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『水島のじいちゃん』の名代で、西遠寺家の人々と共にかのこの許嫁の別荘へ、猫のケンゾウを連れて向かうことになった藤代修矢。招かれた別荘の隣には有名な万華鏡作家が住んでいた。認知症になってしまったその隣人は、大きなダイヤモンドを所持していたのだが、置き場所のヒントをメモに残していて……(表題作)。周りで起きる奇妙な事件の真相を、『水島のじいちゃん』が華麗に解き明かしていく。修矢・かのこ編二作、美波・直海編二作に、書き下ろし一作を含む、ライトな本格ミステリ短編集。好評《美波の事件簿》シリーズ、前日譚第二弾。/解説=太田忠司
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Posted by ブクログ
“「修矢が美保子さんの前に赤い皿を置いたのは、本当に単なる偶然かね。本人は無作為のつもりであっても、いざ皿を置くその瞬間には、何らかの意図でそれを選んでいたということはないかな?」
「えっ?そ、それは……」
ぼくはぎょっとした。
意外な方向から切り込まれたとは思ったが、しかし、じいちゃんのいったことは、何となく理解できたのだ。
日常生活においても、似たような場面がたくさんある。それこそ、スーパーマーケットの売り場でダイコン一本買う時にも、まったく無作為の選択ということはあり得ない。選ぶ理由はそれなりに何かあったはずなのだが、そんなものはすぐに忘れてしまう。あとから尋ねられたとしても、答えることはまず不可能だ。
「おっしゃることは、わかります。でも、もし仮に美保子さんの席の前に赤い皿を置いたことに、何か些細な理由があったとしても、いまさらそれを思い出すのは、とても無理ですよ」
「いや、決して些細な理由ではないと、わたしはにらんでいるんだ」
じいちゃんが、また白いひげをしごく。
「あわてないで、その場のイメージをよおく思い出してみるんだ。必然的といってもいいほど明白で、しかも、その場限りで忘れてしまうような理由があったはずだよ」
そう宣言する表情は、ゆるぎない自信に満ちていた。”
久しぶりに出たけれど、続編ではなく前日譚で少し残念。
だけど、内容はすごく良かった。
どのトリックも捻ってあって読み応えがある。
編の終わりと始まりがつながってるのも面白かった。
登場人物の誰もがいい味出してるなー。
“「……どうだったね、修矢」
応接間に戻ってきた水島のじいちゃんが、ぼくにきいた。
「娘時代の詩織さんにそっくりだっただろう」
「え……ええ、確かに」
照れ隠しに笑おうとしたが、うまくいかなかった。頬のあたりが変に引きつっただけ。
内心、ぼくは動揺していた。
亡くなった母の若い頃の写真はほんの数枚しか残されていないのだが、顔の輪郭や髪型、目元の感じ……倉西美波という少女は、まさに生き写しだった。
しかも、白いヘアバンドまでしていた。母さんもそれが好きだったらしく、どの写真でも身に着けている。その事実を、ぼくは以前じいちゃんから聞かされていたのだが、実際目のあたりにすると、やはり衝撃だった。単なる偶然だとは、とても思えなかったのだ。”
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