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ピレネーの旧家デュ・ラブナン家のイヴォンは、スペイン戦争の際レジスタンスに参加し、失踪する。同家の小作人、ジョゼフ・ラルースはイヴォンと行動を共にするが、単独で帰国後、イヴォンから山を贈与されたと主張し、そこに鉱脈が発見されたため裕福となった。二十年後、死んだはずのイヴォンから手紙が届き、裁きが行なわれるだろうと無気味な予告をしてくる。それが現実となって、ジョゼフの次女オデットの首を切り取られた惨殺死体が発見される……。司法警察のモガール警視の娘ナディアと不思議な日本人青年矢吹駆は真相究明を競い合う。日本の推理文壇に新しい一ページを書き加えた笠井潔の華麗なるデビュー長編。
...続きを読むPosted by ブクログ 2021年01月03日
舞台はパリのヴィクトル・ユゴー街。発生した連続殺人事件の謎を、現象学を駆使する日本人探偵・矢吹駆(以下カケル)が解き明かすというもの。この探偵、他の推理小説に登場する名探偵たちとはその推理手法が大きく異なっている。
カケルは「観察と推論と実験」を通じて真実へたどりつくという、一般的に用いられる推理手...続きを読む
Posted by ブクログ 2017年10月04日
殺人に手を染めるほどの思想的根拠を持たない一般市民に
それを行わせるのは何だろうか
軽薄な実存主義ではけして言い表せないほどの正義の重みだろうか
いや違う
正義によって糾弾される罪の意識が肝要なのだ
みんな戦ってる
おまえは戦わないのか?
そういう類のやつだ
しかしそんなものを真に受けたのだとしても...続きを読む
Posted by ブクログ 2016年01月17日
会話文から推理、ルビまで、何をとっても日本人だとは思えないセンス。流れとしては如何にも怪しい人間関係、殺人、容疑者そろい踏み、からの推理という極めてオーソドックスなものなのだけど、そこからはもうひっくりかえるわお楽しみにされるわ哲学だわ倫理だわで揉みくちゃ。面白すぎる!新本格、特にコズミック・ジョー...続きを読む
Posted by ブクログ 2010年12月29日
ミステリーやサブカルの評論家としても活躍する笠井潔の人気探偵、矢吹駆シリーズの第一作
この小説の面白いのは、物凄く難易度の高い本格ミステリーというだけじゃなく、思想書としても、メタ探偵小説としても読めるということ
探偵の矢吹駆は、旧来の『真実はいつもひとつ!』な論理的名探偵たちについて、事件の...続きを読む
Posted by ブクログ 2021年11月18日
矢吹駆シリーズ第一弾。すんごい小説だ。現象学的推理を駆使して事件を解決する探偵役の矢吹駆、と書くといかにもなミステリに聞こえるがとんでもない。この作品をただのミステリに括るのは難しいだろう。しかし、この矢吹駆という探偵役には現代の想像上の名探偵たちに通ずる原初のなにかがあるのは確か。それでいて事件に...続きを読む
Posted by ブクログ 2020年03月21日
このシリーズは知人の紹介から読み始めたのだが、名探偵の推理法が現象学的本質直観に基づくという哲学に疎い人間にはあまりにも意味不明なものだったので、てっきり字面から事件のあらましを聞いただけで理屈もなく犯人を当てるトンデモな話かと思い込んでいた。
実際に読んでみると駆のキャラクター造形のみならず所々...続きを読む
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