ブラジルの先住民族と同居してノンフィクションを撮ったNHKスペシャルディレクターによる本。番組は既にTVで見て、生まれた子供を精霊として森に還す様が非常に印象に残っていた。著者は民族学者でもない同時代の日本人なので、その視点に共感しやすい。
言葉も文化も異なる人々の中に入り込んでいく苦労から始まり
...続きを読む、彼らの行事・祭りの様子、家族関係や個々の人物像、シャーマンとその思想、そして女たちの出産と赤ん坊を人間として迎え入れるかどうかへと村の描写がされていく。終盤は一転して、村イチの長老シャボリ・バタがこの村ワトリキに至るまでの流転へ。淡々と語られる歴史だが、病気による大量死などが語られ圧巻。今の彼らの姿だけでは平板なものになりかねないところを、歴史と重ね合わせることで移ろい行く儚さが見えてくる。最後のとどめは文明に触れて変わり行くヤノマミたち。起承転結のはっきりした展開で読ませる。ここはTVマンらしさか。
ヤノマミはちっぽけな存在かもしれないが、われわれが当たり前だとか絶対と思っている価値観の相対性が沁みるように分かる。そう言えば間引きの風習も少し前までは日本にもあったわけだ。彼らの考え方はわれわれにも理解できそうだし、意外と距離は近い。人間も突き詰めれば生物のひとつでしかないのだ。その上で、もがいて何を求め何を見つけられるのか、われわれもヤノマミ同様、大きな世界の中のちっぽけな存在だ。