【感想・ネタバレ】エアーズ家の没落 上のレビュー

あらすじ

この地方で、かつて隆盛を極めたエアーズ家は、第二次世界大戦終了後まもない今日では斜陽を迎え、広壮なハンドレッズ領主館に逼塞していた。かねてからエアーズ家に憧憬を抱いていたファラデー医師は、ある日メイドの往診を頼まれたのを契機に、一家の知遇を得る。物腰優雅な老婦人、多感な青年であるその息子、そして令嬢のキャロラインと過ごす穏やかな時間。その一方で、館のあちらこちらで起こる異変が、少しずつ、彼らの心をむしばみつつあった……。悠揚迫らぬ筆致と周到な計算をもって描かれる、たくらみに満ちたウォーターズの傑作。ブッカー賞最終候補作。

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Posted by ブクログ

〈海外サスペンス〉で検索して見つけた一冊。
「〇〇家」と名のつく“館もの”が大好きなので、好きな要素が全部詰まってる気がして、手に取らずにはいられなかった。
その予感は大当たりで、期待通りの世界観にのめり込んでしまった。

かつては栄華を極めたエアーズ家。しかし、時代の波には抗えず、今では見る影もないほどに荒れてしまっている。

医師ファラデーは、診察のため久々に館を訪れるが、その変わり果てた姿に驚愕する。
その館では次々と不可解な出来事が起こり始める…

これは果たしてホラーなのか、それともサスペンスなのか?今のところはまだわからない。
私はホラーには興味がないので、できればサスペンスの方向へ進んでほしいと祈ってしまう。

情景も人物も丁寧に描かれていて、仄暗くて不穏な空気が漂ってくる。
その静かな緊張感に引き込まれて、自分も館の中にいるような没入感がたまらない。

とにかく下巻が気になって仕方がない。
「ちょっと──その、変なんです」
この奇妙な異変は一体何なのか?早く確かめたい。
どうかサスペンスでありますように…。

0
2025年06月25日

Posted by ブクログ

医師のファラディーは子どもの頃にエアーズ家の園遊会に出席してからこの一家に憧れを抱いていた。メイドの急患で呼ばれたファラディーはエアーズ家の人たちと知り合いになり、当主のロデリックの足の治療に通ううちに、一家とも親しくなった。しかしこのエアーズ家には小さな異変が続く。ハンドレッドズ領主館が不気味だ。

0
2018年10月19日

Posted by ブクログ

最初に明言しますがこの物語の真の主人公は人間ではなく「館」です。
「レベッカ」「ねじの回転」さらには「ずっとお城で暮らしてる」など館を舞台にしたゴシックホラーは枚挙にいとまがありませんが、本作もまたその系譜に連なる意欲作。
主人公は田舎の中年医師。
子供時代に訪れた領主館に憧れを抱き続ける彼が、ふとした事から一家と知り合いになり……
中年医師と不器量な令嬢の初々しくもじれったい恋愛模様などロマンス要素もあるのですが、最大の見所はやはりこれでもか!と詳細な館の描写。
時代がかった洋館の外観・内装・調度の様子が作者の美質である流麗な筆致で綴られ読者を陶酔に誘う。
洋館で連続する怪奇現象、徐徐に精神に変調をきたしていく住人たち。
ネタバレになるので詳細は省きますが、きちんとした解決を望む方にはお勧めしにくいかも。
ジャンルボーダーと言いますか、読み方によって全体の印象はおろか結論そのものがガラリと変わってしまう。最終的な解釈は読者に委ねられます。それがまたじわじわと恐怖を演出する。

英国・洋館・一族・騒がしい霊。

これらのキーワードに魅力を感じる方にお勧めです。

0
2017年08月24日

Posted by ブクログ

いろんなミステリを読んできましたが、シリアスなタイプのミステリを書く作家さんの中で、一番文章が好きな作家さんです。ミステリ作家とは呼べないかもしれないですが・・・。

0
2011年09月22日

Posted by ブクログ

ヴィクトリア朝、そして館……ツボにはまらないわけがない。空いた時間にちょっとずつ読んでいたのだが、その度にすんなりこの物語にのめり込める。

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2011年05月02日

Posted by ブクログ

ファラデー先生だいすき!エアーズ家の人たち大好き!

