込める。
しかし、どんでん返しものではなく、現実の話のように「まあそうなるだろうな」と進む話が多い。至って単調な話の連続のように感じるが、彼の描くストーリーは調書や報告書など事務的なものから遠く、話の中には実に多種多様な背景を持ち合わせた登場人物で溢れている。
妻との約束を、妻にどんな目に遭わされても最後まで守った男、数字に囚われた強迫性障害の少年、メルヘンな残酷さを背負った寡黙な男の生きがいに、とんだカニバリズムを持ち合わせた青年(私はこの本を読んで性的衝動によるカニバリズムが、多くを占めることを知った)
気になったのは主人公が男性であることが多い、ことだ。男女比率だと男の方が犯罪を犯す確率が高いからだろうか?
最後に一つ、読んでいてとても気に入った言葉がある。
「狐は多くを理解するが、ハリネズミはただひとつ大事なことを知っている」
紀元前の詩の一節を物語に落とし込む彼のユーモアが非常に好きだ。
Posted by ブクログ
弁護士である「私」が携わった事件、その背景を追いかけながら、被告人たちの真実を描く11篇の連作短編集。
現代ドイツを舞台にしているのだが、難解で共感も困難な事例が多く出てくる。それを一番感じたのは、移民や難民などの他民族他国籍の人々との絡みだった。「この民族は〜な性質」「この国籍は〜レベル」といったような暗黙の既成観念があるように感じ、それを覆せなかった人々による犯罪は、日本にいるとあまりピンとこないように思った。読み進めると、痛々しくて生々しい人々の叫びが文中から聞こえてくるようで、淡々とした「私」視点も相まって、一篇一篇にキツイ読後感を味わうこととなった。
後書きを読んでもう一度本文を読み直したのだが、確かに全部の話にリンゴが登場しており、作者の仕掛けたちょっとしたトリックに驚かされた。「これはリンゴではない」なるほど、確かに。
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