歌人・石川啄木が国文学者・金田一京介を相棒に、貧困の金の足しに探偵業を営むミステリー。
探偵業とイメージが結びつかない、実在の人物二人が主人公というのに読む前は「?」となりましたが、石川啄木のくず…もといぶっ飛んだ性格・エピソードと明治後期にまだ潜む闇深さや世情が折り重なって、重厚な内容となり、地味
...続きを読むながらも個人的には大変好みで面白く読めました。
収められている5つの短編は、時代性もあってか、それぞれの結末は暗く、切なく、やるせなさが残りますが、啄木と金田一の噛み合っているような、いないようなホームズ&ワトソンぶりや、啄木の一句に結末を締められると、ひどく引きづるのではなく、独特の余韻となっているのが特に良かったです。
また、最初の1編目は文章にクセがあり読みにくいが、各話の発表の時差もあるのか1篇ごとに読みやすくなりながら、文章に広がる独特の世界観を損なわなかったのが、著者の技量のすごさだと思いました。