Posted by ブクログ
2022年04月28日
「みんなで夜歩く、ただそれだけのことが、どうしてこんなに特別なんだろう」
2004年刊行された恩田陸の小説で、2006年多部未華子主演で映画化された、高校の名物行事「歩行祭」を舞台にした青春物語。
物語は、朝から翌日昼までの80キロの道中を描く。
ドキドキの始まりの朝、暑く長い昼、夜に挟まれた水...続きを読む平線の夕日、さまざまな想いの夜、言葉にならないほど歩いて再び朝、ゴールへ、そしてひとつ前へ進む。
子どもの時代から大人への旅立ちは、どうしてこう切なくて、美しいのか……。
高校の三年間は、あっという間に過ぎ去る。
それでも、ふとした時に蘇るシーンもやっぱり高校生時代。
秋、学園祭の最終日、使ったデコレーションを校庭に集めて廃棄した。
3年生、これで最後。
夕焼けの中、ひとり校門で立ち止まる。
興奮と喧噪の果てに、何か残したような切なさが押し寄せ、
人恋しく去り難くなり、だれかを待つ……。
年数を重ねるほど美化されていく、自分の中の映像。
本を読んだ後にふと思い出して、しばらく浸っていた。