新潮文庫作品一覧

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  • 沙林 偽りの王国(上)(新潮文庫)
    4.0
    1~2巻825円 (税込)
    1995年3月20日月曜日の朝。東京の地下鉄は突然、阿鼻叫喚に包まれた。複数路線での同時テロ。車内では正体不明の液体が異臭を放ち、通路で地上で人々は次々と倒れた。毒物はサリン。その治療法を熟知していたのは九州大学医学部だった。九大チームは、前年の松本サリン事件でいち早く毒物を特定、捜査方針に大きな疑問を呈していたのだ……。医師で作家の著者にしか描けないオウムの全貌。
  • 湖の女たち(新潮文庫)
    3.4
    湖畔の介護施設で暮らす寝たきりの男性が殺された。捜査にあたった刑事は施設で働く女性と出会うが、二人はいつしかインモラルな関係に溺れていく。一方、事件を取材する記者は死亡男性がかつて満州で人体実験にかかわっていたことを突きとめるが、なぜか取材の中止を命じられる。吸い寄せられるように湖に集まる男たち、女たち、そして――。読後、圧倒的な結末に言葉を失う極限の黙示録。(解説・諏訪敦)
  • ふたりの本多―家康を支えた忠勝と正信―(新潮文庫)
    3.0
    生涯57回の合戦でかすり傷ひとつ負わず、「家康に過ぎたるもの」と敵将からも称えられた、徳川四天王のひとり本多忠勝。いったん家康に背きながらも、帰参後は家康が「友」と呼び、秀忠の老中も務めた本多正信。家康最大の危機の三河一向一揆から、三方ヶ原の合戦、関ヶ原合戦まで、戦国時代を彩る合戦を舞台に、武と智で家康の天下取りに貢献した「ふたりの本多」を描く、書下ろし長編歴史小説。
  • やがて満ちてくる光の(新潮文庫)
    4.0
    作家として、旅行者として、そして生活者として日々を送るなかで、感じ、考えてきたこと――。読書に没頭していた子ども時代。日本や異国を旅して見た忘れがたい風景。物語を創作するうえでの覚悟。鳥や木々など自然と向き合う喜び。未来を危惧する視点と、透徹した死生観。職業として文章を書き始めた初期の頃から近年までの作品を集めた、その時々の著者の思いが鮮やかに立ちのぼるエッセイ集。(解説・河田桟)
  • リーガルーキーズ!―半熟法律家の事件簿―(新潮文庫)
    3.0
    法律のプロである弁護士や検事や裁判官……になる一歩手前の「法律家の卵」、それが司法修習生。初々しい新人たちがそれぞれの熱い想いを胸に過ごす、一年間の研修の日々。理想と現実の狭間で葛藤し、恋と青春の苦悩を乗り越え、さまざまな謎を解き明かしながら成長してゆく。さあ明日から法律家デビュー! 元弁護士の著者による爽快なリーガル青春ミステリ。『朝焼けにファンファーレ』改題。(解説・新川帆立)
  • 輪舞曲(新潮文庫)
    3.3
    私、四十になったら死ぬの。松井須磨子の後を継ぐと目された女優、伊澤蘭奢が、口癖の通り早逝した。そして集まった四人の男。愛人兼パトロンである実業家の内藤、蘭奢が人妻だった頃からの恋人、徳川夢声、サロンに出入りする帝大生の福田、そして生き別れの息子、佐喜雄。彼らそれぞれが見た蘭奢の姿が、一人の女の像を結び始める――。男たちを幻惑しながらもひとすじに生きたある女優の肖像。
  • 名探偵のはらわた(新潮文庫)
    3.7
    「亘(わたる)君、君は真実を語るべきだ」農薬コーラ毒殺魔、局部切断女、そして恐怖の三十人殺し! 昭和史に残る極悪犯罪者たちが地獄の淵から甦(よみがえ)り、現代日本で殺戮の限りを尽くす。空前絶後の惨劇に立ち上がった伝説の名探偵は、推理の力でこの悪夢を止められるのか。「疑え――そして真実を見抜け」二度読み必至の鮮やかな伏線回収、緻密な論理(ロジック)による美しき多重解決。本格ミステリの神髄、ここにあり。(解説・若林踏)
  • プロジェクト・インソムニア(新潮文庫)
    3.3
    睡眠障害(ナルコレプシー)のせいで失業した蝶野は、極秘人体実験「プロジェクト・インソムニア」の被験者となる。極小チップを脳内に埋め込み、夢を90日間共有する――。願望を自在に具現化できる理想郷(ユメトピア)は、ある悪意の出現によって恐怖と猜疑に満ちた悪夢へと一変する。次々と消えてゆく被験者たち、はたして連続殺人鬼の正体は――。驚愕の真相に涙が落ちる。最注目の新鋭作家による、大満足の長編ミステリー。(解説・千街晶之)
  • ランゲルハンス島の午後(新潮文庫)
    3.9
    まるで心がゆるんで溶けてしまいそうなくらい気持のよい、1961年の春の日の午後、川岸の芝生に寝ころんで空を眺めていた。川の底の柔らかな砂地を撫でるように流れていく水音をききながら、僕はそっと手をのばして、あの神秘的なランゲルハンス島の岸辺にふれた――。夢あふれるカラフルなイラストと、その隣に気持よさそうに寄り添うハートウォーミングなエッセイでつづる25編。
  • 覇王の譜(新潮文庫)
    4.4
    「お前は一流にはなれんよ」。七年間、C級2組から這い上がれない直江大に剛力英明王座はそう言い放つ。旧友との目も眩むような格差。だが、天才少年との邂逅、“孤剣”の異名を持つ師の特訓が、燻っていた直江を覚醒させる。彼の進む道の先には運命の対局が待ち受けていた。元奨励会会員、将棋を深く知る著者が青年棋士の成長と個性あふれる棋士群像を描く。魂震わす将棋エンターテインメント。(解説・西上心太)
  • 100文字レシピ プレミアム(新潮文庫)
    -
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 今日のごはん、どうしよう? 最近、野菜を食べてないなあ。友人が遊びにくる週末、何を作ろうか……。料理にまつわるそんなお悩みは、この一冊ですべて解決。たった100文字のレシピだから、初心者でもかんたんに作れます。そして何といってもおいしい! 毎日のおかずから、特別な日のおもてなしメニューまで全138品。プレミアムな食卓を演出する魔法のレシピを、どうぞお試しあれ。巻末対談(壇ふみ×川津幸子) ※この商品は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
  • クジラアタマの王様(新潮文庫)
    3.9
    記憶の片隅に残る、しかし、覚えていない「夢」。自分は何かと戦っている?――製菓会社の広報部署で働く岸は、商品への異物混入問い合わせを先輩から引き継いだことを皮切りに様々なトラブルに見舞われる。悪意、非難、罵倒。感情をぶつけられ、疲れ果てる岸だったが、とある議員の登場で状況が変わる。そして、そこには思いもよらぬ「繋がり」があり……。伊坂マジック、鮮やかなる新境地。(解説・川原礫)
  • わが人生の時の時(新潮文庫)
    4.0
    ヨットレースの最中、髪の毛一筋ほどのきわどさで目撃した落雷の恐怖と眩さ。海面下23メートルに広がる豪奢な水中天井桟敷。杭打ち機の何千トンという圧力を跳ね返すぼろぼろのされこうべ。ひとだまを捕獲する男。冷たい雨の夜に出会ったずぶ濡れの奇妙な男。かけ替えのない弟裕次郎の臨終の瞬間。作家の人生の中で鮮烈に輝いた恐ろしくも美しい一瞬を鮮やかに切り取った珠玉の掌編40編。(解説・福田和也)
