【感想・ネタバレ】ねじまき鳥クロニクル―第2部 予言する鳥編―(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

「今はまちがった時間です。あなたは今ここにいてはいけないのです」しかし綿谷ノボルによってもたらされた深い切り傷のような痛みが僕を追いたてた。僕は手をのばして彼を押し退けた。「あなたのためです」と顔のない男は僕の背後から言った。「そこから先に進むと、もうあとに戻ることはできません。それでもいいのですか?」(本文より)

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Posted by ブクログ

何度か読み返している本書を数年ぶりに再読した。
今回は前回よりも深く物語を理解できたような気がする。
クミコからの長い手紙に彼女の真摯さのようなものを感じ、
笠原メイからは、現実から違う世界に行こうとする岡田亨をなんとか引き留めようとするいじらしさのようなものを感じ、
カティサーク飲みたいなぁと感じた。
また、数年置いて読みたいなと。

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2025年06月06日

Posted by ブクログ

第一部の感想として、主人公が「自分の好むと好まざるとに関わらず何かに巻き込まれようとしている」と書いたが、この第二部で、主人公は笠原メイから「あなたがひどい目に遭うのはあなた自身に問題があって、それが引き寄せている」と言われてしまっている。
う〜ん、16歳のスルドすぎる指摘。
そして、妻の兄である綿谷ノボルからも、「結婚して6年、君はなにをしたか?なにもしなかった。クミコの人生を余計に面倒なものにしただけ」などと言われてしまう。
そうかもしれないけれど・・・亨のように流されながら人生を送っている人は大勢いる。二人ともズブズブ遠慮なく刺しすぎだ。
ここから出ましょうと手を差し伸べてくれるのは加納クレタだったが・・・

第一部から第二部で、いったんオチがついたような形だと思う。
亨の気持ちというか、方向性が決まったという点で。
亨の井戸は水で満たされたようだし、良いニュースだなと(私が)思えることもあった。
だが岡田亨の戦いはまだ始まったばかりだ、みたいなことなのだろう。もちろん第三部に続く。

亨の叔父さんがとても素敵な人。
そして、亨の悪夢がこわ過ぎる。なんでこんなこと思いつくんだ、同じ夢を見たらどうしよう・・・

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2025年04月12日

Posted by ブクログ

第一部では謎が深まる展開でしたが、第二部ではさらにその謎が深まっていきました。全体をまだ読み切っていないので、何とも一言では表現しがたいのですが、さまざまなメタファーが散りばめられていて、どこから整理すればよいのか迷ってしまいます。それでも読むのを止められず、非常に面白く読み進めることができました。

次回が最終巻となるので、それを楽しみにしながら読み進めていこうと思います。さまざまなエピソードが入り組んでおり、この物語がどのように展開していくのか、予測がまったくつかない状況です。

この世界観に没入している時間は最高です。

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2025年01月03日

購入済み

電子書籍化ありがとうございます

ハードカバーで買って、持ち運びように文庫で買ってとしていた頃が懐かしい。
データ通信できる場所、あらかじめDLという手順はあれど、いつでもどこでもこの作品を読めるのが嬉しい。
iPadで大きな画面で見れるのもすごく嬉しい

