【感想・ネタバレ】エアーズ家の没落 下のレビュー

あらすじ

相次ぐ不幸の結果、当主のロデリックが去ったハンドレッズ領主館は、ますます寂れ、倹約を余儀なくされていた。残されたエアーズ夫人と令嬢キャロラインの身を案じるファラデー医師は、館への訪問回数を増やしていく。やがて、医師とキャロラインの間には、互いを慕う感情が芽生え始めるのだった。しかし、ふたりの恋が不器用に進行するさなかにも、屋敷では異様な出来事が続発する。事態は、最後の悲劇へと向けて、まっしぐらに進んでいくのだった……彼らを追いつめるのは誰? ウォーターズが美しくも残酷に描く、ある領主一家の滅びの物語。たくらみに満ちたブッカー賞最終候補作。/解説=三橋曉

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Posted by ブクログ

ネタバレ

どこをどう受け取るかで、物語の見え方が変わってくる奥深い作品だった。

上巻のレビューで「これはホラーなのか?それともサスペンスなのか?」と書いたけど、下巻を読んで、その答えは読む人によって違ってくると思った。

他の方のレビューを読んでみると、自分とはまったく違う視点から物語を捉えている人もいて面白い。
そうした受け取り方の幅こそが、この作品の魅力だと思う。

私は、幽霊よりも人間の内面に強く恐怖を感じるので、上巻からうっすらと違和感を感じていた“ある人物”が鍵を握るサスペンスだと感じた。
下巻に入ってからのあの人物の内面からじわじわ滲み出ていたものは、自分にとっては1番恐ろしかった。

読者の想像力や読み方によって、この物語はホラーにもサスペンスにもなるし、“誰が”という見方までもが変わってくる。

解説の「カレイドスコープをのぞくような物語」という言葉がまさにぴったりの作品。

謎を解く探偵のような人物は登場しないので、すっきりとした結末を求める人にはオススメできません。

少し長く感じるところもあったけど、不気味な館に没入し、じわじわと忍び寄る恐怖を味わう時間はとても楽しかった。

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2025年06月28日

Posted by ブクログ

確かにこの小説のジャンル付けは難しいなぁ……ミステリー?ホラー?スリラー? 語り手を信用出来ないってのも。 エアーズ一家を滅ぼすのはいったい誰?

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2011年05月02日

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幽霊屋敷の話だけれども、一筋縄で終わらないラスト。犯人は誰ということもどうでもよくなる、見事なまでに悲劇的でねちっこい語り口に惑わされる快感。原題が意味深い。

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2011年02月21日

Posted by ブクログ

う〜〜ん、予想外に大変におもしろかった!!かつては華やかなりし時代を生きた、大領主館エアーズ家。第二次大戦後、大戦で傷ついた若き領主と、母と姉、住み込みのメイドと、おかかえ医師。物語はこの5人でほぼ進むが、問題は「信頼出来ない語り手」である、一人称で語られるという点。ずっとこれは、ミステリーではなく、ゴシックホラーものなのかと思って読み進めたが、最後にきて、う〜ん、これはミステリーになるのかなぁ〜と思ったりして。とにかく、これはいったい何なの?なんだかわからないけど、で、どうなるの?どうなるの??的に、頁を繰ってしまった。最後の最後の行、これは、どうゆうこと・・・それが答えだというのかなぁ・・・ああ、わからないけど、すごくおもしろかた♪

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2011年09月18日

Posted by ブクログ

ついに若き当主のロデリックが心労のあまり館を離れることに。
その費用を捻出するために、家族はますます倹約を余儀なくされます。
館のすぐ近くを売った土地に、新しいアパートが建つことに。
果たして、ロデリックの言っていた館の呪いとは…?
説明のつかない不気味な現象に見舞われる館。
残されたエアーズ夫人と令嬢キャロラインを放ってはおけない気持ちのファラデー医師は、ますます頼りにされます。
令嬢キャロラインは地味な外見だが芯は強くいきいきとして、ファラデーとは身分も違うが、しだいに心が通い合うように。
不器用な二人の接近ぶりと行き違いがありありと描かれてまた、見事です。
館の壁に妙な文字が浮かび出て、それを見た夫人は何か思う所がある様子、だんだんと閉じこもっていきます。
幼いときに死んだ最初の子スーザンを夫人は誰よりも愛していたのでした。
スーザンの霊?それとも、夫人の思いなのか、何者かの作為なのか、無意識の生き霊?館にこもる怨念なのか?
キャロラインはポルターガイストかと疑います。
あくまで科学的に捕らえようとするファラデーですが…?
どんどん崩壊していく館のものすごさ。
ホラー好きな人を満足させる~じわじわと盛り上がる描写。
厚みのある設定でリアリティがあり、単なるホラーではありません。
何通りにも解釈が成り立ちそうで、どれも怖い…
ウォーターズはすごい!

