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囚人たちの北海道開拓裏面史。明治十四年、赤い獄衣の男たちが石狩川上流へ押送された。無報酬の労働力を利用し北海道の原野を開墾するという国策に沿って、極寒の地で足袋も支給されず重労働を課せられる囚人たち。「苦役ニタヘズ斃死(へいし)」すれば国の支出が軽減されるという提言のもと、囚人と看守の敵意にみちた極限のドラマが展開する。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
新千歳空港の書店にこの本があるのは、まさにあるべき場所で売られているといった赴き。在庫を切らさないようにしているのかな。 北海道を訪れたら、北海道を訪れる前に、一度は読んでおきたい開拓と命の歴史。
明治初期の囚人が北海道に送られて開拓していく。彼らは皆重罪犯だが、時代の転換期だったし本当は悪く無い人もいたんじゃないか…?囚人の扱われ方がとにかく酷くて真冬でも足袋すら支給されない。典獄は上席に足袋などを求めるが、北海道の寒さをわかっていないのか、却下される。で、支給されない。日本らしい縦割りだな...続きを読むぁ。作業効率を考えて自腹で勝手に支給してもバレなそうだけど。典獄は桁違いにお給料もらってたみたいだし。そんな感じで囚人は安い労働力としてこき使われバタバタと死んでいく。脱走する人も続出し、逃げきれず死んだり、看守に殺されたりする。海外を視察した偉い人によってこの待遇はあり得ない。という風潮が流れ、明治後期か?監獄自体廃止される。生き残った人もいるらしい。人権とは、を考えさせられる。
ゴールデンカムイに影響されて読むことにした。 北海道開拓の多くの部分が囚人によって行われていたこと、囚人には、凶悪犯だけでなく、佐賀の乱、萩の乱、神風連の乱、西南戦争といった士族の反乱者・秩父事件などの自由民権運動の激化事件の参加者たちもいたこと、初めて知った。 自由民権運動の闘志が結構収監されて...続きを読むるの、知らなかったな。 「日本の民主主義は戦後、アメリカの占領軍によってもたらされたもので、人民が勝ち取ったものじゃ無いからありがたみが染み付いてない」 っていう言説をよく見るけど、明治から昭和にかけての自由民権運動について知れば知るほど、そんなこと言えちゃうのは悲しいなと思う。 秩父事件、とかもそうだけど、最近読んだ九州の炭坑夫・山本作兵衛さんの記録から見た米騒動とかにも、国民主権を勝ち取るために戦った人達のこと書いてあったもんな。 学校教育で、明治から昭和にかけての自由民権運動・市民運動を教える際の語られ方が変わればそこらへんの認識も変わりそう、と思ったり。 札幌から旭川、旭川から網走までの道は囚人によって拓かれている。 「ボーリングフォーコロンバイン」という映画でマイケルムーアが、アメリカでは囚人を企業のために廉価で働かせていることを批判していたけど、同じようなことが日本でも行われていたんだな。 アメリカといえば、アメリカの囚人の服はオレンジだけど(ネトフリ のオレンジイズニューブラックとか見てもそう)、これは、樺戸監獄の囚人が赤い服を着せられて逃げたら目立つようにしてたのと同じ理由でその色なのかな? 三井の炭鉱などで囚人は働かされていた。 炭鉱のカナリアといえば、炭鉱にカナリアを持ち込み、カナリアが鳴かなくなれば有毒ガス発生として警戒するので有名だけど、この本では有毒ガスの有無を調べるために、囚人が炭鉱の奥まで下ろされている。囚人が気絶または死亡したら有毒ガスが発生している、という判断、えげつない。 幌内炭鉱で働かされていた囚人はほとんど不具者になっていた、という記録を岡田朝太郎博士が残している。 「作業終了の鐘がなると、手だけを失ったものが誘導し、盲人がたがいに前を歩くものの帯を掴んで進み、その後を足の欠けたものが這っていく」 明治の時代の政治や事件と、樺戸監獄の発展が連動して語られているのが面白かった。 金子堅太郎が、囚人を開拓に使うのに積極的な中央の人間だった。囚人を懲戒させられるし、どうせ囚人なので死んでも経費が浮くだけ、といった考え方。 金子堅太郎といえば、日露戦争で講和のためにアメリカに渡った人だったよね。 ニコライ親王を殺そうとした津田三蔵も樺戸監獄に収監されて獄死したの、知らなかった。 海賊房次郎、稲妻慶次郎のエピソードがこの本で紹介されている。 稲妻慶次郎は、体にマムシの入れ墨をしている女賊「マムシのお銀」と同棲しながら強盗を繰り返した。 海賊房次郎の妹よしは鬼神のお松と称された女。房次郎は泳ぎが得意で護送中船から逃げた。 偽札製造で収監された熊坂長庵は、北漸寺に観音像を描いている。今でも現存しているらしい。北漸寺には多くの囚人作の彫刻や装飾があるそう。 西川寅吉こと五寸釘寅吉、監獄から脱獄するも捕まる。70になるまで刑務に服し、満役で出所したあとは、五寸釘寅吉劇団という見世物小屋に勧誘され、台湾含む全国興行をしてまわった。 北海道の経営は薩摩出身の官吏や企業に占められている。官有物の払い下げも薩摩官吏→薩摩企業へと行われていたし、安価な囚人の労働力提供も薩摩企業へ。 癒着だ!と批判されていた。 跡佐登硫黄山で硫黄の採掘に囚人が駆り出された時期もある。硫黄のために、目が爛れ、膿でふさがったり失明したりする囚人が多かった。 囚人が出れるのは、皇族死亡に際する恩赦の時。皇太子が無くなって恩赦が出、多くの囚人が放免になった話はその後監獄内で語り草に。 その後、囚人は街に出るたびに、皇族の様子は変わりないから町の人に聞くようになったという。