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2023年01月01日

Posted by ブクログ

複雑に絡み合ってる謎を主人公がどう解決していくのか、自分の目で見ることができるのか次回3部の展開が楽しみです。

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2025年12月03日

Posted by ブクログ

「僕はふとしたことで家出をしたまま二度と家に戻れなくなってしまった。家に戻るための道を忘れてしまったのだ。僕は何度もそういう夢を見たことがあった。それは少年時代の僕の悪夢だった。行き惑うこと、戻る道を失うこと、もう長い間、そんな夢のことを忘れてしまっていた」
この文章を読み、ここだけは、わたしも主人公と同じだと思いました。ただ、わたしの場合は、子どもの頃ではなく、大人になってから、行き惑い、戻る道を失う夢を見るようになりました。目が覚めて「夢でよかった」とホッとして、夢のディテールはすぐ忘れます。現実に戻ると、迷いや不安はとりあえず脇に置き、日々、すべきことに追われ、病気や怪我を負えば、痛みとの戦いです。
第1部「泥棒かささぎ編」で、登場人物の一人、加納クレタは言いました。
「私の言う痛みとは純粋に肉体的な痛みのことです。具体的に申し上げれば、頭痛、歯痛、生理痛、腰痛、肩凝り、発熱、筋肉痛、火傷、凍傷、捻挫、骨折、打撲…そういった類いの痛みのことです。私は他人より遥かに頻繁に、そしてずっと強くそのような痛みを体験しつづけて参りました」
加納クレタほどではないにしても、痛みの苦しさはわかります。痛みとの戦いが生きることの証のようにも思えます。そして、また夜になれば、眠りの中で無意識の夢の世界に潜り、目覚めれば夢のディテールは忘れて現実を生きる…その繰り返しです。
主人公の岡田は、仕事を辞め、今は、現実社会から距離を置いた状態です。そして、自分の心の奥深くと向き合うことを選んでいきます。地上から隔絶された枯れ井戸の底に降りていく場面が印象的でした。
井戸の底で、目を開けていても自分の手のひらすら見えない暗闇の中で、肉体の存在は不確かなものとなり、のどの渇きや、空腹、息苦しさといった感覚だけが残ります。記憶・意識・感情・感覚がさまよう闇の世界は、自己と向き合うのにふさわしい世界だと思いました。
実際に、自分が井戸の底に行って、生死の境をさまようことはできないし、したいとも思いません。でも、読書する中で現実を離れ、意識の奥に潜り込んでいくような体験は貴重で、ある種の癒しにもなると感じました。

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2025年11月15日

Posted by ブクログ

あくまでここまで読んだ自分なりの解釈です。

この物語は、"僕(=トオル)が恩寵の光を得るための修行記録"の物語なのでは無いか。
つまりは、間宮中尉がノモンハンの井戸で獲得出来なかったものの総称としての恩寵です。

僕らは力を手にすると途端に居丈高になったり強権的になったりしてしまう。ではそうならない方法は何か?それはつまり"やれやれ"でやり過ごす事だ。卵の側に立つ事だ。でも、敢えてデタッチメントからコミットメント(バットを持って戦う)に向かわなければいけない時があるのだ。

その時に我々に恩寵の光が差し出されるのだ。

加納クレタをシャーマンのように扱うくだりも、綿谷昇が絡んで来る時の新しい村上春樹の地平も良いと思います。

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2025年08月15日

Posted by ブクログ

8.9/10

次第にあちらの世界へと呑まれてゆく。第3部では、猫もクミコもノボルも加納姉妹も、謎が尽きない。ラストの18章はあまりに美しく、まるでデヴィッド・リンチの世界を彷彿とさせた。「かまわない」と岡田が発した瞬間、思わず鳥肌が立った。

やってやれ。何かを、それを、暗闇の中であろうと、井戸の底であろうと、夢の中であろうと、抱きしめてやれ。

僕の最も好きなシーンは、カルタが暴力的に犯されたシーン。あれはやばい

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2025年08月13日

Posted by ブクログ

第一部の馬の話が印象に残ってて、本作の重要な場面で再登場したのが良かった。無意識中に、記憶に残るような書き方がなされているのだと思った

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2025年08月04日

Posted by ブクログ

第二部になってようやくこの物語の大筋、トオルのすべきこと(?)がわかって来た。居なくなったクミコを“連れ戻すこと”。待ってても絶対帰ってこないし、クミコの手紙は事情を説明してるようで核心は隠している。
 物語がどんどん進んで来たぞーと思ったら、新しい人物•新しい要素•新しい謎がどんどん追加されて、もうこの物語がどこにどう着地するのか全く検討がつかないよ!!
 間宮中尉からの手紙、ノモンハンでの出来事は違う作品を読んでるのかってくらいその時代その場所に引き込まれた。急に戦争の話??!と思ったけど、まあこれも後々関係があるんだろうなあ。と思ってたら井戸!!
 何!どういうこと!全くわからない、けど面白い。

