作品一覧 2022/10/19更新 大江健三郎 作家自身を語る 試し読み フォロー 大江健三郎全小説全解説 値引きあり 試し読み フォロー 大江健三郎の「義」 試し読み フォロー 詩人なんて呼ばれて 試し読み フォロー ひみつの王国―評伝 石井桃子―(新潮文庫) 試し読み フォロー 1~5件目 / 5件<<<1・・・・・・・・・>>> 尾崎真理子の作品をすべて見る
ユーザーレビュー 大江健三郎 作家自身を語る 大江健三郎 / 尾崎真理子 2006年に行われ、テレビ放映もされた連続インタビューを再構成し編集・追補された「推敲された」インタビュー。尾崎氏が大江のことばを引き出す役に徹したことで、細密に描き込まれた作家・大江健三郎の自画像ができあがっている。文庫版には「後期の仕事」三部作を書きおえたあと、2013年の対話も収録されている...続きを読む。 全体を読み終えて、あらためて大江の勤勉な読書家であり勉強家であることが印象に残った。谷崎潤一郎にも似たようなことが言えるが、研究対象が自分よりもどう考えても知識教養に優れている場合、研究者はいったい何をすればよいのだろうか。 強靭な記憶力、とくに自身に対する批判をよく覚えていることにも驚かされた。質問に対する回答の形で提示される穏やかな文体を一皮めくると、じつは底堅く根を張っている男性中心主義的な主体性への願望が滲み出る場面や、苛立ちと怒りと冷笑と絶望が不意に姿を見せるような瞬間があって、実にスリリングな読書体験だった。 Posted by ブクログ 大江健三郎全小説全解説 尾崎真理子 大江作品が凄いのは勿論だが、全小説(「夜よゆるやかに歩め」は未収録だけど)を網羅・総覧できる、素晴らしい一冊本。 しかも必要にして十分なあらすじと、時代の説明、同時代のリアクションから、2020年の今だからこその評まで。 巨大な山脈の、微細なミニチュア模型。 目次 ◆はじめに ■第01章 よろしい...続きを読む、僕は地獄に行こう! 奇妙な仕事/他人の足/死者の奢り/石膏マスク/偽証の時/動物倉庫/飼育/人間の羊/運搬/鳩/芽むしり仔撃ち/見るまえに跳べ/暗い川 おもい櫂/鳥/不意の唖/喝采/戦いの今日/部屋/われらの時代 ──初期作品群その1 ■第02章 惨憺たる青年たち ここより他の場所/共同生活/上機嫌/勇敢な兵士の弟/報復する青年/後退青年研究所/孤独な青年の休暇/遅れてきた青年/下降生活者 ──初期作品群その2 ■第03章 封印は解かれ、ここから新たに始まる セヴンティーン/政治少年死す──セヴンティーン第二部/幸福な若いギリアク人/不満足/ヴィリリテ/善き人間/叫び声/スパルタ教育/性的人間/大人向き/敬老週間/アトミック・エイジの守護神/ブラジル風のポルトガル語/犬の世界 ──初期作品群その3 ■第04章 復元された父の肖像 走れ、走りつづけよ/生け贄男は必要か/狩猟で暮らしたわれらの先祖/核時代の森の隠遁者/父よ、あなたはどこへ行くのか?/われらの狂気を生き延びる道を教えよ/みずから我が涙をぬぐいたまう日/月の男(ムーン・マン)/水死 ──父と天皇制 ■第05章 神話としての「個人的な体験」 空の怪物アグイー/個人的な体験/ピンチランナー調書/新しい人よ眼ざめよ(無垢の歌、経験の歌/怒りの大気に冷たい嬰児が立ち上がって/落ちる、落ちる、叫びながら……/蚤の幽霊/魂が星のように降って、跗骨のところへ/鎖につながれたる魂をして/新しい人よ眼ざめよ) ──共生 ■第06章 知と懐かしさの容れ物として 身がわり山羊の反撃/「芽むしり仔撃ち」裁判/揚げソーセージの食べ方/グル―ト島のレントゲン画法/見せるだけの拷問/メヒコの大抜け穴/もうひとり和泉式部が生まれた日/その山羊を野に/「罪のゆるし」のあお草/いかに木を殺すか/ベラックヮの十年/夢の師匠/宇宙大の「雨の木(レイン・ツリー)」/火をめぐらす鳥/「涙を流す人」の楡/僕が本当に若かった頃/マルゴ公妃のかくしつきスカート/茱萸(ぐみ)の木の教え・序 ──中期傑作短・中編 ■第07章 ノーベル賞はいかにしてもたらされたか 万延元年のフットボール/洪水はわが魂に及び ──ノーベル賞受賞をもたらした作品ほか ■第08章 果てしなく多義的な偽史をめざす M/Tと森のフシギの物語/同時代ゲーム ──森の神話 ■第09章 アメリカの影が差す女性たち 「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち(頭のいい「雨の木」/「雨の木」を聴く女たち/「雨の木」の首吊り男/さかさまに立つ「雨の木」/泳ぐ男――水の中の「雨の木」)/人生の親戚/静かな生活(静かな生活/この惑星の捨て子/案内人(ストーカー)/自動人形の悪夢/小説の悲しみ/家としての日記)/(美しいアナベル・リイ)臈たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ ──女性的なるものの力 ■第10章 予戒としての近未来SF 治療塔/治療塔惑星/二百年の子供 ──時空を超えたSF的試み ■第11章 青年の夢想と酷たらしさ 河馬に噛まれる(河馬に嚙まれる/「河馬の勇士」と愛らしいラベオ/「浅間山荘」のトリックスター /河馬の昇天/四万年前のタチアオイ/死に先だつ苦痛について/サンタクルスの「広島週間」/生の連鎖に働く河馬)/懐かしい年への手紙/キルプの軍団 ──理想郷の建設・学生運動 ■第12章 世紀末に集中した「魂のこと」 燃えあがる緑の木(第一部 「救い主」が殴られるまで/第二部 揺れ動く〈ヴァシレーション〉/第三部 大いなる日に) ──魂の救済 ■第13章 再びの「カラマーゾフ万歳!」 宙返り ──神なき祈り ■第14章 永遠のモラリスト、伊丹十三 日常生活の冒険/取り替え子(チェンジリング)/憂い顔の童子 ──親しい友人の死 ■第15章 「晩年のスタイル」こそ苛烈に さようなら、私の本よ!/晩年様式集(イン・レイト・スタイル) ──カタストロフ 3.11 ◆大江健三郎年譜 ◆『大江健三郎全小説』収録作リスト ◆文献一覧 ◆索引 (以下コピペ) 新聞記者として長年大江健三郎を取材してきた著者による、わかりやすい大江健三郎入門書。 『大江健三郎全小説』(全15巻)を通して書かれた解説を一冊にまとめる。 大江健三郎全小説のあらすじから説き起こしつつ、個々の作品発表当時の文芸批評家による主要評論に言及、その作品がどのように受容されてきたかを論じる。 またときに作家へのインタビューを引用しながら作品の意義を明らかにする。 大江文学がどのように生まれ、どのように読まれ、さらにこれからどのような研究課題がありえるのかを総合的・俯瞰的に論じた大江評論の決定版。 Posted by ブクログ 大江健三郎の「義」 尾崎真理子 これは今まで読んだ大江健三郎論の中で一番納得できた一冊。なんか本人のインタビューでは洋モノの思想が出てくるし、仏文科だし、後期の小説で主人公が読んでるのはダンテとかブレイクとかな割に、物語にはもの凄い日本らしい湿気と土臭さがあるのが気になっていたのだが、この本を読んで得心しました。世代的には全然大江...続きを読むの衝撃などはなく、文庫に作品がいっぱい入っているので遅れて読みだしたのだが、結果、長江古義人シリーズだけですね、私に面白く読めるのは。日本人の作家でこれほど時期によって作風の違う作家も珍しい気がする。 Posted by ブクログ 大江健三郎 作家自身を語る 大江健三郎 / 尾崎真理子 大江健三郎氏の創作の秘密、作品に込められたものが解る。 