【感想・ネタバレ】バイバイ、エンジェルのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2022年01月03日

思った程難しくなかったよ。
作者がワザと難しい言い回しをしている所はあったけど、直後に説明してるし。
哲学を学んでからミステリーを読む人はいない。けど哲学を学んでいたらより深くこの作品を楽しめる事は確かだと思う。

あと、久しぶりに事件を解決する気の無い探偵役の作品を読みました。

0

Posted by ブクログ 2021年01月03日

舞台はパリのヴィクトル・ユゴー街。発生した連続殺人事件の謎を、現象学を駆使する日本人探偵・矢吹駆(以下カケル)が解き明かすというもの。この探偵、他の推理小説に登場する名探偵たちとはその推理手法が大きく異なっている。
カケルは「観察と推論と実験」を通じて真実へたどりつくという、一般的に用いられる推理手...続きを読む法に対し疑問を投げかける。「推論」は唯一の論理的筋道をたどっているというわけではない。なぜならその推論と論理的には同等の権利を持つ、他の無数の解釈が存在しうるからだ。そして仮に仮説に基づく推論の正しさを、実験的に証明できたとしても、なぜ探偵は無数の解釈の中から、その正しい推論に達することができたのだろうかという疑問は、依然として残る(その仮説が相対的に論理的妥当性が高かったから、という反論は当然失当である)。
カケルの答えは、探偵は推論をするまでもなく、最初から真実を知っていたのだ、というものである。それは「本質直観」によってである。よくわからない。カケルはさらに続ける。「正しい直観が与えられているからこそ、無数にありうる論理的な解釈の迷路を辿って真実に到達できるということに目を閉じたとき、一方では観察、推論、実験がそれ自体で真理への道であるというような自己欺瞞の精神が生まれ、他方その対極に、直感をなにか非合理で神秘的なものであるという発想が固定化される」。まだよくわからない。ただシャーロックホームズの推理手法についても、過去に似たような解説を読んだことを思い出した。ホームズは演繹的に推論を積み重ねていって真実にたどり着くわけではなく、まず直感的に真実にたどり着き、後からその真実に沿うように、帰納的に仮説を組み込んでいっているのだ、という内容だったように記憶している。となると、ホームズも一種の「本質直観」を用いていたということかな。
カケルは「本質直観」について、誰でもほとんど無自覚のうちに日常的に働かせている、対象を認識するための機構だとし、円の概念を用いてさらに説明を加える。曰く、我々は誰でも円の概念を持っており、ある対象が円いかどうか判別することができる。しかしこれは奇妙なことである。円の概念を円周率で定義することはできるにしても、我々はこの世界にあるすべての円形の物体の円周率を計算してから円の概念、つまり円の本質を知ったわけではない。むしろ精密に測れば測るほど、純粋な円など存在しないことに気づかされるだろう。つまり円の本質にはどうやってもたどり着くことはできない。しかし我々は明らかに「円いもの」と「円くないもの」を判別することができる。つまり誰もが円の本質を知っている。それはなぜか?
現象学者が出した答えは以下のようなものである。我々はなにか円いものを見たとき、その一つの見本に「円なるもの」一般の一つの原型という性格を持たせる。そして次に、その「円なるもの」を、自身の想像の中で無限に多様な無数の形に変容させる。この想像の中で行われる変容作用により、円の本質が直感されるようになるという。例えば円い太陽、円い時計、、というふうに考えていき、どこかの段階で円い歯車と考えたとき、我々は想像の中からこの像を撤回しなければならないと感じる。歯車には歯が刻まれおり、円い歯車という想像を不可能にしてしまうからである。このように想像の中の無数の変容作用を繰り返した結果、「円いもの」「円くないもの」を判別しうる一般的な基準、つまりは円の本質に達することになる。
わかったようなわからんような、「経験的に分かる」というのが、どういう思考経路を経ているかについて、説明を加えた一つの解釈だという風に理解する。
そんなこんなで物語は進み、事件が起こる。本作のワトソン役でもあるナディア・モガールが、事件の謎は解明できたと、その推理を披露する。その推理に論理的な瑕疵はなく、一見正しい答えであるかのように思えたが、カケルは一笑に付す。ナディアの推理は、まさに小説における探偵の手法と同様のものであったからである。カケルは、本来無限の意味を込めている事物が、ただ一つの意味にだけ固定され扱われることを「意味沈殿」であると前置きしたうえで、ナディアの推理はこの「意味沈殿」に陥ったドクサさであると突き放す。日常生活者の知恵は、たとえ一面的であっても、生活世界の現実に根差した根拠を持っているのに対し、ナディアが陥っているドクサはより恣意的で薄弱なものであり、それは現実的でないが故に、その表面的な論理整合性にも関わらず、真の意味で理性的ではないというのだ。とんでもないことを言うやつである。そりゃあナディアも大激怒するわ、、、しかしその後の展開でナディアの推理は誤っていたことが判明し、結局はカケルが事件を解決することになる。
犯人は過激な革命グループの手によって行われていた。首謀者は、真の革命は核戦争によって世界が滅ぶことによって完成するとのたまう、スーパークレイジー野郎だった。めちゃくちゃな論理だと思うが、作者の笠井潔からすれば、自身もイデオローグとして携わった学生運動が、凄惨な内ゲバを経て、あさま山荘事件にまで発展してしまったという状況を目の当たりにしており、まさに自分自身が直面した、革命が孕んだ本質的な矛盾を表しているのかもしれない。その首謀者に対するカケルの反論も明るい、希望に満ちたものではない。資本主義でも社会主義でもない細く狭い道を、ニヒリズムに毒されることなく、進んでいくしか道は無いということか。なんとも困難な道であろうか。