  • 沼地のある森を抜けて(新潮文庫)
    4.1
    はじまりは、「ぬかどこ」だった。先祖伝来のぬか床が、うめくのだ――「ぬかどこ」に由来する奇妙な出来事に導かれ、久美は故郷の島、森の沼地へと進み入る。そこで何が起きたのか。濃厚な緑の気息。厚い苔に覆われ寄生植物が繁茂する生命みなぎる森。久美が感じた命の秘密とは。光のように生まれ来る、すべての命に仕込まれた可能性への夢。連綿と続く命の繋がりを伝える長編小説。
  • 格闘(新潮文庫)
    -
    孤高の柔道家、羽良勝利(ハラショウ)を取材して、ノンフィクションを執筆しようとした小説家の「私」。だが、いくら踏み込んで話を聞こうとしても、巧みにかわされハラショウの核心にはたどり着けない。かつて住んでいた街や友人を訪ね、あの手この手で立ち向かっていくうち、しだいに私の心は――。二人の焦れったい心の攻防が、各章冒頭の柔道技と重ねられて表現されていく傑作恋愛小説。(解説・小池真理子)
  • 人類が知っていることすべての短い歴史(上)(新潮文庫)
    完結
    4.1
    こんな本が小学生時代にあれば……。宿題やテストのためだけに丸暗記した、あの用語や数字が、たっぷりのユーモアとともにいきいきと蘇る。ビッグバンの秘密から、あらゆる物質を形作る原子の成り立ち、地球の誕生、生命の発生、そして人類の登場まで――。科学を退屈から救い出した隠れた名著が待望の文庫化。137億年を1000ページで学ぶ、前代未聞の“宇宙史”、ここに登場。
  • 警官の血(上)(新潮文庫)
    3.9
    1~2巻825円 (税込)
    昭和二十三年、警察官として歩みはじめた安城清二は、やがて谷中の天王寺駐在所に配属される。人情味溢れる駐在だった。だが五重の塔が火災に遭った夜、謎の死を遂げる。その長男・安城民雄も父の跡を追うように警察学校へ。だが卒業後、その血を見込まれ、過酷な任務を与えられる。大学生として新左翼運動に潜りこめ、というのだ。三代の警官の魂を描く、空前絶後の大河ミステリ。
  • 家康の女軍師(新潮文庫)
    3.5
    家康の側室於奈津は、鎧姿で関ヶ原の戦場に立った。将軍の女影武者・軍師として戦況を見極めつつ、「お屋形様の本気を」と鼓舞。小早川秀秋へ問い鉄砲を仕掛けさせる――。この女傑、元は商家の女番頭。持ち前の機転で家康の心を摑み、物事に動じぬ良き相談相手となった。大坂冬夏の陣にも参陣し、真田信繁とも対峙。今は徳川家の菩提寺に眠る波瀾の生涯を描く。『将軍家康の女影武者』改題。(解説・末國善己)
  • 蟻の棲み家(新潮文庫)
    3.5
    東京都中野区で、若い女性の遺体が相次いで発見された。二人とも射殺だった。フリーの事件記者の木部美智子は、かねてから追っていた企業恐喝事件と、この連続殺人事件の間に意外なつながりがあることに気がつく。やがて、第三の殺人を予告する脅迫状が届き、事件は大きく動き出す……。貧困の連鎖と崩壊した家族、目をそむけたくなる社会の暗部を、周到な仕掛けでえぐり出す傑作ノワール。(解説・大森望)
  • 乱鴉の島(新潮文庫)
    3.9
    犯罪社会学者の火村英生は、友人の有栖川有栖と旅に出て、手違いで目的地と違う島に送られる。人気もなく、無数の鴉が舞い飛ぶ暗鬱なその島に隠棲する、高名な老詩人。彼の別荘に集まりくる謎めいた人々。島を覆う死の気配。不可思議な連続殺人。孤島という異界に潜む恐るべき「魔」に、火村の精緻なロジックとアクロバティックな推理が迫る。本格ミステリの醍醐味溢れる力作長編。(解説・村上貴史)
  • 「私」を受け容れて生きる―父と母の娘―(新潮文庫)
    4.0
    それでも、人生は生きるに値する。彫刻家・舟越保武の長女に生まれ、高村光太郎に「千枝子」と名付けられる。大学を卒業後、絵本の編集者となり、皇后美智子様の講演録『橋をかける』を出版。だが、華々しい成功の陰には、幾多の悲しみがあった。夫の突然死、息子の難病と障害、そして移住した岩手での震災……。どんな困難に遭っても、運命から逃げずに歩み続ける、強くしなやかな自伝エッセイ。(解説・山根基世)
  • オリンピア1996 冠〈廃墟の光〉(新潮文庫)
    4.0
    近代オリンピック百年の節目となった1996年大会は、父祖の地アテネを押しのけ、グローバル資本を背景にもつスポンサーとテレビ局によってアメリカ・アトランタに持ち去られて開幕。著者は全日程をつぶさにレポートしつつ、五輪はいまや「滅びの道」を歩んでいるのではないかという仮説を抱くのだった……。一見華やかだが、巨体に悶え、岐路に立たされる五輪の姿を見出した最前線傑作ルポ。(解説・阿川佐和子)
  • 草薙の剣(新潮文庫)
    3.8
    1巻825円 (税込)
    草を薙いで野火の大難を防いだといわれる神剣――草薙の剣。12歳から62歳まで、6人の男たちとその父母、祖父母が経験した、戦前、戦後、学生運動、オイルショック、バブル、オウム事件、2回の震災、そして現代まで、そこに生きる人間の姿をつぶさに描くことで、「時代」という巨大な何かを立ち上がらせた奇跡の長編小説。知の巨人にして時代の感性だった橋本治の文業40年の結晶。野間文芸賞受賞。(解説・末木文美士)
  • 編集長の条件―醍醐真司の博覧推理ファイル―(新潮文庫)
    3.5
    転落死を遂げたマンガ雑誌編集長、南部正春。悪名は高かったがマンガを深く愛していた。フリーの凄腕編集者・醍醐真司は彼の死に疑問を抱きつつ、後継編集長に就任する。一方、“出版専門の探偵”水野優希も南部の調査を依頼される。やがて昭和史最大の謎「下山事件」が見え隠れし始めて。『20世紀少年』などのヒット作を手がけた元編集者が創作の原点と現場のリアルを描く、傑作エンターテインメント。(解説・澤田康彦)
  • アトラス―天命探偵 Next Gear―(新潮文庫)
    完結
    4.0
    全1巻825円 (税込)
    次の犠牲者は、警察庁警備局公安課のトップ、そして、これまで共闘してきた上司――。眠り続ける志乃の予知夢を可視化する〈クロノスシステム〉の映像に、真田らは絶句した。忌まわしい未来を変えるべく、真田や黒野ら〈次世代犯罪情報室〉の面々は危険な作戦に身を投じる。そこへ因縁の敵・アレスが姿を現し……。冴え渡る頭脳戦と怒濤のアクションが加速する大人気シリーズ、堂々完結!!(解説・大矢博子)
  • 信長を生んだ男(新潮文庫)
    4.3
    兄が猛虎になるなら、己は支える龍となる――。大うつけと蔑まれる信長のなかに、弟信行が見出した比類なき強者の資質と、猛虎の意志。だが真の覇者となるには、何かが決定的に欠けていた。兄の弱さに気づいた信行は、密かに身命を賭けた策に出る。すべては兄のために。信長の正室帰蝶を巻き込んで、信行最後の大勝負が始ま った……。定説を覆し、誰も描かなかった歴史の真実を摑む傑作。(解説・大矢博子)
  • 忍びたちの本能寺(新潮文庫)
    4.3