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2010年10月24日

Posted by ブクログ

ホラーとしてもミステリとしても読める作品で解釈は読者に委ねられる。
視点を変えて読み返したら違う楽しみ方が出来そう。
謎解きを期待すると不完全燃焼。
段々と「語り手」である主人公がおかしくなっていく様が不気味。
ゴシック・ホラー作品をもっと読んでみたくなった。

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2021年11月23日

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ネタバレ

夢中になって読んだけれど、途中からファラデーの結婚に対する突っ走り方があまりに独りよがりで、館と家族に関する彼の証言が信用できなくなり、何が本当なのか最後までわからなかった!

原題からするに、ベティがlittle strangerなんだろう。
ベティが館で働き出したことをきっかけに、館の中で澱んでいた負のエネルギーのようなものが力を得ることになり、家族それぞれの前に、それぞれが無意識のうちに恐れを感じたり執着している対象の形になって現れたのかな。とすると、キャロラインが叫んだ「あなた」は最初スーザンのことかと思ったけど、実は彼女はファラデーの幻影を見ていたのかも。結婚に対して怖いくらい前のめりだったから、キャロラインが彼に恐怖を抱いていても不思議ではない(キャロラインは最後、終始理性的に見えたけど)。
でも、この考えでは、なぜベティがそのきっかけになったかということの説明ができない。となるとやっぱりベティが全てを仕組んだということ?でもベティはあの家族をかなり慕っているように見えたのになあ。仕組む理由もよくわからない。うーん。
(となるとやっぱり全てはファラデー?littleていうのは、取るに足らない庶民の彼の形容詞なのかしら??)


解説には、嵐が丘と物語の骨格が似ているとの記載があって、この前たまたま嵐が丘を読んだばかりなので納得した。こうやって点と点がつながるのが楽しいよね。

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2021年05月27日

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ネタバレ

結局、怪奇現象の原因は分からないまま。拍子抜けはしたけど、どうでもよくなるぐらい次々に起こる不幸に翻弄された。主人公が結婚しようと思ったのは館が好きやったからやんね、絶対!
最後の一文で主人公が厄を招いたと思ったが、解説を読んで、原題に注目したら…そういうことか!

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2014年09月05日

Posted by ブクログ

怖かった。登場人物たちの追い詰められていく心が迫ってきて、びくびくしながら読んだ。
自らが意識しない妄執の、なんと恐ろしいことか。
はっきりとした解答のないまま、すっと手を離されたような最後。

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2013年06月27日

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ネタバレ

下巻では主人公ファラデーと領主館の一人娘キャロラインの恋愛模様が描かれる中、相変わらず館は陰鬱な空気に満たされている。そして起こる悲劇。
真面目で、理性的で、思慮深い主人公。
それなのに、悲劇をますますこじらせ、ややこしくしているのは間違いなく彼であり、彼もまた狂気に蝕まれているのだとわかってくる。

ハンドレッズ領主館って一体なんだったのだろうね、というはっきりした答えがないまま物語は終えたが、そういう作品であることを前もって知っていたのでさほどショックはなかった。

が、しかし。

下巻の末尾にある、三橋曉氏の解説にて一つの疑惑が述べられた時には、ドキリとしてしまった。この作品に一つの解答を導くとするならば、多分それ以外の答えはないのだろう、だがしかし、という感じ。
確かに、原題の"The Little Stranger"の"Little"って何よ、と思いましたけどね。