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2025年06月29日

Posted by ブクログ

「今はまちがった時間です。あなたは今ここにいてはいけないのです」しかし綿谷ノボルによってもたらされた深い切り傷のような痛みが僕を追いたてた。僕は手をのばして彼を押し退けた。「あなたのためです」と顔のない男は僕の背後から言った。「そこから先に進むと、もうあとに戻ることはできません。それでもいいのですか?」

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2025年06月14日

Posted by ブクログ

予言がヒントをくれる 同姓同名の別人(ネコ)妻の服を着たほかの女 幻想の中で「今はまちがった時間です。あなたは今ここにいてはいけないのです」と言われる 幻想では、色々な部屋の入り口がある廊下をうろちょろした。そこにはトレーを持ったボーイがいる 鏡を見ると違うもの(アザ)が映っていた 前の住民その前の住民 クミコとクレタのドッペルゲンガー 憑き物がつきそれが剥がれる コーヒーとドーナツ 強烈な暴力を奮う 「ぼくはここで何をしているんだ? この女は誰なんだ?」馬が象徴するもの

クミコは居なくなった。また不思議な夢を見る。メイとビールを飲む。マルタから電話でマルタとノボルと三人で会うことを言われる。
三人で会いノボルはクミコに男が出来たから離婚しろと言った。
家には間宮から手紙が来ていた。手紙には、外モンゴルの井戸の光の体験で恩寵を感じたが受けられなかったこと。その後脱け殻の時間を過ごしていることが書かれていた。部屋にクレタが来た。夢の中の交わりを説明されて驚いた。
メイから朝電話。その後空き家の井戸に行き縄ばしごで底まで降りた。
井戸の中でクミコとの馴れ初めを回想する。そして結婚、堕胎のこと。堕胎の時岡田は北海道出張中だった。そこで堕胎を電話で聞き、酒を飲みに行った。バーで歌手の男が歌っていた。歌い終わるとサービスとして別のことを始めた。店を暗くして蝋燭を点けそこにしばらく手をかざした。「痛みの共有」をやった。
そして井戸の底で幻想に行き謎の女に出会った。
目が覚めると縄ばしごが消えていた。その後それを引き上げたのはメイだと判る。メイは上から話しかけた後、井戸の蓋をした。
何日かして夜にクレタが蓋を開けてはしごを下ろしてくれた。が射なくなった。井戸を出て家に帰り食事をして、郵便受けに手紙を発見。クミコからだった。
手紙には、仕事相手と浮気したこと、性の喜びを感じたこと、今はもうその相手といないこと、そして岡田と別れる旨が書かれていた。そこにマルタから電話がかかってきた。
マルタは「悪いことがあなたに起こっている、体に変化がおきてる」と言った。そしてクレタが行方不明だと。しかし岡田はクレタのことは言わなかった。そしてはしごをかけたままなとこに気付き、外しに行くと井戸の底にクレタがいた。クレタはもう少し考え事がしたいと言ったのでそのまま岡田は家に帰った。翌朝井戸に行くとクレタはいなかった。その後この家の持ち主の叔父に電話した。この家に不思議はないか聞いたが、ないとのこと。駅前の不動産屋が家や空き家を知ってるとも聞けた。髭を剃ると頬にアザが出来ていた。そして寝ると夜中に起きた。となりにはクレタが寝ていた。
クレタはクミコの服を着て朝食を作った。それはクミコに似ていた。そしてノボルに犯された話の続きを話した。ノボルに体を触られ絶頂の快感と痛みを感じて自分が生まれ変わったと感じた。
夜、現実として岡田はクレタと交わった。そして彼女と自分のためにクレタ島に行くという誘いを受けた。
翌日メイに会う。交通事故で彼氏は死んだ(殺した)、自分の中のぐしゃぐしゃを潰したいのだと。クレタ島に行ったら手紙を書くと約束。
叔父が訪ねてきた。人生のコツを語る。それはじっくりと時間をかけて人を観察する単純なこと、「洗練された復讐」だと。
翌日叔父のアドバイスを試してみるため新宿で観察をして。コーヒーとダンキンドーナツを手に。11日それをやっているとギターケースを背負った男を見た。それは北海道の歌手だった。男をつけ古いアパートを見つけた。しばらく見張った後アパートに入ると男にバットで襲われた。反撃して蹴り、殴ったら男がニヤニヤした。現実に戻され殴るのを止めた。男のギターケースを開けるとそこには何も入っていなかった。怖くなりアパートを飛び出てバスに乗った。客は怪訝そうに岡田を見ていた。服は返り血で、手にはバットを持っていた。家につきバットをしまった。
家に帰って酒を飲んだ。その後寝ると悪夢を見た。歌手の男を追ってアパートに入り殴った。男は笑いながらナイフを取り出し自らの皮をむいていった。むき終わると皮が迫ってきて岡田の全身を覆い張り付いた。目が覚めて「逃げられないし、逃げるべきではない」と悟った。結局クレタ島に行かないことに決め、クレタに別れを言った。
クレタからクレタ島からなにも書いていない手紙が届く。クリーニング屋から連絡があり、行くとクレタにあげたクミコの服だった。支払いはマルタの模様。
間宮中尉に手紙を書くと、返事が来た。私も「井戸に何かある」と今でも希望のようなものを持っていると。
メイは学校に行くことになった。そして空き家は壊され、井戸も埋められた。
プールで泳いでいると幻影を見る。そこで確信したのは「あの電話の謎の女はクミコだ」ということ。「私の名前をあなたは知っている」と闇の中から訴えながら助けを求めていたのだと。