0

Posted by ブクログ 2019年05月16日

憂鬱なパリの冬空の下に流される緋い鮮血。
本格ミステリの様式を以って幕を開け、全ての現象はある人物の極めて悪魔的な企みに美しく帰結する。

0

Posted by ブクログ 2017年10月04日

殺人に手を染めるほどの思想的根拠を持たない一般市民に
それを行わせるのは何だろうか
軽薄な実存主義ではけして言い表せないほどの正義の重みだろうか
いや違う
正義によって糾弾される罪の意識が肝要なのだ
みんな戦ってる
おまえは戦わないのか?
そういう類のやつだ
しかしそんなものを真に受けたのだとしても...続きを読む
いまここにある平和を偽りと断じ、ぶち壊しにかかる権利は誰にもない
それはエゴである
平和の裏には虐げられてる人がいて
自分にはそういう権利があると考えてしまいがちだが
それもエゴである
まあエゴはエゴでいいんだけどね
そんなものと革命の理想を一緒にするのは冒涜的でゆるせん
矢吹駆はそういうやつ

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年05月20日

パリで起こる首切り死体から始まった連続殺人事件の謎を解明する話。
謎解きの肝は最後に記すとして、ラストの犯人と探偵役矢吹駆のやりとりが圧巻!
するとこなんだが何を言ってるのかついていけない。人間の死に関する自論展開になっている。

犯人たちが最後死ぬことになったのはやるせない。矢吹駆は犯人たちをそこ...続きを読むまで追い込むやり方をとるのは賛同できないが、彼ならやってもおかしくないと思わせるだけの説明は作中されている。そこらへんは上手い。

以下メモ代わり
謎解きの肝となった何故死体の首が切られたか。死体が化粧をしていなかったことをばれないようにするため。
アリバイ作りのために犯人は被害者が化粧をし終わった時間に部屋を訪れたのに、前日飲んだ睡眠薬のせいで被害者はまだ化粧をしていなかった。仕方なく犯人は被害者の首を切り取って外出する準備が終わった形を装った。また犯人は男であったためハンドバックの準備まで思考が至らなかったのも味噌。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年03月20日