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2013年01月29日

Posted by ブクログ

解説にあるように、ジャンル付けが悩む内容。
でも本当に怖くって、ミステリーじゃなくてホラー色の方が強いみたい。
古いお屋敷って確かになにか憑いていそうな感じがあって、そういうイメージを上手く生かしている小説だと思う。

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2011年04月18日

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洋物はほとんど読んだことがなくて文章が若干読みにくい感じがあったけど内容はなかなかのものでした。
館に起きる出来事の謎を最後まで読者に考えさせる感じがよかった

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2011年04月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

買ってしばらく積んでいたのを読み始めたら一気に進んで、さっそく下巻を買ったら続きが怖すぎてまたしばらく放置した。
怖いって、この先に何が起こるかということ。不幸とか裏切りとか絶望とか手の施しようがないとか、そういう事態に、もうかなり自分が入れ込んでしまっているこの登場人物たちが、間違いなく突き進んでいっているのが憂鬱で。

憂鬱で夢も希望もないなりに、きちんと人生を歩いている人が、ふと見つけた謎めく相手にめちゃくちゃに心奪われて、期待をかけて信じて柄にもなくものすごい努力を重ねて、っていう姿にどうもずるずると共感してししまう。
なので、それがどうあっても叶わないのを、認めたくなくて足掻いたあげく裏切られて思い知らされて、それでも人生を続けざるを得ない、というのは、「半身」以上に登場人物が好きだったぶん、けっこう堪えた。

上巻の犬の事件での、「この先後悔することになる瞬間の最初が」みたいなくだりが何度も跳ね返ってくる。

領主館へのエアーズ一族以上の執着とかキャロラインへのぼろぼろの思い入れとか(よく考えたらかなり年の差があると言うかファラデーがいい年だった)、もうファラデー=主人公が一番あぶなっかしい、怖い、しかも本人気付いてなくてどんどん状況が悪くなっている、という一人称の小説で稀にある暗欝な緊張感が味わえた。
ただ、その、語っているのはファラデーだという点がいろいろと疑わしくもさせたり。
わかっていないふりもできるわけだ、とか色々。

最後の事件については「お前だよ」と思う。
それはそれで非常に苦々しい話ではあるけれども、逆にそうであった方がまだファラデーにとってマシだとも思う。完全に部外者のまま、あの館にどんな役割も持てなかったよりは多分。

キャロラインと庭を歩くいくつかの場面や、キャロラインに求婚して頷かれるくだり、ロデリックとちょっと親しくなったり夫人に騎士道精神を見せたり、そういうところどころ素晴らしい情景があるぶん、そもそも回想だというのと合わせてひたすら怪しいし悲惨。

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2011年03月28日

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今回は今までと趣が違うゴシックホラー風の作風。まるでスーザン・ヒルみたいだ。荊の城のようにテンポいい作品ではなく、夜愁のようにじんわり話が進行する。今回は同性愛が出てこなかったのも、これまでとは違うが、キャロラインのキャラは同性愛の女性に近いものを感じる。見た目は悪く、いかつい、気難しい女性だがどこか魅力のあるキャラクター。弟は母に似て美男だが、戦争の傷で美貌は損なわれ障害もある。気難しいが、誇り高く魅力のあるキャラクター。語り手である医者、これがどうしようもない。魅力の無いキャラクターなのだ。しかしこの時代の普通の男性はこんなものなのだろう。モヤモヤしたものが残るが良い作品。再読が必要かな?

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2011年02月03日

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大部にもかかわらずラストまでまったく飽きさせない。サラ・ウォーターズには安心して時間と五感を預けられる。ブッカー賞最終候補作。

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2010年12月12日

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ネタバレ

お屋敷に怪奇現象とくれば、これはもう大好物。

どう読むかに関しては読者の手に委ねられているので、読後、「ねぇ、ねぇ、どう読んだ?」と聞いて回りたくなる。
私はといえば・・・・




おや、と気になる、突飛なというか異常ともいえるような行為があったので、上巻なかばからあたりをつけて読み進めていたため、ラストはああ、やっぱり・・・・・と納得。
超常現象をまじえたサイコ・スリラーとして読んだ感じ。

