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丹那トンネルは大正7(1918)年に着工されたが、完成までになんと16年もの歳月を要した。けわしい断層地帯を横切るために、土塊の崩落、凄まじい湧水などに阻まれ多くの人命を失い、環境を著しく損うという当初の予定をはるかに上まわる難工事となった。人間と土や水との熱く長い闘いを描いた力作長篇小説。
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Posted by ブクログ
確かに帯にあるとおり『高熱隧道』をしのぐおもしろさ。驚くのは鉄道省と国鉄の人事異動の多さ。こんな大工事してんのに所長や責任者がポンポン代わる。水を失った農民に最後まで向き合った静岡県庁の柏木さんが一番偉かった。
「戦艦武蔵」を読んで吉村昭にハマったのだが、あとがきにある通り「戦艦武蔵」の書き方に似た群像劇であった。 当時の世相、大正、昭和、そして戦争をあっさり描く所など、あくまで主軸はトンネルである事が分かる。傑作と感じる小説。
丹那トンネルの工事の様子を描いた,ほぼノンフィクション.ほとんどプロジェクトX.主人公のいない,いわゆる「群像劇」である.なぜなら工事には16年間もの長い時間を要したから,さらには鉄道省の人々が役人であって,数年で配置換えになるからである.では事実が淡々とかかれているだけであるかというと,そうではな...続きを読むく,極めて困難な工事に挑んだ熱い記録である.最初に水抜き坑が貫通するくだりは,何度も繰り返し読んでしまった.
大正〜昭和にかけたトンネル工事の記録文学。 丹那トンネル(東海道本線・熱海−函南間)の工事を題材とした作品。 トンネル掘削による崩落事故の経過は、手に汗握る。 また、関東大震災にまつわる記録も混じっており、重要な記録である。 また、トンネル工事により、その真上にある村落の水の枯渇、村民と鉄道...続きを読む省との軋轢なども真に迫っている。 大量の湧水、地震などに悩まされ、工事中止を主張する声も上がる中、16年もの歳月と多くの犠牲を払ってようやく開通したトンネル。 交通の利便を求める一方で、多くの人命を犠牲にし、また、一つの村の存亡、水資源の枯渇といった代償も払うことになった。 自然にあらがうことの、人間の力を思い知る。 本書を読み終えて、第1章に書かれた新聞記者から見た風景と言葉が、印象に残る。 吉村昭氏の丁寧かつ細やかな取材や当事者への聞き取りをもとに書かれた本書。
工学と社会の授業の中でおもしろいって言ってたから読んでみた。丹那トンネルの工事についての話だったかが、現場の緊張感などの雰囲気が文字に起こされていて臨場感を持って楽しめた。周囲の住民の心情の変化していくさまが、人間性に溢れていて、読んでいて非常に苦しかった。全体的に面白かったので、また読みたい。
ただのトンネル工事だけの話ではなく、7年の予定だった工期が16年にもなった原因、崩落事故や旦那盆地の渇水問題、その時の時代にあった出来事も詳しく書かれており、その頃のトンネル工事の大変さがよく書かれていた。
東海道線の三島~熱海間を結ぶ丹那トンネルは、全長7.8㎞。大正7年に着工され、当初の工期を大幅に超過し16年をかけて67名もの犠牲者を出しながら昭和8年に開通しました。本書は丹那トンネルの掘削工事にまつわる数々の事故や災害の実情を詳細に描いたノンフィクションです。 今では様々な重機と工法の発達で安全...続きを読むかつスピーディーにトンネルは掘削されるようになりましたが、丹那トンネルは着工時は何と工夫による手掘りでした。工期途中からようやく電気による掘削機を使用されましたが、掘削した後の坑道を支える支保工は丸太などが多用され、掘削したズリ(掘り出した土砂)を坑道から搬出するトロッコも、着工当時は馬や牛が曳いているような状況で工事は進められました。大きな崩落事故が発生した際、手掘りで地道に坑道に取り残された工夫を救出する様子がリアルに描かれており、息が詰まるような臨場感を感じました。 丹那トンネル工事が「世紀の難工事」と呼ばれる主因は、トンネルを断層帯が横切っており、夥しい量の出水があったことが挙げられます。丹那トンネルは丹那盆地の真下を掘り進められました。丹那盆地は豊かな湧水と地下水に恵まれた地域で、水田だけではなくワサビ栽培なども盛んにおこなわれていました。しかしトンネル工事が進むにつれてトンネルへの出水の影響で地下水位が低下し、水田への引水もままならず、工期後半では飲料水にも事欠くほどの状況に陥ります。丹那盆地に位置する自治体の農業被害の実情や、それに対する鉄道省の補償などについても詳しく述べられています。 そして、他のトンネルとの違いがより顕著なのは、トンネルを大きな断層が横切っていて、その断層が動いた「北伊豆地震」がまさに工事の真っ最中に発生した事です。工事は断層面で中断していたため、トンネル切端(きりは:掘削の最前面のこと)と断層面が一致し、約2.5mずれた断層面がトンネル内に出現しました。もしも地震の発生がもっと工事が進んだ状態であったなら、坑道が完全にずれていたでしょうし、トンネルが開通した後で列車が通過中であれば、大きな事故になっていた可能性もあります。 このような数々の障害を克服し、16年にわたる工期を要してトンネルは開通しました。文庫本500ページ超にその詳細が述べられています。著者はノンフィクション作家として有名な吉村昭氏。余計な脚色は一切なく、吉村氏の代表作の中の1冊と言われるのも納得できました。
大正7年に着工し17年の歳月を掛けて完成した丹那トンネルの困難な工事を詳細に描いた記録文学。その詳細な資料集め、聞き取り調査等により感動的な一大叙事詩ともいえる作品に仕上がっている。途中呼んでてめげそうになるが、中盤からどんどん引き込まれて完成までを読み進むことが出来た。
世界大戦前の大正から昭和にかけて工事が行われた丹那トンネルにかかわった人々の記録文学(といっていいのか)。吉村昭は「小説」と言っている。 工事の進捗が、ノミで岩盤を穿つような文体で、語られる。歴代の工事所長、主任技師、労働災害、被害を受けた地元の群像で進む。
吉村昭さんの著作は「ポーツマスの旗)以来かな。 もの凄い調査の末に書かれているだけに、内容がものすごく濃い。小説というよりもノンフィクション、ドキュメンタリーに近いと思う。 丹那トンネルが難関工事であることは何となく知っていたが、ここまで大変だったとは。 今では長いトンネルは当たり前のようにあるが、...続きを読む戦前は多くの犠牲を伴って完成している。新幹線しか乗らないけど、いつかは東海道線で丹那トンネルを通ってみたい。
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