Posted by ブクログ
2019年03月17日
「警官の掟」
犬の掟の改題。
巨大な倉庫で起こる活劇シーンから始まる。それから七年後の十月初旬、東糀谷で暴力団員の深沢が殺された。蒲田署刑事課に異動してきた波多野は、同じ署へ異動してきた門司と七年ぶりに先輩後輩と言う間柄でコンビを組むことになった。二人は容疑者に浮上していた半グレ軍団に聞き込み...続きを読むを行う。
一方、警視庁捜査一課に異動した松本は、上司の綿引ととも管理官からある指令を受ける。二年前の暴力団員が殺害された事件と深沢の事件は関連性があり、警察関係者が関与している可能性があると言うのだ。さらにある市民団体に関与していた女医の飛び降り自殺やフィリピン人の死体遺棄事件との関連性も浮上し、事件は錯綜を辿る。
波多野や門司の所轄警官、松本や綿引の警視庁は、それぞれのルートで一連の事件を捜査する。特に松本達は所轄や警視庁の他の課に知られぬ様に極秘捜査を行い、じりじりと事件の真相に近づいていく。丹念な地取りシーンがとても多い。容疑者候補達を訪ね回る場面でも、同じ奴に何度も聞きにいくなど、まさに“じりじり”がぴったり。
また、タイトルにある“掟”が最大のテーマである。警察官は犯罪を捜査して犯人を捕まえるのが目的である。しかし、その目的を達成するためとはいえ、越えてはならないもの、守るべきものがある。警官の正義とは何か、正しい判断とは何か、という問題に関わってくる。犯罪を取り締まるだけでも負担が掛かる中で、更に掟にも身を捧げなければならない。正しい警官とはここまでキツイのだ。
終盤まで容疑者が出てきては消え、なかなか一連の事件の真相が見えない。久しぶりの重厚な警察小説だ。しかし、ある時一気に展開が進む。最後の松本が抱える想いから導き出される掟に対する答えは、一体どのようなものだったのか。怒り、悲しみ、無念、やり切れなさ、衝撃、そして警官とは何か。様々な想いが混沌としながらも、松本は歩を進めなければならない。