矢吹駆の凄まじいイケメン描写に圧倒され、しばらく読まないだろうと思っていたが、思いきって読むことにした。

やけに小難しく、かなり衒学的な小説だが、読んでみると意外と納得できる部分もある。

追記:犯人やあの人物の正体は、はじめからかなりヒントが出ていたので予想通りだった(特に黒幕はタイトルだけでわ...続きを読むかるかも…)。動機はほとんど推理不可能なものだったが。

最後の黒幕との舌戦?や、たまに入る蘊蓄がいかにも文系という感じで笑えるくらいだったが、舞台が外国であることや、矢吹駆が日本語ではない言葉を話しているということでまぁ納得できる。

ナディアが推理を披露して玉砕する点や、殺人の動機が思いもよらないものだった点から、アンチミステリー的な雰囲気を感じた。小説の探偵が語る推理は、本当に正解かどうかなんて誰にもわからないというような。

それにしても、ナディアは今まで私が読んだ小説の中には出てこない強烈なタイプの女の子だった。

思想モデル:永田洋子、マルクス

0

Posted by ブクログ 2014年04月17日

矢吹駆シリーズ。名探偵はいいやつとは限らない(ポアロ然り、ホームズ然り)。戯言シリーズのいーちゃんが引き継いでいるような精神性。続刊も読みたい

0

Posted by ブクログ 2013年02月10日

『探偵小説は「セカイ」と遭遇した』の著者が書いたミステリ。
初の矢吹駆シリーズに挑戦してみた。
女子大生が語り手なので、とっつきやすい。ぐいぐい物語に、引き込まれていく。
シリーズ、全部読んでいきたいなぁ。

0

Posted by ブクログ 2016年01月17日

会話文から推理、ルビまで、何をとっても日本人だとは思えないセンス。流れとしては如何にも怪しい人間関係、殺人、容疑者そろい踏み、からの推理という極めてオーソドックスなものなのだけど、そこからはもうひっくりかえるわお楽しみにされるわ哲学だわ倫理だわで揉みくちゃ。面白すぎる!新本格、特にコズミック・ジョー...続きを読むカーなんかを先に読んでいると、この作品が日本ミステリ界に与えた影響は相当大きかったのだろうなと思う。

0

Posted by ブクログ 2010年12月29日

ミステリーやサブカルの評論家としても活躍する笠井潔の人気探偵、矢吹駆シリーズの第一作


この小説の面白いのは、物凄く難易度の高い本格ミステリーというだけじゃなく、思想書としても、メタ探偵小説としても読めるということ

探偵の矢吹駆は、旧来の『真実はいつもひとつ!』な論理的名探偵たちについて、事件の...続きを読むさいに現れる手がかりからは無数に同じ論理的真相が導かれるということ、論理だけでなくある種の直観が事件の真相を導き出してることを指摘する。いわゆるポストモダンな探偵小説批判の常套だけど、そこからその直観から考察を研ぎ澄まし、起点にして推理する哲学探偵を生んだっていうのはかなりすごい

この小説の見所は謎解きよりも真犯人との思想対決。生活世界を重視する現象学に対し、真犯人は観念と革命の堕天使に取り付かれたかのような悪魔的人物。無論、それは連合赤軍事件を生むに至った日本の学生運動、マルクス主義運動の記憶が濃厚に刻まれているだろう。観念の肥大により人を殺す人間への、矢吹駆の哲学的挑戦。若書きもあってかやや荒いが、ここが一番スリリングで迫力がある

首切り殺人の考察にも、笠井潔自身の、本格探偵小説は第一次大戦の大量死を背景に先鋭化した、という論の各論版みたいで面白い。思想書と本格ミステリー小説、さらにメタミステリー。全てを高いレベルで融合させたのが矢吹駆シリーズだ