    本能寺の変の真相を探れ――。特命をうけた甲賀忍びの伊兵衛は、美貌のくノ一於夕や千蔵らと探索を開始した。他の忍びの妨害をかわし疑わしい人物を洗っていく。近衛前久、勧修寺晴豊、神主の吉田兼和、御所、そして伴天連の筋。愛宕山の連歌の謎や奇妙な日記が意味することは何か。京都と丹後宮津、浜松をつなぐ点と線、非情なる密約の構図とは。歴史の闇に大胆に挑み新説を提示する傑作。(解説・縄田一男)
  • 漱石を知っていますか(新潮文庫)
    4.0
    『吾輩は猫である』は長くて歪だ。『坊っちゃん』は俗っぽいし、『門』は暗くてわかりにくい。『こころ』には女性軽視の傾向が……。実は難点ばかり!? の夏目漱石が、日本で百年以上も読み継がれている人気の秘密とは? 代表的13作品を例に、その創作技法から文章術、作者の心理、作品の完成度までを阿刀田節全開で平易に解説。スラスラ読めて明日から語れる、目からウロコの超入門書。(解説・石原千秋)
  • 村上春樹 雑文集(新潮文庫)
    4.2
    デビュー小説『風の歌を聴け』新人賞受賞の言葉、伝説のエルサレム賞スピーチ「壁と卵」(日本語全文)、人物論や小説論、心にしみる音楽や人生の話……多岐にわたる文章のすべてに著者書下ろしの序文を付したファン必読の69編! お蔵入りの超短篇小説や結婚式のメッセージはじめ、未収録・未発表の文章が満載。素顔の村上春樹を語る安西水丸・和田誠の愉しい解説対談と挿画付。
  • 守教(上)(新潮文庫)
    4.5
    1~2巻825~880円 (税込)
    九州の筑後領高橋村。この小さな村の大庄屋と百姓たちは、キリスト教の信仰を守るため命を捧げた。戦国期から明治まで三百年。実りの秋も雪の日も、祈り信じ教えに涙する日々。「貧しい者に奉仕するのは、神に奉仕するのと同じ」イエズスの言葉は村人の胸に沁み通り、恩寵となり、生きる力となった。宣教師たちは諸国を歩き、信仰は広がると思われたが、信長の横死を機に逆風が吹き始める。
  • 機巧のイヴ―帝都浪漫篇―(新潮文庫)
    4.1
    浪漫(ロマン)とモダニズムの花咲く1918年。美しき機巧人形(オートマタ)・伊武(イヴ)は、女学校の友人・ナオミとともに訪れた猫地蔵坂ホテルで、ある男と運命の出会いを果たす。恋の始まりを予感したそのとき、幸せな日常を引き裂く大震災が襲う。時代の波に翻弄され、廻り出す運命の歯車。そして物語の舞台は、大陸の新国家・如洲(にょしゅう)へ――。心を持たない人形が問いかける、愛とは、魂とは。日本SF小説史に残る圧倒的傑作。
  • 評伝 石牟礼道子―渚に立つひと―(新潮文庫)
    3.6
    『苦海浄土 わが水俣病』の発表以来、文学界でも闘争の場でも神話的な存在であり続けた、詩人にして作家・石牟礼道子。しかし、水俣病に対する告発という面にとらわれすぎると、その豊饒な世界を見失いかねない。不知火海を前に育った幼年期から、文学的彷徨、盟友・渡辺京二との交流、苦闘の日々、暮らしと命を見つめてやまなかった晩年まで、創造の源泉と90年の軌跡を綴った初の本格評伝。(解説・池澤夏樹)
  • ドクダミと桜(新潮文庫)
    -
    三津谷咲良、結婚4年目の34歳。成功しない不妊治療に焦燥を感じ、大学講師の夫とは微妙な関係に。徳永多実、咲良の小学生時代の親友。恵まれた家庭に育った優等生の咲良と異なり、高校を1年で中退、パートで働くシングルマザー。二人が19年ぶりに再会し、止まっていた刻(とき)が再び動き始めたら――生まれも育ちも、そして住む世界も違う二人の女性の友情と葛藤と再生を描く、感動の書下ろし。(解説・大矢博子)
  • みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子 訊く/村上春樹 語る―(新潮文庫)
    4.3
    ようこそ、村上さんの井戸へ――川上未映子はそう語り始める。少年期の記憶、意識と無意識、「地下二階」に降りること、フェミニズム、世界的名声、比喩や文体、日々の創作の秘密、そして死後のこと……。初期エッセイから最新長編まで、すべての作品と資料を精読し、「村上春樹」の最深部に鋭く迫る。十代から村上文学の愛読者だった作家の計13時間に及ぶ、比類なき超ロングインタビュー!
  • 新・しゃばけ読本(新潮文庫)
    4.0
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 病弱だけれども、優しくて知恵の働く若だんなと、彼を見守る不思議で愉快な妖(あやかし)たちが、お江戸に起こる難事件珍事件を解決! 大人気しゃばけシリーズのガイドブックが登場です。物語紹介から妖と人物解説、作者&絵師の創作の秘密にも迫ります。巻末に絵本『みぃつけた』を特別収録。初心者からマニアの方まで、シリーズの魅力を楽しみ尽くすための豪華な一冊。『しゃばけ読本』増補改訂版。
  • けさくしゃ(新潮文庫)
    3.6
    1巻825円 (税込)
    腕っぷしは弱いが、見た目は役者と見紛うばかりのいい男。柳亭種彦は二百俵取りのお殿様で、暇を持て余す趣味人だ。その読み手を楽しませる才能を見込んだ版元の山青堂は、彼の戯作で一山当てようと目論む。渋々ながらも書き始めた種彦。すぐに戯作の虜になるが、世に出した作品がその身を危うくする……。実在した流行作家の若き姿と、本を愛おしむ仲間たちとの痛快な活躍を描く。(解説・新井見枝香)
  • ちょちょら(新潮文庫)
    4.0
    1巻825円 (税込)
    間野新之介は、兄の自刃を受けて、多々良木藩の江戸留守居役を引き継いだ。先輩の留守居役たちにしごかれながら、幕府と藩の橋渡し役として、接待や付け届け、情報戦に明け暮れる日々。そんなとき新之介は、多大な負担を強いる「お手伝い普請」の情報を得る。困窮する藩のため、何としてでもこれを逃れたい――。兄の死の謎や思い人の運命に悩みつつ奔走する、若き藩士の痛快奮闘記。(解説・立川談四楼)
  • 黄泉がえり again(新潮文庫)
    3.7
    あの大地震から二年。熊本で、死者が次々生き返る“黄泉(よみ)がえり”現象が再び発生した。亡くなった家族や恋人が帰還し、驚きつつ歓迎する人々。だが、彼らは何のために戻ってきたのだろう。元・記者の川田平太は、前回黄泉がえった男とその妻の間に生まれた、女子高生のいずみがその鍵を握ると知るのだが。大切な人を想う気持ちが起こした奇跡は、予想を遥かに超えたクライマックスへ――。(解説・大矢博子)
  • ワシントンハイツ―GHQが東京に刻んだ戦後―(新潮文庫)
    3.5
    終戦からほどなく、東京の真ん中に827戸を擁する米軍家族住宅エリアが出現した。その名も「ワシントンハイツ」。「日本の中のアメリカ」の華やかで近代的な生活は、焼け野原の日本人にアメリカ的豊かさへの憧れを強烈に植え付けた。現代日本の「原点」ともいうべき占領期を、日米双方の新資料と貴重な証言から洗いなおした傑作ノンフィクション。日本エッセイスト・クラブ賞受賞。
  • 暗幕のゲルニカ(新潮文庫)
    4.2