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2025年06月03日

Posted by ブクログ

笠原メイちゃんが可愛い

物語自体は村上春樹的な、シュルレアリスムな感じ
比喩表現が相変わらず抜群に上手くて面白い

終盤、主人公が核心に踏み込んでいくにつれて、メラメラ(?)としてきて第三編が楽しみ。

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2025年05月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

妻クミコの失踪、義兄綿谷ノボルの選挙出馬、また主人公岡田亨の自宅付近の井戸での不思議な体験など、これまでの日常生活が徐々に一変している。井戸の水は相変わらず涸れているが、彼は井戸の中に入り、しばらくの間そこで過ごした。そんな中、岡田は夢と現実の境目が曖昧な時空間に佇む。その後も彼は不思議な出来事に遭遇し、ギリシャへの旅を誘われたが、彼は結局、自宅に留まり、妻の行方を追うという、これまでの村上春樹作品とは少し異なる展開を迎える。

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2025年04月27日

Posted by ブクログ

第1部から謎だった電話や夢に出てきた女の正体がわかって物語が一歩大きく進んだ気がした。

村上春樹は映像的文章?の表現力(表現が合っているかわからないけど、)が本当に上手だと読んでて感じた。

夢と現実の区別が曖昧になる場面でも文章を読みながらそれらの場面をありありと連想させることができるのは流石だなぁ、、とこれまでの作品を読んできて改めて思った。

右頬に突如現れたアザ、色々な登場人物の回想や路地裏の庭にあった井戸。
様々なキーワードやメタファーが出てきて、まだまだ謎が多い。
駆け足で第3部まで完読しようと思う。

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2025年04月14日

Posted by ブクログ

2部に入って話がどんどん展開し、どんどん引き込まれてる。
直前に読んだTVピープルの短編に加納クレタが出てきてて、その短編はよく分からなくて不快だったんだけど、ねじまき鳥に出てくる加納クレタはとても魅力的だと思う。先入観ありで読み始めてしまったので、TVピープルの前にこっち読めば良かったと思った笑

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2025年03月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この作品だと叔父さんがそれにあたるかなと思うけど、自分でものを考えて主人公と接点を持つキャラクターの言葉がすごく刺さる。

家出されたり、閉じ込められたり、突き飛ばされたり、殴られたり、澱んだ展開がきつかったけど、最後あたりで少し救われた。必要とされていたんだと思うと勇気出るよね。よかった。