0

Posted by ブクログ 2021年11月18日

矢吹駆シリーズ第一弾。すんごい小説だ。現象学的推理を駆使して事件を解決する探偵役の矢吹駆、と書くといかにもなミステリに聞こえるがとんでもない。この作品をただのミステリに括るのは難しいだろう。しかし、この矢吹駆という探偵役には現代の想像上の名探偵たちに通ずる原初のなにかがあるのは確か。それでいて事件に...続きを読む積極的に関与することが命題とされている名探偵たちに対する痛烈なアンチテーゼともいえる存在でもあるように思える。名探偵とは真理を探究し追及するものではあるのだろうが、それが死神になることもあるのだと思い知らされた。

0

Posted by ブクログ 2020年03月21日

このシリーズは知人の紹介から読み始めたのだが、名探偵の推理法が現象学的本質直観に基づくという哲学に疎い人間にはあまりにも意味不明なものだったので、てっきり字面から事件のあらましを聞いただけで理屈もなく犯人を当てるトンデモな話かと思い込んでいた。

実際に読んでみると駆のキャラクター造形のみならず所々...続きを読むに挟まれる蘊蓄や哲学的問答にさらに面食らってしまったが、解決編の推理自体はきちんと筋だっていて妙に安心した。むしろ合うひとにはこのバランスが妙にクセになると思う。

駆が事件に対して全く積極的ではないことで、ミステリーにつきものの事件の最後まで探偵が真相を明らかにできないという問題を解決している点や、「なぜ犯人はわざわざ被害者の首を切ったのか?」という謎への答えには感心した。最後の思想的対決に作者の熱量を推理パート以上に感じるのもこのシリーズの異色さを表していると思う。

0

Posted by ブクログ 2020年08月26日

昔読んだ再読

矢吹駆かっけー
と昔思ってたけど、今読むとそこまでではw
昔は真似したりした
また、真似してみようかと読んだけど
そこまで今は感じられなかった

作品的には、殺人事件がおきて、それを調査するっという普通の感じなんだけど、
主人公は事件の真相というよりも、
観念?信念?的な部分で敵と戦...続きを読むう事をメインにしている
記憶だと、それが事件と強く無図日ついてた気がするけど、
それほどではなかったかも
事件としては顔無ししたい
内容としては面白い

0

Posted by ブクログ 2014年01月16日

『森博嗣のミステリィ工作室』での紹介から。
探偵さんの言ってることが、哲学的すぎて全くわからない。
ラストの犯人さんとの会話なんて一つも理解できない。
それでも面白いと思った。

0

Posted by ブクログ 2013年12月31日

哲学者で探偵、というのは珍しいんじゃないかしら、なんて思いながら読みました。
これを読んだ当時、私はまだ高校生で、イギリスの寄宿学校で過ごしていて、隣の国なのにまだ足を踏み入れたことのないフランスという国が舞台になっているのにも興味を覚えたし、それでいてまったく想像できなくて不思議な感じでした。
...続きを読む偵がグロを望んでいるわけでもないのに、ものすごく凄惨なシーンがあったりして。犯人がまったく分からなかったのは、女性キャラクターに感情移入していたのからなのでしょうか。犯人による殺害の動機もまったく理解できず、それが故に、読んだ後長い間この作品のことを考えていました。

0

Posted by ブクログ 2015年12月18日

硬い文体と、キーワードである哲学部分が邪魔して読み難いですが、過去の確執や首のない死体、失踪した人物からの手紙など、本格の魅力がたっぷりです。
死体の首を切った理由は斬新ですし、犯人特定のロジックや、電話の記録帳が盗まれた理由もよく考えられていて秀逸な推理小説だと思います。

0

Posted by ブクログ 2013年02月20日

矢吹駆シリーズ一作目。
1975年頃のパリが舞台(戦争が終わって30年という記述より)。カタカナ名だらけで一見読みにくそうではあるけれど、理路整然とした文章はむしろ頭に入りやすく、語り手ナディアの内心の感情的な描写との対比も面白かった。
終盤の革命論も興味深い。テロと革命の違い、またレジスタンスとの...続きを読む線引きについて考えさせられた。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年09月19日