    ニューヨーク、国連本部。イラク攻撃を宣言する米国務長官の背後から、「ゲルニカ」のタペストリーが消えた。MoMAのキュレーター八神瑤子はピカソの名画を巡る陰謀に巻き込まれていく。故国スペイン内戦下に創造した衝撃作に、世紀の画家は何を託したか。ピカソの恋人で写真家のドラ・マールが生きた過去と、瑤子が生きる現代との交錯の中で辿り着く一つの真実。怒濤のアートサスペンス!(解説・池上彰)
  • 不発弾(新潮文庫)
    3.6
    大手電機企業が発表した巨額の「不適切会計」。捜査二課の小堀秀明は、背後に一人の金融コンサルタントの存在を掴む。男の名は、古賀遼。貧しい炭鉱街の暮らしから妹を救うため、体力頼みの場立ち要員として証券会社に就職。狂乱のバブルを己の才覚のみでのし上がった古賀は、ある事件をきっかけに復讐を始めるのだった――。欲望に踊らされた男たちの終わらない闘いを描く経済サスペンス。(解説・磯山友幸)
  • 心が安らぐ145種 旅先で出会う花ポケット図鑑(新潮文庫)
    -
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 花に感じ入るのはそのいさぎよさである。時期が来れば咲き、時節が去れば散ってゆく。そんな姿を求めて、早春、他の植物が地中で眠っている時に咲く花に会いに行き、陽春から秋には海辺と高山を行き来する。晩秋から冬は信州に住む地の利を生かし、野山や高原へと向かう……。半世紀に亘り花を追い続けてきた著者が50の探索コースを極上のエッセイと写真で解説する花紀行、渾身の最終作! ※当電子版は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。ご了承ください。
  • 影の中の影(新潮文庫)
    4.3
    血も凍る暴虐に見舞われた故郷から秘密を抱えて脱出したウィグル人亡命団と、彼らを取材中のジャーナリスト仁科曜子が、白昼の東京で襲撃された。中国による亡命団抹殺の謀略だ。しかし警察は一切動かない。絶体絶命の状況下、謎の男が救いの手を差しのべる。怜悧な頭脳と最強の格闘技術をそなえた彼の名は、景村瞬一。冒険小説の荒ぶる魂がいま甦る。疾風怒濤のノンストップ・アクション。
  • ひと目で見分ける340種 日本の樹木ポケット図鑑(新潮文庫)
    4.0
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 北海道から沖縄県までの野山でよく見かける樹木、街路樹、公園樹、庭木など日本の主要樹木を網羅。出会った樹木を調べやすいように「花」「実」「葉」「木肌」「形」の5つに分類し、写真やイラストで樹木全体を視覚的に説明します。このような基本情報のほか、樹木の興味深い個性や和名の由来、文学、詩歌唱歌などにまつわる話題も多く紹介する、「樹木ポケット図鑑」の決定版です。
  • 和名の由来で覚える372種 野と里・山と海辺の花ポケット図鑑(新潮文庫)
    -
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 花はその和名に秘密があります。花弁の色、葉の形、薬効、地名などが含まれているのです。だから「お坊さんが座禅を組む姿に似ているから“座禅草”」というように、和名の由来を知ることで簡単に覚えられます。本書は海辺、野原、山と地域ごとに分け、似た花の違いをイラストによってひと目で分かるように構成しました。その場で開いてすぐ分かる、「花のポケット図鑑」決定版です。
  • 維新と戦った男 大鳥圭介(新潮文庫)
    4.5
    われ、薩長の明治に恭順せず――。幕府歩兵奉行・大鳥圭介は異色の幕臣だった。全身にみなぎる反骨の気概、若き日に適塾で身に着けた合理的知性、そしてフランス式軍学の圧倒的知識。大政奉還後、右往左往する朋輩を横目に、江戸から五稜郭まで戦っていく。勝海舟や土方歳三に信頼された大鳥は、なぜ戦い続け、何を信じていたのか。武士の最後の戦を描ききる傑作長編。『死んでたまるか』改題。
  • 総力捜査(新潮文庫)
    3.8
    捜査二課から異動してきた“刑事の中の刑事”上河内博人警部が相棒に指名したのは、なんと“内勤のプロ”柴崎警務課長代理だった(「秒差の本命」)。坂元真紀署長は、管内に移ってきた武闘派暴力団事務所を排除するため、総力体制を組む。対策を練り、調査を進めるうちに、柴崎たちの想像を遥かに超えた真実が浮上する(表題作)。警察小説の醍醐味、その全てを詰めこんだ、会心の連作ミステリ。
  • 捨ててこそ 空也(新潮文庫)
    4.0
    平安時代半ば、醍醐天皇の皇子ながら寵愛を受けられず、都を出奔した空也。野辺の骸を弔いつつ、市井に生きる聖(ひじり)となった空也は、西国から坂東へ、ひたすら仏の救いと生きる意味を探し求めていく。悪人は救われないのか。救われたい思いも我欲ではないか。「欲も恨みもすべて捨てよ」と説き続けた空也が、最後に母を許したとき奇跡が起きる。親鸞聖人と一遍上人の先駆をなした聖の感動の生涯。 ※文庫版に収録の「虚実のおもしろさ、仏教の核心」(ひろさちや)は、電子書籍版には収録しておりません。
  • べんけい飛脚(新潮文庫)
    4.0
    前田家の参勤交代は四千人の大移動。五代藩主前田綱紀は禁を破る数の鉄砲隊の同道を突如命じた。関所通過には公儀の許可証が要る。隊列は既に藩邸を発った。迫る時間の中、漸く吉宗決済の許可証が下りた。予め先々の宿場で待ち受けていた浅田屋の飛脚たちは参勤隊列を目指して文書を繋いでいく。艱難辛苦を極める難事に命を懸ける飛脚たち。使命を遂行する男の意気地に心打たれる傑作時代長編。
  • 乙女の家(新潮文庫)
    4.7
    愛する人との内縁関係を貫いた曾祖母、族のヘッドの子どもを16歳で産んだ祖母、理想の家庭像に邁進しすぎる母という、強烈な女系家族に育つ女子高生の若菜は、自分のキャラのなさに悩んでいた。文学少女キャラの友人・高橋さんと家出をしてみたり、彼女の初恋や家族の恋への助太刀を決め、名脇役を目指してみたり。はたして若菜は自分のキャラと、皆の幸せを掴めるか。かしまし迷走青春劇。
  • 731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く―(新潮文庫)
    4.0
    731部隊の闇は戦後も続いていた。太平洋戦争中に生体解剖やペスト菌による非人道的な実験を行った細菌戦部隊。残虐な行為に手を染めながら、なぜ彼らは戦犯とならずに済んだのか。そこには隊長・石井四郎とGHQの驚くべき駆け引きがあった。戦後50余年を経て発見された石井の直筆ノート2冊から隠された真実を読み解く。国内外の圧倒的な取材から浮上した新しい戦後史。
  • 特命金融捜査官(新潮文庫)
    3.5
    ひとりの男が失踪した。金融庁長官の特命を帯びた捜査官の伊地知耕介がマークしているベンチャー銀行の専務だった。銀行の急所を突く証拠と共に消えた金庫番を探し出し、伊地知は不正を暴くことができるのか。野望実現に驀進する会長の坂巻、銀行に巣くう闇の暴力組織。男たちは沖縄の離島へ飛ぶ……。金融界を熟知した著者が放つハードボイルド金融エンターテインメント! 『鬼忘島』改題。
  • 生れて来た以上は、生きねばならぬ―漱石珠玉の言葉―(新潮文庫)
    3.5
