あらすじ
「人が死ぬのって、素敵よね」彼女は僕のすぐ耳もとでしゃべっていたので、その言葉はあたたかい湿った息と一緒に僕の体内にそっともぐりこんできた。「どうして?」と僕は訊いた。娘はまるで封をするように僕の唇の上に指を一本置いた。「質問はしないで」と彼女は言った。「それから目も開けないでね。わかった?」僕は彼女の声と同じくらい小さくうなずいた。(本文より)
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Posted by ブクログ
ここは血なまぐさく暴力的な世界です。
強くならなくては生き残ってはいけません。
でもそれと同時に、どんな小さな音をも聞き逃さないように静かに耳をすませていることもとても大事なのです。
おわかりになりますか?
良いニュースというのは、多くの場合小さな声で語られるのです。
どうかそのことを覚えていてください。
かつて加納クレタであった女
退屈じゃないっていうのはね、つまり、余計なことを考えないですむっていうことでしょう?
笠原メイ
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本屋で何気なく買って読んでみしたが、すぐに春樹ワールドにハマってしまいました。
村上春樹さんの本は、どこか詩的で哲学的でお洒落な感じがあり、とても好きです。
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あーめちゃくちゃ面白かった。
リアルともファンタジーとも言い切れない不思議な世界を、私は駆け抜けた。
私は村上春樹の本を刊行順に読むという個人的なプロジェクトをしていて「ねじまき鳥クロニクル」の番がやってきたわけですが、こうして辿ってくると、村上春樹という人が書く物語りがどんどん立体的に拡張していくのが感じられる。
この話では歴史までもが現れてきた。
絶対なんかのメタファーの詰め合わせで、考察しがいがあるんだろうけど、ただこの物語だけで私は駆け抜けた。
意味が不在でも、この物語はとても、とても面白い!
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ねじまき鳥クロニクルを読むのは三度目か四度目になるかと思う。初めて読んだ時からもう二十年くらい経つ。読むたびに自身が感じることが変わり、面白いと思うポイントが変わってきている。これは私の読解力が少なからず成長しているということなのか。
電話の女、加納マルタ、加納クレタ、そして本田さん…。魅力的なキャラクターが次々に登場するのがとても楽しい。そしてそれらが重なり合って物語が進むのですが、文章や世界観に自分の脳がゆらゆらと揺らされているような感覚になり眠くなる。そう村上春樹は眠くなるのです。この眠くなるという点は、何度読んでも変わらない。
作者と同じ時代を生きて、作品を読めるということに感謝。だって自宅の電話が鳴るって感覚は今の子どもたちは分からないだろうし、FMラジオもおそらく聞かないだろうから。
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半年ぶりとかの春樹
めちゃくちゃ楽しかった、一気読み
ノルウェイ、海辺のカフカ、世界のハードボイルド、1q84からの不確かな壁でこれが多分6作目なんだけど
一番好きかも知れない
主人公の思考パターンがすんなり馴染むし(ちょっと待ってが大好き)、やっぱり春樹の文章のテンポが大好き
読む時間が楽しい
内容はいつもほど難解じゃない気がするけどまあ謎
いいじゃないの、楽しいんだからってかんじ
読み返す本
村上作品は、自分のコンディション、世代ごとに何度読んでも違った味が出る。
作品自体が面白いのもあるし、読み手の自分のそのときの状況がすごく影響する。
不思議な作品。
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いつも通りではないズレ、日常の揺らぎに展開が気になって読み込みました。後半の戦争のシーンは衝撃を受けて、これは村上春樹を読んでるんだか確認してしまった。描写に引き込まれて唖然としてしまった。
普段と違う行動をしていく主人公、何かを象徴しているような周りの人々、これは3部まで一気に読みたい。
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面白くて一気に読んだ。
最後のバイオレンスシーンは怖いので、あえて朝、読んだ。ノモンハンの情景がありありと頭に浮かびました。あらすじを知ってて良かった!
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間宮中尉の長い話はかなり読むのがきつかった。
でも戦時中は「悪」の連鎖反応により「悪」が増幅した結果、あのようなものは当たり前のようにあったんだろうな….
