この本が素晴らしいのは、実のある夢のコラボレーション。小澤征爾さんは世界的な指揮者ですが、彼の音楽家としての実力は、われわれはいつもは、演奏される音からしか、うかがい知ることができません。
村上春樹さんは、素敵な小説家ですが、ノンフィクションライターとしての実力も、アンダーグラウンドなどで実証済み。
...続きを読むこの本でわかったことは、春樹さんは、それに加えて、小澤さんが活躍されるクラシック音楽についても、永く深く聴き込んでいたということ。ちょっと他にいなさそうな稀有なリスナーをインタビュアーに配して、さまざまな演奏を共に聴きながら発せられる質問や感想に刺激され、小澤さんは古い記憶もよみがえり、語り、それを当代きってのノンフィクションライターが臨場感ある文章にしたのが、この本。演奏以外の形で、小澤さんの奥行きの深さを示しています。