明治維新直後の日本。不平士族の反乱や政府部内での対立などで刑務所に収監される囚人が急増。その需要に応えるため、政府は新たな収監所として、北海道に目を向ける。厳寒の地での収監は刑罰としては適しているし、北海道開拓の労働者としても期待できる。囚人の人権なんて考える必要のない時代、政府は容赦なく囚人を北海...続きを読む道へ送り込む。 囚人たちは番号のついた赤い服を着せられ、移送される。たどり着いた北海道で待ち受けるのは防寒対策が不十分な獄舎と粗末な食料、過酷な労働。使い捨ての開拓員としてこき使われた囚人のほとんどは凍傷に悩まされ、亡くなる者、脱獄する者が後を絶たない。 第2次大戦後のソ連によるシベリア抑留に似たようなことが、被害者側の日本ですでに行われていたことに歴史の皮肉を感じる。そして、こうした犠牲によって北海道が開拓されたことは知っておくべきだ。 名もなき囚人たちの壮絶な苦悩が歴史文学作家、吉村昭の丹念な取材力と淡々と事実を記す表現でより強調される。ただ、あまりに読者の気が滅入る事実ばかりを並べすぎた反動なのか、後半から脱獄犯列伝みたいになってしまうことに、すごい違和感がある。
北海度の発展と囚人たち。淡々と語られるその内容は初めて知るものばかり。歴史とは…学校では習わない歴史の存在を痛感した。
明治以降の北海道開発は囚人が担った歴史の事実を記録する 明治14年月形に樺戸集治監を作り、北海道開拓の労役に囚人を利用 コストのかからない労働力確保と、北海道開拓の早期実現 当初の農業開墾から始まり、基幹道路の開削、石炭・硫黄の鉱物資源を掘出しなど、人間扱いされない労働力として消耗 囚人の絶望と多数...続きを読むの死、そして脱走・恩赦などのドラマが織りなされた 国家が危機に有るとき、国家権力がどれだけ暴力的になるのか、吉村昭氏は丁寧に描いている 一人一人の囚人のドラマで有るとともに、明治の時代における国家存亡の危機という歴史も見事に描いている 司馬遼太郎氏の坂の上の雲とは異なる影の部分にスポットを当てており、意義深い 一点、囚人を活用したビジネスで得られた利益は誰がどの程度享受したのだろうか 歴史の本質の一つはマネーである
明治十四年から大正八年まで開拓のために囚人が次々と北海道へ送られた。 北の最果て。 無報酬。 過酷な労働。 猛威を振るう自然。 人体実験紛いの行為。 人権なんてない。 時代のなせる業。 三十八年で死亡者、延べ千四十六人。 この囚人たちの上に北海道がある。
北海道開拓史の暗部。 囚人による苛酷な強制労働の上に成り立つ。北海道開拓の一端を囚人達が担っていた。しかし、囚人達は国益のために使い捨ての労力として扱われていた。 樺戸集治監の盛衰物語とも言える。 ほんの少し昔の日本の暗部であり、史実でもある。 それを多くの資料から掘り起こし、淡々とした筆致で描きる...続きを読む吉村昭氏。すごい。
明治期の北海道開拓には、樺戸集治監をはじめとする囚人たちの労働が大きな役割を果たしていた、というお話。囚人vs看守の緊迫した攻防はドキドキする。 罪を犯して北海道におくりこまれるならともかく、囚人監視のために未開の地に送り込まれた看守の方がよっぽどお気の毒…という気がする…。 冬の間に雪の上に囚人が...続きを読む埋葬されていくさまが、アンデス山中の飛行機事故で生き延びた「生きてこそ」を思い出して怖かった… ゴールデンカムイの元ネタのような話がいっぱい出てきて面白い。慶さんとか長庵とか四郎助とか。
高熱隧道を読んだ吉村昭全集に収録されていた作品。 北海道に在住だけれど、主要な道路が囚人の強制労働によって作られていたとは全く知らなかった。 しかも囚人の中には、明治政府に逆らっただけの者や、 自由民権運動で捉えられた人たちも多くいたというのが衝撃だった。 未開の地だった北海道の開拓は、厳しい自然と...続きを読むの闘いだ。 マイナス20度になる冬に火気もなく過ごしたなんて全く信じられない。 しかも囚人は単衣(たぶん柔道着のようなもの)で、裸足に鎖をつけたまま雪の中で長時間作業をしたようだ。 凍傷が原因で人が死ぬということも初めて知った。 囚人が安価な労働力として、民間企業が所有する硫黄山や幌内炭鉱の劣悪な状況で働き、多数の死者が出たことも衝撃だった。 この炭山労使を視察した博士が「囚人の懲戒の限度をはるかに越えた死業」と言ったことがそれを物語っている。 小説は、強制労働の様子だけではなく、明治から大正にかけて何度も変更された政府方針に翻弄された刑務所のその後についても詳しく書かれている。 この時期の刑務所は、設備の弱さや強制労働の影響もあり破獄が何度もあったようだ。 そのたびに近隣の村では被害を受けることもしばしばだったらしい。 けれど、天皇崩御の際に恩赦を受けたものの身請け人がいなくて釈放されない囚人を、村人が自分の戸籍に入れたという事実には驚かされた。 そこまでして囚人を刑務所から解放してやりたいと思ったのは、過酷な強制労働の様子が漏れ伝わっていたからなのだろう。
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