壮大な物語がこれから始まろうとするワクワク感のある第一部。是非
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8/10
完璧な序章。
文章が完膚なきまでに完璧で、惹き込まれてしまう。終盤の間宮中尉の話は止まらない、あれほどにグロテスクで場面が頭の中で自動再生されたのは初めてだな。やはり、村上春樹はトリアー+リンチ+濱口竜介って感じだ。幻想的且つ暴力とエロスに満ちた世界を、無機質な文体が染める。まるで脂ギッシュな鶏胸肉みたいだな。
Posted by ブクログ
時々、悪い夢を見ます。
どんなに探しても大切なものが見つからないとか、道に迷って目的地にどうしても辿り着かないとかです。このような夢は、心理的に「模索中」「停滞感」「不安感」を抱えている可能性が高いらしいです。この小説は、そんなわたしの心のうちと重なるようなきがしました。でも、重さや暗さは感じませんでした。
ロッシーニの『泥棒かささぎ』の序曲を主人公の岡田亨(オカダトオル)が口笛で吹きながらスパゲティーをゆでているときに、知らない女の声で電話がかかってくるという書き出しから物語に引き込まれました。そして、ねじでも巻くようにギイイイッと鳴く鳥を、主人公とその妻は「ねじまき鳥」と呼び、ねじまき鳥がねじを巻く静かな世界がユニークに描かれています。姿を見た者はいないけれど、毎朝、木の上で世界のねじを巻くのがねじまき鳥です。
印象的だったのは、主人公と16歳の少女が人生について語る場面です。
少女は言います。「人生ってみんなどこかしら暗いところに閉じ込められて、食べるものや飲むものを取り上げられて、だんだんゆっくり死んでいくものじゃないかしら」
主人公は、ペシミスティックな考え方だと笑います。すると少女は、ペシミスティックじゃない世の中の大人はみんな馬鹿だと返します。
わたしはペシミスティックじゃない馬鹿な大人ではありますが、この本の終盤のノモンハン戦争の長い話を読みながら、ゆっくりと時間をかけて少しずつ死んでいく生の怖さと不思議さが頭の中を巡りました。
第2部「予言する鳥編」も楽しみです。
Posted by ブクログ
「人が死ぬのって、素敵よね」彼女は僕のすぐ耳もとでしゃべっていたので、その言葉はあたたかい湿った息と一緒に僕の体内にそっともぐりこんできた。「どうして?」と僕は訊いた。娘はまるで封をするように僕の唇の上に指を一本置いた。「質問はしないで」と彼女は言った。「それから目も開けないでね。わかった?」僕は彼女の声と同じくらい小さくうなずいた。
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読んでないと思ったけど読んでた。既読感を携えてまた進んでいくと、読んだのがかなり前なのに憶えている内容の数々。それが苦手でどの本もあんまり再読しないけど、それってすごい文章だってことですよね。本文に関係ない感想。
Posted by ブクログ
学生時代に読んだ以来、7〜8年振りに再読。あまり書籍は読み返さない性分だが、『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』の中で本書について触れられていたので手に取った。序盤は何とも頼りない?(奇妙な登場人物からの働きかけに受動的な印象)主人公が、妻の失踪を契機にその奇妙さの理解に努めたり、自ら問うたりと少しずつ姿勢が変わっていった印象。日常的な風景が浮かぶ描写が多く、また主人公の年齢も30歳と自分と近いこともあり、一読した際よりもすんなりと話が入ってくる(登場人物はかなり不思議だが)。改めて、読むタイミングにより解釈や気になるポイントも変化するのだなと思う。
特に印象に残った箇所は以下
・ひとりの人間が、他のひとりの人間について十全に理解するというのは果して可能なことなのだろうか(p.53)
・しかし僕にはその出来事が妙に気になった。まるで喉にひっかかった魚の小骨のように、それは僕を居心地悪くさせていた。<それはもっと致命的なことであったかもしれないのだ>、僕が考えたのはそういうことだった(p.68)
・とくによっては、好奇心は勇気を掘り起こして、かきたててもくれる。でも好奇心というものはほとんどの場合すぐに消えてしまうんだ。勇気の方がずっと長い道のりを進まなくちゃいけない(p.142)
Posted by ブクログ
主人公岡田亨は妻クミコの突然の失踪で、これまでの生活が一変する。前半、猫の綿谷ノボルを探してほしいと妻に頼まれて、近所を探し回っていた。そこで、現在不登校でバイクの事故で足を負傷した謎の少女に出会う。また岡田の義兄綿谷ノボルと関係する謎の女性姉妹に対面する、以前から関わりのある老人の知人の男性の昔話を聞くなど、主人公は妻の失踪以降、さまざまな人物と知り合う。そして、近所の井戸が主人公を含め多くの人々をつなげていく。
Posted by ブクログ
何か決定的に悪いことが起きているというわけでもないのに、なんとなく不穏なのは、妻との間がうまく行っていないためではないか?
