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初夏、名人戦の最中に詰将棋の矢文が見つかった。その「不詰めの図式」を将棋会館に持ち込んだ元奨励会員・夏尾は消息を絶つ。同業者の天谷から22年前の失踪事件との奇妙な符合を告げられた将棋ライターの〈私〉は、かつての天谷のように謎を追い始めるが――。幻の「棋道会」、北海道の廃坑、地下神殿での因縁の対局。将棋に魅入られた者の渇望と息もつかせぬ展開が交錯する究極のミステリ!(解説・瀬川晶司、村上貴史)
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Posted by ブクログ
将棋×ミステリで、普通のミステリとは異なる作風。解けない詰将棋の謎と失踪の謎で読者を「寄せ」、終盤の「詰み」でどんでん返しが待っている。また、登場人物たちの将棋の勝負にかける情熱、人生が伝わり、将棋小説としても面白い作品。
将棋✕ミステリという珍しい組み合わせで斬新でした。特に最終盤に向けてゾクゾクするような展開が良かった。「龍神棋」という架空の将棋が初めは理解できなかったが、AIが浸透し正解が分かるようになった現代の将棋界において、それでも人間が指すということの意味や重さを表現しているのかなと感じた。ただマニアックな...続きを読む表現や過去の大棋士たちの名前も登場するので、多少なりとも将棋について知っているとより楽しめると思う。
矢に結び付けられた詰将棋、過去に起きた失踪事件、磐、麻薬、北海道、全ての出来事が上手くハマっていく終盤は面白い。帯の〝究極の将棋ミステリが放つ、命懸けの勝負と謎、そして衝撃のどんでん返し!〟に偽り無し。
名人戦の最中に見つかった詰将棋の矢文。矢文を持ち込んだ奨励会員の失踪。幻の将棋会「棋道会」。北海道の廃坑。地下神殿での対局。将来を分けた運命の一局。虚実ない交ぜに描かれる、将棋に魅せられた者の執着が悲しい。
読みにくい感じだったけど、途中までは面白かった。 終わりがちょっと…って感じだったな。 将棋の棋士を志す人にとっての奨励会を退会する、ということの重みがすごく良く分かった。
将棋会館に持ち込まれた<魔の詰将棋>に端を発する元奨励会員の失踪事件を皮切りに、過去と現在が交錯する将棋ミステリー。北海道の鉱山町で栄えた<魔道将棋>など、荒唐無稽な設定が飛び出す特殊設定ミステリーだが、将棋ライターである主人公の一人称視点で紡がれる古風でルポルタージュの様な文体のおかげで不思議と地...続きを読むに足の着いた読み心地。後半は夢と現実が入り乱れ、物語はいよいよ混沌とした様相を呈するが、終盤でイヤミスに転ずるのは拍子抜け。ラストの謎解きも何処か投げやりな印象もあり、前半の期待値に反し少々残念な読後感だった。
将棋を題材にしたミステリー小説。名人戦の最中、ある詰将棋が描かれた矢文が見つかる。 そして、その矢文を持ち込んだ奨励会員がそのまま失踪することに。矢文に描かれた詰将棋が意味することとは。さらに、彼が失踪したことの意味とは。元奨励会員である主人公が探偵のように二つの謎を解決すべく、各地を巡ることとなる...続きを読むミステリー。 作中では、実在の棋士の名前が数々登場し、現代の時代感を匂わせながら、中心になるのは架空の元奨励会員や棋士と女流棋士。また、主人公が謎を探りながらも過去に起きた同様の失踪事件の謎をだんだんと明らかになっていくところも面白かった。将棋にのめり込んでいるからこその将棋教なるものに傾倒していってしまう様や龍神棋といった架空の将棋に似たような遊戯なども登場して面白かった。ただ、将棋用語をつかっているところは面白かったが「」で強調しすぎかんが否めなかった。 また、ミステリー部分では、主人公の推理自体がミスリードであったところが面白かった。
将棋は知らんし……と敬遠していたが、次を読ませる展開に乗せられて一日で読んでしまった。 さすが奥泉の筆力。 例によって例の如く冴えない中年男性が語り手だが、クワコーシリーズのユーモアよりは、ややシリアス。 というか暗い。 もともと奥泉光って、たぶん根が暗い、というかペシミスミティック。 それを糊塗す...続きを読むるのが、ジャズや音楽や落語や将棋やミステリやといったカルチャー全般であって、糊塗されて初めて面白くなるのだ。 希望を謳う根底にある悲観という点では、手塚治虫や藤子・F・不二雄や宮崎駿や富野由悠季や押井守や庵野秀明に通じると思う。 で、本作、「バナールな現象」「シューマンの指」を思い出す、暗さというか陰惨というか遣り切れなさが横溢していて、……そこが好きなんだ。 中盤くらいか? 字の文に「かたる」と、ひらがなで出てきて、ちょっと気になると思っていたら、まさか終盤そんなふうになるとは……。 また字の文の面白みという点では、棋士らしい「寄せてみる」とか「投了しそうだ」という言葉遣いが、いい。 幻想場面へのシームレスな描写の移行も奥泉の筆力だが、ミステリの枠でも高水準の驚きを齎してくれるのも、筆力というか知性に裏打ちされた奥泉のサービス精神。 そしてその根底にはペシミズム……(負け=少しだけ死ぬ)。 いつものロンギヌス物質は登場しないが、いわゆる「鼠的人物」「鼠性」とか「かたる」とかが現れ、同時に将棋という極めて数学や真理探究に近い「魔」に魅入られた人物たちの、挫折や失敗や裏技や懊悩が描かれる、高水準の人物ドラマでもある。 こりゃ幾重にも美味しい小説だ。
幻の将棋をめぐる、ある意味狂気の物語。視点人物である主人公が途中から半ば狂っているので、どこまでが現実でどこから夢、妄想なのか境界がつかめない。それでいて物語にはぐいぐい引き込まれて行きます。 解説でも書かれていますが、映像化されると面白いかも。
将棋を題材にしたミステリー。 いきなり羽生善治、森内俊之という名前が出てきてびっくりした。が、ほぼ時期を示すためだけで、他の登場人物は超ビッグネーム以外オリジナル。 読み出しすと本格派ミステリーのようで期待しながら読み進められ、話の展開があってオチもついてたんだけど、幻想的な部分は入り込めなかっ...続きを読むた。 単に人がしたことというだけでなく、人智を超えた何かもあったということを匂わせたかったのかもしれないが、わからないまま終わったのが不完全燃焼だった。
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