終盤で、登場人物のある決断に伴って件の人物の異常性が、これでもか、とあぶりだされてくるあたり、怖いのなんの。

そう見定めて読むと、原題の The Little Stranger の Little がとてつもない怖ろしさで迫ってくる。
とはいえ、もう一人のstrangerのほうも、手立てがあるしなぁ。

  The Little Stranger by Sarah Walters

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2011年01月19日

Posted by ブクログ

確かにこれはどこに分類されるのでしょう。ミステリー?ホラー?いろいろな解釈でOKなんでしょうか。やはりサラ・ウォーターズは面白い。

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2011年10月11日

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斜陽の旧家の崩壊が本格的に始る下巻。主人公とヒロインの恋愛要素もあるが、ところどころで“滅び”の気配がちらつくので、いつ関係が壊れるのかとヒヤヒヤしっぱなしだった。結末も安易すぎず曖昧すぎず、いい按配だと思う。いろいろな読み方ができそう。
悲劇として良い作品でした。

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2010年10月14日

Posted by ブクログ

 ミステリーとカテゴライズしていいのかどうか…。

 かつて隆盛を極めたエアーズ家が没落していく。
 その姿を主治医の視点から描く。

 とはいえ、主治医ファラデーがエアーズ家に出入りする段階で、土地は切り売りされ邸宅は荒廃している。しかも使用人は、家に悪霊がいると言い出す。

 ホラーであれば、怪異を体験するのは語り手なのだ。
 が、ファラデーは決してそれを認めない。
 彼の根底には、上流社会に属しているエアーズ家の嫉妬がある。

 また、悪霊がいると、エアーズ家をでていきたがっていた使用人は、結局ずっとこの家に居続けた。

 誰一人として信用がおける語り手が、傍観者がいないのが、この物語の恐怖の源なのかもしれない。

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2010年10月05日

Posted by ブクログ

 陰鬱になってしまう。だってタイトルからしてエアーズ家は没落することは約束されているんだもの。
 出てくる登場人物たちが美男美女ではなく、世間的な意味でのラブロマンスではないのに、どんんどんロマンスになるのは……なんでしょうね。見事としか言えない。

 読み終えるのが怖かったー。はい。

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2014年08月13日

Posted by ブクログ

サラ・ウォーターズの新作の翻訳。

時代から取り残されていこうとする家族や館に、次々と悲劇が襲いかかる。
彼らは滅ぶしかない運命なのか?それとも誰かが、何かが彼らを滅ぼしているのか?

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2012年01月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すっごく平たく言うとイギリス版『斜陽』+不可思議な現象かなあ。でもここに書かれているのは決して滅びの「美学」ではない。生まれながらにして背負わざるをえなかった重圧とそれによって歪まされていく人生にスポットが当てられている。
余談だけど、途中から主人公の空回りっぷりがありありと分かって読んでいて苦しくなった……。どうみたって結婚を申し込むタイミングがおかしいしお嬢様乗り気じゃないの分かるだろ……。

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2011年05月28日

Posted by ブクログ

ホラーミステリーかと思っていたが違った。
ラストがすっきりせずミステリーではなかった。ホラーとしてはどうなんだろう?語り手が遭遇している訳ではないので恐さも伝わってこない。
救いのない物語。

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2011年03月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

こういう終わり方というかこういう類の小説は好みが分かれると思いますが(僕は解決編的なものがあるほうが好き)、読ませますね。館にまつわるミステリと思わせておいて男やもめの奮闘劇でした。

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2011年07月17日

Posted by ブクログ

読んでいる間じゅうすんごい怖かった。
なのに、最後まで読むのを止められない。
すごいぜ、サラ・ウォーターズ。

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2011年01月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

(上巻感想から続く。これから読む人はパスしてください)

うーん…。最後の最後まで「半身」みたいなあっと驚く結末を期待していたので、ちょっと肩すかし。こういう「ねじの回転」的味わいも嫌いではないけれど、何というか、スカッとしたかったんだよねえ。全体の語りには大満足なんだけど。

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2011年11月26日

Posted by ブクログ

このひとの物語の終わらせ方はすごい。
おばけものはこういう人のが怖くていいと思う。
上巻ではあんなに好きだったファラデー先生が…。

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2010年10月28日

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