と、思っていたら最後のほうつらくてつらくて…
読んでてどきどきするほどでした。

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2010年10月28日

Posted by ブクログ

これがミステリといえるか否か解釈は微妙かもれない。
多くの方はゴシックホラーとして読むのではないか。
最後に全ての辻褄のあうようなミステリーがお好きな方の好みではないかも。

原題はThe Little Stranger。
邦題の『エアーズ家の没落』として"まるっと"読むならば、これは滅びの物語だ。
ラストに向けて、館はその不気味さを増していき、物語は怪奇ホラーの色を強く帯びていく。
これだけでも充分楽しめると思う。

だが、原題に意図される物語として読んでいけば、どこか”ひっかかり”を感じるはずだ。
そして、それはなぜかと問うていくと、この物語はもっと恐ろしい抑圧された執着と憎悪の物語となる。
そのことは、『エアーズ家の没落』という物語が持つ”遠い国の遠い昔の名家の伝説”から、急に現実感を伴うスリラーとしての意味合いを持たせるだろう。

著者が望むように"深読み"をし、読後にこの物語に"欠けているもの"を推理によって補っていく。
これこそが本書の醍醐味。

1
2011年07月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「茨の城」にいろんな意味でときめいたり沈みこんだりしながらニヤニヤ読み終わって、「半身」だと不安や憂鬱や、お前そっち行ったら危ないだろ!って心配やどんよりした共感を持ちつつ、一気に突き落とされてしばらくぼんやりした、
ということがあったので、サラ・ウォーターズは気軽に読めないし読んだ後楽しくはならない、という印象。

だから覚悟はしていたはずなのに、いろいろ予想以上だった。
「一人称・回想・伝聞まじり」の語り方は大好きで、巧いことやられると本当にすっかり騙されたりまんまと感情移入してつらくなったりするけれども、まさにそんな状態。

登場人物はだいたい厭らしい部分や小汚い部分の方が多くて、それでもだんだん好きになったり心配したりするようになる、というのが陰影のある描きかた、ということなのかと今回思った。
あと「信用できない語り手」を実感。

1
2011年03月28日

Posted by ブクログ

 ミステリーとカテゴライズしていいのかどうか…。

 かつて隆盛を極めたエアーズ家が没落していく。
 その姿を主治医の視点から描く。

 とはいえ、主治医ファラデーがエアーズ家に出入りする段階で、土地は切り売りされ邸宅は荒廃している。しかも使用人は、家に悪霊がいると言い出す。

 ホラーであれば、怪異を体験するのは語り手なのだ。
 が、ファラデーは決してそれを認めない。
 彼の根底には、上流社会に属しているエアーズ家の嫉妬がある。

 また、悪霊がいると、エアーズ家をでていきたがっていた使用人は、結局ずっとこの家に居続けた。

 誰一人として信用がおける語り手が、傍観者がいないのが、この物語の恐怖の源なのかもしれない。

1
2010年10月05日

Posted by ブクログ

昔ヨーロッパでの医者の地位は高くなかった.人間の絆でもそうだけど、働かなくてはならない身分であり、客である患者がお金がなければ、たいして稼げない。
主人公はそんな稼げない風采の上がらない医者で、田舎に暮らしている.

その田舎にはかつては名家だったものの戦争を経て暴落した一家が住んでいる.
元々は同僚の担当だったが、偶然治療を行なって訪問するようになる.

子供の時は憧れていたその家族は落ちぶれている.生活のために土地を手放しさらに貧しくなる.屋敷を維持できず、使用人もわずか.
それでも女夫人はかつての優雅さを失っていないように見えるが、医師は不思議な事件や、違和感を感じ始める.屋敷は呪われているのか、というオカルトっぽく誘導されるが下巻ではどうなるのか、楽しみ

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2025年09月24日

Posted by ブクログ

上巻は正統派ゴシック・ホラーの雰囲気。
没落していく地方の名家、怪しげな洋館、訳アリの登場人物、歯車が狂っていく感じ。
丁寧な情景描写がなされていて、廃墟と化していくハンドレッズ領主館のさまが美しく描かれている。滅びの美学的なものを感じる。

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2021年11月23日

Posted by ブクログ

描写が細かいので、かつて栄華を極めた屋敷が今では落ちぶれていることが目の前に浮かぶ。

下巻でどう終わるのか全然想像がつかない。

この著者の本はsnsでおもしろいと言っている人をたまたま見つけて、初めて手に取った。

本筋には関係ないものの、この本を読んで、イギリスで戦後配給制が取られていたことを初めて知った。戦勝国なので意外。
ちなみにその関係で少しググったところ、配給制がとられていた当時、少ない食料でなんとか拵えられたイギリスの家庭料理を食べたアメリカ人が「イギリス料理はまずい」と吹聴し、今でもそのイメージが払拭できていないと主張するブログがあった。
その当時まずかっただけで今ではそうではないし、配給制がとられる前もそうではなかったということらしい。

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2021年05月21日

Posted by ブクログ

数多くの人生を外側から見つめてきた町医者である主人公ファラデーは、エアーズ家の人々と徐々に親密になってゆき、それと同時に彼ら凋落していく様を目の当たりにする。時にその原因の一端を担ってしまうことも。
テンポは緩やかだが、だからこそ瞬間的な衝撃ではなくじわじわ蝕んでいく暗さが味わえる。ここまでどん底に落ちてしまったハンドレッズ領主館。下巻では一体どうなるのだろう……。

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2013年01月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ミステリじゃなくてホラー…なのか…??

どんな種明かしが来るのかと、息せき切って最後まで読み通した。---が…。

純然たる超常現象だったんだろうか?
ポルターガイストの原因といったら、思春期の少女が定番だけど?
医者が人を暗示にかけるのも簡単かも?