色々なところで名前を聞いていてようやっと読んだ。舞台が70年代のフランスってことで時代背景を詳しく知らない自分にはまずそこが読みづらかった。読んでいて風景が想像できないのは結構辛い。話は本格ミステリと哲学的な話の二つが柱になっている。ミステリ要素はまさにこれがミステリというようなトリック。首切り屍体...続きを読むの謎にホテルのアリバイ工作など理解するのが難しいけどわかるとおぉ!ってなる。推理が現象学って考え方に依っているのも面白い。哲学パートはわかるけど納得はできないかな~。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2011年10月12日

初笠井潔。探偵の矢吹駆は現象学で真相を看破するらしく、現象学による推理というものを語ってくれるんだけどそれがまた良くわからない・・・。読んでいて、その雰囲気は山口雅也の『生ける屍の死』みたいだなーと思った。でも語り手は西之園萌絵そのものだった。というわけで、雰囲気は嫌いじゃないんだけどナディアがムカ...続きを読むつくという平凡な感想に・・・。あと、現象学による推理というものを力を入れて書きすぎた結果、それによって明かされる真実がやたら地味に感じられたのも事実。

0

Posted by ブクログ 2011年06月08日

ヴィクトル・ユゴーのアパルトマンの一室で、外出用の服を身に着け、血の池の中央にうつぶせに横たわっていた女の死体には、あるべき場所に首がなかった! ラルース家を巡り連続して起こる殺人事件。警視モガールの娘ナディアは、現象学を駆使する奇妙な日本人矢吹駆とともに事件の謎を追う。
ヴァン・ダインを彷彿とさせ...続きを読むる重厚な本格推理の傑作。

0

Posted by ブクログ 2012年11月07日

■比類なき精度で描かれた、孤高にして至高の探偵小説

アパルトマンの一室で、外出用の服を身に着け、血の池の中央にうつぶせに横たわっていた女の死体には、あるべき場所に首がなかった!!ラルース家をめぐり連続して起こる殺人事件。警視モガールの娘ナディアは現象学を駆使する奇妙な日本人・矢吹駆とともに事件の謎...続きを読むを追う。日本の推理文壇に新しい1項を書き加えた、笠井潔のデビュー長編。

第6回角川小説賞

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年02月24日

ヴァンダインの僧正殺人事件とエラリークイーンのYの悲劇の結末が好きな自分としてはテンションがあがった。

0

Posted by ブクログ 2015年05月23日

首なし死体が登場した時点で、似非推理小説マニアの私は「またあの手か…」と失望したが、中盤からそんな先入観も吹っ飛ばされた。
終始クールで冷酷な主人公矢吹駆、自尊心が強いナディアモガール、また独特の倫理観を持つ犯人。そのどれにも感情移入することができず、彼らの会話にもついていけないところがあった。

...続きを読む普段ならカタカナの名前に拒絶反応を示す所だったが、今回はスラスラ読めた。日本人が書いているというのが要因か?
そしてこの作品、後味の悪さがまた格別!

0

Posted by ブクログ 2015年02月28日

矢吹駆シリーズ、第1作。

フランスが舞台の素人探偵もの。

人名が横文字なだけでこれだけ入り込めないなんて。

日本人作家の作品としては、外国が舞台ってのは珍しいと思う。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2013年04月17日

すこし縁があって、いつか読もうと思っていたこの本に手を伸ばした。笠井潔の処女作。
ミステリとしての謎解き、雰囲気についてはなるほどこれか、という感じ。ミステリが好きなので、なにかこう「そうそうこれこれ」という懐かしさに浸されながら最後まで読み切れた。
作者が描ききりたかったのは謎の部分よりも殺人の意...続きを読む味、観念、その辺りの議論だったんでしょうかね。
でもやはり、ナディアが聞いた最後のアントワーヌの肉声となったあの言葉は、心にひっかかりますね。
サマー・アポカリプスも読むか悩み中。

