Posted by ブクログ
2021年02月11日
一気読み。主人公の静かで快適な専業主夫ライフ(何が「今はまだそういう気になれない」だ仕事を探せ)、そこに確かにある「秩序」が様々な個性的な人物からの電話により徐々に崩されていく。最初のテレフォンセックスには嫌悪感しかなかったから、サッと切ってくれて良かった…。
外的刺激による何かの崩壊・何かの欠如か...続きを読むら始まるのは村上作品の定番だが、その点では『ねじまき鳥クロニクル』は割と分かりやすい話運びであるとさえ感じられる。電話や水、そして間宮中尉の長い語りに露骨に現れる禍々しい暴力。勿論物語全貌を理解するのはまだまだ難しいけれど、加納マルタ・クレタ姉妹が登場する辺りから物凄く引き込まれて、ページを捲る手が止まらなくなった。「僕」含め登場人物が少し世間一般の感覚とずれていて、その「一般」に対する不思議な疎外感というか、物事を少し深く考え過ぎてしまう(あるいは同時に考えない、理解できないものを理解できないままに受け入れるという順応性が過度に備わっている)一面を含んでいるから、そこにある世界観全体が不可解なまま無理に前に進んでいる感じ。そのせいでまた「秩序」が失われていって…おそらく第二部でまた何かが失われるのだろう。
ノモンハンの問題のシーンはそれほど長くないし(というか肝心の場面をクイズ番組ばりに引っ張る)、最初に身構え過ぎるくらい身構えとけばしっかり受け止められる。少なくともその凄惨な暴力表現や拷問そのものには、「戦争」という当時は真っ当とされた理論、歪んだ大義名分があるから。細部に至るまで執拗に書き知らせる理由があるから。
個人的にはそんな理論も欠落し、只々己の狂った目標だけがある『海辺のカフカ』の猫殺しの描写の方が、何倍も辛かった。
綿谷ノボル(人間)は「悪」なのだろうか…?第二部に期待大!