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この地方で、かつて隆盛を極めたエアーズ家は、第二次世界大戦終了後まもない今日では斜陽を迎え、広壮なハンドレッズ領主館に逼塞していた。かねてからエアーズ家に憧憬を抱いていたファラデー医師は、ある日メイドの往診を頼まれたのを契機に、一家の知遇を得る。物腰優雅な老婦人、多感な青年であるその息子、そして令嬢のキャロラインと過ごす穏やかな時間。その一方で、館のあちらこちらで起こる異変が、少しずつ、彼らの心をむしばみつつあった……。悠揚迫らぬ筆致と周到な計算をもって描かれる、たくらみに満ちたウォーターズの傑作。ブッカー賞最終候補作。
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Posted by ブクログ
〈海外サスペンス〉で検索して見つけた一冊。
「〇〇家」と名のつく“館もの”が大好きなので、好きな要素が全部詰まってる気がして、手に取らずにはいられなかった。
その予感は大当たりで、期待通りの世界観にのめり込んでしまった。
かつては栄華を極めたエアーズ家。しかし、時代の波には抗えず、今では見る影もないほどに荒れてしまっている。
医師ファラデーは、診察のため久々に館を訪れるが、その変わり果てた姿に驚愕する。
その館では次々と不可解な出来事が起こり始める…
これは果たしてホラーなのか、それともサスペンスなのか?今のところはまだわからない。
私はホラーには興味がないので、できればサスペンスの方向へ進んでほしいと祈ってしまう。
情景も人物も丁寧に描かれていて、仄暗くて不穏な空気が漂ってくる。
その静かな緊張感に引き込まれて、自分も館の中にいるような没入感がたまらない。
とにかく下巻が気になって仕方がない。
「ちょっと──その、変なんです」
この奇妙な異変は一体何なのか?早く確かめたい。
どうかサスペンスでありますように…。
Posted by ブクログ
最初に明言しますがこの物語の真の主人公は人間ではなく「館」です。
「レベッカ」「ねじの回転」さらには「ずっとお城で暮らしてる」など館を舞台にしたゴシックホラーは枚挙にいとまがありませんが、本作もまたその系譜に連なる意欲作。
主人公は田舎の中年医師。
子供時代に訪れた領主館に憧れを抱き続ける彼が、ふとした事から一家と知り合いになり……
中年医師と不器量な令嬢の初々しくもじれったい恋愛模様などロマンス要素もあるのですが、最大の見所はやはりこれでもか!と詳細な館の描写。
時代がかった洋館の外観・内装・調度の様子が作者の美質である流麗な筆致で綴られ読者を陶酔に誘う。
洋館で連続する怪奇現象、徐徐に精神に変調をきたしていく住人たち。
ネタバレになるので詳細は省きますが、きちんとした解決を望む方にはお勧めしにくいかも。
ジャンルボーダーと言いますか、読み方によって全体の印象はおろか結論そのものがガラリと変わってしまう。最終的な解釈は読者に委ねられます。それがまたじわじわと恐怖を演出する。
英国・洋館・一族・騒がしい霊。
これらのキーワードに魅力を感じる方にお勧めです。
Posted by ブクログ
これがミステリといえるか否か解釈は微妙かもれない。
多くの方はゴシックホラーとして読むのではないか。
最後に全ての辻褄のあうようなミステリーがお好きな方の好みではないかも。
原題はThe Little Stranger。
邦題の『エアーズ家の没落』として"まるっと"読むならば、これは滅びの物語だ。
ラストに向けて、館はその不気味さを増していき、物語は怪奇ホラーの色を強く帯びていく。
これだけでも充分楽しめると思う。
だが、原題に意図される物語として読んでいけば、どこか”ひっかかり”を感じるはずだ。
そして、それはなぜかと問うていくと、この物語はもっと恐ろしい抑圧された執着と憎悪の物語となる。
そのことは、『エアーズ家の没落』という物語が持つ”遠い国の遠い昔の名家の伝説”から、急に現実感を伴うスリラーとしての意味合いを持たせるだろう。
著者が望むように"深読み"をし、読後にこの物語に"欠けているもの"を推理によって補っていく。
これこそが本書の醍醐味。
Posted by ブクログ
ミステリーとカテゴライズしていいのかどうか…。
かつて隆盛を極めたエアーズ家が没落していく。
その姿を主治医の視点から描く。
とはいえ、主治医ファラデーがエアーズ家に出入りする段階で、土地は切り売りされ邸宅は荒廃している。しかも使用人は、家に悪霊がいると言い出す。
ホラーであれば、怪異を体験するのは語り手なのだ。
が、ファラデーは決してそれを認めない。
彼の根底には、上流社会に属しているエアーズ家の嫉妬がある。
また、悪霊がいると、エアーズ家をでていきたがっていた使用人は、結局ずっとこの家に居続けた。
誰一人として信用がおける語り手が、傍観者がいないのが、この物語の恐怖の源なのかもしれない。
Posted by ブクログ
昔ヨーロッパでの医者の地位は高くなかった.人間の絆でもそうだけど、働かなくてはならない身分であり、客である患者がお金がなければ、たいして稼げない。
主人公はそんな稼げない風采の上がらない医者で、田舎に暮らしている.
その田舎にはかつては名家だったものの戦争を経て暴落した一家が住んでいる.
元々は同僚の担当だったが、偶然治療を行なって訪問するようになる.
子供の時は憧れていたその家族は落ちぶれている.生活のために土地を手放しさらに貧しくなる.屋敷を維持できず、使用人もわずか.
それでも女夫人はかつての優雅さを失っていないように見えるが、医師は不思議な事件や、違和感を感じ始める.屋敷は呪われているのか、というオカルトっぽく誘導されるが下巻ではどうなるのか、楽しみ
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小説・文芸
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