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2025年02月09日

Posted by ブクログ

話はフィクションですが、思考の混沌とした感じがとてもリアルだと思いました。

問いへの破壊と再構築。
夢と現実の行き来。

誰しもが、何度か経験したことのある深い時間ではないかなと。

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2025年01月09日

Posted by ブクログ

飽きはないけど、緊張感もなくて少しだけ私には物足りない。
いくつもの小さな物語がクミコと僕に関連して紡がれていくが、どの結末もいまいち腑に落ちない。
ノモンハンの井戸の話が1番好きかも。

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2025年01月03日

Posted by ブクログ

創刊当時はこの二部が「最終巻」だと思ってたので、何?こんな中途半端な終わり方?と敵意すら浮かびました。
私の貴重な時間を返せと。でも一年後くらいに三部が発刊されて……そういうことか……と納得。
でも二部で裏切られた気持ちが強く、第三部は読まずじまい。そして私の村上離れが始まったのです。
ほぼ30年ぶりに一部、二部と読んで、このまま三部に突入します。果たしてどうなるのか?

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2024年12月24日

Posted by ブクログ

一部 泥棒かささぎ編がテンポ良く読めたのでこちらにもその勢いで突入。やっぱり面白い。
村上春樹はエンジンかかると早い早い。

一部の後半、けっこうグロテスクなシーンがあったので心して読んだけれど、こちらはわりと人と人とのあたたかい手紙での交流がメインて感じで気楽でした。

でも読む側がハッとする記述が多々あった。
これは今後の人生のために覚えとこ、うわーこれ今の私にグサっとくるわ、て思わず付箋して書き留めた箇所がけっこうあって。
村上春樹の作品の、私が楽しみにしてるところはそこなんです。それに気づいてからはもう読まずにはいられなくなって。しかもそんな箇所を見つけられるのは、私が知ってる限りだと村上春樹作品の中でも、長編のみなんです。
その箇所について、同じように心の琴線に触れた方と話したい!!

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2024年06月19日

Posted by ブクログ

62冊目『ねじまき鳥クロニクル 第2部 予言する鳥編』(村上春樹 著、1997年10月 初版、2010年4月 改版、新潮社)
90年代の村上の代表作『ねじまき鳥』3部作の第2部。どれだけ主人公を移動させないで物語を進行出来るのか、その実験のような展開が続く。
物語全体にダウナーな雰囲気が漂っているが、これは執筆当時の著者の心理を鏡映しているのだろう。メディアや世間に対して相当に疲弊していたことが伝わってくる。これはほとんど私小説なのでは?

〈少なくとも僕には待つべきものがあり、探し求めるべきものがある〉

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2024年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

犯人あてのミステリー小説ってわけでもないから書いちゃうけど、電話の主が奥さんのクミコだったのと、クミコが主人公のもとを去った理由が不特定多数の男と寝ていた(その衝動が抑えられなかった)からというのは、なんとなーく想像がついていた(^^ゞ
それは、第一部にある、クミコの“あなたは疲れていても誰にもあたらないでしょう。あたっているのは私ばかりみたいな気がするんだけど、それはどうして?”のセリフからだ。

「第一部:泥棒かささぎ編」の感想でも書いたけど、主人公の岡田亨と奥さんのクミコっていうのは似たもの同士すぎるのだ。
お互いの出たところと引っ込んだところがうまく噛み合わない、つまり、岡田亨が出ているところはクミコも出ていて、岡田亨が引っ込んでいるところはクミコも引っ込んでいる、そういう者同士なわけだ。
お互いに惹かれ合って、付き合いだすわけだけど、その相手の惹かれた部分っていうのは、その部分が自分とそっくり同じだったからこそ、惹かれたんだと思う。
相手に自分を見出して、それに惹かれるというのは中二病的ナルシシズムでしかない。
そんな男女の関係が続くわけないし、ナルシシズムだからこそ、自分が嫌な自分の部分が相手にも同じようにあることに気づくはずだ。