    智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい――。世間と自身の生き方との大きな隔たりに苦しんだ漱石。彼の残した言葉には、類稀な経験に育まれた深い叡智が込められている。漱石研究の第一人者・石原千秋が25作品から413の言葉を厳選、章末解説でそれらを鮮やかに読み解く。困難な時代を懸命に生き抜く私達迷える子(ストレイシープ)に寄り添う決定版名言集。
  • ペスト
    3.9
    アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。
  • ゼツメツ少年
    3.8
    1巻825円 (税込)
    「センセイ、僕たちを助けてください」ある小説家のもとに、手紙が届いた。送り主である中学二年のタケシと、小学五年の男子リュウに女子のジュン。学校や家で居場所をなくした三人を、「物語」の中に隠してほしい。その不思議な願いに応えて、彼らのお話を綴り始めたセンセイだったが――。想像力の奇跡を信じ、哀しみの先にある光を探す、驚きと感涙の長編。毎日出版文化賞受賞。
  • 殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件―
    4.4
    5人の少女が姿を消した。群馬と栃木の県境、半径10キロという狭いエリアで。同一犯による連続事件ではないのか? なぜ「足利事件」だけが“解決済み”なのか? 執念の取材は前代未聞の「冤罪事件」と野放しの「真犯人」、そして司法の闇を炙り出す――。新潮ドキュメント賞、日本推理作家協会賞受賞。日本中に衝撃を与え、「調査報道のバイブル」と絶賛された事件ノンフィクション。
  • 谷間の百合
    4.1
    充たされない結婚生活を送るモルソフ伯爵夫人の心に忍びこむ純真な青年フェリックスの存在。彼女は凄じい内心の葛藤に悩むが……。
  • 新源氏物語(上)
    4.2
    1~3巻825~869円 (税込)
    現代のヒーローとして甦った〈光る君〉。平安の宮廷で華麗に繰り広げられた光源氏の愛と葛藤の物語を、新鮮な感覚で〈現代〉のよみものとして描いた大ロマン長編――比類ない美貌と知性、そして高貴な身分を持つ源氏は、至福の愛を求めて、許されぬ恋、苦しい恋を重ねる……。上巻には、「眠られぬ夏の夜の空蝉の巻」より「佗びぬればはかなき恋に澪標の巻」までを収める。
  • 海峡の鎮魂歌
    3.7
    昭和9年春、函館の潜水夫・泊(とまり)敬介は、時化(しけ)る海と吹き荒れる風に妙な胸騒ぎを感じていた。予感は的中し、猛火が街を襲う。妻子と母を探し歩く敬介だったが。さらに昭和20年の空襲、昭和29年の洞爺丸沈没。立ち直ろうともがく敬介に、運命は非情な仕打ちを繰り返す……。仙台在住の著者が震災から半年後、悩み迷いながら筆をとった、再生と希望の長編小説。『烈風のレクイエム』改題。
  • 姿三四郎(上)
    -
    1~3巻825~935円 (税込)
    明治開化期の浮薄な欧化主義に抗して、伝統的民族精神に根ざす人間の道である“柔道”を興した矢野正五郎。その紘道館道場に入門した姿三四郎は、やがて四天王の一人として、壮絶な“山嵐”をもって旧来の柔術諸流の挑戦を退け、師の理想の体現に励む。試練に耐え死闘を切り抜け、柔道一途に生きる青春の夢と苦悩、反逆と自省。不朽の名作の決定版。
  • 真空地帯
    5.0
    1巻825円 (税込)
    木谷上等兵は二年の刑を終え原隊に戻ってきた。なぜ自分が無実の罪に問われたか、誰が自分を陸軍刑務所に突き落したのか? 秘密のカギを握る者は誰だ、そして真の“犯人”は! 巧みな構成の展開にしたがい“秘密”の核心は軍法会議、すなわち天皇制絶対主義のからくりに集約される。戦後はじめて、軍隊機構の末端である兵営の緻密な描写を通して、日本軍国主義を批判した問題作。
  • 一死、大罪を謝す─陸軍大臣阿南惟幾─
    -
    昭和二十年八月十五日朝、劇的な自決を遂げた陸相・阿南惟幾。帝国陸軍の典型的軍人として平凡な道を歩んでいた彼は、突然、その生涯最後の四カ月、歴史の表舞台に引き出された。巨大な組織の統率者として敗戦へ向う過程で、彼は何を考え、何を為そうとしたのか。――一切を語らず自決した軍人・阿南惟幾の行動を緻密にたどり、歴史の事実として捉えた、帝国陸軍の擡頭と崩壊の日。
  • 愛しい女
    3.0
    婦人雑誌記者の清里は、妻子を連れて温泉地で休暇を過した折、旅先の吊橋で立ち往生して動きのとれぬ女性二人を救う。その一人は同じ会社の電話交換嬢・妙子で、もう一人は、その友人のスタイリスト留美であった。留美の異様な眼差しが、清里の心を射抜く。留美は清里に強く惹かれ、彼との結婚を強く望むようになる。が、道ならぬ恋を諦めてヨーロッパへ旅立つまでの、濃密な愛の日々。
  • ゴリオ爺さん
    4.1
    華やかなパリ社交界に暮す二人の娘に全財産を注ぎこみ屋根裏部屋で窮死するゴリオ爺さん。娘ゆえの自己犠牲に破滅する父親の悲劇。
  • 出署せず
    3.6
    柴崎令司警部は、今回も綾瀬署を離れることができなかった。その一方で、同世代のキャリア・坂元真紀が署長に着任。現場経験に乏しいコンビが誕生してしまった。職務にまつわる署内の不祥事、保護司による長男殺しの闇。そして、女性店員失踪事案の再捜査が、幾つもの運命を揺さぶりはじめる――。ミステリ×人間ドラマの興奮。日本推理作家協会賞受賞の名手が描く、警察小説集。
  • 決闘者 宮本武蔵(上)
    5.0
    美作国宮本村の牢人の子に生まれ、父の敵平田無二斎に養育された弁之助は、激しい独習を積んで無二斎に勝ち、宮本武蔵と名乗って武者修行の旅に出る。僧・沢庵の草庵に草鞋を脱いだ青年武蔵は、扶桑第一と称される吉岡道場の当主吉岡清十郎に挑戦した。剣聖でもなく、野人でもなく、ただ剣において勝つことのみにその生涯を費やした兵法者、宮本武蔵。作者独自の視点から武蔵を造形する長編。
  • 黙示
    3.8
    1巻825円 (税込)
    農薬散布中のラジコンヘリが小学生の集団に墜落する事故が発生。重い中毒症状に苦しむ子どもたちを目の当たりにした世論は、農薬の是非のはざまで揺れることに。その間隙を縫い、農薬を必要としない遺伝子組み換え食品を推進するアメリカの巨大企業と、日本の食品の買い占めを目論む中国。私たちは何を選び、何を捨てるのか。日本の食のあり方を厳しく問う社会派メガ・エンタメ!
  • ニュータウンは黄昏れて
    3.7
    バブル崩壊前夜に買ってしまった分譲団地。20年近く経つ今もローンを抱え、織部頼子は節約に必死だ。その上、老朽化による建替え問題に振り回される日々。一方、娘の琴里(ことり)は27歳フリーター。ある日、友人の三起子にイケメン資産家の彼氏を紹介される。が、彼女は失踪し、いつしか琴里が彼と婚約することに。織部家、まさかの人生大逆転?! 一気読み必至の傑作社会派エンタメ長編。
  • リカーシブル
    4.0