お互いのことが分からない、間に薄紙が一枚挟まっているよう。大したことではないのに秘密ばかりが増えていく。
途中から急に戦争文学になった。
間宮氏が、自分は決して自ら軍人になりたかったわけではなく、教師を目指していた普通の青年だった、と強調したのは、その時代の青年たちはそのようにして死地に赴かされた、ということを言いたかったのと同時に、自分の好むと好まざるとに関わらず何かに巻き込まれようとしている主人公の状況もそれに似ているということを仄めかしているのかもしれない。
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NHK『100分de名著』、今月(2025年4月)の作品が『ねじまき鳥クロニクル』なので、第一話までに第一部を読み終われば大丈夫だろうと思い、ちょど読み終わったので録画を見ました。
朗読やストーリーの紹介は第一部を扱っていましたが、微妙に先の展開がネタバレでした・・・
早く第二部、第三部を読まなくては。
Posted by ブクログ
村上春樹らしい序章
何が起こるか分からない感じと、主人公の入る余地のない過去回想。同じ人物が書いたとは思えないくらいキャラが立ってて、でもどこか村上春樹らしさを感じる不思議。
今後、物語がどう展開していくのか楽しみ。
Posted by ブクログ
とりあえず一部を長い時間をかけて読み終わった。
とにかく仕掛けが多く連続表現やキャラの対比で思考を仕掛けてくる本作
キャラクター同士の共通点を結び、そこにある意味を見出しながら読む。
本作だけでは完結していないのと、歯切りが悪い読み方をしてしまったことを後悔しつつ、第2部へと移行する今日
とにかくパン屋最終劇で描かれた要素とキャラクターが乱舌に描かれる様子は思考の過程が読み取れて面白い
Posted by ブクログ
わたしは三半規管がヨワヨワで、電車の中では読書どころかスマホいじいじさえできない。
こんどから車両の中の人みまわしてまつうめうめたけまつ……って唱えることができると思えば、新学期開始も耐えかも。
あと主人公の領域と他人の領域の話をふむふむってしながら読めた。生きる世界が違うんだってperfect daysのおじさんも言ってたことだし、他人が自分とは地続きではないことがふつうなのかな。思春期を卒業してしまえばそう考えた方がましなのでうれしい。
猫飼いたくなった。ねじまき鳥ってなんだよ
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奇妙な人々の謎めいた回りくどい言い回しと変な展開の連続、どこまでが現実でどこからが空想か、それぞれの繋がりも何もかも全然わからないのになぜか惹き込まれる。
村上春樹作品に共通して言えるけど、登場人物みんなセッ◯スについて、ことあるごとに考えすぎでは。
あと生々しい描写が(無駄に)多くて、やや冷めた目で見てしまう。
隠喩も直喩も含めて生きることと密接に絡んでいたり、なるほどなあとは思うこともあるにはあるけど。
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間宮中尉の話は、私も奇妙なくらい虚しい気持ちになった。
物語を理解したわけでも読み込んで考察できたわけでもないけれど、この流れで2部はどんな場所に行き着くのかすごく気になる。
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☆3.5 隠された父親の存在
奇妙な始まりかたをするのは『羊をめぐる冒険』から相変らず。文体リズムがあるので読み進められる。
非日常が醍醐味なので、こんな女子高生、ゐない。といってもしょうがないが、まあ言っておく。そこが通俗を取り入れた語りだ。
かつらの松竹梅の話は、ああ、安西水丸との例の工場見学のエッセーからだなとわかる。
肝腎のノモンハン事件を描いた語りはひきつけられる。
ここがこの作品の核心部分なのだが、フロイドふうに言へば、父親の存在が隠れてゐる。とでもなるのだらう。
『猫を棄てる』(文春文庫)で明言されたとほり、村上春樹の父親は住職である。そして中国に従軍し、中国人を殺したのを見た。
