日本の命運を賭けた日露戦争。旅順攻略、日本海海戦の勝利に沸く国民の期待を肩に、外相・小村寿太郎は全権として、ポーツマス講和会議に臨んだ。ロシア側との緊迫した駆け引きの末の劇的な講和成立。しかし、樺太北部と賠償金の放棄は国民の憤激を呼び、大暴動へと発展する――。近代日本の分水嶺・日露戦争に光をあて交渉妥結に生命を燃焼させた小村寿太郎の姿を浮き彫りにする力作。
Posted by ブクログ 2022年10月19日
歴史小説として個人的には満点の作品でした。
国の尊厳をかけたギリギリの外交交渉。容易に譲れない全権たちが、それでも講和成立に向け妥協点を探りあう。そんな緊迫した様子をまるで同室で見ているような臨場感が、この小説にはありました。小村という人物にも大変興味をもちました。乃木や東郷が英雄ならば小村も同等に...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年09月04日
作品は、基本的に叙事詩的な文章で書き進められており、淡々と当時の時間の流れと出来事を連ねているが、それがポーツマス条約の緊縛した場面をより強く浮き彫りにしていると思う。困難なポーツマス条約を成立させた優れた外交官、政治家として記憶していた小村であるが、"私"の方はとても陰の部分が...続きを読む
Posted by ブクログ 2021年09月09日
日露戦争後、ロシアとの講和条約交渉に臨んだ外相・小村寿太郎の物語。旅順を攻略し、日本海海戦に勝ったとはいえ、既に日本は兵も物資も底をついており、戦争継続が不可能な状態で交渉に臨む。しかし、実態は国民には知らされず、我慢を強いられた人々は賠償金などの獲得を当然のものとして期待している。一方のロシアはま...続きを読む
時代も場所もかけ離れ、歴史上の偉人の出来事でありながら、目の前で繰り広げられているかのような緊迫感を醸し出す。筆者の作品はいつも一気に読み切ってしまう。
Posted by ブクログ 2019年10月09日
日露戦争終結に向け、小村寿太郎はポーツマス講和会議に臨みます。
講話を成立させるために、ロシア側全権ウイッテとの交渉、駆け引きの末に劇的な講和を成立させます。
日本人は交渉下手とよくいわれますが、小村寿太郎の交渉をみると、決してそうとはいえません。
国民の憤懣を呼びますが、日本のために、平和のために...続きを読む
Posted by ブクログ 2019年08月01日
外交は当初から落としどころを決めて始める。
最近の米国やEU、その他日韓関係などの緊張具合の現在進行形を体感する限り、その様子は見えない。
この書籍当時の時代の外相は、胆が太い。
いい意味で官僚じゃないからなのと、個人が日本を背負っていたんだろうと思う。
日本を守ろうとするんじゃない。
日本を創...続きを読む
Posted by ブクログ 2018年11月04日
・小村は部屋の重苦しい空気も気にならぬらしく、平然としていた。ルーズベルトの質問にも適切な言葉で答え、表情になんの感情も現れていない。随員の竹下中佐は、その折の小村の態度について、「露国一行ハ大ニ畏敬ノ念ヲ生ジタル如ク見ヘタリ」と日記に記し、ロシア側の主席随員コロストヴェッツもその日誌に、「日本側の...続きを読む