聞き手の尾崎真理子女史の作品への深い読みに舌を巻く。 また、尾崎真理子女史の読みが確かなものであるので、大江健三郎氏の応えと合致し、巧みに大江健三郎さんの応えを引き出している。 この本により、偉大な芸術家の内面を初めて知ったという感慨を持った...続きを読む。 私生活の事は、身近な人間でないので、わからないけれども、大江健三郎氏の芸術家としての人生は幸せであったと思う。 とにかく、大江健三郎ファンにはおすすめです。 Posted by ブクログ ひみつの王国―評伝 石井桃子―(新潮文庫) 尾崎真理子 この夏読んだ「働くわたし」の中にブックガイドがあって、そこで紹介されていた石井桃子、いや幼い日の記憶にある、いしいももこの評伝です。かなり厚めの文庫でしたが圧倒的な面白さ。ご本人の山荘のある軽井沢でのロングインタビューをベースに新聞記者ならでは取材力と推論の組み立て、要点を明確にする簡潔な文章で、「...続きを読むくまのプーさん」「小さなおうち」「ピーター・ラビット」などの翻訳、あるいは「ノンちゃん雲に乗る」などの著作で児童文学の巨大な最高峰である石井桃子の101年の人生を大きく描き出しています。「しゃべりすぎた」「聞きすぎた」「生きている間は書かないように」というように本人の中だけの箱をあける作業も含めて、頂きだけ仰ぎ見ると眩しすぎる桃子山の山麓の小道を調べ尽くしているし、本書にも描かれない場所もまだまだあるのだと思われます。その調査取材が秘密を明らかにする、というものではなく、そもそも石井桃子の著作により本が好きになるという原体験を得て、さらには読売新聞の女性記者のフロントランナーとして念願の文芸欄の担当になった著者の石井桃子への憧憬と共感があるからこその仕事になっています。本書の巻頭にも「大人になってからのあなたを支えるのは、子ども時代のあなたです」という石井桃子の言葉を掲げています。YouTubeに著者が本書によって2016年の日本記者クラブ賞を受賞した時の記念講演がアップされていて、尾崎真理子記者がいかに本書に向き合ってきたかが、本人の声で語られていてグッと来ます。本書で描かれる石井桃子山を登る道は、まずひとつ、大正から昭和へかけての出版文化の流れ、文藝春秋や岩波書店での編集者としての仕事によって石井桃子が石井桃子になる下地としての道です。ふたつめは、同時代の働く女子との絆、これは作家として一生のエンジンになるものだったのかもしれません。これはウィラ・ギャザー、エリナー・ファージョン、ビアトリクス・ポターなどの海外の女性の仕事からのインスパイアも含まれるかもしれません。みっつめは、生涯独身だった彼女の恋です。ここに「ノンちゃん雲に乗る」誕生の秘密が隠されています。よっつめは、戦前の仕事と戦後の仕事の境目の「ノンちゃん牧場」のこと。石井桃子がもっとも触れられたくなかった時代です。しかし出版界や作家の世界が戦争責任をあいまいにしたのに比しての真面目さ、と生活することの大変さ、を正面から受け止めた証です。いつつめが、「幻の朱い実」(知らなかった!)という児童文学を超えた仕事について、です。本当は作家になりたかった、という憶測を超えて、自分の中にある「私というファンタジー」に向けて書かれた、というこの作家の本質を見出します。本書は文庫版でしたが単行本版も含めて表紙に使われているのはヘンリー・ダーガー。現在、東京芸術大学美術館で展覧会が行われているアール・ブリュット、アウトサイダー・アートが有名になるきっかけの人ですが、石井桃子も、子どもに向けているだけでなく、自分の内側への語り掛けが、作品なのだ、というこれも尾崎記者ならではのすごいボールだと思いました。とにかく満喫、すごい本ありがとうございました! Posted by ブクログ 尾崎真理子のレビューをもっと見る