つまり、二人がそのよい関係を続けたいのなら、変わるしかない。
でも、人というのはそれに気づけない。
なにより、人は変われない。
でも、変わらなければそれは続かない。
続かないことを無理に続けようとすれば、人はいつか壊れてしまう。
奥さんのクミコが疲れやストレスから徐々に壊れていく中、ふと他の男と寝てしまったことがきっかけとなって、不特定多数の男の体を求めるようになっていったのは、人として必然なんだろう。

クミコがそういう風になっていったその気持ちや衝動をイメージできない人は多いと思う。
でも、どんな人の中にもそういう気持ちや衝動はあって、何かのきっかけでそれが暴走しだすということは誰にも普通に起こりうることなんだよ。
クミコの気持ちや衝動が理解できないという人は、幸いなことに、その何かのきっかけがないから気づかないだけだ。

それは、第一部でクミコが岡田亨に言った、“あなたは疲れていても誰にもあたらないでしょう。あたっているのは私ばかりみたいな気がするんだけど、それはどうして?”というう言葉からみても明らかだ。
それを言ったクミコのように、仕事の疲れやその他ストレスで、自分が一番信頼して安心できる相手に身勝手にあたり散らすことは誰にでもあるはずだ。
でも、普通はあたり散らした人もあたり散らされた人も、それとは関係のない何か楽しいことでそれを忘れることが出来る。
でも、クミコはそれを忘れることが出来なかった。
だから、クミコはひょんなことから他の男と寝たことをきっかけに、不特定多数の男の体を求めるようになっていったんだし。
そんな風におかしくなった自分をなんとか止めてほしくて、自分を罰して欲しくて。
だからこそ、一番信頼していて安心できる旦那の岡田亨に淫らな電話をかけたのだ。

ただ、これは小説であって、現実の男と女ではないから。
そこには、クミコの兄である綿谷ノボルから受けた精神的暴力(?)が大きな原因となっていて。
その原因を取り除けば、クミコはまともなクミコに戻って、岡田亨とハッピーエンドというフィクションを描けるんだろうけどね(^^ゞ
(実際、第三部はそれに近い展開になる)

自分は、この『ねじまき鳥クロニクル』を読んでいた時、頭の中で、ビートルズのAcross the Universeと、ドン・ヘンリーのThe End of the Innocenceが繰り返し流れていた。
それこそ、第二部の途中からは、主人公の岡田亨が何か言うたんび、♪Nothing’s gonna change my world〜って歌っていたくらいだ(爆)

著者がこの小説に、個人に降りかかる理不尽な組織的な暴力みたいなことをテーマとして込めたらしいことは、なんとなーくわかる。
でも、自分としては、そんなことはどーでもよくって。
ていうか、岡田亨とクミコのこの話になんでその要素が入っているのだろう?と全然わからなかったんだけどw、とはいえ、そこは村上春樹。
たぶん、その要素を入れることで、村上春樹が心がけているという、読者が“平易で親しみやすい”ようにしているってことなのかな?、とも思った。
ただ、ウィキペディアに書いてあるのは、“平易で親しみやすい文章”だからなぁー。
ま、その暴力の話には戦争の話もからんでいるわけで、全然親しみやすくないじゃん!って話ではあるのだが(^^ゞ
ただ、著者としては、もろに男女の関係の、あるいは夫婦の危機の話としてしまって、ドロドロとした昔の文学になってしまうよりは、そっちの方がいいと考えたっていうのはあるんじゃない?
だって、『風の歌を聴け』や『1973年のピンボール』のあの文章を書いた人だよ。
子供心にも暗鬱だった70年代が終わろうとしているあの頃に当たり前だった、辛気臭くて大げさに深刻ぶった文学ばかりの中、ああいう小説を書くような人が、わざわざ60年代の文学や昔の昼のメロドラマの定番みたいなことをテーマにして書こうとは考えないと思うけどなぁー。


そういう意味で、この第二部のなんとも生温くやりきれない結末はすごく納得出来たし。
なによりよかったと思う。
だって、結局、岡田亨は最後まで、♪Nothing’s gonna change my world〜と叫ぶだけで、自分が変わらなければクミコは戻りたくても戻れないってことがわからなかったんだもん。
というか、岡田亨とクミコは別れた方が、お互い楽に生きることが出来ると思うのだ。
人というのは理想よりも、肩肘張らないで生きていく中で手に入れられる、言わば等身大の幸せを手に入れるためにいろいろ頑張ることの方が大事なんじゃないかな?

