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書かれたものの内側には、必ず作者の人間があるという信念のもとに、著者の心眼に映じた作家の相貌を浮彫りにし、併せて文学の本質とその魅力を生き生きと伝える。青春の日に出会ったランボオ、敬愛する志賀直哉、菊池寛、個人的に深い交渉のあった富永太郎、中原中也、さらには中野重治、林房雄、島木健作、川端康成、三好達治等々、批評家小林秀雄の年輪を示す27編。
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Posted by ブクログ
小林秀雄は志賀直哉とランボウとベルグソンで成り立っているのではないかと思える。本作で志賀直哉に対する作者の愛がはっきりした。それにしても小林秀雄は難しい。削ぎ落とされた文章は核心に迫り、読者を圧倒する。批評の力の凄さと美しさを改めてかんじた。
全集の方に載っていた菊池寛先生についてや中原中也等重複するものもあつたが、改めて彼の見た作家たちの姿に触れてみる。 作家の生活と作品の乖離や矛盾についてはよくよく取り上げられるし、作品と個人的な出来事はよくよく結び付けられて論じられる。そして、時に生活が作品を規定するかのやうに、あたかもその人間の個...続きを読む人的な出来事を知れば作品がわかるかのやうに振舞はれる。 作品は作家の顔だ。人間を見つめるとき、顔を見ないで接することなどできやうか。意地汚い人間は顔に意地汚さがにじむ。聡明さはそのことば、表情に現れる。生活と作品がそも矛盾するものなのか。そもそも矛盾のない生活などありうるのか。それぞれがその矛盾に折り合いをつけ、世の中との接点を見出すそれこそが、人間のさくひんではなからうか。 そこを矛盾をないやうに隠さうとしても必ず顔ににじみ出る。それが現れないやうな作品だとするなら、そんな作品は読む価値がない。頭で拵えられた実体のない空虚な言葉だと思ふ。 小林秀雄がそのご縁の中で出会ひ、関わつてきた人間たちにもそれぞれの生きた時間、血肉、痛み、苦しみ、喜びも悲しみ、みんな宿つてゐる。彼はさうしたものたちをただただ拾ひ上げ、抱き留めてゐたいのだと感じられる。ひとが残す唯一の無二の、魂に触れるそんな作品、ひとびとを求めてやまないのだ。それが彼の顔であり、評論といふ彼の作品だ。
小林秀雄 「 作家の顔 」 作家論〜批判あり、尊敬あり、友情あり、感傷ありの作家論。打ち消し文や 難解な言葉が多くて 読んでいて 疲れるが、たしかに 面白い。 作家の実生活から 思想や著作の主題を抽出して 作家論に展開している感じ。 面白くて 興味を持ったのは 菊池寛、林房雄、イプセン「ヘッダガ...続きを読むブラー」、パスカル「パンセ」、チェーホフ、ニーチェ。 ランボオ、富永太郎、中原中也 の批評は 感傷的。興奮や哀しみの中で一気に書いた感じ 顔の意味(解説 江藤淳 ) *顔=心眼に映った精神の相貌 *他人=自分を映す鏡→作家の顔=小林秀雄自身の顔 正宗白鳥 との 思想と実生活 論争 *人間とは何物でもない、作品が総て *作家とは人心をむしばむ仕事 *あらゆる思想は 実生活から生まれる *社会秩序とは 実生活が思想に払った犠牲 チェーホフ論「人生は 海苔巻きみたいなもの〜海苔は 思想とか...文士の好きな物質で出来ていて、人生は こいつにぐるりと巻かれている」
中原中也関連だけ読んで、多分そのまま。 久世光彦さんの中也論が好きなので、何となく、彼の言葉が白々しく見える。 面白いですが。
ランボオに関する記述が好きだ。人っていうのはそりゃあ恐ろしく理解できない部分を持っている。ボクがボク自身でもあまり理解できない部分を持っていて。なんでさっきまでみんなとカラオケをしてぶっ飛んでバカ騒ぎをしていたのに。バイバイした後。喫茶店でおもむろに。読みかけのランボオを開いているのかと。そこでなぜ...続きを読むランボオかと。これは何かの間違いじゃないかと。そう思うときが正直ある。あまり自分を肯定できない瞬間だ。でもこの本には救われた。人々は品物に惚れこむと心の裡に他人にはわからぬ秘密を育て上げるものだ。と。さらにこの秘密は愚かさと共に棲みながらもっとも正しい事情をつかんでいるのを常とする。最後に。人間の心の豊かさとはただただこの秘密の量である。
小林秀雄の作家論集。語られる作家たちに一人でも興味があれば、おすすめ。 『中原中也の思い出』と『死んだ中原』のために買った人間もここに。 ただ、収録する評論の選択はやや強引な感も。
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