    越野ハルカ。父の失踪により母親の故郷に越してきた少女は、弟とともに過疎化が進む地方都市での生活を始める。だが、町では高速道路の誘致運動を巡る暗闘と未来視にまつわる伝承が入り組み、不穏な空気が漂い出していた。そんな中、弟サトルの言動をなぞるかのような事件が相次ぎ……。大人たちの矛盾と、自分が進むべき道。十代の切なさと成長を描く、心突き刺す青春ミステリ。
  • 中庭の出来事
    3.6
    瀟洒なホテルの中庭で、気鋭の脚本家が謎の死を遂げた。容疑は、パーティ会場で発表予定だった『告白』の主演女優候補三人に掛かる。警察は女優三人に脚本家の変死をめぐる一人芝居『告白』を演じさせようとする――という設定の戯曲『中庭の出来事』を執筆中の劇作家がいて……。虚と実、内と外がめまぐるしく反転する眩惑の迷宮。芝居とミステリが見事に融合した山本周五郎賞受賞作。
  • 新史 太閤記(上)
    4.5
    日本史上、もっとも巧みに人の心を捉えた“人蕩し”の天才、豊臣秀吉。生れながらの猿面を人間的魅力に転じ、見事な演出力で次々に名将たちを統合し、ついに日本六十余州を制覇した英雄の生涯を描く歴史長編。古来、幾多の人々に読みつがれ、日本人の夢とロマンを育んできた物語を、冷徹な史眼と新鮮な感覚によって今日の社会に甦らせたもっとも現代的な太閤記である。
  • 国盗り物語(一)
    4.4
    世は戦国の初頭。松波庄九郎は妙覚寺で「知恵第一の法蓮房」と呼ばれたが、発心して還俗した。京の油商奈良屋の莫大な身代を乗っ取り、精力的かつ緻密な踏査によって、美濃ノ国を〈国盗り〉の拠点と定めた! 戦国の革命児斎藤道三が、一介の牢人から美濃国守土岐頼芸の腹心として寵遇されるまでの若き日の策謀と活躍を、独自の史観と人間洞察によって描いた壮大な歴史物語の緒編。
  • 関ヶ原(上)
    4.4
    東西両軍の兵力じつに十数万、日本国内における古今最大の戦闘となったこの天下分け目の決戦の起因から終結までを克明に描きながら、己れとその一族の生き方を求めて苦闘した著名な戦国諸雄の人間像を浮彫りにする壮大な歴史絵巻。秀吉の死によって傾きはじめた豊臣政権を簒奪するために家康はいかなる謀略をめぐらし、豊家安泰を守ろうとする石田三成はいかに戦ったのか?
  • 女刑事音道貴子 凍える牙
    3.9
    深夜のファミリーレストランで突如、男の身体が炎上した! 遺体には獣の咬傷が残されており、警視庁機動捜査隊の音道貴子は相棒の中年デカ・滝沢と捜査にあたる。やがて、同じ獣による咬殺事件が続発。この異常な事件を引き起こしている怨念は何なのか? 野獣との対決の時が次第に近づいていた――。女性刑事の孤独な闘いが読者の圧倒的共感を集めた直木賞受賞の超ベストセラー。
  • ワイルド・ソウル(上)
    4.5
    1~2巻825円 (税込)
    その地に着いた時から、地獄が始まった――。1961年、日本政府の募集でブラジルに渡った衛藤。だが入植地は密林で、移民らは病で次々と命を落とした。絶望と貧困の長い放浪生活の末、身を立てた衛藤はかつての入植地に戻る。そこには仲間の幼い息子、ケイが一人残されていた。そして現代の東京。ケイと仲間たちは、政府の裏切りへの復讐計画を実行に移す! 歴史の闇を暴く傑作小説。
  • 河岸に立ちて―歴史の川 沙漠の川―
    -
    川は人間を育み、人間は川の恵みによって文明を築いた。川の畔りに立つと、往古の人々の姿が鮮やかによみがえる。――悠然と横たわる黄河や揚子江。沙漠の砂の中に消えていく西域の川。セーヌやラインなど伝統を背負ったヨーロッパの川。……著者が旅の中で出会い、心を奪われた〈歴史の川〉〈沙漠の川〉の魅力を余すところなく伝える。自ら撮影したカラー写真45枚を添付。
  • 花紋
    3.8
    ろうたけた美貌とたぐいまれな才を宿し、大正歌壇に彗星の如く登場し、束の間の輝きを放って突如消息を断った幻の歌人御室みやじ。河内長野の大地主の総領娘として、苛酷な因襲に抗いながら、国文学者荻原秀玲との宿命の恋に全てを賭け、略伝に夭逝と記されたように、自らの生をまで世間から葬り去った、激しい情熱と苦悶に貫かれたその半生を重厚な筆致でたどった長編小説。
  • アンのゆりかご―村岡花子の生涯―
    4.3
    【NHK連続テレビ小説『花子とアン』原案】 戦争へと向かう不穏な時勢に、翻訳家・村岡花子は、カナダ人宣教師から友情の証として一冊の本を贈られる。後年『赤毛のアン』のタイトルで世代を超えて愛されることになる名作と花子の運命的な出会いであった。多くの人に明日への希望がわく物語を届けたい──。その想いを胸に、空襲のときは風呂敷に原書と原稿を包んで逃げた。情熱に満ちた生涯を孫娘が描く、心温まる評伝。 ※文庫版掲載の写真は、電子版では一部掲載していません。ご了承ください。
  • ピンチランナー調書
    3.8
    地球の危機を救うべく「宇宙?」から派遣されたピンチランナー二人組! 「ブリキマン」の核ジャックによる民衆の核武装?……。内ゲバ殺人から右翼大物パトロンの暗躍までを、何もかもを笑いのめし、価値を転倒させる道化の手法を用いて描き、読者に再生への希望と大笑いをもたらす。死を押しつけてくる巨大なものに立向い、核時代の《終末》を拒絶する諷刺と哄笑の痛快純文学長編である。※あとがきのカットは当電子版では掲載しておりません。ご了承ください。
  • 孔子
    3.7
    二千五百年前、春秋末期の乱世に生きた孔子の人間像を描く歴史小説。『論語』に収められた孔子の詞はどのような背景を持って生れてきたのか。十四年にも亘る亡命・遊説の旅は、何を目的としていたのか。孔子と弟子たちが戦乱の中原を放浪する姿を、架空の弟子・えん薑が語る形で、独自の解釈を与えてゆく。現代にも通ずる「乱世を生きる知恵」を提示した最後の長編。野間文芸賞受賞作。
  • 悪女について
    3.7
    《自殺か、他殺か、虚飾の女王、謎の死》――醜聞(スキャンダル)にまみれて謎の死を遂げた美貌の女実業家富小路公子。彼女に関わった二十七人の男女へのインタビューで浮び上がってきたのは、騙された男たちにもそれと気付かれぬ、恐ろしくも奇想天外な女の悪の愉しみ方だった。男社会を逆手にとり、しかも女の魅力を完璧に発揮して男たちを翻弄しながら、豪奢に悪を愉しんだ女の一生を綴る長編小説。
  • 月光の東
    3.6
    1巻825円 (税込)
    「月光の東まで追いかけて」。出張先のカラチで自殺を遂げた友人の妻の来訪を機に、男の脳裏に、謎の言葉を残して消えた初恋の女性の記憶が甦る。その名前は塔屋米花。彼女の足跡を辿り始めた男が見たのは、凛冽な一人の女性の半生と、彼女を愛した幾人もの男たちの姿だった。美貌を武器に、極貧と疎外からの脱出を図った女を通し、人間の哀しさ、そして強さを描く傑作長編小説。
  • 家族熱
    -
    黒沼家に後妻として朋子が嫁いでから十三年目のある日、突如“先妻”の恒子が姿を現わした。夫や子供たちは、恒子と秘かに会っていたらしい。恒子が置いて行った二人の子供を一人前に育て、舅姑の世話をし、夫から愛されていると信じていた十三年間は何だったのだろう――。平穏に見えた家庭の裏の様々な感情のもつれが、“先妻”の登場によって顕わになる。ある一家の崩壊と再生の物語。