実は、この『ねじまき鳥クロニクル』の後、『1Q84』を読んでいるんだけど、それを読んでいても、つくづく思うのは、村上春樹の小説に出てくる主人公って、なんで必ず自分の近くにいる(いてくれる)自分と釣り合った相性のいい相手を振り切って、お互い不幸になるだけの相手を追うのだろう?ということだ。

いや。もちろん、この『ねじまき鳥クロニクル』の岡田亨が加納クレタとクレタ島に行って結ばれ、『1Q84』の天吾が千倉で安達クミと暮らすことになっちゃったら、小説として面白くもなんともないわけだけどさ(爆)

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2024年05月01日

Posted by ブクログ

現実だろうが、ちょっとズレた異世界だろうが、文章でつづる登場人物たちの生活に面白さがあると思いました。そういうところは、毛色は違っても、ジブリ作品にも言えることですね。異世界、異世界という言うけれども、村上春樹フィルターを通すと現実はそう見えるのかもしれないです。

(今この本を読んでいることは運命的であるのだが、そうなると、この本の内容に、今の僕に必要な啓示か何かが隠されているのだろうか。…わかりません。まだ、ね。
それに、「あった」とも「なかった」とも言いません。それによって何かが損なわれてしまいそうだからです。面白い、楽しい、それで充分じゃないですか。ね。)

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2025年05月05日

Posted by ブクログ

もう一度読む必要がある。
概念的な話だと思う。同時に、人生において
重要なことを多く語っていたと思う。
この世界では耳をじっと済ませる必要がある事(良いニュースは小さい音だから)や、他にもいくつかあった。クミコともう一度出会って欲しい。出会わないシナリオあるんかな?意識の表層で出会って終わりかな

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2025年12月14日

Posted by ブクログ

思い出してきた。完全にここまで読んだ、というところに辿り着き、そこからは初めて読んでる感覚がしっかりあった。クレタ島いかんのかい!って思って20歳ぐらいの時に読むの辞めたんだった。

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2025年09月29日

Posted by ブクログ

ますます謎が深まるばかり。
これが村上春樹ワールドだなとしか思えない。
色々解決してすっきりするのだろうか。

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2025年08月31日

Posted by ブクログ

え、むず
クラゲok

後半の方でマルタの妹への言葉、『お前』多用してるからなのか、あの空気感が嫌だったのか、はたまた私が生理で不調だったからか、もしくは電車酔いしたからか、読んでて吐きそうになった
後メイは思考回路が意味不明
正味最後の章はバチバチに置いてかれた、なぜそうなる…?
おじさん好き

三部も読む

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2025年04月09日

Posted by ブクログ

小学生のとき山のキャンプで見た満天の星空に感動して、作文にかこうとしたけど、ぜんぜんじょうずに描写できなかったことを思い出した。
すごいなあ空が割れて落ちてくるくらい、とか、不安になる、とかいえるの

クラゲを侮辱するなって言ってんのすき

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2025年03月13日

Posted by ブクログ

技術はある
 通俗性を帯びた技術はあり、読ませる。さきも気になる。ただ、相変らず、主人公の僕が妻に執着する筋や、変な女子高生のキャラクターに共感はない。

 手を焼くミュージシャンのエピソードが強烈で、あれはいいシーンだ。最後の真実も幾分ハッとなった。
 しかし、井戸にもぐるシーンは長い。綿谷ノボルと加納クレタの関係も、つかみどころがない。

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2025年06月07日

Posted by ブクログ

私にはハルキストになる素質がないのか、斜め読みで読んでいます。それでも話の流れは分かるので、長ったらしいだけで話の作り方は分かりやすいのかもしれません。

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2024年06月12日

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