この地方で、かつて隆盛を極めたエアーズ家は、第二次世界大戦終了後まもない今日では斜陽を迎え、広壮なハンドレッズ領主館に逼塞していた。かねてからエアーズ家に憧憬を抱いていたファラデー医師は、ある日メイドの往診を頼まれたのを契機に、一家の知遇を得る。物腰優雅な老婦人、多感な青年であるその息子、そして令嬢のキャロラインと過ごす穏やかな時間。その一方で、館のあちらこちらで起こる異変が、少しずつ、彼らの心をむしばみつつあった……。悠揚迫らぬ筆致と周到な計算をもって描かれる、たくらみに満ちたウォーターズの傑作。ブッカー賞最終候補作。
Posted by ブクログ 2017年08月24日
最初に明言しますがこの物語の真の主人公は人間ではなく「館」です。
「レベッカ」「ねじの回転」さらには「ずっとお城で暮らしてる」など館を舞台にしたゴシックホラーは枚挙にいとまがありませんが、本作もまたその系譜に連なる意欲作。
主人公は田舎の中年医師。
子供時代に訪れた領主館に憧れを抱き続ける彼が、ふと...続きを読む
Posted by ブクログ 2011年07月10日
これがミステリといえるか否か解釈は微妙かもれない。
多くの方はゴシックホラーとして読むのではないか。
最後に全ての辻褄のあうようなミステリーがお好きな方の好みではないかも。
原題はThe Little Stranger。
邦題の『エアーズ家の没落』として"まるっと"読むならば、...続きを読む
Posted by ブクログ 2010年10月05日
ミステリーとカテゴライズしていいのかどうか…。
かつて隆盛を極めたエアーズ家が没落していく。
その姿を主治医の視点から描く。
とはいえ、主治医ファラデーがエアーズ家に出入りする段階で、土地は切り売りされ邸宅は荒廃している。しかも使用人は、家に悪霊がいると言い出す。
ホラーであれば、怪...続きを読む
Posted by ブクログ 2021年05月21日
描写が細かいので、かつて栄華を極めた屋敷が今では落ちぶれていることが目の前に浮かぶ。
下巻でどう終わるのか全然想像がつかない。
この著者の本はsnsでおもしろいと言っている人をたまたま見つけて、初めて手に取った。
本筋には関係ないものの、この本を読んで、イギリスで戦後配給制が取られていたことを...続きを読む
Posted by ブクログ 2013年01月10日
数多くの人生を外側から見つめてきた町医者である主人公ファラデーは、エアーズ家の人々と徐々に親密になってゆき、それと同時に彼ら凋落していく様を目の当たりにする。時にその原因の一端を担ってしまうことも。
テンポは緩やかだが、だからこそ瞬間的な衝撃ではなくじわじわ蝕んでいく暗さが味わえる。ここまでどん底に...続きを読む
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