この本は警視庁機動隊、ハイパーレスキュー隊、災害派遣医療チーム(DMAT)…。「3・11」の危機に命をかけて対峙した名もなき戦士たちの知られざる記録です。僕が本当に知りたかったことはこういうことです。
いまだ被害の全貌は明らかになっていない東北・関東大震災および福島第一原発の原発事故ですが、そんな未曾有の大災害に立ち向かった自衛隊。消防士のハイパーレスキュー隊。災害派遣医療チーム(DMAT)。警視庁機動隊・・・。彼らに焦点を当てた災害の記録でございます。はっきり言います。僕が本来知りたかったことはこういうことです。
この本は全部で三章の構成になっておりますが、そのどれもが熱い人間ドラマというべきものでした。第一章の「福島第一原発、戦士たちの知られざる戦争」では中央の
「俺の命令は総理の命令だ!」
という某大臣のムチャ振りとも言える指示の嵐と、東京電力の(ここに書かれている限りでは)本当に他人事とも言える態度を、どうにかこうにかかいくぐりながら、致死量ともいえる放射線を出し続ける原子炉に向かって、東京電力側から詳しい場所を指示されることもないまま、任務をこなしていく自衛隊員やレスキュー隊員の姿は心を打ちました。
第二章の「道路を啓け! 未曾有の津波災害とたかった猛者たち」では物資を輸送するにも膨大な瓦礫で道が寸断されており、重機を使って、瓦礫を取り除き、道を切り開いていこうとする民間会社や、東北の現地に派遣されている国土交通省の官僚の姿が描かれており、途中で、瓦礫を
押しのける際に
「ただの瓦礫じゃないんです…。」
と現場の人間が言ってきた際。それが被災した方々の遺体がまだ残っている。瓦礫だということで、自衛隊の方々と文字通り「人海戦術」で道を切り開いていく姿というのが僕の心の中に残っています。
そして第三章の「省庁の壁を越え、命を救った勇者たち」では国家の中枢をつかさどる人間たち―局長クラスの幹部たちが一堂に集まり、地下室にそれこそ、不眠不休で事に当たっていたという事実を読んでいると、胸に熱いものを感じずにはいられませんでした。
現地の人間が速やかに避難できるように、原発事故で燃えつつけている原子炉の火を止めるために方々に手を尽くして、現場に行った機動隊の方も全力で任務に服していたということがかかれており、いつか、ここに書かれてあることがドラマかなり映画化されて、世に広く知れることを強く望みます。まだまだ、予断は許されませんし、今もなお、現場で命がけで任務に当たっている方々に敬意を表しつつ、彼らのような「無名戦士たち」が少しでも報われることを僕は願って止みません。
※追記
本書は無事にドラマ化され、僕もテレビでそれを見たときには感動してしまいました。あれから時が経ち、2021年で東日本大震災から10年が、2022年で11年が経過し、当時の記憶が風化しつつある中で、あるいは震災当時に幼少期で、成長して中高生になった少年少女にぜひ、本書を手に取って読んでいただければとささやかながらそう願っております。