0

Posted by ブクログ 2012年12月05日

王道本格ミステリー。
名探偵役である、矢吹駆は輪をかけて思わせ振りでもったいぶる。殺人事件が進行しても被害者を減らす努力をするでもなく、事件が終わってから解決。

哲学的な犯人と探偵。

0

Posted by ブクログ 2012年10月13日

推理云々より駆が話している内容に興味が沸いた。作者がどうしてこのような話を書いたのか、巻末の書評?を読んでなるほどなぁと思った。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年11月13日

 矢吹が作中で語られるとおり、様々な事件は大きく2つに分けられる。「自らの欲を満たすための事件」と「憑かれた観念を正当化するための事件」だ。そして事件の真相は後者である。

 思想、政治、宗教。あらゆる「観念による犯罪」は、古今東西、いつでも、どこでも、更に虚実も差別することなく起きている。しかし、...続きを読む「観念」には罪もあれば功もある。観念による「犯罪」をこの世から一掃することは、その観念による「芸術」も一掃することになり、ゆえに、「人間」である限りは観念による犯罪は無くならないと矢吹は言っている。

 犯罪者に憑いた観念を、矢吹は「悪魔」と称した。ミステリ好きを公言する者なら、「悪魔」を「憑き物」と言い換える者もいるだろう。憑き物と言えば「憑き物落とし」――そう、古本屋の主、中善寺秋彦である。彼もまた、犯罪者に罪を犯させた「概念」を解体することで、事件を考察している。

 だが二人には相違点がある。中善寺の周りには人と物があるのに対し、矢吹の周りには必要最低限の人と物しかない。
 事件への一貫した立場も異なる。中善寺は、自分が関わることで起こる悲劇を望まない。だが矢吹は、自分の関心に沿って事件を考察し判断し、事件の方向性によっては、関係者に苦渋の選択をさせる立場に追い込むこともする。

 まだ『バイバイ、エンジェル』を読んだだけなので、感想はここで一旦終わらせることとする。私の中ではこの時点で、矢吹は事件を解決する「探偵」ではなく、現象学を実践する者――行動する「哲学者」となっている。ゆえに、あらゆる剰余を纏って日々を暮らしている人間にとって、矢吹駆を真に理解することは難しい。だが、矢吹が論じる「現象学」は、現代にも通ずるであろうとは思う。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2011年11月27日

以前から気にはなっていたけど、読んだことがなかった笠井潔。
やっと読めました。
現象学は正直、難しい。。。
でも、文章自体は難しくないので、カケルの話すところだけ集中すれば何とか読めます。
まぁ、理解できたとは言わないけども(苦笑)
当時の革命とかがピンとこないから個人的な理由だけど星は3つにしまし...続きを読むた。
でも、限りなく4に近い感じ。
一度、完璧と思える推理を見せた後に覆すところはたまらなかったですね!

0

Posted by ブクログ 2011年03月31日

コムズカシイ。正直言うと、ついていけないところが多い矢吹駆。
ただし、独特の魅力的な雰囲気がある。この作品が発表されたのはもうだいぶ昔のことだ。あの頃にこういう雰囲気のこんな探偵が既にいたのだなあと思うと、つい感心してしまう。ストーリィの都合上、かわいげがなくなった探偵や人間味がなくなった探偵は世に...続きを読むたくさんいる。だが、最初のキャラ設定の時点で既に「人間味がない」という前提の探偵がここにいる。徹底している。また、世の探偵は「証拠がない」とか「まだ自信がない」などの理由で(もちろんミステリィのお約束だし)最後まで自分の推理を明かさないが、彼は「別に誰が殺されても自分には関係ない」から明かさないのだ。ひどい時には「持論の検証の邪魔をされてしまうから」明かさなかったりもする。(ある意味、鬼畜だ。)徹底した観察者としての視線。社会的なものを超越してしまった彼の哲学。思想。それが悔しいくらい雰囲気に合っている。
鼻につくとか、可愛くないとか、理解できないとか。そういうごく普通の印象を持ちながらも、物語は読み進んでしまう。大人しく彼の講釈を聞いてしまう。オソルベシ、笠井ワールド。 (2002-08-16)

0

「小説」ランキング