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  • かくれさと苦界行
    4.3
    徳川家康より与えられた「神君御免状」をめぐる裏柳生との争いに勝ち、松永誠一郎は色里・吉原の惣名主となった。だが、一度は敗れながら、なお執拗に御免状を狙う裏柳生の総帥・柳生義仙の邪剣が再び誠一郎に迫る。加えて吉原を潰すべく岡場所が各所に乱立し、さらに柳生の守護神・荒木又右衛門も江戸に現れた。ついに吉原と裏柳生全面対決の時が――。圧倒的迫力で描く時代長編。

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  • 可愛いエミリー
    3.8
    「勇気を持って生きなさい。世の中は愛でいっぱいだ」。最愛の父の遺した言葉を胸に、みなし子になったエミリーはニュー・ムーン農場に引きとられた。孤独で夢見がちな彼女は、伯父伯母から変わった子供だと言われながらも、書くことに熱中し、詩人か小説家になろうと決心する。著者は『赤毛のアン』シリーズで親しまれているが、より自伝的だとされるエミリー・シリーズの第一作。

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  • 彰義隊
    3.5
    皇族でありながら、戊辰戦争で朝敵となった人物がいた──上野寛永寺山主・輪王寺宮能久親王は、鳥羽伏見での敗戦後、寛永寺で謹慎する徳川慶喜の恭順の意を朝廷に伝えるために奔走する。しかし、彰義隊に守護された宮は朝敵となり、さらには会津、米沢、仙台と諸国を落ちのびる。その数奇な人生を通して描かれる江戸時代の終焉。吉村文学が描いてきた幕末史の掉尾を飾る畢生の長篇。

