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ペトラシェフスキイ事件連座、シベリヤ流謫、恋愛、結婚、賭博――不世出の文豪の魂に迫り、漂泊の人生を的確に捉えた不滅の労作。
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Posted by ブクログ
剣道で何回打ち込んでも軽く否され、鮮やかな一本を返される、そんな心境だ。この本を読んだのが3回目か4回目、正確には何度目か覚えていない。いつも、ドフトエスキーが新婚旅行で癲癇を起こしながら借金に追われて博打に狂う場面で「そうだそうだ、こんな酷い無茶苦茶な奴だったんだドフトエスキーは」と前に読んだこと...続きを読むを思い出す。回を重ねる毎に彼の小説を書くことへの拘りと創作の経緯が伝わってくる。初めの頃は、何が何だかわからず、遠くて寒いロシアの活劇でも見させられているような気持ちになり、途中で読むのをやめた覚えがある。彼の人生の振幅の激しさと小林の難しい解説に自分の思考力と気持ちがついていけず否された、そして読み続けることを諦めた、そんなことが何度かあった。今回はじっくり読んでドフトエスキーの根暗で弱い生き様と強靭な創作への意志に少しの納得と親しみが湧いてきた。読む度に評論家小林を経た小説家ドフトエスキーへの理解が深まっているような気がする。その間いろいろなものを読んできた自分の眼が本物の評論家が描く文章や表現により不世出の作家の本質に迫り共感できるようになってきたと思いたい。ドフトエスキーの創造欲の核心発掘に‥‥。監獄や流刑地での恐怖と焦燥・諦念・苦悩、借金と賭博そして癲癇と恋愛、濃密な描写の分析が正鵠を得ている、表現も無駄なく視点や切り口が斬新で創り上げる世界の凄さには息をのむ、相変わらずだ。偉大な小説家に評論で戦いを挑む捨て身の覚悟が滲む、評論というのはこれ程迫力のあるものか。ドフトエスキーの人生の軌跡を辿りそこに仮託して己れの透徹した思考で生きることの意味を究明する、それを読者に焼き付けていく、流石に小林秀雄である。
狷介極まりない批評家と対峙すると、読者も鎧を着てしまうものだ。そんな先入観の中、ドストエフスキイというこれも一筋縄ではいかないロシアの文豪の歴史を紐解いた当該作品は、より本質を掴もうとする批評家、小林秀雄の姿勢が感じられ感銘を受けた。ドストエフスキイの作品は2〜3作読みもしたが、このような評伝に接っ...続きを読むしたことがなかった。賭博、癇癪、宿痾の病癲癇、投獄とシベリア流刑、子供の死、借金とその凄まじい人生に驚き、かつロシアの民衆(ナロード)を愛したドストエフスキイの姿が素晴らしいものと思えた。
小林秀雄 「 ドストエフスキイの生活 」 人物評価的な略伝のカテゴリーに入ると思う 著者のドストエフスキー像は逆説的な表現が多い *人間は作品の原因なのでない〜むしろ、人間は作品の結果なのである *事件は彼にふりかかったのでなく、彼の運命が事件を希望したのである キーワードは、生活、病者の...続きを読む光学、パウロの回心 「本居宣長」など他の作品とは方法論が異なるように思う 生活者は 労働(芸術)のために生きている人とのこと。小林秀雄は、労働を奪われたら生きていけない人を生活者と呼び、ドストエフスキーを生活者とみている 病者の光学とは、死から復活した人間として対象を捉えること。小林秀雄のドストエフスキーを見る病者の光学としての目線は、本居宣長になって宣長の目で見ようとする小林秀雄の態度とは方法論が異なる 回心や復活を、プネウマティコン(神から人に吹く作用)という言葉で捉えている。「罪と罰」を ラスコーリニコフ(=罪を犯す資格を失っている人間)が、プラウマティコンにより、ムイシュキンとして復活する物語としている
ドストエフスキイという文豪の苦難に満ちた知的苦悩を期待して読むと、肩透かしを喰らわされる。 「ドストエフスキイの生活」とは、とんでもない男ととんでもない女たちとの破滅的生活を意味する。 そのどこにも知的苦悩のかけらもない生活から偉大な文学が生まれる奇跡。 小林秀雄は、ドストエフスキイの無茶苦茶な生活...続きを読むを蘇らせながら、中原の破茶滅茶な生活と彼の天才を想起している。 無限の前に腕を振る二人の天才。 この二人に鍛えられて、小林もまた天才になった。
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ドストエフスキイの生活
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