この事実の上に、『ねじまき鳥クロニクル』が成り立ってゐることは、想像に難くない。それが伏せられてゐたことを考へると、まだ明らかにされてゐない因縁はあるのだらうと感じる。
副読本としては『村上春樹、河合隼雄に会いに行く』をすすめる。
Posted by ブクログ
最初こそ、現実に通じた物語だったのに、終いにはけっこう異次元なお話になっている。それも、自然と。説教臭くない説得力が秘められているのだろうなぁと考えてみたりします。
第3部まであるので、その1/3を読んだことになる。
といっても、第1部は300pちょっとで、第2部、第3部と厚くなっていくので、厳密には1/3ではない。ま、そのあたりはどうでもいい。
とにかく面白いです!これからどうなっていくのか、わくわくする。
(また、自分とのリンクがあるのもいい。主人公は僕と同い年だし、無職という境遇も一緒。こないだ読んだ『白仏』にでてきた38式銃がでてくるのもリンクだし、こないだ見た『ラピュタ』のオリジナルのほう(ガリバー旅行記だっけ)の記述がちらっとでてくるのもリンクだ。最近よくいろんなブログで目にするアジサイについても一言出てくるあたりも旬だ。「あ、これこれ」と脳をくすぐられるような感触を与えてくれる本はちょっと運命的だ。ま、くだらないっちゃくだらないんだけどね。)
(『ねじまき鳥クロニクル』との出会いをちょっと運命的だとしてあれこれ書いたのは昨日のことだが、肝心のことを書き漏らしていた。それは「ねじまき鳥」そのものについてだ。本の中では、ギイイイイイという鳴声だけが聞こえ、それは世界のネジを巻くようだ、とある。この色気の無いギイイイイという鳴声は確かに僕のうちでも聞くことができた。それはここ10日間くらいは聞いていないけれど、姿なくただ鳴声だけが僕の部屋に入り込んできて、一度は寝てたのを起こされたこともあったのだった。それに、今まで生きてきてその鳴声を聞いたのは今年が初めてだった。いや、それまでにも聞いていたかもしれない。正確にいえば、その鳴声を意識したのが今年が初ということになる。『ねじまき鳥クロニクル』を読む前段階の準備として、ただギイイイと鳴く鳥という認識で、ねじまき鳥に出会っていたのだった。どうです、やっぱり運命的でしょう、この本との出会いは。)
Posted by ブクログ
ひっさしぶりの村上春樹。
ふらっと立ち寄った古書店で見つけて即購入。
わかりやすいストーリーものというより登場人物の延々と続くモノローグにどこまで耐えられるかのチキンレース感に苦労したけど何とか一巻は読み切った。
最近疾走感のある作品ばっかりに触れることが多かったからこんだけ長編だと結構休憩挟まないと疲れちゃう笑
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間宮中尉の話が怖かった。
あれ?この小説ってこの話がメインだっけ?と思ってしまった。
村上春樹さんの作品はいつも、はて?だらけで、とりあえずついていけてるかな?が基準になってしまってます。
Posted by ブクログ
村上春樹をはじめて手に取った。
話しが飛びまくって、「何じゃこりゃ?」ってなりながら1巻を読み終わる。
こういう文章は、考察好きにはたまらないんだろうな。
気が向いたら、続編に手を伸ばして見たいです。いつになるだろうか。。。
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運命というものは後になって振り返るものであって、先に知るものではない。
3部作の中の1部ということで、色んな登場人物の過去や伏線だけが広がりまだ物語がどこに向かっているかわからない状態で、ここではまだ物語に対しての評価をつけるのが難しい。序章のような印象を受けた。
Posted by ブクログ
TVピープル読んだばかりなので、マルタとクレタが出てきておおってなった。最後の戦争の話が思ったより長くて、戦争の凄惨さや虚しさもしっかり書きたかったのかな?と思った。最後皮を剥ぐグロ展開が来ると思ってなかったのでびっくりした。