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  • 本居宣長(上)
    4.3
    「とにもかくにも人は、もののあはれを知る、これ肝要なり……」。本居宣長七十二年の生涯は、終始、古典文学味読のうちに、波瀾万丈の思想劇となって完結した。伊勢松坂に温和な常識人として身を処し、古典作者との対話に人生の意味と道の学問を究めた宣長の人と思想は、時代をこえてわれわれを深い感動の世界につつみこむ。著者がその晩年、全精力を傾注して書きついだ畢生の大業。

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  • 小説日本銀行
    2.0
    政界と財界にまたがって、絶大な権力をふるう〈法王庁〉日本銀行。終戦直後の激動する時代を背景に、大蔵省との対立関係の中で、狂乱化したインフレを終息させようという理想に燃えた新入日銀マンが、その一途さ故にエリート・コースから蹴落されてゆく姿を、さまざまな視角から捉えて、巨大な機構の内実を浮彫りにする。経済小説の第一人者が、日本の聖域に体当りした意欲長編。

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  • 侍

    4.3
    藩主の命によりローマ法王への親書を携えて、「侍」は海を渡った。野心的な宣教師ベラスコを案内人に、メキシコ、スペインと苦難の旅は続き、ローマでは、お役目達成のために受洗を迫られる。七年に及ぶ旅の果て、キリシタン禁制、鎖国となった故国へもどった「侍」を待っていたものは――。政治の渦に巻きこまれ、歴史の闇に消えていった男の“生”を通して、人生と信仰の意味を問う。

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  • 漂流
    4.7
    江戸・天明年間、シケに遭って黒潮に乗ってしまった男たちは、不気味な沈黙をたもつ絶海の火山島に漂着した。水も湧かず、生活の手段とてない無人の島で、仲間の男たちは次次と倒れて行ったが、土佐の船乗り長平はただひとり生き残って、12年に及ぶ苦闘の末、ついに生還する。その生存の秘密と、壮絶な生きざまを巨細に描いて圧倒的感動を呼ぶ、長編ドキュメンタリー小説。

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  • 暴雪圏
    3.8
    三月末、北海道東部を強烈な吹雪が襲った。不倫関係の清算を願う主婦。組長の妻をはずみで殺してしまった強盗犯たち。義父を憎み、家出した女子高生。事務所から大金を持ち逃げした会社員。人びとの運命はやがて、自然の猛威の中で結ばれてゆく。そして、雪に鎖された地域に残された唯一の警察官・川久保篤巡査部長は、大きな決断を迫られることに。名手が描く、警察小説×サスペンス。

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  • ながい坂(上)
    4.2
    徒士組という下級武士の子に生まれた小三郎は、八歳の時に偶然経験した屈辱的な事件に深く憤り、人間として目ざめる。学問と武芸にはげむことでその屈辱をはねかえそうとした小三郎は、成長して名を三浦主水正と改め、藩中でも異例の抜擢をうける。若き主君、飛騨守昌治が計画した大堰堤工事の責任者として、主水正は、さまざまな妨害にもめげず、工事の完成をめざす。

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  • 池波正太郎の銀座日記[全]
    4.3
    週に何度となく出かけた街・銀座。少年のころから通いなれたあの店、この店。そこで出会った味と映画と人びとは、著者の旺盛な創作力の源であった。「銀座日記」は、街での出来事を芯にした、ごく簡潔な記述のなかに、作家の日常とそこから導かれる死生観を巧みに浮き彫りにして大好評であった。急逝の2カ月前まで、8年にわたった連載の全てを1冊に収めた文庫オリジナル版。

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  • おとこの秘図(上)
    4.0
    時は元禄――旗本の息・徳山五兵衛(幼名・権十郎)は、妾腹の子ゆえに父から疎まれていた。剣の修行に明け暮れる十四歳の初夏、侍女への無謀な振舞いがもとで、父子の不和は決定的となった。四年後、道場主の他界を機に、一介の剣士として生きようと同門の浪人剣客・佐和口忠蔵を慕って江戸を出た。父はこの出奔を利用して、執拗なまでにわが子廃嫡の策謀をつづけていた。
  • 男の系譜
    3.8
    織田信長が同盟者・徳川家康の長男信康に腹を切らせたのはなぜか。喧嘩相手の頭目・水野十郎左衛門の屋敷の風呂場で殺された幡随院長兵衛はどんな男だったのか。明治維新の立役者・西郷隆盛が新政府と袂を分ったのはなぜなのか。戦国・江戸・幕末維新を代表する16人をとりあげ、つねに「死」だけを確かなこととした生き方を、現代日本人と対比させながら際立たせた語り下ろしの雄編。
  • しろばんば
    4.4
    1巻825円 (税込)
    野草の匂いと陽光のみなぎる、伊豆湯ヶ島の自然のなかで幼い魂はいかに成長していったか。著者自身の少年時代を描いた自伝小説。

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  • パラサイト・イヴ
    3.7
    事故で亡くなった愛妻の肝細胞を密かに培養する生化学者・利明。Eve1と名付けられたその細胞は、恐るべき未知の生命体へと変貌し、利明を求めて暴走をはじめる――。空前絶後の着想と圧倒的迫力に満ちた描写で、読書界を席巻したバイオ・ホラー小説の傑作。

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  • 一夢庵風流記
    4.4
    戦国末期、天下の傾奇者(かぶきもの)として知られる男がいた。派手な格好と異様な振る舞いで人を驚かすのを愉しむ男、名は前田慶次郎という。巨躯巨漢で、一度合戦になるや、朱色の長槍を振り回し、敵陣に一人斬り込んでいく剛毅ないくさ人であり、当代一流の風流人でもあった。そして何より、自由を愛するさすらい人でもあった。故あって、妻子を置き旅に出た男の奔放苛烈な生き方を描く時代長編。

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  • 華麗なる一族(上)
    4.2
    1~3巻825~902円 (税込)
    業界ランク第10位の阪神銀行頭取、万俵大介は、都市銀行再編の動きを前にして、上位銀行への吸収合併を阻止するため必死である。長女一子の夫である大蔵省主計局次長を通じ、上位銀行の経営内容を極秘裏に入手、小が大を喰う企みを画策するが、その裏で、阪神特殊鋼の専務である長男鉄平からの融資依頼をなぜか冷たく拒否する。不気味で巨大な権力機構〈銀行〉を徹底的に取材した力作。

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  • 不毛地帯 第一巻
    4.5
    1~5巻825~902円 (税込)
    拷問、飢餓、強制労働――11年に及ぶ地獄のシベリア抑留から生還した壹岐正は、第2の人生を商社マンとして生きる事を決意する。「商戦」という新たな戦いに身を投じ、戦後日本の高度成長を陰に陽に担った男を活写する、記念碑的長編。

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