と、ひとしきり思いめぐらしてしまった。

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2011年09月11日

Posted by ブクログ

イギリスの地方にある、かつての大領主家。荒廃し見る影も無くしたその大邸宅に身を寄せ合って暮す領主家家族。時が止まったように、暗い闇、湿った空気、くすんだ埃が屋敷内を覆いつくす。妄想なのか、何者かの悪意の所業なのか・・・ああ、なんなのなんなの??先が気になる・・・!!!

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2011年09月18日

Posted by ブクログ

イギリスの片田舎、荒廃しつつある領主館、小間使いの少女、相次ぐ不審な出来事…。もうワクワクしてしまう。こういうの大好き。超常現象(と思わせる出来事)にどうカタが付くのか?

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2011年09月06日

Posted by ブクログ

巧みなストーリーテリングに引き込まれる。あらすじを見ずに読めば驚きはもっと大きかったと思う。
下巻が楽しみ。

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2010年11月29日

Posted by ブクログ

サラ・ウォーターズの新作。
長篇4作目。
英国のウォーリックシャー地方で、200年以上の歴史を誇るハンドレッズ領主館。
近在で診療所を営む医師ファラデーは、友人デイヴィッドの代診で、館へ往診に出向く。
母親がメイドとして館に勤めていたことがあり、30年前に一度、園遊会の時にこっそり入ってみた思い出があった。
館がすっかり寂れている有様に、驚愕することに。
家族は、先代の奥方エアーズ夫人と娘キャロラインと息子ロデリック。
奥方は美しかった名残をとどめて品があるが、昔を懐かしむばかり。
館の当主となった息子は責任を感じて奮闘していたが、経済的な危機は土地を切り売りしても追いつかない。
見るからに具合が悪そうで、戦場で顔にも火傷を負い、足を引きずる状態。
娘のキャロラインはしっかりした様子だが、身分に似合わぬ家事もしていた。
美人とはいえず、あまりの貧しさに将来の道は閉ざされそうだった。
部屋は一部しか使っておらず、住み込みの女中はまだ少女のベティが一人いるだけ。
そして、次々に怪しい出来事が起こってくる‥?
文学的な雰囲気ですが、内容はゴシックロマンとミステリとホラーとの融合?
なめらかな文章で、複雑な話もわかりにくくはありません。
ダークで謎の多い展開、精緻な描写で、ぐいぐい引きこまれます。

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2010年11月26日

Posted by ブクログ

サラ・ウォーターズが百合描写を封印…ということで不安だったのだけれど、杞憂だった。印象に残ったキャラはベティ。『荊の城』のスウといい、この作家は「ちょっとしたたかな女の子」をとても魅力的に書いてくれる。八重歯が似合いそうなキャラ。サラ・ウォーターズのもう一つの持ち味を認識できた作品でした。
ロデリックが重い中二病を発症させてしまったことで物語はどう転がっていくのか、下巻に期待。

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2010年10月12日

Posted by ブクログ

起伏の多いストーリーでは無いが、描写が丁寧で読みやすい。読んで行くうちにだんだんと仄暗さが漂ってきて、続きを読まずにいられない。

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2015年12月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

3+ 
夜愁は未読だが、その前2作とはだいぶ趣が違う。
前2作のようなどんでん返しがあるかと思いきや、そういったものはなく、人間ドラマが中心。娯楽的要素は少ない。不可解な事件も解決されるわけではない。
が、やはりストーリーテラーとしては一級。

今後はこういった人間ドラマ方向に向かっていくのかもしれないが、期待できる。

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2014年07月24日

Posted by ブクログ

サラ・ウォーターズの新作の翻訳。

時代から取り残されていこうとする家族や館に、次々と悲劇が襲いかかる。
彼らは滅ぶしかない運命なのか?それとも誰かが、何かが彼らを滅ぼしているのか?

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2012年01月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

推理小説なのか、オカルトなのか、よく分からない作品でした。すっきりしないところが、ストレスかもしれません。

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2011年07月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

え、超常現象?
どこに行きつくのかわからない。この著者のことだから、きっとどこかで転換点があるのだろうけど。

『半身』、『荊の城』を読んだことあるけど、相変わらず独特な雰囲気だなぁ。クラシカルな映画みたい。

■このミス2011海外7位

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2011年02月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ある医師と没落領主一家の交流が語られているが上巻を読み終わった時点でもいったいどういう種類の物語なのかよく分からない(ミステリじゃない?)。とはいえどんどん読めてしまうし好きな作家なので下巻でどういう展開をみせるか楽しみ。

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2011年07月17日

Posted by ブクログ

夜、一人で読んでいると周りのちょっとした音にも敏感になってしまう、そんな小説です。
でも、まだまだ序章という感じ。キャロラインの明るさに救われてます。
怖いけど、下巻に手が伸びるのを止められない!

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2010年11月05日

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